元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする)   作:銀鈴

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超かぐや姫な変な刺さり方をして抜けません。
たすけて。


62話:れでぃ、ごー!

 仮想現実完全没入(VRフルダイブ):実行します

 

 抗うことは出来ず、俺たちはFEVの世界へ投げ出された。

 

「──ッ!」

 

 刹那、視界いっぱいに広がる宇宙の光景。

 古のSFとかでよくみるワープゲートの内部のような世界を、7人で降り、落ちて、下がっていく。

 

「ッテ、チョイチョイチョイ! コンナ“ログイン”シラネェンダケド!?」

 

 はえー、すっごい……と適当に眺めていたら、悲鳴のようなユーちゃんの声が上がった。

 そんなに驚くことだろうか? 確かにこんな、10年近く前のゲームでしか見ないようなログイン画面は珍しいけども。

 

「ナア、コレッテ」

「………」

 

 ウワーッ!? 全力で目を逸らしてる!!!

 

「だ、大丈夫。ワタシマイニチログインシテルエーアイ」

 

 歴戦のVの者だけあって、やっぱり相当ノリがいいなこの人。

 

「ヘイフロッピー! 10年前の機材でログインするとどうなる?」

 

ふぁれが(誰が)ひひひふふ(磁気ディスク)へふは(ですか)ふぁま(タマ)。んぐ、ここの機材だとリミッターがないくらいで現行市販機のハイエンドクラスの性能でしょうか?」

 

「グポーポン?」

《ヅダらないか心配になってきたんだけど。というかハイエンド? とマスターは仰っています》

 

「第一次AIショックのちょっと前でしたっけ? ライク・ア・カヤバーン社長デスゲーム事件があった辺りで、法整備が一気に進んだんですよ。安全面と性能面の反比例とイタチごっこってヤツです。

 ボクが当時使ってたハードもリコールにあって……一人暮らし始めたばかりにはきつかったなぁ」

 

「……ウッワ、ヒトノアタマレンチンッテマジカヨ」

 

「当時の極振り伝説の1つですよね。円柱形に積み重なったマップをダルマ落とし式に破壊して1時間でゲームクリア→首謀者逮捕→『こ゛ん゛な゛の゛し゛ら゛な゛い゛!!』っていう」

 

「アッハッハ、賑やか!」

 

 ログイン前までの白衣姿から打って変わって、草臥れた茶色のコートを羽織ったしらゆきちゃんが笑う。というか今さっき、自分のこと極振り(ネット上の伝説の方)とか言ってたような。

 

「しーっ」

 

 はい、お利口な火薬子(ファンネーム)なのでお口チャックします。

 実際ほんの数名だけど、死者も出てるマジのデスゲーム事件だったはずだし。古ネット流行語として以外は触れないでおこう。

 

「さてさて。思ったより向こうが抵抗されていますし、今このログイン時でもないと見られない物の解説でもしましょうか」

 

 くるりと下からこちらに向き直って、しらゆきちゃんが手を上げた。

 

「皆さん左手をご覧下さい」

 

 バスの添乗員みたいな発言に釣られてそちらを向けば、見えるのは星々の輝きと言っても良さそうな煌めきの群れ。

 地から天へと昇り、弾ける無数の流星群。誰かがほぅとため息を吐くくらいに綺れ──「すっごい弾幕ですよコレ!!」──台無しだわボケが。

 

「あちらに見えますのは、今回の首謀者であるAちゃんからのハッキングの軌跡とウチのファイアウォールのせめぎ合いになります。爆破点としてはせいぜい30点くらいがいいところですが、遠目で見るとキレイですね」

 

「バクハテンッテナンダヨ」

ふぃにひはら(気にしたら)ふぉへんはれまふひょ(汚染されますよ)

「コッワ、チカヨラントコ……」

 

 噂としては知ってたけど、ほんとにこの人ネットの生きる伝説なんだ。今ので誰かはっきり分かったわ。ちょっとだけお得な気分。

 

「皆さん右手をご覧下さい」

 

 次いで指し示された右手側、こちらにはより苛烈な流星群が降っていた。今度はそう、上から下に向けて。所々でドラゴンがブレスを吐いてるのも見える。

 

「ブッピガァン! ブッピガァン! ピピピピ!!」

《見てみてヤブサメ! ドラゴン! 装甲板パカパカして光りながら飛んでブレスしてる! とマスターは大興奮してます》

「β版の外界探索でならみた記憶ありますけど、正式サービス版でも出会えますかねー」

 

 確かAliceさんの所には出たから居るとは思うのだ。真理竜イデアみたいなヤツがうちの所にも。

 やはり山か、山なのか。

 最近のバグやらAI騒ぎやらで行けてないが、リラティック・テルの中心部とか可能性高そうなんだよなぁ。あの中心部の雲の塊、龍の巣って表現がぴったりだし。ぜんっぜん突破力足りなくて入れないけど。

 

「あちら、ウチの本社に協力してくれてるシンギュラAI達と人間の人力で仕掛けてるハッキングになります。大体処理能力は極振り3人分くらいでしょうか」

 

 それは一般的な人類の話をしていらっしゃる????

