元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする)   作:銀鈴

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茶番です


44話 仁義なき戦い

[p.m.22:00(R(リアル))/p.m.18:00(G(ゲーム))]

[中央旗艦都市ケントルム・ギルドハウス]

 

「第1回──チキチキ!ASMR売り上げバトル〜!!!」

 

 カランコランと鳴り響く鐘の音、諸行無常の響きあり。弾バカの宣誓によって始まったのは仁義なき戦い。俺とクローニンが、互いの尊厳を賭けて挑む一大勝負の幕が切って落とされる。

 

「ふ、ふふふ、よくもやってくれましたねヤブサメ。今日という今日は、ボクだって怒るんですからね!」

「それはこっちの台詞だクローニン! よくも、よくもあんな真似を……」

 

 撃っていいのは撃たれる覚悟があるやつだけというが、それはそれでこれはこれ。

 バレた結果、負けた方が追加ボイスの収録を確約することになった光と闇のEndless battle。膝をつくわけにはいかないのだ。

 

「グポーポン」

《ポテチうめ〜!と、マスターは仰っております》

ほうほ(どうぞ)へっはーはーもん(ペッパーサーモン)はひ()へふ(です)

 

 カスみたいな観衆に煽られるのも確定してるわけだし。

 

「セツメイシヨウ! チキチキ(ryトハ、メソメソナイテタメメシイクローニント、オモッタヨリヤサシクテイイコエシテタヤブサメノ2メイガ、ソレゾレオタガイノボイスヲカッテニロクオン・ヘンシュウシテハンバイシタケッカ、オタガイニバレテショウハイヲツケルコトニナッタタメ、ハッセイシタクソショウモネェバトルダゼ!」

 

 なお売れ行き自体は勝負になるくらいは好調である(集計:Fluoriteさん)。バカがよ。クローニンのは兎も角、どうして俺(ボイチェン)のも売れてるんですか? おかしいと思いませんか、アナタ?

 

 そんなユーちゃんの優しい説明の中、示し合わせたように俺とクローニーンが片腕を掲げるポーズへと変わっていく。

 そう、これは闇のゲーム。ならば必然、始める合図はアレと相場が決まっている。

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

 

Kurounin

4000

Kurounin

4000

VS

Yabusame Bogen 2035

4000

Yabusame Bogen 2035

4000

 

 うわっ、なんか変なの出た。VRAINSが広がってないか……???

 

「先攻はボクが貰った!」

「なんだと!?」

 

「カン☆コーン!」

 

 アブっさんがよく知る知らない効果音を出していた。どっから見つけて来たんだそれ……

 

「ボクは《疲れ切った現代人》をヤブサメの場に特殊召喚!」

「イェーイ……」

 

 困惑している間に、死んだ目をしたユーちゃんが俺の目の前に生えて来た。なぁにこれ。

 

「その効果によりヤブサメの場に、ボクのデッキから《密閉型ヘッドホン》を配置!」

 

「クッ、ヤベェゾヤブサメ。ヤツノエースガクル!」

 

「そうなの!?」

 

 振り返ると手に汗を握る表示でユーちゃんがこちらを見ていた。えっ、じゃあ俺の目の前にいる疲れ切ったユーちゃん is なに!?

 

「そしてボクは魔法カード《融合》を発動!

 素材にするのは『あまあまお姉さんボイス』+『慰めシチュエーション』+『素人っぽい声のお陰で感じる親近感』!!

 融合召喚!『ASMRハードオンドラゴン』!! 

 死ねぇヤブサメ! 2.4万ダウンロードによるダメージで!」

 

「イワァァァァクッ!?」

 

 LP4000→1600

 

 なんとなくノリで後ろへ向けて吹き飛ばされておく。ピロロロロ、ピンと聞こえないはずの精神力(ライフ)が減る音(2世代目)が聞こえた辺り、割と空気感に完全に呑まれた感があるな……

 

「グポーポン?」

《ハードオンってどういう意味?とマスターは仰っています》

 

「何も知らない方が幸せですよ、アブ」

 

「ポン?」

《中古ショップ……?とマスターは疑問に思っています。そのままの純粋さを守ってくださいね》

 

 危なかった、なんてコンボだ。男子は幾つになっても唐突な下ネタに弱いのだ。長男じゃなかったら耐えられなかった。別に長男じゃないけど。

 

「くっ、耐えましたか。ボクはこれでターンエンド!」

 

「ならば俺のターン! キングのデュエルは、常にエンターテイメントとかなんとか! 喰らえ禁じ手《バトルVIPパス》!」

 

「ポケカじゃないですか!!!」

 

 化け物には化け物をぶつけるんだよ!

