元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする) 作:銀鈴
余韻というには暴力的すぎる気もしましたが。
#RTA #ユニーククエスト #攻略配信
【FEV】ユニーククエRTA6人縛り【未攻略クエ】
世の中には生主、
このVR全盛の時代に於いて、それらは1つの職業として確立した。といはえクローニンにとっては副業でしかないし、俺たちにとっては
まあ、今回の本題はそこじゃない。
本来やるつもりのなかった配信をすることになったのは、そもそもの発起人であるユーちゃんの提案からだった。
『ドウセナラヨ、ハイシンモヤラネェ? セッカクRTAスルノニ、キロクニノコサネーノハヤボッテモンダロ?』
確実に何か裏のある提案だった。
明らかにユーちゃんは隠し事をしていて、まるでレポートの提出期限が半日後なのに真っ白だった時の友人みたいな覚悟を決めた顔をしている。
まあこっちに被害は来なさそう……正確には配信するせいで
「ユーちゃん」
「ハイ、ユーチャンデス」
「少なくとも俺は、そう簡単に友達を見捨てはしないから」
別に何でもかんでも胸筋を開いて話して貰いたいとは思わない。それでも、もう少し信用してくれてもいいんだぞと遠回しに釘を刺しておく。
ここまで巻き込んでおいて何も知らないでいるのは、流石になんとも据わりが悪い。
「イ、イキナリドドドドウシタンダヨソンナシンミョウニ」
「いーや、何でも。言っておきたかっただけだから」
一方的に言いたいことだけ伝えて、改めて破壊弓を握り締める。
くっくっく、ユーちゃんめ。貴様にもなんか微妙に決まりがわるいモヤっとした気分を味わってもらおうか。
「ナニ、ナニヲォ!」
「オレオォ!」
「ナンノ、キョトウヲォ!」
「アイエェ!!?」
などというのは建前。
雰囲気をぶち壊すための茶番だったが成功したらしい。
1人だけなんかシリアスな空気をしていたが、ようやくユーちゃんも普段の調子に戻ったようだ。
これでいいんだよこれで、俺たちの空気感なんて。
「ヤブサメ、ユーちゃん! 配信始めます、準備はいいですかー?」
「「はーい!」」
「なにが好──「ブッピガァン!」
《アウトォ! とマスターは叫んでいます》
そう、ここはユニークダンジョン入り口。
なんか後方で弾バカとアブっさんの殴り合いが始まったが、ユーちゃん関連のユニーククエストの攻略をエンタメする(動詞)配信RTAの直前った。
「それじゃあ開始まで3!」
立ち位置確認ヨシ。
調子は上々。
ユーちゃんは隣にいて配信枠を開いている。
「2!」
クローニンはアブっさんのボディの上で配信画面を開いていて、頭パチパチ状態の弾バカとお口もぐもぐ状態のFluoriteさんが直掩に着いている。
「1!」
万事、予定通り。
あとは俺とユーちゃんがミスさえしなければ、ユニークダンジョンの4階層──つまり現時点で判明している最下層へ、5分とかからず到達できる筈である。
「はい、よーいスタート」
じゃあ俺ギャラ貰って帰るから……などと出来るはずも無く。棒読み極まるクローニンの声と共に走り出した。
:草
:兄貴式の見慣れた分割すぎる
:きったねぇ挨拶助かる
:何が始まるんです!?
