元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする)   作:銀鈴

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53話:ユニーククエスト攻略戦(RTA)

 

[p.m.12:00(R(リアル))/p.m.12:00(G(ゲーム))]

[南部前線都市アウステル郊外・南部森エリア・簡易拠点]

 

「ではこれから[ユーちゃんプレゼンツユニーククエスト]の情報共有をしたいと思います」

 

 予定通り全員が時間を作れた週末。

 かつてユーちゃんと遭遇した墜落した宇宙船の手前にて、俺たちは黒板を眺めていた。一体どこからクローニンが調達してきたのかは分からないが、なんだか随分と懐かしい気がする。

 

「まずはボク達が攻略しにきたユニーククエストの詳細がこれです。いつのまにか伏字が解かれている部分があるので、改めて確認してくださいね」

 

【特殊クエスト】ス█ーピ██・サ██イズ

  推奨平均Lv 50(中断中)

 〈目標〉

 ・墜落戦艦フツ???最深部への到達

 ・?????

 〈報酬〉

 ・?????

 ・特殊任務賞金

 【警告】

 推奨平均レベルにパーティのレベルが及んでいません。

 このクエストは1度辞退した場合、再度挑戦できる保証がありません。

 

 コンコンと手に持った杖で指した先にあるのは、思っていた以上に伏字が消えていたクエストの受注画面。

 前回全滅した時点で失敗扱いになっていると思っていたせいで気付かなかったが、いかなる理屈か催促か、不明だったクエストタイトルまで予測可能な範囲になっている。

 

「しましたね? 続けますよ。

 このユニーククエスト仮称:スリーピング・サンライズですが、ボクらが発見してからかなりの時間が経っていますが、いまだに未クリアのユニーククエストになっています。

 理由がわかる人ー!」

「ぐぽん!」

 

 クローニンの質問にピンと聳え立つ1本の手。元気な返事を返しながら、アブっさんが答える。

 

「ぽっぽー!」

《レベル不足と再挑戦確認ミス、とマスターは仰っています》

 

正解(エサクタ)!」

 

 突っ込まない、ツッコミはしないぞ。だからユーちゃんもそんな目で見ないで欲しい。あとFluoriteさんはそろそろ千切ったPKプレイヤーの指しゃぶるのやめない? やめない、そっかぁ。

 

「ボクら同様に全滅後の確認を怠ったプレイヤーが複数いたのは事実です。が、それ以上に推奨レベルと出てくるモンスターの乖離が激しいことか問題でした」

 

 そう言いつつ黒板に投影されたのは、過去と現在の俺たち及び敵である徘徊ボスの暫定ステータス。

 

 

 【クローニンと愉快な仲間たち】

 ・クローニン   Lv 29 →49

 ・ヤブサメ    Lv 36→50

 ・アブっさん   Lv 34→51

 ・ユーちゃん   不明 → 49

 ・弾バカ     Lv 32→50

 ・Fluorite     Lv 31→46

 


 

【The Heavenly will‐o'‐the‐wisp】

 HP:平均2000

 MP:平均3500

 SP:平均1000

 Str:平均50

 Int:平均200

 Vit・Min:平均250(部位平均)

 Agl:平均50

 Dex・Luk:不明

 攻撃耐性:なし 異常耐性:即死無効

 弱点属性:光

 弱点部位:頭部内にある光源兼眼

 

 

「見ての通り、あるいは覚えている通り、硬くて鈍くて火力の高い浮遊砲台みたいな徘徊ボスです。これが複数体出現して、プレイヤーの探索を妨害・足止めしてきます。

 なお第一階層においてこの鬼火は、徘徊ボス扱いでなく通常mob扱いで出現します。足が止まればmobが湧く、当然の理屈でボスが湧く。いこーる、前と同じで数で圧殺されてGame Over不可避というわけですね」

 

 参考映像として黒板に投影されたのは、動画投稿サイトにアップされた他のプレイヤーの挑戦動画。1体目と戦っている間に乱入が重なり、最終的には画面内だけで10体はボスの姿が見える。

 なるほど今の自分たちであれば、多少の時間さえあれば倒せる相手だ。ただしそれは1体を相手にした場合に限るし、その多少の時間で無限に増援が湧いていくると。どうしろと?

