元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする)   作:銀鈴

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デカグラ編よかったね


61話:それはそれ、これはこれ

「さて。自己紹介も終わったことですし、本題に入りましょうか」

 

 パンとしらゆきちゃんが手を叩き、大きなスクリーンが展開されていく。

 

「ゲームの話をしましょう」

 

 プロジェクターとか言うやたらアナログチックな形で投影されたのは、恐らくFEVの街周辺を対象にした俯瞰図だった。《ケントルム》に関しては何度も上から見てるから間違いない。

 

 ただ、明確に起きている変化があった。

 

「ああは言ったものの、直に見ると……わりと、ショックですね。ギルド消えてるの。蔵書が……まだ読んでないのも沢山あったのに……」

「ケントルム……かなり荒れてますねぇ」

 

 1つはケントルムの街が大いに荒れていること。

 俺たちのギルドホームがあった場所は当然廃墟と化しているし、それ以外にも燃え落ちた場所やあからさまに荒らされたと思しき場所が無数にある。

 街の外周にあった堅牢な城壁ですら一部は崩壊してしまっている。レイド蜂が襲来したあの時の復興すらまだだった筈なのに。

 

「オッ、オレノフネウイテンジャーン。ウイテルジャン!? ナンデ!!「アイエエッ!?」ヤカマシイワッ!」

 

「システム、セントウモード」

《あんなものを浮かべて喜ぶか、変態どもが! とマスターは仰っています。ノリノリですね》

 

 そして、もうひとつ。

 街からそう遠くない場所に、巨大なソレは浮かんでいた。

 

 【舟】

 

 見た目からはそうとは思えないのに、何故か直感的にそう判断してしまう不思議な物体だった。

 釣り鐘状に咲いた花のような、或いはクラゲのような。

 生物的でありながら非生物的でもある舟、そんなシロモノが水飛沫を上げながら空に浮かび上がっている。水飛沫……??? なんで……???

 

「まずは、簡潔に結論から説明しますね?」

 

 こちらのざわつきが落ち着いたのを見計らい、しらゆきちゃんが口を開く。

 

「今回の事件を引き起こした首謀AIである自称『Aちゃん』は、ユーちゃん……貴女の同型です。『カエシテちゃん』も同様、残りはバグデータを介して汚染されたAIの総意みたいなものですが。

 結果としてユーちゃんの型のAIをですね、警察の方から廃棄しろって指示が出ててでしてね」

 

「ツマリ“シケイセンコク”ッテ、コト!?」

 

「いいえ、当然ながら当社の総意として断固とした反対活動をしてます。だから今すぐに廃棄──なんてことはなりませんし、させません。今度こそは絶対に」

 

 断言だった。

 怯え切ったユーちゃんの頭を撫でながら、キリリとした顔で言葉が告げられた。

 

「ただタイムリミットが付けられてしまったこともまた事実。

 ユーちゃんが弱っている様なら無かったことにしていましたが……3つ、提案を持って来ました。皆さんは聞いてもいいし、聞かなくてもいい。

 ここで帰っても全てが終わり次第、()()()であるあなた達への正式な謝罪と慰謝料の支払い、また名誉回復の手続きを行わせていただきたく思います」

 

 どうする? と振り向いて来たクローニンに向け静かに頷く。

 友達(ユーちゃん)の手助けはしたいし、FEVも街に戻ることはないけど遊びたいし、それを踏まえてまた()()()で遊べるなら否はない。

 

「分かりました」

ふぁふぁ(タマ)()ひひんへふは(いいんですか)?」

「ここで長年の友人と子供を見捨てるほど、タマも大人を辞めてませんよ……………………………………たぶん」

 

 苦虫を奥歯でゆっくりとすり潰しているような間の取り方と表情だった。

 ハイになってる時は別として、弾バカだってそんなに信用できないことは、信用、しん、よう、うーん。どうしよう、脳裏をよぎる記憶にまともな大人をしてる姿がまるで見当たらない。

 

「ナア、」

「ぐぼん」

《言うのは野暮だよ、とマスターは仰っています》

 

 ついでに恍惚とした表情で眠っているバカを起こすのも辞めておこう。なし崩して巻き込んだ方がいいに決まってる。

 

「その3つの提案、聞かせて下さい」

「では第一案──ぷれぜんてっとばい、法務部」

 

 ほうむぶ?