「ボクらが発見してしばらく放置していたのに、誰もクリアしてなかったユニーククエストのRTAはーじまーるよー」
背後から聞こえる大地を削る履帯の駆動音とテンプレートに添いつつ煽りまくるクローニンの配信を聞きつつ、配信映えを考え床→壁→天井→壁と4点飛びをしなからダンジョンの階段を駆け降りる。
「レギュレーションは6人PT式、計測区間はさっきのダンジョン侵入から4層の到達まで。5層以降は配信禁止の可能性も考えて参考記録としておきましょうか。
(先駆者兄貴は存在し)ないですので、恐らくこれが世界記録です」
:あーもう滅茶苦茶だよ
:なんでRTAのためにホ○ビ履修しなきゃいけないんですか(困惑)
:◆突然のRTA、この男の目的はーー
:女の子やぞ
:男の娘やぞ
大盛り上がりのコメント欄を横目に、階段を下り切ってBF1階層に着地。
常時起動となっているサーチが爆速でマップのデータを取得し、半径200m内の全ての情報がミニマップと視界に映し出された。
宇宙船の館内にも似た近未来的造形のダンジョンに、しんと静まり返った空気。ユーちゃんと出会ったあの日のまま、鋼の迷宮は鎮座していた。
「ユーちゃん、探知外のマップ構成は!?」
「イジョウナシ、ジゼンノジョウホウドーリダゼ!」
少し感慨深くなった思いは一旦横に置いておいて、狙撃予定ポイントまで一直線に急行。
「第1階層の突破条件は一定以上のマップデータの取得と、2箇所に分割して設置されたスイッチを60秒以内の誤差で押すことになります。また5分以上この階層に滞在すると、
ちょっと待ってなにそれ聞いてない。
:ほんとに地獄で草も生えない
:だからクリア者がいないんだよなぁ
:面白い配信が始まったと聞いて FEV検証班代理ちゃん
:実際クリア者ってほんとにいないの?
:今朝の時点まででは確実に0人ですね FEV検証班代理ちゃん
地面を削りながら静止。
ポイント到達よし、部屋の左右から繋がる通路はよく見える。破壊弓を展開、狙撃態勢に入る。
「ふぅ……」
深呼吸をひとつ、精神を統一。
風ひとつない凪いだ水面のように、透明な心で矢をつがえた。
「【精密狙撃】、起動」
さぁっ、と一気に他の音が遠ざかっていく。
聞こえるのは自分の息と、弓の弦が鳴く小さな音だけ。距離は予定通り、弾速と威力は計算済み、あとは狙うべき軌道を過たずに射抜くのみ。
「
一射目。
使うのはあえて【破城弓手】でも【剛弓】でもなく、尤も消費の軽い【大弓】のスキル。
X字の巨大なメカニカルな弓はズドンと到底弓とは思えない轟音を響かせながら、理想と寸分違わない軌道で鉄パイプサイズの矢を弾き出した。
:バカみたいな格好の奴が、馬鹿デカい弓で、馬鹿みたいな音出して、馬鹿みたいな太さの弓を発射した……
:つまり馬鹿ってことだな?
:間抜けは見つかったようだな
「カウント3、2、1!」
「【跳弾】、【精密狙撃】、
ユーちゃんのカウントを聴きながら、タイミングを合わせて【跳弾】と【精密狙撃】のスキルを再起動。先ほど撃ったのとは反対の通路に向け、
:しかも連射できるのかよ……
:おは青峰
:跳弾スキル? もしかして矢も? 射程不足……も、ない? なら、え、理論上は全然可能? え、えぇぇぇ!!?FEV検証班代理ちゃん
:どうした急に
万事想定通りの結果を見届けることなく、バク宙しながら後退。最後にハンドスプリングの要領で跳ねてアブっさんの盾に着地する。結果が出るまであと10秒。
「ですが侵入から100秒の間はモンスターのポップがありません。
その為、空白の100秒間の間に500m先の目標スイッチを撃ち抜くことで時間を大幅に短縮できます」
カウント0。
クローニンの説明が終わると同時に、俺たち6人全員の身体が光に包まれる。動画で予習した転送の前兆だ、問題なく矢は目標を撃ち抜いたらしい。
:──────は?
:まだ30秒経ってないんですけど(困惑)
:忘れてた、この人たちチュートリアルの最速記録持ってるんだった FEV検証班代理ちゃん
:さらっと異常技巧やめてもらえます???