 

「現時点に於いて判明している後続()()()()の条件は、このBF1階層にプレイヤーが5分間滞在すること、或いは一定以上の艦内情報を獲得することの2つ。

 前回はヤブサメのバカ広い範囲探知と、情報そのものなユーちゃんの存在で即座に圧殺が始まったわけです」

 

 直後、自分が手を挙げたのと同時に天を指す半透明の手。流石ユーちゃん、考えていることは同じらしい。

 

「センセー、ソレジャアコンカイモアッサツサレテオワリジャナインジャナイデスカー!?」

「前回より探知範囲広がってるので、多分即死案件なんですけどー!」

 

「はい、そこ静かに」

 

 まだ話している途中だと質問を遮られる。ズルい先生だ……

 

「即死ギミックであると同時に、BF2階層へ侵入する条件の1つに[一定以上の艦内情報]を収集することがあります。

 BF3、BF4への侵入条件も同等で、クソデカマッパーが1人いれば地下4階までは半ばギミックを無視できる。これは検証班で実験済みです。ハイリスクを背負いますが、ハイリターンも確約されてるわけですね」

 

 再び黒板に投影された他のパーティの攻略動画。

 マッピングをスキップする検証班の動画と四苦八苦する一般プレイヤーの動画、見比べればどちらが良いかは明白だった。

 

ほむ(ふむ)へはほはほひょーへん(では他の条件)()はっへいふる(達成する)はへへ(だけで)ひひと(いいと)

 

「その通り!

 ということで、現在いろいろなプレイヤーが攻略を失敗している到達最深部。第4階層までのチャートを組んできました。

 本当は楽しんで攻略したかったんですが!

 で! す! が!

 ユーちゃんがなるはやでと言うので納得してくださいね、特にタマ」

 

「ふへ、ふへへ、だんまく……弾が沢山、水星みたいに……」

 

「処方箋が効いててヨシっ!」

 

 明らかにメインギミックに弾幕成分が入っている都合上、弾バカはこんな効率至上主義なダンジョン攻略には反対する筈だった。

 

 だが、今は違う(ギュッ)

 

 自分の感覚を取り戻しがてらリンパをハッスルしてきたお陰で、未だ奴の頭は夢心地。ちゃんと手を引いて歩かないと、真っ直ぐ歩けないほどの酩酊状態だ。まだ騙せる。

 バカの日常生活? 奴も社会人、自分でなんとかするだろう。

 

「そんなにマジ急ぎ案件なの? ユーちゃん」

「ワタシマジョノキキ! コノアンケンハ、オレトイウソンザイノソンボウノキキ!」

「わあ一大事(いちだいじ)

 

 そこまで切羽詰まった話だとは思わなんだ。

 もしかしたら週末に実行が移るのすら問題だったのでは?(名推理)

 

「──ということで。

 まずBF2階への侵入条件ですが、データ収集以外には1つだけ。2箇所に分割して設置されたスイッチを60秒以内の誤差で押すこと、押し続けても構いませんがこれだけです」

 

 ユーちゃんと雑談をしている間にも話は進んでいく。

 今度クローニンの黒板に表示されたのは、既にほとんど完成している長方形のマップ。真ん中の赤いピンが落ちているところが初期位置ということだろう。

 

「マップは複雑ですが、注目するべきはここ。初期位置を通るU字の通路だけです。

 それぞれ通路の終端までの距離は300mと400m、その地点の中空1500mmの場所にスイッチの当たり判定は存在しています」

 

 なるほど、話が読めてきたぞ?

 

「つまり俺が、初期位置からそれを【精密狙撃】で撃ち抜けばいいと」

「はい。無限湧きの1匹目が出現するまでの時間、階層への侵入から100秒以内にお願いします。そこまではマップに障害となるmobはいないので」

「らじゃっ」

 

 難しい条件だが、それでもリンパをキメてきた今なら不可能な条件ではない。新設計により完成したマイニューギアとマイニュー矢'sが揃っている今、希望は(ここ)に満ち溢れている。

 

「ン? タシカ、オオユミッテ“サイダイシャテイ”300mジャナカッタカ?」

「くっくっく……よくぞ聞いてくれたユーちゃん。見るがいい、この新しくなった弓を!」

 

 見なよ、俺のマイニューギアを。

 取り出したるは、俺自身の背丈を大きく超えるメカメカしい巨大弓。しかもただの大弓じゃない。ド級の大弓、弩弓である(大嘘)

