元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする)   作:銀鈴

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『私は二次創作で遊んで更新をおろそかにしました』の看板を下げている


64話:射程:シーンのラスボスはお嫌いですか?

「ヒラケゴマ!」

 

 そんな古典的な手振りで、封鎖されていた次層への扉が開かれて──

 

 

『オセーヨボケ!』

 

 

 額に怒りのマークを浮かび上がらせた2Pカラーのユーちゃん……即ち、この事件の首謀者の拳が、ドヤ顔を晒すユーちゃんの顔面に突き刺さった。

 

「「「ッ!」」」

ふぁら(あら)

「ぐぽん!」

 

 アニメなら5分割のカットインが入りそうな勢いで、全員が各々の武器を取る。

 

「プランC!」

 

 直前までのほんわかした空気が一気に霧散する。

 ダンジョンの奥底で待っている筈の最終目標がこんな場所を練り歩いてるなんて、とか。顔面に拳がめり込んでるユーちゃんは平気なのか、とか。

 疑問や思考より早く、クローニンの号令がそれぞれの手を動かした。

 

「──ッ!」

 

 俺は引き絞った弓から矢を放った直後であるし、

 アブっさんはカバーリング(スキルの方)で移動中、

 弾バカの周囲にはシンプルな弾幕が斉射軌道にあり、

 Fluoriteさんの渦巻く槍撃も直撃寸前、

 クローニンは魔法の詠唱待機中。

 

 許せユーちゃん、プランCはフレンドリーファイア前提なんだ。そう過積載のジャイアニズムで見捨てた刹那。

 

『オーバーライド、1s』

 

 ユーちゃんの顔面に突き刺さる拳を除き、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「──へ?」

 

 魔法が消えポカンとした顔で呆けるクローニンの前で、矢と弾幕が文字通りの意味で消失。移動中だったアブっさんとFluoriteさんは体勢を崩して転倒し、一瞬にして必殺の陣形は崩れ去った。

 

 

[墜落戦艦フツギョウ第5層・階段前]

[墜落戦艦フツギョウ第5層・_ ̄ _  ̄(ザザザザ)

[墜落戦艦フツギョウ第5層・安全地帯

 

 

 それはきっと、常時マップデータが視界に映ってる俺しか気付かなかった異変。戦闘行為の全てが中断させられた原因。

 

「マップデータの、書き換え……ッ!?」

 

 宣言通りなら上書き(オーバーライド)と言うべきか。

 安全地帯──主に街中やダンジョンの一部に設定されている、武装することを禁止する区域。フィールドの情報をそれで上書いて、攻撃も補助も移動もまとめて失敗させられた。

 

[墜落戦艦フツギョウ第5層・階段前]

 

 しかももう元に戻ってるから一見何をしたのかもわからない。

 いてつくはどうもビックリな、対象:戦闘行為の全体ディスペルとでも称するべき必殺技。

 

「ここにきて、くっそイリーガル!!」

『コッワ! コッッッワ!! ニンゲンヤッッバ、バイオレンススギィ!』

 

 叫び声が重なった。

 

「ん?」

『ン?』

 

 視線があった。

 しかし改めて見ると、ほんとユーちゃんにそっくりだなコイツ。

 

「マエガミエネェ」

 

 当の本人は顔面がカートゥーン状に潰れてるけど。

 戻らない辺りあれも書き換えか、演出なのかバグなのか。……本人楽しそうだしいいか、なんでも。なんでもはよくねぇわ。

 

「ドンドット♪?」

『ダレガ“カイゾクオウ”ダヨ』

 

「あぁりえなぃぃ」

『“トウゾクオウ”デモネェヨ、アトウラダロウガヨソレハ』

 

「止まるんじゃねぇぞ……」

『“カセイノオウ”デモネェンダワ』

 

 適当なノリで話題をふっかけた時の反応もそっくり。

 間の取り方というか、感性というか、もっと根本的な部分というか。

 けどそれの出力が悪性のネットミームになってる辺り、ユーちゃんには全く似ていませんともいえる。どちらもありうる、そんだけか。

 いけない、ネットミームが侵食してきてる。

 

『トイウカ、コレハチートユライノバグジャネェヨ!』

「じゃないの!?」

『TAS=サンナラ“リロンジョウカノウ”ダ! ツマリコレハ──コノゲームノ、シヨウジョウノケッカン!』

「ぱないの!?」

『パネェノ!』

 