「「いえーい」」
ユーちゃんとハイタッチしながら転送される一瞬の浮遊感に包まれ、視界が暗転。
次に目を開いた時、宇宙船の船内じみた1階層とは大分様子の違った場所に俺たちは立っていた。
「さくっとBF1層を突破して、続いてはBF2階層。通称ショッピングモールの攻略と洒落込みましょう」
クローニンの語りと事前の情報通り、大型ショッピングモールのような空間に俺たちは居た。
巨大な吹き抜けの中心、四方に積み重なった天まで届く豪華なショップが立ち並ぶ風景はまさに摩天楼と言っても過言ではない。
「この階層に出現するのは、無限湧きの雑魚ボスとギミックボスの2種のみ。
BF1階層のギミックでパーティを二手以上に分割されて到達する筈のここでは、本来なら第1段階ギミックである分身体との追いかけっこ兼戦闘を始めることになります」
しかしそんなギラギラと輝くネオンの中、一際異彩を放つ物体がショッピングモールの中に鎮座している。
それは無数の荒縄と札を以て宙へ留められた謎の結晶体。
外の弾幕祭り、BF1階層のSFチックな雰囲気とは打って変わった、因習村の儀式めいた不穏な気配を放っていた。
:テーマパークに来たみたいだぜ、テンションあがるなぁ!
:アレ絶対ボスだマコ
:ガコン!!
いま絶対何か聞こえたよ(幻聴)
「ですが、ボクらのようにパーティ全員でまとまって転移してしまった場合、分身体との追いかけっこはスキップ。
このように、合体阻止のための戦闘不可、本来できる筈だった削り不可、ボス側が100%の状態でギミックボスと相対することになる訳ですね」
そして不穏な気配を裏切ることなく、謎の結晶体目掛けて四方から汚泥のような物質が飛来する。
捕食、そう言い表すのが自然に思える形で汚泥は結晶を喰らい、飲み込み、新たな形を作っていく。
「ギミックボスの内容はHP/耐久値なしの和マンチ殺し。
第一段階における戦闘内容でスペックが決定し、最大性能の場合はレイド蜂を上回ると計測されています。
鈍足設定されてるAglだけは有情ですが、事実上ギミック攻略以外で突破不可能なゴーレムになります。まあ、BF2階層の突破条件も兼任してるんですけどね。初見さん」
:うおっ、キモっ
:あれを6人とか無理では?無理だよ
:BF2の突破要件はボスギミック攻略とマップデータ収集になっています FEV検証班代理ちゃん
:でもギミック飛ばしなんてロクでもないマコ
:大半が初見なんだよなぁ
:情報量が多過ぎるっピ!
「ちなユーちゃんはアレなんだかわかる? あの泥」
「アレハ、セイハイノドロ……マッテマッテチャントコタエルカラ、ソノユミムケンナコエェンダヨ」
こほんと咳払いをして、ユーちゃんがカッ!と目を見開いた。
間近で見ると、瞳の奥に無数の数字が流れていくのが見える。凝ってるなー、色々と。
「──ヨシ、ダウンローデッド。アレハ、アレダ」
「そっかアレかぁ」
「ボウソウシタジコシュウフクガタナノマシンノカタマリ、ジジツジョウノバンノウソザイッテヤツダナ」
「へー」
「モウチョットキョウミモッテクンネェカナァ! ワザワザキイタンダカラ!」
ユーちゃんの半透過パンチ!
頭を掻き回されるがノーダメージ!
:画面端でとんでもないことが起きてるんですけど
:──腕が、刺さっている。本来刺さってはいけない場所へ
:芝刈り機ってネタ昔あったなぁ
:微動だにしてないんですけど(畏怖)
:さらっと重要な設定話してる…… FEV検証班代理ちゃん
頭を空っぽにして脊髄反射のおしゃべりに興じている間に、気が付けばボスの形は大分完成形へと近付いていた。
頭らしき部分があり、四肢らしきものがあり、二足歩行で立っている。
中途半端に生物らしい無機物というべきか、下手くそな泥人形と言うべきか。ボス特有の名前すら表示されない巨体こそ、クローニンの説明が続くステージギミックの顕現だった。
「4体の分身体を吸収した大ボス、通称『五体合体スワンプエンペラー』の降臨です。圧巻ですね」
:あの、ネームタグが出てないんですが…
:実はシステム上はステージギミックなんですよねこのボスFEV検証班代理ちゃん
:四体合体スワンプオージャー!
