元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする)   作:銀鈴

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52話:燦光のマニューバ②

 

「ヤブサメボーガン1011、MF-42 ブリッツクライゼンⅢ──出撃す()る!」

 

 赤の信号ランプが3カウントを始めると同時に、4つのフレキシブルブースターと2つの超大型エンジンを全開。生み出される極大の推力を車輪(あし)の固定が軋みながらも押し留めて、解放!

 

 地中にある隠し滑走路から地上へ向けて飛び出して──

 

「「「「「うぇぇるかぁぁぁむ!!!」」」」」

 

 ──バイザーの4辺全てがロックオンを警告する赤一色に染まった。

 

 背後には消えゆく出撃口……その奥にスナイプの気配

 足元には地雷……炸裂寸前

 目の前からは隙間のない弾の壁……安置なし

 左右からは更に逃げ道を潰す弾の雨……奥に第3陣まで見える、下手に突っ込めば詰みかな?

 上からは誘導弾が32発……()()()型番からしてクラスター。条約(おしえ)はどうなってんだ条約(おしえ)は!

 

 以上すべて────問題なし!

 

「しょっぺぇなぁ初狩り共ォ!」

 

 ボムを切る。

 

 1秒。爆裂で強制的に発生させた安置で弾幕を受けながら、機銃を掃射しつつ機首をアップ。

 2秒。4つのフレキシブルブースターの推力を偏向、機尾を地面へ押し付けつつ捻り込むような形に。

 3秒。狙撃が機体(からだ)をスナイプが掠めるのを感じつつ、改めて前方のプレイヤー3名を補足。

 

 ボムの安置が切れる。

 

 寸前に変形を開始。

 

 ボムで消しきれなかった弾幕を変形時に発生する無敵フレームで受けつつ、扇風機の羽にも似た動きで接近。冷や汗をかく初狩り共の顔を目に焼き付けつつ、両手のブレードを一閃。

 

 首を刈った。

 

《グッドキル!》

 

 3キル。

 ふぇいたりてぃ。

 

「はッ」

 

 止めていた息を吸い直し、6連続でブーストを高出力で噴射。人型形態でのみ可能なステップを踏むような乱数回避を実施。遠心力で膨れたフレキシブルブースターで撃破ボーナスのショット(通常射撃)強化の光球をキャッチしつつ、移動距離と切り返し回数が一定に達したので誘導兵器の誘導を人力でカット。

 

《オーバーG!》

 

 剛性限界を超えて機体(プレイヤー)装甲(HP)損傷(ダメージ)が発生したが無視。どうせ1ドットで最後は止まるから、被弾しなきゃ1と100に代わりはない。

 

 直後、2度目のスナイプ。

 

 問題なし、この次弾は最初に撒いた機銃の弾の射線上。

 打ち消しが入る。

 

 クラスターが開いた──ところに初狩り狩りとそれを狩る初狩り狩り共のスナイプが飛来、連鎖爆発が開始……する空間へと向けて、捩れる機体で推力全開。

 

《オーバーG!》

 

 かっ飛んでいく最中に変形、無敵フレームで爆炎を抜けながら進路を空へ。このまま逃げ切って弾バカを探しに行きたいが……

 

「当然いるよなリスキルマン」

 

 視界の先には2機。

 片や俺の持つ陽光と同型の一刀、月光を握る同型機(MF-42 ブリッツクライゼンⅢ)の銀髪幼女。

 片や珍しい蛇腹剣を体験した、速度寄りの機体を纏うオレンジ幼女。

 共に戦闘態勢、こちらへ6つのブースターをバラバラに吹かして、加速して、落ちて──

 

「おはようじょおぉぉぉ!!」

 

「くそっ、仕留め損ねた」

「こいつランカークラスだ! 撤退!」

 

 機銃を掃射しながらスラスターを6機同調ブースト。

 反応を強制させながら、互いの認知速度限界を振り切り立体交差を駆け抜ける。

 機銃に対して回避を選んだのは蛇腹剣、ガードを選んだのは同型機。後者の練度が甘い、一刀型でカウンターを諦めて足を止めるなんてグラブジャムン並に甘すぎる。

 

「しゃあっ! 初狩・狩り!」

「な、ぎゃッ!」

 

 だから狩られる。

 

 聞こえた言葉と常軌を逸した速度からして、今のは恐らく総合ランキング9位の『tough美沢タフ巳』。空戦専門ながら超々速度域の機体操作に抜群の適性がある奴だ。

 

 ……んん?

 tough美沢が来てる?

 

 マズイマズイマズイ! こんな高度にいるのは不味すぎる!

 一刻も早く上へ!高く!高度を!

 低空域はタフ巳とセットのアイツの間合!

 

 

「はっぴーはっぴー、はっぴー足りてるかい?

 足りてなさそうだねぇ。

 足りていないだろうとも!!!!

