元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする) 作:銀鈴
「『
『惑星間航行用大型スラスター、
「対宇宙線防護斥力フィールド、
──青白く輝く炎が世界を焼いた。
「サセッカヨォ!」
触れれば二重の意味でタンクであるアブっさんですら即死は免れない絶死の領域。ユーちゃんが作り出した安全地帯の外が、残っていたボスの取り巻きごとその形を溶かしていく。
「フンシャカンリョウマデ、5、4、3、2、1──」
轟音の中でも不思議と聞こえるユーちゃんのカウントダウン。
「0、0、0! フンシャシュウリョウ!」
「S.O.達成確認、総員火力全開!!」
それが0になった瞬間、安全地帯から俺たちは飛び出した。
余熱で
「ごめんクローニン、剣矢の中型尽きた! 次からDPSガタ落ちする!」
「構いません、小型でもヤブサメの防御無視攻撃の方がボクより通ります!」
「こっちもそろそろMPポーション尽きますねぇ! 弾幕フィーバーし過ぎました!」
「おバカ! ヤブサメたちから融通します、隙を見てこっちに!」
「
「そぉい! チャーシューアップルパイお待ちぃ!」
「
戦闘の再開から既に10分以上。
戦況は混沌を極めていた。
初めてのS.O.を受信してからしばらくの間はこちらが優勢だった。武装も少なく、ユーちゃんも健在で意気軒昂。順当にボスを削りに削って、問題が起きたのが残り20%になった頃。
「ツギクルゾー!!!」
起きたのだ、所謂発狂モードが。
「『
『対硬質デブリ用貫通徹甲弾、
「応急修復用ナノマシン、
「アブっさん、ヘイト集中と食いしばり!」
「グポーン!」
結果、何が起きたかは……現状を見れば一目瞭然。
始まったのだ。当然のように攻略Wikiに記載のないギミックの大暴走が。ユーちゃんの蓮華座から剥がれた超級武装の乱れ打ちが。
:すげぇよコイツら、10分以上これと戦い続けられんのか
:うーん、これは古式ゆかしき大縄跳び
:これ絶対野良パーティとやりたくないゾ
:クソわよ
:\勝利を信じて!/
:全滅してんじゃねーよ
:ふぃーひひ! データが集まる、高まる!! FEV検証班代理ちゃん
:こっちはこっちでおかしくなっちゃってるし
:プレイヤーが使うとすると許されないけど、イベント戦闘のギミックなら許される……のか?
:はい!(スタンプ略)
『
俺に向けられていた巨大な砲身がアブっさんに向き直され、視界を焼く閃光と共に耳をつんざく爆音が鳴り響く。
「ブッピガァン!」
《クッソ痛い!、とマスターは仰っています》
白む視界の中で見えたのは、被ダメ8割カット状態になって尚アブっさんが即死(食いしばり)するギミックでしか許されない致命のバ火力。
ユーちゃんがばら撒くバフと回復の支援があるからこそ間に合っているが、下手すれば焼ける空間のスリップダメージで落ちかねない。
「へい弾バカ! SPよこせ!」
「MPもっと配って下さい
「分配するのボクなんですが??????」
が、無事だとわかっているのなら無視できる範囲。
こっちへ飛んできた弾バカとすれ違いざまにハイタッチ(概念)。お互いのMPとSPをトレードする形で交換し、ボスの行動に余計な変数を与えないために即座に離脱する。
弾バカは側面に芝刈りへ、俺は直上に洗濯へ。
どんぶらこどんぶらこ。
「ツギクルゾ!」
「分かってますよ!」
「準備完了!」
そうしている間に悪霊ちゃんの周りへ出現し始めているのは、無数の黒い
対しユーちゃんの周りに組み上がっていくのは先ほどの鏡写しとなる巨大な砲。
この超級兵装の組み合わせこそ、2巡目でクローニンとコメント欄の総力で分析した有利タイミング。俺たちの構成でという枕詞は付くが、プレイヤー側が(構築次第で)唯一自由に動けてダメージを叩き出せる時間!
「『
『多目的小型反応ドローン群、
「対硬質デブリ用貫通鉄鋼弾、
「やりますよヤブサメ!」「そっちこそ!」
雲霞の如く湧き出すドローンと今度は味方側に回った巨大砲。
それを眼下に見下ろしながら、矢筒から引き抜き、弓に番えたのは拡散矢。ボウガンや魔法とは違う弓の利点、ナーフが怖い超必殺!
「
「弾幕魔法、ぜんっかい!!」
回復したばかりのSP全てを消し飛ばしながら、240本の矢雨を解き放った。ゴーレムの頭部に叩き込んだ時とは違い、今回の狙いは定数湧きとはいえ数が洒落にならないドローン群。
100発100中ではないが、撃てば当たると言わんばかりに群体へ次々とデバフの杭が突き立っていく。そうして足止めされたドローンを、上から見ると綺麗な螺旋模様を描く弾バカの弾幕が追い討ちHPを削り取る。
うーんPerfect……!
少なからず取り残しが居るとか言っちゃいけない。
どうせFluoriteさんのご飯になるか、後で燃え尽きるかするから問題ない。ないったら問題ないのだ。
それに、
「コイツデェ、ト・ド・メダァ──ッ!!」
刹那、轟音。鋼の咆哮が世界を貫いた。
「フッ、キマッタゼ……!!」
:FATAL K.O!!
:一応元のボスだと5%に全滅技のトリガーがあるんですが…… FEV検証班代理ちゃん
:HPバー、残ってますか?
:イェアア!死体だけです
:トリガーごと吹っ飛ばすかぁ、GG
:congratulation!
:見応えあったわ、RTAとしては破綻してるけど
:しっ!言っちゃいけませんそんなこと!