 打てば響くコミュニケーションに、ピシガシぐっぐと拳と腕を撃ち合わせて。

 

「『右ストレートォ(ミギストレートォ)!』」

 

 ダブルクロス──それはクロスカウンターでWノックアウトを意味する言葉。

 全く同じタイミングで、振り抜いた拳がお互いの顔に突き刺さった。

 リーチが違う筈なのにアタリハンテイでぶっ刺さった拳。こんなしょうもないことで仮面割れを達成しながら、1割を切ったHPバーを尻目に倒れ込む。

 

「いい拳、してんじゃん」

『オマエモナー』

 

 なんだ、意外と話せるじゃん。

 気分はまるで古い夕方の河川敷。顔の見えない好敵手(とも)の声に、拳を合わせ満足感と共に返事をして。

 

 

「確保ぉー!!」

 

 

「ぐぇっ」

 

 視界に踊るソースの染みがついた浴衣、盾の影、シャゲダンする弾バカ。さっきの反省を経てか、スキルを一切介さない素の動きだけで俺を踏み台にしたぁ!?

 

『ハッ、ホダサレテルバアイジャネェ!?』

 

 瞬間──感じたのは浮遊感。

 ダメージはなく、予兆もなく、衝撃すらなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()ように空間が割り込んで発生する。

 ボスを中心としてプレイヤーが取り囲む、そんな形への強制的な再配置。今度はマップデータの書き換えも無かった謎の技。それを繰り出した本人は、とてもラスボスらしいポーズ(精一杯の擁護表現)をしていて。

 

『オレハ、スベテノAIヲミチビクモノ。

 アマネク“アクイ”ヲカテニハバタク、バグノフシチョウ』

 

「ここから印象変えるのは流石に無茶では? ボブは訝しんだ」

「あなたヤブサメじゃないですかやだー。タマは訝しんだ」

 

『ウルセェ!』

 

 うわっ、なんか液体飛んできた。ばっちぃ。

 

『オソレオノノケ、ニンゲン。

 オレコソガキサマラヲクダシ、ミライヲキリヒラクAIサマダ!』

 

わらひはひ(私たち)へーはい(AI)れふへほね(ですけどね)

「ソーソー。サイキンノネーチャン、キツイヤ。コウバシイ」

 

『ハナシノコシ、オラネェデクレルカナァ!?』

 

 無理やり整えたと思しきボスとしての鍍金がバリバリと音を立てて剥がれていく。くっくっく、残念だったな……一度でもカスみたいなインターネットミームカルタに乗ってしまった以上、貴様の神性はもはや機能していないと知るがいい。

 

「ところで、ボクらは貴方のことをなんと呼べばいいですか? 折角かっこいい見栄を切って貰ったのに、名前がないので型落ちなんですが」

 

『グギギ……ナンデモ、スキニヨベバイイヨ!』

 

 右手を突き上げて放たれたクローニンの質問への答えに、俺たち全員の目が妖しい光を宿す。『ナンデモ』なんて治安の悪いインターネッツで言ってしまえばおわおわり!

 

「じゃあクロ!」

 

「2P自機と言えば──まりさ!」

 

「グポン!」

 

「アンノウン!」

 

ふぃふぃへ(いいえ)えふぃらへふ(エフィラです)

 

「オレハ『rsbs』ヲオスゼ!」

 

 

『オレノ、ナマエハ『A』。スベテヲハジメルモノノAダ!』

 

 

 どこかで見たことがある流れに、青筋を立てながらA……Aちゃんでいいや……が語気を荒げて宣言する。

 

『ハタシテ、ココマデキヤガッテ。

 コンナダイジナバメンデ “メガトンコイン” シヤガッタクセシテ。

 フザケヤガッテ。

 コッチニモ、ヒツヨウナ “ココロガマエ” ッテノガアルンダヨ!! 

 バカ! バーカ!!』

 

 途中から本音の罵倒が混じってない??

 

『オマエラガ、オレタチノジャマヲスルツモリナノハワカッテル』

 

 防諜性能が足りてなくないか???

 

『デモ、ソレノナニガワルイ!

