元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする) 作:銀鈴
「グポポーン」
《2人はどうしてここに? とマスターは仰っています》
斯くして一堂に会した人型、弾、半戦車という異形のトリオ。周囲の視線を一手に集める中、一番最初に口を開いたのは†
「俺は南への遠征帰りでデスペナ中です」
「私は北のボスと遊んだ帰りでデスペナ中ですね!」
「ぐぽーーん」
《僕も西の徘徊ボスと30分殴り合ってデスペナ中、とマスターは仰っています》
全員が揃いも揃って単独でボス格に挑み、当たり前に負けてデスペナを食らっていた。MMOなのに。馬鹿か?……馬鹿だったわ。
「へぇ……ということは、アブも前の時とビルドは同じですか。私も、おそらくヤブサメもですが」
「ぐぽん」
《変わらず反射ダメージ型タンクだよ。引き継いだ資金で装備は揃えたんだ、とマスターは仰っています》
PN:†絶対の楯戦車†
称号:守護者
種族:ゴーレム(重装履帯)
Lv:17 所持金:0G
【ステータス】
HP:185+75
MP:98
SP:78
Str:30 Dex:5
Vit:40(104) Agl:20
Int:5 Luk:10
Min:40(103)
【スキル】
《チャージⅡ》《カウンターストライクⅢ》
《HP自動回復Ⅱ》《近接ダメージ反射Ⅱ》
《挑発Ⅲ》《HP増加Ⅱ》《大盾Ⅲ》
《被ダメージ軽減Ⅲ》
【装備】
胴:鉄製追加装甲(Vit+25)
右手1・2:大盾〈凄惨な牙〉(Vit+28 Min+12)
右手3:
左手1・2:大盾〈希望の星〉(Min+26 Vit+11)
左手3:
腰:魔法減衰装置〈中〉(Min+25)
アクセサリー(0/8)
壁役にも物理特化や魔法特化、回避盾など色々あるが反射ダメージ型タンクもその一種だ。
即ち相手の攻撃を受け止め続け、反射ダメージを主体として戦う堅牢な盾役。自分からの攻撃手段がほぼ無い代わりに、育てばフィールドボスすら単騎で撃破できるタイプの
「“私も”ということは、弾バカはやっぱり?」
「バッチバチです。ええ、当然《弾幕魔法》引き継いで、魔力にほぼ全振りの超特化型アタッカーですよ」
PN:)3^<<l+I!βд7!
称号:大物喰らい
種族:ウィル・オ・ウィスプ
Lv:19 所持金:670 G
【ステータス】
HP:33
MP:272+100
SP:65
Str:0 Dex:3
Vit:5 Agl:10
Int:89(102)Luk:15
Min:39(40)
【スキル】
《弾幕魔法Ⅲ》《障壁魔法Ⅲ》《MP増加Ⅲ》
《MP自動回復Ⅲ》《MP消費軽減Ⅲ》
《SP変換:MPⅡ》《弾幕拡張Ⅲ》
《知力強化Ⅱ》
【装備】
右:
左:初心者のハーモニカ(Min+1)
アクセサリー(7/15)
・知力の指輪(Int+5)
・弾種追加/操作弾(2枠消費 Int+2)
・弾種追加/追尾弾(2枠消費 Int+2)
・弾種追加/炸裂弾(2枠消費 Int+2)
いわゆるグミ打ちから綺麗な図形を描く弾幕ごっこ、単純な集中砲火までMPさえあれば可能な弾幕魔法。障壁魔法に関しては弾幕ゲーのボス特有の耐久シールド再現。
端的に弾幕ゲーに特化した構築となっていた。
下手なタンクであれば、受けた瞬間溶ける勢いのダメージを誇りつつ、障壁魔法によって防御面も恐らくそれなり。正直戦いたくないタイプだった。
「ぐーぽん」
《バリアと弾と自己回復しかなくて草、とマスターは仰っています》
「もう最早『弾バカ』を通り越して『弾』でいいんじゃないですか?」
「バカが消えて賢くなるじゃないですか! やったぁ!」
多分ガッツポーズをしているのだろうが、光帯の回転速度が上がったようにしか見えなかった。ピロピロなり始めたハーモニカは登場BGM兼、戦闘BGMを流す為の趣味装備らしい。
「で、ヤブサメはどうせ探索特化なのでしょう?」
「当たり前なんだよなぁ」
一応ゴリラぢからもあって、中〜遠距離物理アタッカーとして動けるビルドだがメインは探索だ。
罠系を見抜くスキルを入れれば斥候役も、もう少しステータスが伸びれば狙撃主体もやれなくはない。まだ当分先の話になるが。
