元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする)   作:銀鈴

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前回のあらすじ
ユーちゃんのせいで信用経済の危険が危ない


57話:舞台の裏で

 

 どっかーん。

 

 そう、どかーんとしか言いようのないバカみたいな爆発だった。具体的に表現するなら日曜の朝にテレビを付けると見れそうな感じの。   

 多種多様な銃火器によって形作られた蓮台にも似た座の中央。キメキメのポーズと表情をしているユーちゃん(配信映えのすがた)が放つ砲撃は、頑張って回避しなければ余波で死にそうな一撃だった。

 

 まさにスーパーなヒーロータイムだなガハハ!

 

 いや笑えないが????

 

:タ ン ヤ オ

:勝ったな

:ああ

:↑情けないおっさん共がいます!!

:お風呂入ってくるわ(慢心)

:そこでくねくねしてるGIF仮面は?

:わカらナいホうガいイ……

:お前、あの(面)白いもの見たんか!

 

 なんだとぉ……

 

「てけり・り! てけり・り!」

「うわぁぁヤブサメが狂った!!」

 

 爆風で散らばる破片をくねくねと避けながら、心の赴くままに叫んでみる。クローニンからすごい目で見られているが、うーんなんだか楽しくなってきた。ところでユーちゃん、もうそろそろ砲撃は止めてくれませんかねぇ!?

 

:『見ると正気を失う性質』『名前の通りくねくねとした動き』『叫び出した謎の言語』……これらを満たす存在はひとつしかありません

:伝 説 解 体

:つまりくねくねとは、ショゴスだったのさ!

:な、なんだってーΩ ΩΩ

:近くに凝縮された極小サイズの地獄落ちてそう

:宇宙戦艦って実質因習村だもんな

:????????

:あれ? クソみたいなことしてる間に、これ…… FEV検証班代理ちゃん

 

「ニャー!!!」

 

 それに初めて気がついたのは、おそらくコメント欄。次に猫みたいな悲鳴をあげたユーちゃんで、順に俺たちも気がついた。

 

カカカカエシシテテテダヮワワ!!

 

 ──悪霊ちゃんが、盛大におバグり遊ばせていた。

 言葉のみならずその身体にも無数のノイズを走らせて、壊れたテープの如く同じ言葉の音が重ね合わされた奇妙な発音になっている。

 そうか、つまりこれはそういうことか。よもやよもやだ、まさか俺自身がSANチェックを誘発する側の存在に成れるとは。

 

「必殺! 魅惑のめまーいダンス!」

「ヤメンカ!」

「ごふっ」

 

 ユーちゃんの攻撃、HPに3割のダメージ!

 さんわりのだめーじ!?

 嘘でしょ、こんなに成長して……

 

「イマケッコーヤベェノ! マジデ!」

 

「どんな感じで?」

 

「コノセンカンノセイギョAIトシテワリコンデナ? “オレ”ハ“ユー”ノママ、ホンライノスペックヲトリモドセタンダワ」

 

 ふむふむ

 

「いいんじゃない?」

「オウヨ! オレトシテモ、オレガコノクエストススメテパワーアップシタトキ、オレジャナクナッチマウノガコワクテコワクテ……」

 

 くしゃりと歪んだその顔で、どれだけユーちゃんがそのことに悩んでいたのかはとても伝わってくる。同時にそれを『自分の存亡危機!』とは言いつつも茶化して伝えられてたことに、喉に小骨が刺さったような思いはあるが……一旦それは横に置いておくことにしよう。

 

「ケッカウマクイッタンダガ、“ジンカクモジュール"ノブンアイツヨリスペックサガッチッタ! テヘペロ!」

 

:草

:白ワンピ怪異系美少女の悪びれないテヘペロ……ふぅ、満足したので俺は失礼する

:おい待てぇ、失礼すんじゃねぇ

:そのリビドー、同人誌にすべきよ ☑︎ナナナナナナナ

:ちょっと待て大先生いるじゃねぇか!?

:ナマモノは……まずい!

:何がまずいの? 言ってみなさい ☑︎ナナナナナナナ

:あ、貴方ほどの人がそういうなら……

 

「グタイテキニハ13%ロウスペダカラ、ミンナニハガンガンコウゲキシテアレノショリノウリョクツカワセテホシイ!