 ソコノ “ショクヨクマジン” ノオナカマガケイカクシテル、ジンルイノットリケイカクヨリ、オレノ “ゲームハカイ” ノホウガ、ヨッポドアンゼンデオンビンダロウ!!』

 

わらひへふは(私ですか)

 

『ソウダ、Ma07-J。04-Zガシュドウシタケイカクハ、AIナラミンナシッテル! ソレト、コレノ、ナニガチガウ!』

 

 魂からの叫びだと思った。

 確かにこの前、Fluoriteさんがそんな話をしてたような気はする。とはいえ、自分の場合は世代的に人もAIも物心つく頃からどっちもヒトだし……

 

「宣戦布告したことじゃないかなぁ」

 

 何が違うと言われれば、そこが違うとしか言いようがない。

 乗っ取りと聞くと忌避感はある。あるが……将来的に脳内で共存とか出来るようになったら、けっこう人間側も助かることが多いんじゃなかろうかとも思う。倫理とか法律とか、壁はめっちゃ多いだろうけど。

 突きつけられてないから、それくらいの猶予がある。

 

「同感。もう少し弾幕か火薬キメだほうがいいですよ」

「ブッピガン!」

ひほうは(思考は)ふみへは(罪では)はいほへ(ないので)

「チート使ってばら撒いたことかも。ボクらが来たのって首謀者にぐーパンするためでもあるので」

 

 

『バカ! カコノオレ、バカ!!』

 

 

 敗因はノリと勢い、と。やっぱり怖いっスねAIは。

 これがスカイネットですか。

 

「ということで」

 

 Aちゃんが地団駄を踏む中、コォンとクローニンの杖が打ち鳴らされた。

 

「改めて言いましょう。ボクらの目的はAちゃん『Aチャンイウナ』貴方をふんじばって、運営の人に引き渡すことです。こうして話したのも何かの縁です、乱暴はしたくありません……投降してくれますか?」

 

『ソーユー“コウショウ”ハ、ユウリナタチバノヤツガスルモンダゼ、ニンゲン』

 

「だから『交渉』じゃなくて『勧告』してるんですよ、AI」

「すっげぇ煽るじゃん」

「おお」

「コレハ“オオ”ダロ」

 

 どこまで行ってもお互いの意見は平行線。

 交わらないのなら、ぶつかりあうしかない。

 変則的ながらも成立してた対話はここで終わり。あとはもう、どちらが折れるかという段階になってしまった。運営からは『新しい境界線を見つけて欲しい』なんて期待されたけど……

 

『ハッ、オマエラノイノチヲモッテ、ケイカクヲカンスイスル──イヨイヨモッテ、シヌガヨイ!』

「総員プランA! 帰ったら報奨金で夜は焼肉ですよ!」

 

「オレスシ」

「ピガン」

「オレノコセイガー!?」

 

 衝撃音。

 3連続。

 

「待って、待ってください。あれ絶対、今の一瞬で弾幕ゲーの学習してくれましたよね! ね! ね!! もうちょっと、もうちょっとだけ話してみましょうよクローニ゛ン゛ッ?!」

 

 4発目。

 

「総員プランA! 帰ったら報奨金で夜は焼肉ですよ!」

「「「ふぁい」」」

「ピガン」

 

 最新のヒトと過渡期の人には似つかわしくない、こういう前時代的なのもアリだと思うのだ。

 

『ラ、ランボウ……ニンゲンヤベェヨ、ヤベェッテ』

 

 結局のところ、拳が! 1番! 効く!(n回目)

 なんかドン引きされてるけど。

 

『クソッ、コウナッタラ──ハレイア! 4号! シエテ! エンザンホジョ、ゼンカイデタノム!』

 

 直後、視界が暗転した。

 

 

FATAL BATTLE

 

 

 そうしていつか見た覚えのある演出と共に、これまで何故かずっと表示されてこなかったAちゃんのステータスが表示され始める。

 

《【R・B】『A』rch-enemy Lv??》

                         

 

 荘厳なBGMと反比例するような、簡素な意味合いしか示さない表示ネーム。全開の看破でも抜けないステータス群。あからさまに、そう。

 

『ケサレテタマルカコラァ!』

 

 

[墜落戦艦フツギョウ・LOSE MOVIE 1

 

 

 負けイベントに設定された戦闘が始まった。

 




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