:三体合体スナバキング!
:二体合体ユウカ(岩タイプ)
:スワンプゴーレム(システム識別名)
:「「「「「我ら!!」」」」」
:二体合体だけ何があったんだよ
:イ シ ヘ ン ジ ン
「理不尽な性能ですが、攻略ポイントは極めて古典的です。
頭部に格納されている『אמת』の文字にダメージ判定を発生させ『מת』に変えること。簡単ですね。
なおこの際必要なのは『直撃』の判定であって『ダメージ』そのものではなかったりします」
体表の波打っている感じが治ってきたので、そろそろ出現時特有の無敵時間も終わる筈。ボスの体長はおおよそ20m、普通のプレイヤーなら頭まで辿り着いて攻撃を当てるなんてことは至難の業に違いない。
だがしかし
なんと、
今回に限り……!!
「アブっさん、カタパルトお願い!」
「シュー!」
新効果音!?
「
射出した尻尾のワイヤーをFluoriteさんの混天截の先に引っ掛け、アブっさんの形作る大盾の砲身の中へ潜り込む。そのまま、ワイヤーの巻き取りとFluoriteさんの投げ込みの勢いで──
「ヤブサメ、行きまーす!」
「オレモイルケドナ」
──飛び出していけモールの彼方ぁ!
一気に空へと飛び出した。普段ならここから羽根を広げてグライダー√だが、今日この場においてそんなことをする必要は、ない!
:嘘でしょ、バタバタ鳥人間仮面(半裸)GIFの人こんなヤバい動きするの?
:ピンポイントで張られる力場魔法っぽい足場の精度バケモンじゃね?
:ちょっと待ってなにそのGIF
:これっ【GIF】
:【GIF】
:【GIF】
:【GIF】 FEV検証班代理ちゃん
到底許されることではない光景がコメント欄に溢れているが一旦シャットアウト。
弾バカが出してくれた足場をバレルロールしながら駆け抜けて、引き戻した尻尾のアンカーを再発射。天井に引っ掛け引き戻しを掛けて急加速、スワンプエンペラーの頭を飛び越えたところで身体を固定。
逆さ吊りのまま矢を引き抜き、ユーちゃんにアイテムを塗布して貰ってから弓に装填!
「ということで、ヤブサメ! Go!」
指示と共に飛来する数種類のバフ、これで準備は整った!
「喰らえレイドボス戦のバリエーション!
SPの9割を代償に解き放つのは、矢によって作られるゲリラ豪雨。
指に挟める限界
次に技《剛弓・驟雨》の効果を受け1本が20本に分裂──計240本。
今回は威力が不要なためダメージ判定は最低保証。
代わりにクローニンから飛来したバフ及び4種のアイテムによって付与された、累計6種の状態異常判定と【剛弓・杭貫】の判定が行われる。
結果、何が起きるか?
「はい、これでスワンプエンペラー撃破です」
半分は判定に失敗したものの、100本は下らない極太の鉄杭に貫かれた頭部だった場所がその証明だった。
魅了、裂傷、火傷、凍結、Str低下、Vit低下の状態異常がスタックの最大限まで。杭貫の効果による重量による物理的拘束を含めた、デバフ盛り盛り森鴎外なパーフェクトコンボ。
一目瞭然の惨劇だった。
:うっわぁ……
:まだカップラーメンも出来ないんだが???
:文字はこれ、いえ、なんでもないです
:弓使いってみんなこれできるの?
:出来る訳ないだろ、と検証班が言っています FEV検証班代理ちゃん
うーん、パーフェクト!!