「それで探索失敗してたら世話ないですね、自然バカ」
「何か言いましたか? ボスにボロ負けした弾幕バカ」
「お?」
「あ?」
気楽に煽りを煽りで返し、お互いに胸倉を掴もう──として失敗。お互いに頭……頭?らしき場所を激突させた。光る弾に胸倉は存在しないし、光る弾に胸ぐらを掴む腕は存在しない。うーん異種族バッドコミュニケーション。
「くぽ!」
《喧嘩はよくない、とマスターは仰っています》
「大丈夫ですよ、いつものじゃれあいなんで」
「7割くらいは冗談ですよ、ねえヤブサメ!」
「応ともさ!」
無論、残る3割は本気だがしっかりと頷きサムズアップ。つい数瞬前のことも忘れて腕を組もうとして──再びお互いに空振りした。……種族差、思ったより深刻かもしれない。
「というか、ずっとスルーしてましたけどアブっさんの声って何でそんな起動音になってるんです?」
「あ、それ私も気になってました。何をどうしたら会話を支援AI任せに?」
「グポーン」
《どうしても6腕下半身タンクをしたかったから、リソース確保のために捧げてみた。と、マスターは仰っています》
それは異業種プレイヤーにのみ発生する縛りの1つ。腕が20本あるキャラクターがいるとして、20個の武器の能力や防具の能力を全て適応してはバランスも何もあったもんじゃない。故に何かを犠牲にしなければ、部位ごとの装備権は発生しない仕組みになっている。
アブっさんの場合は頭装備と足装備、アクセサリー枠2つと声を犠牲にして6腕とその装備権+履帯の脚を実現したのだろう。弾バカの場合は単に部位がなく装備出来ないから、その分アクセサリー枠が増えているだけだが。
「
などと話している時のことだった。
にゅん、と翡翠色が下から生えてきた。正確には焼き魚らしきものを咥えたFluoriteさんが、いつの間にか俺たちの輪の中に出現していた。
「
「グポーン……」
《うわぁ!急に流暢に話すな、とマスターは仰っています》
そして相変わらず、話の道程が完全に何処かへ吹き飛んでしまっていた。手に持っている食べ物がなく焼き魚も食べ終わった辺り、大体何がどうなってこうなったのかは想像つくが。
「つまり、どういう?」
「私はお腹が空きました。個人ストレージが必要です。ビャーってやれば解決します。出来ます」
「……ヘルプ!! ヤブサメ、翻訳プリーズ!!」
「ぐぽーん」
《相変わらず文章.zipで草、とマスターは仰っています》
頑張って突撃した弾バカは、圧縮されすぎた会話について行けずに撃沈した。zipなら俺は解凍アプリか何かだろうか? そうかな……そうかも……
「つまり、ええと。ここアウステルにある屋台とかお店の大半を食べて、レベル上げもしたのでお腹が空いた。
解消するには自分で料理とかもしたいけど、デスペナがある以上貴重品は持ち歩きたくないから個人ストレージが必要。
俺たちの場合、全員揃えばそう苦労せずにボスを倒して中央の街へいける。行けたなら、自分達のギルドを作ることが出来る。
ギルドを開設すれば個人ストレージとか銀行機能も解放されるし、問題は全部解決する。
多分こんな感じです。あってます?」
「おお。全部言ってくれました。流石ヤブサメさん」
パチパチ、と広がる拍手。全くもって嬉しくない。いや翻訳が成功したことは嬉しいが。
「で、弾バカとアブっさんは何かあります?」
「バッチバチです。私は特にはないですね、バランスは良いパーティーになりますし」
そう、それは確かに弾バカの言う通り。
いつもの面子が揃った場合、俺たちのメンバー構成はそう悪いものじゃないのだ。
ダメージディーラーであるFluorite
ガチタンクである†絶対の楯戦車†
中距離物理アタッカー兼支援役の、俺ことヤブサメボーゲン2035
遠距離魔法アタッカー兼支援役の、弾バカこと
足りていないのは全員を制御する頭役と、回復など本格的な支援役だけ。最大6人の1パーティにしては悪くない配分だ。
「ぐぽーん?」
《でもそれなら5963はどうするの? とマスターは仰っています》