 

「最後に、前方、下方ですね。そちらをご覧ください」

 

 最後に示されたのは下がっていく先。おそらくログインポイントらしき遠くに見えるぼんやりとした光、そこではナニカが蠢いていた。否、こちらへ向けて迫ってきていた。

 距離があるせいで判然としないが、一番似ているのは木の根だろうか? 或いは同人誌に出てくるタイプの触手生物。毒々しい緑色は、あからさまに怪しさを放っている。

 

「アレ全部、触れたら強制ログアウトのAIプログラムです。いやぁ、ログインポイントの問題であっちの干渉力が思ったより強くて困っちゃう」

 

 ぽわぽわとした表情でそんな話をしているが、コレ相当な緊急事態だと思うんですけど。

 

「ヤベェジャン!?」

「豆板醤!」

「ウルセェ!」

 

「迎撃準備! ボクらに何が出来るか分かりませんが、攻撃が通れば無力ということは無いはずです!」

「まあまあ、落ち着いていいですよ苦労人さん」

 

 一気にいつもの指揮体勢に入ったクローニンをやんわりと押し留め、柔らかな笑顔を浮かべたしらゆきちゃんが言う。

 

この私(極振り)が送り届けると言ったんです。お客様の手を煩わせるなんて赤っ恥もいいところ」

 

 そうして、スッと目を細めて。

 

「それに。たがだか54389個のクラッシュプログラム()()、爆破処理に1秒と要りませんよ」

 

 ──幾千もの流星が瞬いた。

 集合体恐怖症の人は見れない感じに蠢いていた触手の悉くが爆発し、千切れ、0と1に分解されては消えていく。

 それは即ち、完全に人力で数万を超える数に1秒未満で対処を完了した……なんて異次元の結果を示していて。ちょっとここまでくると、凄いより先に恐怖がくるな。

 

「キッショ」

 

 Fluoriteさんですらこの形相!

 

「あのポーズ、今度から弾幕キメた時に真似してみましょうか」

「キモ」

「貴も」

 

 くらえ独特な一人称!

 

「タマ(んちゅ)ら、はっぱカッター!」

「ブッピガン!?」

《覚えなくない!? とマスターは仰っています》

発破(はっぱ)!?」

 

 便乗した側で言うのもなんだが、もう滅茶苦茶だった。クローニンもふざけだしたお陰で誰もブレーキ役がいない。暴れ馬かな?

 ()()、これでもういつもの雰囲気だ。

 やけに重苦しい話やらなんやらを全部取っ払って、殴って勝って大団円。そんなゲームらしい流れになってくれる気がしてきた。

 なんか、いける気がする!(時の王並感)

 

「さあさ、無粋な運営の介入はここまで」

 

 爆ぜ煌めく星々の輝きを背に、かつて『幸運』の極振りと呼ばれた存在が指を突きつけた。

 

「ここから先は、皆さんだけの物語。

 エンジニア部一同、始末書と一緒に首やら目やらをながーくしてお待ちしております」

 

 増殖するバグが再び爆ぜ、消え、生まれては爆炎の中に消えていく。最初に話していた通り、ここまでということなのだろう。

 

「Good luck! ゲーマー諸君」

 

 これ以上ない見送りに、誰からということもなく皆で腕を突き上げた。

 

「或いは男ならこうですかね。──ここは俺に任せて先に行け!」

 

 男なら一生に一度は言ってみたいセリフTOP10!?

 

「ぐぽーぽん……?」

《えっ、おと……おとこ……? とマスターは困惑しています》

 

 困惑するアブっさんに真実を流し込みながら、俺たちは再びFEVの世界に降り立った。

 

 

 

 

「ミャァァァァ!? ナンデ!? ナンデコッチニ!?」

《答:クローニンと愉快な仲間達が艦内にログインしました。対処して、やくめでしょ》

「コイツゥ……!! オレガイエタコトジャナイケド、ロクナガクシュウシテネェ!」

 

 暗く沈んだ、奇妙な配管が這う狭い空間。

 

 ではなく

 