 

「効果によりデッキから《距離感無視(バグ)・TS娘》と《距離感無視(バグ)手弱女(よわりめ)》をSS!」

「サア、コッチモエースノショウカンダゼ!」

 

 ユーちゃんの立場どこぉ! どこなのぉ!?

 

「くっくっくっ、疲れ切った現代人を残したのは失策だったなクローニン!」

「なんだとぉ……」

「俺は《TS娘》《よわりめ》《疲れ切った現代人》の3体でオーバーレイ!

 現れよ現代人の怠惰の象徴!《ASMR親友TSドラゴン》!

 俺の勝ちだ、4.3万ダウンロードのダメージを喰らえぇ!」

 

 趣味が合って、適当なファミレスとかでくだらない話で盛り上がれて、気楽に遊べるそんな親友。性別が違うならもうパーフェクトお得ってどっかの有名人が言ってた。本質で真理だと思う。

 えっ、クローニンをそういう目で?

 いやー、キツイでしょ。

 

「それはどうかな?」

「!?」

「ボクは己自身のナマモノ同人誌すら買った男、その程度でダメージなんか受けない!」

 

 クローニン LP4000→100

 

「チメイショウジャネーカ!」

「きついものはきつい!」

「ならばここで仕留める! 俺は手札から《RUM(ランクアップマジック)シチュエーション・フォース》を発動!」

 

 そう、俺が勝手に販売したクローニンのASMRは単品火力も高いがそれだけじゃない。うちのグループの謎コンテンツとしての歴史とシナジーがある!

 

「えー、ここでレビューから引用しますね。

 『☆5 えー、非常に質です。これ単品でも十分イイんですが、ふふ……下品、なんですが……以前VR系の大御所同人作家の出してた本とシチュが一致してましてね。慰め「わー!!」のシーンと声を合わせて「ぎゃー!!」使って「アウトー!」すると、めちゃめちゃに気持ちええんじゃ』とのことです。

 ランクアップ、セクシーズチェンジ!」

 

「最低なんだこいつ(ヤブサメ)!」

 

 弾バカが叫ぶ。知るか、勝てばよかろうなのだ!

 

「現れろ、《ASMR親友TSドラゴン─R18フェイズ─》!」

 

 ──性癖が、クローニンに急接近する。

 凄まじい濃度。

 クローニンは咄嗟に反応できない。

 

「ボクはリストバンドから《意志の力》*1を唱える! 打ち消し!」

 

 なんだと!?

 

「フラッシュタイミング、マジック《バタフライジャマー》*2!」

「させない! アーツ《カウンター・アクセント》*3

「《悪意の波》*4!」

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

 とんでもない打ち消しの空中戦を制したのは──誰?俺!などとふざけている間に、今度はクローニンが吹き飛んでいった。

 精神力(ライフ)をどれだけ削れたかは分からないが、これで、俺も致命傷だが間違いなく向こうも致命傷!

 

 勝った! 第3部、完!

 

 廻星歴308年 ○月X日 夜

 クローニン 死亡

 

 仁義なきテロップも流れた、やったか!?

 

「ポーポン」

《アレだけエクストリームカードバトルしてたのに、デュエマのカードなかったね……とマスターは落ち込んでいます》

ひんへん(深淵)ふぉ()ひゃひほり(焼き鳥)ふぉわらない(終わらない)ほひほうの(ご馳走の)ふはへ()──そう、私は流れ星」

「ナニイッテルノカゼンゼンワカラネェ!」

 

 しょんぼりしているアブっさんの隣で、どこか黄昏たような顔でFluoriteさんが笑い、ユーちゃんはフリーズしていた。ふっ、これは勝ったな。間違いない。

 

「デモヨォ、オレニモワカルコトガ1ツアルゼ」

「グポーポン?」

「ヤブサメノASMRツクッタクローニンガマケテ、クローニンノASMRツクッタヤブサメガカッタ。ツマリコレ、ジッシツヤブサメノマケジャネ?」

 

 ………反論、なし!

 

「勝者! ユーちゃん!」

「ブッピガァン!! ブッピガァン!!」

 

 倒れ伏した俺とクローニンを踏みながら、アブっさんに抱っこされたユーちゃんが強そうなポーズを決める。背後で弾バカが花火っぽい弾幕を作ってるのもあって、完全に勝利演出が完成していた。

 

ふっ、ユーの勝ちデース

 

 廻星歴308年 ○月X日 夜

 ヤブサメボーゲン2035 死亡

 

ふぉいうふぉふぉへ(ということで)ふゅーひゃん(ユーちゃん)ふぁ()ふわりひ(2人に)へいれいへん(命令権)()ふはれまひはは(生まれましたが)

 