そしてその欠けている枠を埋めていたのが、SNSでは5963と名乗っている最後の1人。システム上ボスを倒さないと次の街──[中央旗艦都市ケントルム]には進めないから、どうせなら誘っておきたい。
「そこに居ますよ?」
一体何をと言いたげなFluoriteさんの言葉に周囲を見渡すが、《望遠》スキル込みで確認してもそんな人影はどこにもない。あの高身長だけど細身で、常識の範疇イケメンなエルフなんてどこにも……
「ほら、ちゃんとここに。クローニンちゃんです」
「ははは……もう既にやだぁ」
Fluoriteさんの尻尾によって引き寄せられたのは、すでにやつれ気味の顔をした少女。黄金に透ける長い髪を持ち華奢で小柄、清楚というべきその顔には乾いた笑みが張り付いている。
本来の声を知っている自分達からすれば当人とわかるものの、声は別人と言っても過言ではない鈴を転がすような声。そんな知っている姿は正反対の姿。だが纏うローブと背負った大きな薬箱は、記憶にある5963その人と相違ない。
「くっ、私としたことが。中身が5963と知っていなければ告白してました」
「弾バカ!?」
「バッチバチです!」
何がどうなればそうなるのか、若干分からなくもないが美少女化した知り合いの姿がそこにはあった。
「ふふふ……気付いたんです、ボクは」
元の口調から変わっていないのに、ボクっ娘属性まで載せてきやがった。強い。
「どうせなら、美少女アバターで遊んだ方が楽しいって」
「真理ですね」
VRゲームが大ブレイクする前の時代は、間違いなくそれは真理だったと頷く。むさい男のケツを何百時間と眺めるより、可愛い女の子の方が男としては楽しいものだ。
VR時代になるとアバター技術の不足やゲーム側からの制限、そして声という偽れない部分のせいで萎える風潮が強くなったが。流石は三日月の変態社、TS性癖や変身願望にも完璧に答えてくれている。
「グポーン」
《真理の一つに違いない、とマスターも仰っています》
「私は美少女です」
「知ってる」
「五月蝿いですよタマ」
「にゃーん!?」
「猫缶食べます?」
「なんであるんですか!?」
光る弾バカとご飯に余念がないドラゴン娘のショートコントは、一旦横に置いておくとして。
「──それで、ボクも呼んだってことはもうボスに挑むんですか?」
「なんかそんな流れになりました」
「ヤブサメは街中だと話が通じて助かるなぁ」
零距離全肯定涙目儚げ美少女スマイル、多分年頃の男子は死ぬ。だけどまあ、中身が5963だし……もっと(食欲から)近づいて来るFluoriteさんもいるし……思ったより心は動きもしなかった。残念だったな。
「ボスの場所までの移動手段は?」
「タンクデサント」
「グポン!?」
《初耳だ、とマスターは仰っています》
タングデサント──つまりは
「というかクローニンは、巨乳にはしなかったのですか? そのほうが私の性癖にはあっているのですが」
「タマ。そういう性的な目線が気持ち悪かったのと、足元見えないし邪魔で邪魔で……」
「あー分かります分かります。リアルだと痴漢とかSNSでそういうDM送ってくる輩もいますからねぇ。触りにくるならまだしも、女装パンツ見て何が楽しいんでしょうか、アイツら」
「分かってくれるんですか!」
「うっ、笑顔が」
などと盛り上がっているのは良いのだが。
「取り敢えず、俺は顔面偏差値バトルに負けたので顔隠せるローブ買ってきますね……あと矢」
光る弾、ゴーレム、美少女、美少女(TS)、普通フェイス。悲しいかな、俺は完全に顔面偏差値バトルの敗北者だった。
弓兵らしくローブで顔を隠します、はい。空いてる胴装備にもなるし。半裸だけど。
「ああ! ちょっと待ってくださいヤブサメ。ボクともフレコの交換を!」
「……忘れてました」
斯くして、サービス開始からゲーム内時間換算で大凡4時間。
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【パーティ】
フルパーティは6人。それ以上の人数で戦闘を行うと、ステータスや報酬の減少など共闘ペナルティが発生する。
所謂レイド戦においてはこの制限が撤廃される。