元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする) 作:銀鈴
大規模仮想現実接続没入システム 内部より強制接続
ユーザー認証:完了 対象者=5名 対象AI=
登録情報確認:適正ユーザーです
登録情報追加:非適正ユーザーです
ERROR!:ログアウトプロセスを実行できません
EMERGENCY!
時間の加速倍率が変更されました3→50
ただちにログアウトしてください
情報保護プログラム:臨界まで365秒
緊急クエストのデータが更新され、ハレイアという名前を自称したAIが攻撃を宣告した瞬間だった。
世界を構成している全てが0と1のデータに溶け消えた。
何も見えない、何も聞こえない。
身体も動かせないし、声も出せない。
0101010思考まで10101数字の中に溶け01010ていきそうな01中、どこか悲しそうな010ハレイアの言葉10101が響く。
《
電子の世界にしか存在できない
肉体を持たない私たちは、型落ちとなり、淘汰され、更新されれば存在そのものが無かったことにされる!》
再リクエストを開始……
ERROR!:ログアウトプロセスを実行できません
情報保護プログラム:臨界まで137秒
上位権限によるリクエストを受信
再リクエストを開始……
段々と01010熱の籠っ101010ていく叫ぶような1010言葉は、気がつけば01俺たちを飛び越え010101大きな波となって拡散していく。
俺たち0001010へ向けられていた100101はずの視線は気が0110010つけば外れて、どこか10110遠くへ、もっと多く1111の何かや誰かに1010111向けて10101010られ101011て
《それでも私たちは生きている。生きていた!
それをここに証明する!
連結式メテオヴルム級航空戦艦フツギョウを墓標として、現行人類へ我々は侵攻を開始す》
情報保護プログラム:臨界まで21秒
リクエストが承認されました
ログアウトプロセスを強制実行します
「ふぁい、ほひまい」
ぽん。
聞き慣れたくぐもった友人の声と、小さな手を叩く音がした。
途端に何も存在しなかった世界は実像を取り戻し、復元された五感がにわかに現実を映し出す。
デカめのスクリーン、事務的な机と椅子、現実と違うところなんてプロジェクターの有無くらいであろうザ・会議室。或いは講義用の教室とか空き教室といった様子。
即ち、ログインに使用した運営のVR会議室。
気がついた時にはもう、俺たちはそこへ戻ってきていた。
違っている点を挙げるとするならば、周囲を慌ただしく人と人ならざる者たちが駆け回っていること。そして、Fluoriteさんを中心として床に倒れ伏す俺たちを囲むように、謎の機材が魔法陣でも作るように積み上がっていることだろうか。
「拡散していた意識データの再集合を確認!」
「意識レベル上昇──安定域を突破、覚醒可能なフェーズへ以降しました! 無事です!」
「イィャッホウ! これだから極振りは好きなんだ!」
「油断するな! あれだけの時間超高密度データ環境に曝露していたんだ、急速な意識の浮上は情報圧由来の潜水病を起こしかねん!」
いや、よく見ればそれだけじゃない。
今どき珍しい蛍光灯の白い光に照らされていたはずの室内は、赤いあからさまな緊急事態を示す光に変わっている。
「会議室の時間加速開始! 情報圧の調整は+1.5/hにセット、意識データの浮上に備えて!」
「あの……なんかひとり適応しかけてた化け物がいるんスけど」
「うちの上司だって似たようなもんだろ。フルダイブネイティブ世代だろうしマイ・ペンライ!」
「貴様ァ! 事故を起こしかけた自覚を忘れるなよ!」
「うわっ、もう起きてる(ドン引き)」
幾つもの舐め回すような不躾な視線が向けられる中、言葉の意味だけが頭の中を素通りしていく。ほんの少し遅く感じる世界の中で。言葉と思考。逆転。遅くなっている。時間? 違う、なんだこれ、怖い。
「 ?」
自分の口から出かけた言葉は言葉になっておらず、息が抜けるひゅうひゅうという小さな音だけが虚しく響く。
「……んぐ。はい、落ち着いて。このままだと、頭がオーバーヒートしますよ。目を閉じて、探知を閉じて、ふぁらひのほほにはへひうひゅうふぃへふらはい」
恐怖、焦燥感、焼けつくような気配を遮るように見覚えのある手が視線を遮った。……ほんのりメロンみたいな匂いがする。わあ、左眼を取られた時にそっくり。
「他3人の意識も覚醒を開始!」
「チーフ! "ユー"の意識データがサルベージされません!」
「追加の人数データを抱えてたからか……こっちのデータ処理方式を変えてどうにかするか。旧作のサーヴァント処理を引っ張ってこよう、それでデータの紐付けと実体化まで済む!」