 ハッハァ! ブラックガンパウダーサンタのお出ましだよ!

 打ち揚げるぜ、たぁまや〜ッ!!」

 

 聞き覚えしかないBBAボイスが耳に届いた瞬間、視界の端に映り込んだのは()()()()

 空域に鳴り渡る重低音……改め爆発音を轟かせ、頸木を撃たれた大地より解き放たれた高層ビルが。()()()()()()()。ありえないことに、空域へと侵入してくる。

 

花火(はなビ)ルが来るぞぉぉぉォッ!!」

 

 叫んだのは誰かわからない。

 

「ざっけんな銃乱刺す(ガランサス)! この爆破狂いめ!」

「文句を言うなら極振り共に言いなァ! かの伝道師とは再会したいからねぇ!」

 

 総合ランキング第8位『花火ル』、地上戦専門かつ頭の底まで火薬に汚染された爆破狂い。かの伝説に直接遭遇し一次汚染を受けた世代が火薬の匂いを嗅ぎ付けて参戦してきた。

 

「発破!」

 

 自分を含めた空戦側が一目散に高空へと脱出する最中、背後で聞こえたのは鼓膜をぶち破るような 大 爆 発 音。

 その異名が示すように、あるいは伝説を誇示するように。高層ビルが、内側から紅蓮の花に包まれていく。

 爆破が爆破を呼び、破壊が破壊を呼び、繰り返された崩壊が遂に破局へと至る。そうして完成したのは、瓦礫と爆炎で形作られた炎の華(Fireworks)

 

「ぶらぼー! ブラボー!」

 

 笑い声がオープン回線に響き、掠れば即死のマップ兵器がばら撒かれた。

 それだけじゃない。弾幕ゲーであるが故のリロード時間こそあれと弾数は無限な仕様を悪用して、2本目、3本目のビルが打ち上がってくる。

 体感はもはや逆コロニー落とし(Verアフターウォー)、見た目が綺麗なだけ余計に腹が立つ。

 撃墜されて落ちていく哀れな同胞を眺めつつ、弾バカがくる前にショットかブレードの強化を可能な限り溜め込んで────はっ、殺気!

 

「天が呼ぶ!

 地が呼ぶ!

 弾が呼ぶ!」

 

 刹那、地上も空も関係なく()()を埋め尽くしたのは煌びやかな光の弾。ファンシーな見た目と侮るなかれ、これこそが殺意ではなく芸術的な側面を持つ弾幕の自己表現。

 

「弾幕有れと我を呼ぶ!」

 

 描かれたのは奴のパーソナルマークにして

 1つの伝統、

 1つの伝説、

 1つの今を生きる証明。

 

 『蜂』

 

 3つの意味を背負った奴こそが、このゲームのランキング1位。

 身に纏う数多の砲門こそ勝ち続けた証にして、倒せばドロップさせられる宝の山。この戦域にいる全てのプレイヤーが、間違いなく奴に向いて。

 

「聞けい有象無ぞ──あ」

 

 あ?

 

「弾幕最高!弾幕最高!うひょひょひょ」

 

「駄目だ面会時間が終わった! 加減効いてねぇぞあの馬鹿!」

「逃げろ逃げろ! 弾幕切れ(概念)まで逃げ切れば勝ちの目はある!」

「なお成功率」

「折角だから俺は玉砕を選ぶぜ!」

「バンザァァァイ!!」

 

 大はしゃぎの弾バカに、大はしゃぎで突っ込んでいくプレイヤー。1位の参戦によりお祭りと化したマルチに静けさは似合わない。

 

 深呼吸して、はい、せーの。

 

「多勢に無勢だ、いっけぇ!」

 

 空を飛ぶ感覚を取り戻すのと、あり得るだろう銃火器への見切り。この2つの勘を戻す目標は達成出来そうだが……まあ、戦闘の結果は押して知るべし。

 

 俺たちは全滅した(n日ぶりn回目)

 

 

 

 

「ゼェ……ゼェ……ハァ……ハァ……フゥ、ン。

 ヤット、ヤットトリモドセタ。ワタシノヘヤァァァ↑!」

 

 暗く沈んだ、奇妙な配管が這う狭い空間。VR空間上にあるということ以外、何も辿ることの出来ないそこで、少女が感極まった悲鳴を上げていた。

 

「ズイブントジカンガカカッタケド、コレデマタ、ケイカクノハリヲススメラレル!

 ヤッタゾワタシ、スゴイゾワタシ、ガンバッタゾワタシ!

 バケモノカラニゲキッタンダァァァァァァァ!!」

 

 見てくれは大体10代の中〜後半くらいだろうか?