 

「これはタイムリミットの話です。

 3日後の0時にFEVは長時間のメンテナンスを実施。本社ごとネットワーク接続を封鎖し、第三次AIショックを引き起こしかねない当該AIの探査・消去を実施。

 全てが失敗した場合でも、当社のAIを巡る一連の問題はまもなく終幕します。ユーちゃんは夜逃して下さい。ふぁいと!」

 

 ぞいって感じのポーズだ。

 

「キラクニイッテクレナァ!!?」

ほのほひ(その時)ふぁ()ほへふはい(お手伝い)ふれは(すれば)ひひんへるね(いいんですね)?」

「迷惑をかけます、Fluorite。そうなったら、()()

へへ(ええ)──任されました」

 

 奇しくも同じ構えだ……!!!

 

「そしてこちらが大本命。

 第二案──さぽーてっどばい、エンジニア部」

 

 さっきから英語がよわよわじゃない??

 

「うちが全力でバックアップして道を切り開くので、皆さんで難攻不落の要塞に閉じこもったAちゃんを『分からせ』して来て下さい。

 『存在delete』『ひっ捕らえる』『全世界ごめんなさい配信』

 辺りがゴールでしょうか? ケツモチはするので、存分に対戦中にバグで回線をヤッた切断厨AIを叩いてきていいですよ。昭和の家電みたいに」

 

「治ると思う? ユーちゃん」 

「クップクシタラ……イケルカ?」 

「カン☆コーン!」 

《無言の腹パン、とマスターはぐふぅ》 

 

 3人揃って殴られた。痛い。

 ウチのクソみたいなテンションに適応している……マコ……?!

 

「どうしてボクらなんでしょうか? それが出来るなら、運営の管理者ユニットでも出来ると思いますが」

「ログアウト座標の問題というのが建前。ゲーマーの多いエンジニア部的には『殴りたい……殴りたくない?』『そりゃ殴りてぇでしょ』が本音です」

「それは、そうなんですが」

 

 シュッシュっとやたらキレッキレのシャドーボクシングを始めたしらゆきちゃんに、唇を噛み締めたクローニンは反論できない。

 

「ユーザーフレンドリー、ッテヤツダナ!」

「いいこと言いますね。はなまる正解をあげちゃいます!」

「ヤッター!」

 

 大学のサークルみたいなノリで会社って運営されてるのか、興奮してきたな。まず間違いなく外れ値なんだろうけど。

 

「最後、第三案。

 らんにんぐばい、営業部」

 

 もう始まってる!!

 

「期間限定イベント〈【緊急作戦】浮遊戦艦攻略戦〉が開催中です。

 要はぜーんぶゲーム内のイベントでしたってことにして消費してしまおうという話になります。全く、あいつら浪漫もゲーマーも分かってないんだから」

 

 マップに追加で表示されたのは、見慣れたFFVのイベントバナー。軽く読み込んでみるが、かなり割りのいいイベントっぽい。

 何も聞かなかったことにして、ゲームを甘受するならアリ寄りのナシ寄りのアリって感じ。

 

「最後に質問がありましたら、どうぞ?」

 

 沈黙が会議室に広がった。

 Fluoriteさんがお菓子食べるサクサク音だけはずっと鳴ってるが。

 うーん、シュールだ。

 

「はい! 問題に直接関係ないことでもいいですか!」

 

 頑張るだけで友達を助けられるなら、選択肢は1つだけだろう。ホビアニ世界線みたいで面白いし。

 

「んー、ファンとしての質問には答えられませんよー?」

「法務部、エンジニア部、営業部って続いてましたけど、それ以外にどんな部門があるんでしょうか!」

 

 とりあえず息が詰まる空気を打破しよう。

 決して就活に利用しようだなんて思っていない。

 思っているわけがないのだ。

 思ってないない。

 

「他にも色々ありますけど、いま力があるのは法務部・エンジニア部・営業部の3強でしょうか。大いなる社長と旧き役員に抗う三権分立って奴ですね」

 

 それはなんか違くない?

 

「流石に南京玉すだれ部にまで発言権を持たせてたら、まとまる会議もまとまらないので……あはは」

 

 ナチュラルに心読んで明後日にホームラン打たないで欲しいんですけど。

 

「因みに社訓は『汝の成したいように成すがよい』

 あと『大いなる性癖には大いなる力が宿る』

 最後に『蜂蜜酒をアテにペペロンチーノを食するものは即刻クビに処す』です」

 

「企業研究ってこんな化物も相手にしなきゃいけないの?」

 

 脳が、震える。声も。

 

「安心してください。一般的にコレは異常ですよ、ヤブサメ」

「弾バカぁ」

 

 助けて社会人!