 

「ぶ、ブッピガァン!」

《か、カッコいい! とマスターは理解できないことを仰っています》

 

 弓のリムはX字に重なった1対、弦は当然撚り合わされたアエテル弦、足元にはデカすぎるサイズを支えるバイポッドが1対ずつ。それでいて弓を引くのは己の力のみという縛りを課せられた、城を破壊する為の攻城兵器。その()を──

 

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【BrA-446Ex:ライオット】

 武器種:大弓/破城弓 属性:なし

 耐久値:800/800

 性能 :Str+200 Dex+50 Agl+10

 条件 :基礎Str150以上

 スキル:耐久値自動回復

     無機物・対霊特効(大)

     射程延長(大)

     クリティカル率増加(中)

 強化試行回数:8/10

《詳細》

 正式名称:局地戦用携帯型変形破城槌弓446號。旧中央旗艦防衛軍が戦争の末期に開発した人類の希望のための兵器、その初期型。あるいはプロトタイプ。

 一般的な人類には弓を引くことすら能わぬ強弓だが、正しく扱うことの出来る者の手にあれば城すら撃ち抜く比類なき矛と化すだろう。

 軍の装備の系譜なだけあり、機械チックな見た目であるが耐久性や整備性は抜群。実際の戦闘記録においては、弓ではなく鈍器として扱われた記録の方が多い。

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【BrA-446Ex:ライオットM】

 区分:矢筒(アクセサリー)

 耐久値:800/800

 装弾数:50/50発(5種)

 スキル:耐久値自動回復

     装備位置固定/衝撃減少補正

     ストレージ連結装填(3種)

《詳細》

 BrA-446Ex:ライオット用の大型矢筒、そのサイズから当時はスケートボードと揶揄されていた。なお公式記録においては弓ではなくこちらに撃破記録が1つ存在している。

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【通常矢】

 ダメージ倍率:100%

 飛距離倍率 :100%

 弾ブレ   :ほぼなし

《詳細》

 極めて一般的な矢。

 金属の鏃、木製の基礎、鳥の尾羽より成る。

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【剣状矢(小・中・大)】

 ダメージ倍率:300%/400%/500%

 飛距離倍率 :50%/25%/10%

 弾ブレ   :小/小/中

 《制限》

  大弓以上限定

  Str:80/100/150以上

  矢筒装弾数:5/3/1

  スタック制限:20/10/5

《詳細》

 何処かの馬鹿により生み出された〈矢〉区分の〈剣〉

 比類なき破壊力を持つが、その分おおきな制限が掛かっている。

 =================================

 

 ──ライオットシリーズ。

 矢の改良も含めてパーフェクトだ店主……

 スキルを重ねがけすることで火力を出せない構築の身においては、矢と装備の質と縛りで可能な限り火力は盛るに限る。

 

「ウットリクネクネシテルトコワリィケド、オレタチソノセイノウシラネェンダワ」

「最大射程1キロ。因みにステータスは達成済み」

「バケモンジャネェカ」

「いえい!」

 

 勝利のVサインを掲げる。

 剣状矢のデメリットは最大射程から算出されるため、一番デメリットの重い大サイズでも100mは飛ぶ。イベントで配置されていた大型弩級と同等の飛距離だ、況んや通常矢ならである。

 性能なんてやっぱりあればあるだけいいに決まっているからね、資金は犠牲になったが。

 

「一応【跳弾】スキルと《跳弾矢》は両方持ってるので、狙撃自体はやるぜやるぜ俺はやるぜ!!」

 

 最悪、矢に爆発属性でも付与してもらえればなんとでもなるだろう。不本意だから1発目で撃ち抜きたい所存ではあるものの。

 

「さて!

 ヤブサメの元気も十分ですし、2層3層についても詰めてから──一丁洒落込みましょうか、RTAと!」

 

 そうして、理論上5分に満たない最速の攻略が始まるのだった。

 




感想とか評価、お気に入り等いつもありがとうございます!

【ヤブサメ】
 所持金──マイナス138,900G

【クローニン】
 めちゃくちゃ予習した

【アブっさん】
 可変する巨大機械弓、惹かれないわけがなかった。

【弾バカ】
 頭がぱちぱちしている

【Fluorite】
 その日、PK達は思い出した──自らが、喰われる側の存在だということを
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