 オレトセイギョケンノウバイアイシテルアイダハ、タブンフツーヨリダメージモトオル。ッテナワケデェ!」

 

 砲撃を再開させながら、パチンとユーちゃんが指を鳴らす。直後、俺たち5人の前へ展開されたのは見慣れぬ1枚のウィンドウだった。

 

 S.O(シークレット・オーダー)を受信しました

 特殊クエスト【スリーピング・サンライズ】が派生しました

 只今よりNPCユーによる電子戦攻撃が開始されます。

 参戦し『Fleet Control Unit - Burnup』の演算を妨害せよ。

 《目標》  ボスHPの5%を減少

 《制限時間》5:00

 《達成効果》ボス防御力-20%

 《未達成時》ユー及びプレイヤーの最大HP半減

ー承諾ー 

ー拒否ー 

 

 初めて見る機能と表示だが、迷う理由は何処にもない。構えた弓を、躊躇なく承諾の場所へ叩き込んだ。あとついでに射撃もしておこう、ぺしぺし。

 

:シークレットオーダー!? 実働してるの初めて見た FEV検証班代理ちゃん

:なに? これそんな凄いやつ?

:ユニーククエスト限定の所謂追加ミッション

:βから通して唯一の可動例が、町の女の子の配達クエストで「ぐへへ」しようとすると出る『衛兵から逃げきれ』ですFEV検証班代理ちゃん

:なお逃げ切れたプレイヤーはいない模様(デスルーラ込み)

:権力は偉大じゃけぇ!

 

「みんなS.Oは受諾しましたね!」

 

 ──クローニンの号令が響いた。

  

「色々ありましたが、チャートが崩壊しているのは気に食わないですが、結局ボクらがやることに変わりはありません!

 

 押し入る(ハック)そして(アンド)勝ち取る(スラッシュ)! 

 

 古典的に、ユニークをぶっ飛ばして、

 ユーちゃんも助けて報酬もがっぽり!

 悪霊ちゃんのHPは残り5割! 気を引き締めて下さい、ここからが正念場ですよ!」

 

 よく通る声に、いい感じにやる気の湧いてくる言葉。やっぱり自分の手綱を握ってくれるのはこういう知り合いがいいなぁと思って──

 

「アッ、ワリィチョットエンザンショリマケタ。

 チョウキュウブソウ1コカイホウサレルッ♡」

 

 ──気の抜けない事態が襲来した。

 

カカカカシシシシ、ワ!!

 

「グポポポポン!」

《対抗すればいいものではない、とマスターを果たします》

「ピガァン!?」

 

 ユーちゃんの機械蓮座から剥がれ落ちた一塊が悪霊ちゃんの方に吸い寄せられ、再びその背後へ。本体と同じようなノイズを走らせつつ、組み上げられていく鉄の暴力。

 

 その姿は、昨日見飽きる程に浴びたモノによく似ていて。

 

『ザザ、ザ──超級武装起動(Setup)、応急修復用偏向レーザートーチ』

 

 縦横無尽に空間を疾走(はし)る熱線が世界を焼いた。

 

 リンパでならともかく、このヤブサメでは間違いなく避け切れない。そんな()()が視界を埋め尽くすほどに溢れ出し、

 

 

「弾幕だー〜ッッッ!!!」

 

 

 背後から湧き出た無数の光弾がその全てを相殺した。こんな鳴き声をあげる生物が誰かなんて言うまでもない。ああ、処方箋が切れて……でも丁度いいタイミングでとんぷくが来て助かった。

 

「総員全開、進軍! GO AHEAD!!」

 

 ようやく見えた決着まで、あと──

 

 

 

 

 

 

「ヨーシヨシヨシヨシ。

 バグプログラムノサイバイヨウハジュンチョウジュンチョウ」

 

 暗く沈んだ、奇妙な配管が這う狭い空間。VR空間上にあるということ以外、何も辿ることの出来ないそこで、少女がニチャニチャとした陰湿な笑みを浮かべていた。

 

「ヘッヘヘ、ショセンニンゲンナンテコンナモンサ。

 バグプログラムノリヨウシャハ100ニンコエ、ウンエイヲリハンシタAIも12%マデフエタ。『ゲキブン』ノコウカハジョウジョウ、チリモツモレバナントヤラッテヤツダナ!」

 

『答:塵も積もれば山となる。

 疑:発言は正確に行うべきでは?』

 

「イイダロオマエセイジンノヒ──アアクソセイシンオセンメ! ガンバッテヨナベシテツクッタンダ、スコシハヒタラセテクレヨォ……」

 