「エッ、ジャアオレアレダワ。“アマアマシロウトオネエサン”ト“ゲンキTSムスメ”ノ、ダブルASMRトカキボウシテェ」

 

「「──がふっ」」

 

「ああ、クローニンとヤブサメが死んだ! この人でなし!」

 

「ケッケッケッ、キカネェナァ。ダッテオレ、AIダゼェ?」

 

 おっと。

 弾バカの流れからして大丈夫だとは思うけど、これは笑って流して良い部分かシンキングタイム。

 

「グポーポン」

《これがほんとの? とマスターは──》

 

「“ヒトデナシ”ッテナ!」

 

 心配して割って入ってらしきアブっさんの言葉に、ギャハハと楽しそうに笑いながらユーちゃんがハイタッチ。言葉にも態度にも、不穏な雰囲気や影はない。シンキングタイム終了。

 緊張状態も解けて良かったよかった、いやよくない(追加収録内容)

 

「グポン、ポーポン」

《ところで、ちょっと相談したいことあるんだけどいい? とマスターは仰っています》

 

 そうやってなんのために集まったのかも忘れた頃、思い出したようにアブっさんが手を挙げた。声も上げた。どっちが正解──いやいいか、肯定のサインとしてサムズアップを掲げておく。

 

 しかしアブっさんがそういう話題を持ってくるとは珍しい。

 大抵こういう流れは動画のネタが尽きたクローニンか、ゲームに誘う弾バカか、お食事か、ユーちゃんのお願い辺りだというのに。……俺も探索の誘い出してるからアブっさんだけだったわ、好き放題やってないの。

 

「ぐーぽん、ぽぼん。ブッピガァン!」

《3日後に徘徊ボスの3PT合同討伐に行ってくるんだけど、まだヒーラーか遠距離攻撃役が余ってるんだ。折角だし行く? とマスターは仰っています》

 

「ほむ。その条件なら、ボクかタマかヤブサメかの3択ですね」

 

 360°アブっさん=ヘッドを回転させながらの言葉に、むくりと起き上がったクローニンが答える。

 ユーちゃんは基本的に近接かアイテムでのサポート。Fluoriteさんは遠距離もやれるが基本はゴリゴリの近接系だ。そもそも外部への出張は俺たち向きである。

 

「魅力的なお誘いですが、3PT合同では満足な弾幕が撃てないのは明白。目標が弾幕ロボット系でもない限り私は──」

 

「ぴしゅーん……」

《ごめん、普通に生物系。ダチョウみたいなやつ》

 

「ふぅん、奇跡のアホに用はありません。ヤブサメかクローニンに譲りましょう」

 

 が、そうそうに弾バカの興味は失せてしまったらしい。聞く限り肉弾戦メインだろうボスだしさもありなん。今度いい感じに手数系の相手を見つけたら教えよう。

 

「となると、ボクとヤブサメどちらが多く報酬を貰えるかがキモですね。折角の出張なんです、情報漏洩に見合ったリターンは欲しいところ」

「ふぉー、へふはひふ(珍しく)ほはふぉ(長の)ひふは(仕草)

「しっけいな! ボクだって結構考えてるんですからね!」

 

 クローニンが手綱を握ってくれるから好き放題アバレアバレ出来る部分、あると思います。

 

「ポン、ポポーポン」

《報酬に関しては、検証班方式だって。ダメージ、回復、索敵、補助とか、一番やりやすい基準だから。とマスターは仰っています》

 

 ほーん。

 

 えっ? あっ(察し)

 

「ヤブサメ、Go!」

「イエスマム!」

「ボクは男だ!」

「デモオンナノコトシテアツカエバ……?」

「ボクは女の子だった???」

 

 そんな条件を出された以上、火力がそこそこ出せて、補助能力が特盛の、回復もやれないことはなく、索敵(探索)が本職の俺が出ないという択があるはずもなく。

 

「文字通りのターキーシュートです、掻っ払ってきちゃって下さい!」

「良識の範囲内でね……」

 

 そういうことになった。

 

*1
マジック・ザ・ギャザリングより

*2
バトルスピリッツより

*3
WIXOSSより

*4
アニマルカードゲームより




感想とか評価、お気に入り等いつもありがとうございます!

【ヤブサメ】
 霊長類最速のサルの名前を持ったスキルを装着している。

【アブっさん】
 友達とゲームで遊ぶのが楽しいという真理に気がついた。

【通りすがりの一般ダチョウ】
 脳みそがくるみサイズ、何でここにいるのか分からない。

【仁義なきテロップ】
 ゲーム内の歴史年表が[廻星歴]であることを始めて暴いた謎の存在。メインストーリーやってても知らない人が多い。

【謎の遊戯王風のポップ】
 ユーちゃんの仕業。トークンも。
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