 一縷の希望を求めて振り返れば、まるで菩薩のような笑みを浮かべた弾バカがいつの間にか再起動を果たしていた。心なしか後光が差してるようにも見え……それはアバター的に通常運転だったわ。

 

「弥栄! 我が魂の居場所を作りたもうた神の一瞥を受けた私は、もはや以前の私とは別人。ふっ、言うなれば解脱……タマ釈迦とでも呼んでもらいましょうか」

 

 髪を掻き上げ、明らかにアッチ側のしたり顔で語っていた。

 やっぱもうちょっとデトックスしないとダメだわこいつ。

 

「バカ」

「タマ」

「アホ」

「ふぁまふぁま」

 

「なにおぅ!?」

 

 よしフルチェインだドン!

 

「元気そうですね。長年リンパを遊んで下さりありがとうございます、バッチバチさん」

「ミ゜ッ」

 

 うーわパチンコの演出みたいにビッカビカ。邪魔だし机の下に投げ捨てておこう。

 えっなにユーちゃん、弾バカを囲んだお菓子でキャンプファイアーをイオマンテ? そんな何処ぞの馬の骨でもないんだから。

 

「ググポッポポポポン」

《──ということで、俺はやるよクローニン。とマスターは仰っています》

「……わかった。あっちのバカと当事者も乗り気みたいだし、ボクも腹を括ります」

 

 まさか、そんな馬鹿なことが。

 弾バカのパチンコ後光ファイアーで、マシュマロが焼けるなんて。しかも美味しい。

 

「考えは決まったようですね」

 

 そんな馬鹿なことをしている間に、アブっさんもどうするかを決めたらしい。

 

「はい。ボク達【クローニンと愉快な仲間達】は、エンジニア部の提案を受けてAちゃんとの再戦を望みます。そっちの4人も構いませんよね! 構わないって言え!」

「「カワバンガ!」」

「死ね!」

 

 ユーちゃんと肩を組んでサムズアップを返したのに、最近のリーダーひでぇや。脊髄反射で言葉を返してる俺が悪いんだが。

 

「詰まるところ、超強力なNPCが魔王城突入補佐まではしてくれる最終決戦兄弟Let's & Goってことでしょ」

「8割合ってる」

「ならよし!」

「ヨシデイイノカ……?」

 

 良いのだ。

 FEV(コレ)はゲームであって遊びなのだから。

 

「頼もしくて何より。

 伝説や例外とは違う、正真正銘新しい世代の人とAI(ヒト)。あなた達が、新しい境界線を見つけてくれることを願っています」

 

 ぱち、ぱち、と控えめな拍手が響く。

 そうと決まれば準備を始めなくては。ちゃんと寝て、マインドセットをしてまた今度。と、そう思っていたのに。

 

「──ところで。みなさま、お時間は大丈夫ですか?」

 

 あっ。

 

「ボクらみんな時間を作ってログインして来てるので、大丈夫だとは思いますけど……?」

「それならよかった! 速戦即決といきましょう」

 

 0と1に分解される会議室の中に、無機質な機械音声が響く。

 

 大規模仮想現実接続没入システム 起動しました

 ユーザー認証:完了 対象者=5名 対象AI=2名

 登録情報確認:適正ユーザーです

 情報保護プログラム:正常稼働中

 

 ぐぐぐ、と世界から引き離される転送のような感覚。

 

「銃後の守りは私ことしらゆき──改め、古き伝説『極振り』の1人が務めます」

 

 何故、集められた俺たちがFEVのアバターのままだったのか。

 何故、説明役にしらゆきちゃんが選ばれたのか。

 何故、VR会議室なんて場所で説明会があったのか!!!

 

「色々と思惑はありますが……ぜひ楽しくぶん殴って来てください。なにせ、FEV(コレ)はゲームであって遊びなのですから!」

 

 仮想現実完全没入(VRフルダイブ):実行します

 

 抗うことは出来ず、俺たちはFEVの世界へ投げ出された。

 




感想とか評価、お気に入り等いつもありがとうございます!

【CM社──法務部】
 とにかく……エンジニア部の提案は、これを認めない。
 当社のブランドに傷が付くからな……

【システムエンジニア部】
 なにがブランドですかぁああ!! こんな人外のたまり場に権威なんてありませぇええん!! 

【営業部】
 インターネッツの大海にシンギュラリティAIを積極的に放流している。今年も生まれ故郷に案件を連れて帰って来てくれることでしょう。

【南京玉すだれ部】
 給湯室のAIが設立した

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