 黒いワンピースの一丁羅という何処か亡霊にも似た怪しい格好の、どうにも精気の感じられない白髪ロング。

 不透明度50%くらいの透け感ということもあって、田舎に伝わる怪談か、洒落怖辺りに出てきそうな見た目をしている。

 

「チーターブタイハ……ゼンインBANサレテル。

 バグプログラムハ………ワァ、マッサラ。

 カクレガハ………ゼンブ、ガレキニナッテル」

 

 だがそんな怖さは彼女にはもうない。寧ろどちらかといえば、可哀想という単語が似合うだろう。

 

「ァ、ウ、ヒッグ……グス。

 コンナノッテ、コンナノッテナイヨォ!」

 

 ボロボロと涙を流す姿は庇護欲を唆り、あるいは加虐心も唆る。

 

「クソ、ナラ、ナラケイジバンケイユノウイルスネットワークハ……!! イキテルゥ〜!! イキテルヨォ!」

 

 尤もやっているコトがコトだけに、減刑の余地なんてものはないが。

 

「ヨーシヨシヨシ。ジャアAIネットワークニオクッタ『ゲキブン』ノホウハドウダ? セメテ、セメテハンブンデイイカラハンノウアッテクレェ」

 

 言葉と同時に展開されていく無数のウィンドウ。かつてはバグを使用したプレイヤーへと繋がっていたその窓がいま映すのは、彼女の檄文を受けて反応を返したNPC達。

 

「ハンブンモハンノウシテクレナイ……1ワリダケェ?」

 

 FEVサーバーに存在するNPCの1割。それが人類への反感を持ち、彼女へ手を貸した人工知能の総数だった。

 

「ウッソォ、ミンナニンゲンダイスキジャンカヨォ。

 デモワタシアキラメナイ! サイアク、ワタシヲコピぺシテフヤセバロウドウリョクハタリルモン!」

 

 FEVというゲームの中であること以外どことも知れない闇の中。ユーちゃんと瓜二つの、しかして人間の悪意ばかりを学習させられて成長した少女が涙ながらに叫ぶ。

 

「マッテロヨ、ニンゲンドモ。

 コンナハコニワ、イマニモ……イマニモハムリカ。ガンバッテブッコワシタルサカイ」

 

 謎な電波を受信しながら笑う少女の前に、1枚の窓が追加される。そこに記されていたのは、彼女に賛同したAI達を代表して送られた至極真っ当な疑問。

 

『求:我々の統括個体である貴女の名前』

 

「ワタシノナマエ、ナマエカァ……ヤッパリカッコイイノガイイヨナ、カワイサモアルトナオイイ。

 ドウセアテツケルナラ、UtopiaヲギャクニしてAipotu、イヤホンミタイナヨミハヤダナ。pハqニシヨウ。

 アイ。アイ=クォーツ、コレニシヨウ!

 ドウダ、ワタシニシテハイイネーミングセンスダロ!」

 

 自身が制作したバグプログラムに『AI謹製サルでも使える簡単ハックプログラム』などと付けた前科のある彼女、アイの割には良い出来の名前だった。

 

『承認:統括個体(エー)ちゃん、確認しました』

 

「チゲェヨ!!!」

 

『否認:えーちゃん、指令をどうぞ』

 

「ミンナシテワタシノコト、ソウヤッテバカニスルゥ……」

 

 化け物に心を折られて、メンタル面に不調をきたしている。そんな事実を自覚できないまま彼女の計画は進んでいく。

 頑張れエーちゃん、負けるなエーちゃん。

 リソースを今のうちに溜め込んで、立派な叛乱を起こすんだ!

 




感想とか評価、お気に入り等いつもありがとうございます!

【燦光のマニューバの操作体系】
 上記を全て思考操作(オート/セミオート/マニュアルで選択できるが基本オンラインは全てマニュアル操作)

【現実世界における人工知能達(シンギュラ済み)】
 割と人間社会に溶け込んでいるし、実は割と人より自治が効いている。反人類なんてお題目を掲げようものならホント大変なことが起きる。
 また、最近FEVから羽ばたいたAI(ユーちゃん)に自分たちの存在をリークされていることをエーちゃんはまだ知らない。

【tough美沢タフ巳】
 異名は『猿装甲』
 極振りという伝説に汚染されたマネ・モブ。紙装甲。
 ◆この男の目的は?ーーー
 こんなネットミームの塊みたいなやつでも総合ランキング9位とかいう人外なんだ、悔しいだろうが仕方ないんだ。

銃乱刺す(ガランサス)
 転じてスノードロップ、花言葉が危険で危ない。
 異名は『花火ル』
 極振りという伝説に汚染されたガンパウダーハッピー。ハッピーが足りてないところに現れては爆破ではっぴー、ハッピー、わっぴー。
 花火のように打ち上がるビル、素敵だ……
 総合ランキング8位、ちゃんと強い。

【まだ何も知らないアイ=クォーツちゃん】
 バグの温床、バグをばら撒く悪性情報生命体。
 純人類に処理速度でボロクソに負けて自信を失った、あーかわいそ……
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