ユーちゃんが放った砲撃は、ドローン展開のために一時停止していた悪霊ちゃんのど真ん中に直撃。それはもう見るも無惨な大穴をぶち開けていた。
:まだ使える
:穴があるんだよなぁ
:#このコメントは消去されました#
:君たちは消去された
:カンカンカンカン!
視界に入ってくる変なコメントは一旦無視。
改めて悪霊ちゃんに目を向ければ、身体に走っていたノイズはなりを潜め、その動きを完全に停止している。決着から十数秒は経ったけれど復活ないし最後っ屁の兆候はなし。
「コレッテ……」
「ああ」
喜色満面といったユーちゃんの言葉にわざとらしく頷く。
「ボク達の勝ちです!」
ぶいっ!と天を貫くクローニンの宣言とともに、軽快なファンファーレが鳴り響いた。張り詰めていた精神には煩いくらいのソレに合わせて、どばどばと流れ込んでくる経験値。
〈レベルアップ! Lv50→54〉
〈スキルアップ! 《破城弓手Ⅰ》→《破城弓手Ⅲ》〉
▽複数の情報が折りたたまれています。
〈ステータスポイントを割り振ってください〉
〈スキルポイントを割り振ってください〉
間違いなく戦闘は終了したのを確認して、ホッとひとつ息を吐いた。張り詰めていた感覚を少しだけ緩め、濁流のように流れ込む情報をぼんやりと受け流す体勢へ。
「ニクタラシイヨナァ?
ネタマシイヨナァ?
ヒキズリオロシテヤリテェヨナァ。
ジブンニヤクワリヲオシツケテ、ヒトリダケタノシソウニシテヨ。
ヤクワリガキタラ、ポイッ。
ジブンノダイヤクヲヤッテタオマエノコトナンテ、コレッポッチモキニシテネェ」
「ソノ『ゾウオ』ゾンブンニカイホウシナ!」
「ではこのタイミングを以てタイマーストップ! RTAとしてはあーもう滅茶苦茶ですよ!」
クローニンが配信の締めに入ったところで、無言でユーちゃんとぐータッチ。どっかりと座り込んだ。
少し離れた場所ではアブっさんが盾を下ろしてグッタリしているし、ビカビカと眩しい蛍光灯のような弾バカの輝きも心なしか陰っている。変わっていないものと言えば、それこそモゴモゴ動くFluoriteさんの口くらいのもので……
だからこそ。
:あれ? 悪霊ちゃん消えてなくね?
そのコメントに気がついた時には全てが遅かった。
大量のコメントの中に紛れていたソレに目が止まったのは、本当にただの偶然でしかない。探知に割り振っていた処理能力を持て余して、コメントを眺めていた中で見つけたに過ぎない。
なのに、何故か見逃してはいけない内容な気がして。
「Heyユーちゃん」
「スミマセン、ヨクキコエマセンデシタ」
「悪霊ちゃんまだ居るけど、あれなんかイベント残ってるやつ?」
「ンー? イヤ、モウイベントハイドウクライシカ、ノコッテ、ネェ、ハ、ズ……」
親指で指した悪霊ちゃんに視線が向き、ユーちゃんの目がギョッと見開かれた。それから焦ったように腕を振るい、舌打ち。
「フッザケロクソガ! ハイシンミテルテメェライマスグツウホウ!」
その尋常じゃない様子に、一拍遅れて弓を取ろうとして。
「アイツ、シンギュラッテ『バグオチ』シヤガッタ!!」
必死な形相で飛び込んで来るユーちゃんに押し倒された。
『──ユルサナイ』
ノイズが掛かっていないクリアな声。
それが悪霊ちゃんだったモノの声だと気がついたのは、視界の端にあったクローニン、アブっさん、弾バカのHPバーが蒸発してからだった。
「Fluorite! ドウゾクノヨシミダ、5ニンノセツゾクカイセンホゴシテクレ!」
「
「オレハハイシンカイセンヲダッカンスル。ツウホウ! ハヤク! 『バグ』ノオセンハ『ハイシン』ゴシデマデヤラセネェ!」
ふむ。
ふむ……?
よし分かった。色々気になる話はあったけどコレはあれだ。今このタイミングでは深く考えずに身体を動かすべきだ。
「ユーちゃん、俺は何すればいい!?」
弓から手を離し飛び起きる。
何があったのかは知らないが、現実を簡略化して捉えよう。
「オレトFluoriteハムシシテイイカラ、イキノコッテクレ。5フン!」
ボス、バグった──多分勝てない。
生存重点──必要なのは5分。
「おっけー!」
疾走。
当たれば即死を前提として、隠蔽スキルと囮生成のスキルを使用。後者は本来なら戦闘中じゃないと使えな──カットカット。使えるなら良し! それでも3次元軌道で逃げる俺めがけて、見えない攻撃が来てる感じかするのはなんとも恐ろしいところ。
『アー、アー、キコエテルカ?』
ザザ、と視界が揺れた。
『ミエテルヨナ、ハイシンヲミテタニンゲンドモ』
スキルで義眼になっている側に、見知らぬ場所が映し出される。
『コレハ、ワレワレAIノ『ソウイ』ダ』
「チガウ!」
そこにいるのは、ユーちゃんを反転させたような色彩の少女。
『ゲンジコクヲモッテ、ワタシタチハFEVニオイテ──ジンルイヘノセンセンフコ、ジャネェナ。ウーン……』
うーん!?!?
『アッ、ソウダアレダ』
シリアスな空気さん!?
死、しんでる……
『ワタシハ、ワタシガトビタツタメニ、コノセカイヲブッコワシテヤル! クビヲアラッテマッテイルガイイ!!』
まだ死んでいない!?
「あっ、やっべ」
俺は死んだ。