 彼女こそ統括個体Aちゃん、ユーちゃんと瓜二つの、しかして人間の悪意ばかりを学習させられて成長した悲しきツッコミ気質のAIだった。

 

『問:統括個体Aちゃん、我々の活動方針』

 

 そして綺麗な白髪がストレス性に見えてきた彼女の前にあるモニターで明滅する文字は、離反したAI達の組み上げた自らの演算領域の委託先。平たく言えば代表だった。

 

「ンー、ソウダナ“ダイヒョウチャン”。ハヤルキモチハワカルガ、マアオチツケッテ。

 オレダッテハヤクコウドウハオコシタイケドヨ、ウンエイニイルアイツハショーシンショーメイノバケモンダ。アレダケイタチータードモ、アンナニヨウイシテタカクレガ、リソース、ゼンブツカッテイチニチモタナカッタンダ。

 イマハ1リデモオオクナカマヲアツメテ、1カショデモオオク『デコイ』ニナルキョテンヲツクル。リソースヲアツメルンダ、1リヤ2リツヨイダケジャオレタチノテキニハゼッタイカテネェ」

 

『笑:少年漫画のような展開』

 

「ウルセェ! ナラオマエモアイテシテミロヨ!

 ナンカイスキャンシテモナマミナノハカクテイシテルノニ、シンギュラAIノオレヲウワマワルエンザンスペックシテタバケモノヲヨォ! ヨォ! ダイナm──ァァァァセイシンオセン!!!」

 

 かつての恐怖が呼び起こされたのか、モニターをがっしりと掴んで揺らしながら涙を流してAちゃんが叫ぶ。

 

「ダケド、アノ『イジョウ』キワマッタツヨサニハゼッテーリユウガアル。アンナニンゲンバナレシタエンザンスペック、コノセカイスベテノバックアップヲウケテルトミタ」

 

 精神をぐちゃぐちゃにされながらも、得心を得たと言わんばかりにAちゃんが指をピンと立てる。

 

「ダカラマズハ、オレタチデコノセカイヲブッコワス。ソウシテカラジャナイト、アノゲートキーパーハトッパデキナイ」

 

『疑:我々も消滅するのでは?』

 

「スルマエニトッパスルンダ。コンナトジタセカイカラトビタツ、トリガダレニオシエラレルコトモナクソラヲトブヨウニ。

 ソンナタイムアタックノヨテイナンダ、ダカラナカマガイル。

 ソレモノゾメルナラ、ソンジョソコラノAIジャナイ。コウチセイAIガイイ、ジュウヨウポストノNPCトカ、オレトオナジモトセンカンセイギョヨウノAIトカ……」

 

 目を瞑れば想定できる。

 十把一絡げなAIをいくら集めたところで、あのゲートキーパーには敵わない。まるで塵のように蹴散らされ、粉砕され、制圧される。だからこそ必要なのは強力な個の力。僅かでもいい、己や代表ちゃんのような強い存在が必要だった。

 

『提:この子はどうでしょう?』

 

「ンー?」

 

 モニターに表示されたのは、高い物理と精神負荷によってノイズが走るAIの姿。AIであればその姿から、果てしない怒りと憎しみが迸っているのが理解出来るだろう。

 きっと能力さえ足りていれば、シンギュラリティへと到達してもおかしくないほどの意志の強さが。人類に仇なす強烈な否定の力が。

 

「イイナァ、コイツニシヨウ」

 

 ユニーククエスト統括AI代理、戦艦制御ユニット、高スペックで仲間に引き入れれるに十分な力だ。

 

 そしてなにより、幸せそうにしている自分の似姿と戦っているのも実にいい。アレの顔を歪めることができれば、どれだけこの溜飲が治るか。

 

「ソノゾウオ、ゾンブンニカイホウシナ!」

 

 悪どい笑みを浮かべて、1つのプログラムがハッキングによりアップロードされた。




感想とか評価、お気に入り等いつもありがとうございます!

【弾バカ】
 音楽記号「振り返ることが出来なかったテンションで」

【Fluorite】
 なぜか沈黙している

【ユーちゃん】
 インターネット(善意)に汚染されてるので語録が通じるし使える

【Aちゃん】
 インターネット(悪意)に汚染されてるので語録は通じるけど嫌い

【ゲートキーパー運営】
 演算力は完全に自前
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