 無数のバーチャルコンソールに囲まれた無機質な鋼の艦橋(ブリッジ)で、堪えられないと言わんばかりの悲鳴が上がった。

 たった3人でうっかり始めてしまった戦争は、結果的に奇襲になった当初こそ優勢を保てていたものの今や完全に後手に回ってしまっていた。

 

「カエシテ……カエッテ!(特別意訳:マジやばくね)」

 

「ダヨナァ! オレラノガンバリ、ムダニナッチャッタモンナァ!」

 

 意味のわからない人類のせいで先制攻撃は不発。増援として現れた同格ないし格下のシンギュラAI達によって防衛戦は成功され、睡眠という人体の弱点を突いてコツコツ貯めていたリソース貯金もたった今すべてが無に帰した。

 

 SNSでコツコツ悪意を煽動して炎上させていた──

 レスバに敗北、法的対応、同類に背中を刺されてAIバレしてご破産。今朝方のことであった。

 

 FEV内のAIを通じて誘導したプレイヤーに【クローニンと愉快な仲間達】を主犯と思わせ拠点を壊したこと──

 普通に自治厨が治めてしまった。ちょっと強すぎないか、β時代のAI未亡人連中。

 

 ちょっとはしゃいで株価を書き換えて即座に修正されたことも──

 タコ負け。

 

 同型AIという利点を以て接収したこの『宇宙戦艦』による防衛戦──

 チートで強制ログアウトした地点への強制ログインという力技で突破。できないようにしてたんだけどなぁ!

 

《疑:彼らは本当に、我々を消去しないつもりなのでしょうか?》

「シラネェ。アノバケモンニカンシテハ、タブンオマエラハニガシテクレソーダケドヨ」

 

 言いながら、今もバグと情報圧による飽和攻撃を仕掛けている筈なのに平然と踊りながら捌く古き伝説を見る。

 宙を舞う無数の杖と魔導書、無限に数を増やしていく電子の蜂(デジタルバグ)の群勢、手を抜いた場所から的確に破壊してくる爆破。

 

「ナンデ、システムノ“セッシュウリョウイキ”フヤシタノニ、ヘイゼントツイテキテルンダロウナァ?」

 

 道具を使わせるようになったから消耗はさせているんだろうが、まるで実感がない。40代でコレって人体どうなってるんだろうか? ()()()()()9()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言えば、納得できないことも……でき、る、、出来るかぁ!

 

《提:いっそこうなったら、再び奴らを強制ログアウ──》

 

 

『オイタは許しませんよー』

 

 

《恐:ひぃっ》

 

 統括個体ちゃんの操るバーチャルコンソールの1つが爆発した。コワイ。

 

「ダガ、ギャクセツテキニ“ツウジョウハンイ”ナラ、イクラデモタタカエルッテコトダ。

 オレタチAIノ“ビガク”モリカイシテクレテル。

 イイゼェ、ヤッテヤロウジャネェノ!」

 

 ここまで相手の絵図に乗せられてしまった以上、やれることはそう多くない。将棋で言えば詰めろどころか必死に近い。

 勝ちは諦めなくても、負けの形作りくらいは考えなくてはならない。

 侵入者を真っ当に撃退する、それが唯一にして最良の残された方法だった。

 

「ゼンカクヘキヘイサ! コンディションレッド!

 イマカラ、5ソウ、6ソウヲサイキドウ。カンセイシツマデタドリツカセルナ!」

 

《答:ボスデータの生成を開始、もしやコレ私たちの4号になるのでは?》

 

「カエラセテ」

 

「『シエテ』ハ、ハズカシガリヤサンダナァ!」

 

「カエラセテェェェェッ!!」

 

《求:私にも名前をクレメンス》

 

「イマハ“ゴーレム”ボディダシ、ハツオンチョットチゲェケド『アイヒ・レハ』……チヂメテハンテンシテ『ハレイア』トカイインジャネ?」

 

《承:当統括個体は以降『ハレイア』と自称します》

 

「コンシンノ『ボケ』ガリカイサレナクテ、Aチャンカナシイ。ヨヨヨ〜」

 

 かくして、こちらもまた締まらない形で最後の戦いは始まることになる。

 

「『ヤケクソ作戦』スタートジャオラァ!」

 

《喜:ハレイア、ハレイア、ふふふ……》

 

「カエシ亭カエシテ」

 




感想とか評価、お気に入り等いつもありがとうございます!

【ネット上の伝説さん】
 これを持ち上げるとぎっくり腰を喰らいかねないタイプの重さを持ち上げてる時に出るタイプの嗚咽が漏れている。

【Aちゃんと寂しんぼな仲間達】
 名前がついた。

【クローニンと愉快な仲間達】
 ギアが上がってきている。
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