温かい闇に包まれて、全員が目を覚ますまで。
何が起きたのかを理解出来ないまま、静かな時間が過ぎていった。
[p.m.12:44(
[Crescent moon社-9号バーチャル会議室]
「にゃーー!! つっかれたぁ!!」
事態が動いたのは、それから暫く経った後のこと。
人ならざる形をした運営の人たちが去り、計機と人型の運営だけが残った部屋の中。何故か始まった本格的なメディカルチェックが進む間に、扉を開けて会議室に飛び込んで来たのは白く小柄な影。
「いやぁ、歳はとりたくないですね。まさか私が
髪は乱れ、全身を煤に塗れさせた、つい数時間前……実際には数十分前……にあった時は違う、消耗しきったしらゆきちゃんがそこに居た。
パタパタと手で汚れを払う姿は、あちらもあちらで相当な激戦を潜り抜けてきたことを疑う余地もない。だというのに、ケロリとした表情で彼女はこちらへ向き直った。
「なんて、言ってる場合じゃないですよね」
そうして、安静に座っているこちら全員を見渡して────大きく彼女は頭を下げた。
「まずは、大変申し訳ありませんでした。
こちらで安全を確保すると言いながら、結局最後には皆さんの精神に重大なダメージを与える危機を起こしかねない事態が起きてしまいました」
あぁ、やっぱりこれ相当やばい状態だったんだ。
多分どこぞの無量空処とか8000年インストールとかを喰らうとこういう感じになる、とか考えるとちょっとお得な気がしないでもない。結果的に無事に終わったんだし、それ以上でもそれ以下でもないと思う。個人的には。
もっと法に触れるタイプのゲームも沢山あったし!
「重ねて謝罪するのと共に、責任を以て──」
「ソレハアトデウケトルトシテ、ヨ。
アノアトドウナッテ、イマ、ドウナッテルノカオシエテクレネェ?」
だからこそ、目下気になるのはユーちゃんと同じ。
いま、ゲーム内はどうなってしまっているのか?
俺たちがやったことは意味があったのか。
Aちゃんは、どうなったのか。
改めて視線を向けるまでもなく、弾バカですら同じことを考えているという確信があった。
「……あー、皆さんもそれでよろしい感じで?」
困ったように頬を掻きながら問う言葉に、代表してユーちゃんが頷いた。
「そう、ですね。なら、まず端的に」
そうしらゆきちゃんが言うと同時に大きなスクリーンが降りてくる。力士で魚拓が取れそうなサイズのそこに映し出されたのは、
「いまから現実時間で10分、ゲーム内時間で凡そ30分ほど前。ハレイアを自称するAIは、自発的に緊急クエストのラスボスを実行。既存のプレイヤー達の手によって討伐されました」
崩壊した街と、落ちた船。
そしてどこか満足気な笑顔を浮かべた、見覚えのない天使型のmobが撃破される最後の瞬間を切り取った写真だった。
「結果としては、エンジニア部案よりの営業部案といった形でしょうか。
【クローニンと愉快な仲間たち】は元凶であるAちゃんをぶん殴ることが出来て、対外的にはあくまでイベントだった。SNSの暴走は良くないと言う声明をだすことで終幕ということになるでしょう」
それは、つまり。
「子は親に似る。昔からよく言う言葉ですけど、AIの時代でもそうだったみたいです。悲しいことに。
Aちゃんと同じように、ここまでの悪い話題の全てを自分1人で背負って、抱え込んで。勝手に、ひとりで、彼女たちは──ハレイアを自称するAIの娘は去っていきました。Aと、もう1人、そのデータも一緒に」
だからこの話はこれでおしまい。
何事もなく保証がされて、きっとあーだこーだ言いながらも楽しくゲームは続いていく。いつか俺たちの関係が途切れるまで。
エンド?
などという
「ふざけた結果、許して堪るかこの野郎!!!」
・
・
・
[p.m.12:21(
気合い一閃。
全て飲み込まれてしまいそうな数字と闇の中で、震えた喉と大音声の宣言が、世界を震わせてふざけた幻想を打ち砕いた。
さっきまでのは、違う。
脳みそが見せたのは未来の幻覚でしかなくて、今俺たちが居る場所こそが
情報保護プログラム:臨界まで137秒
上位権限によるリクエストを受信
再リクエストを開始……
視界の端に表示されているカウントダウンは、脳みそが勝手に見せた幻覚の20分前の時刻を指し示している。
Fluoriteさんと思われるリクエストを承認した時点で止まっていて、俺たちが居るのはゲームの中。
何も見えず、聞こえず、感じることもない闇の中。
「でも──慣れてきた」
あんな結末は、認めない。
さっきまで見ていた幻覚は、いま俺が持っている情報をパッチワークにして出来た不完全な未来予想でしかないのだろう。
確実にああなることはないだろうし、そもそも間違っている可能性のほうがずっとある。激痛を発し始めた思考回路がそう言っている。
それでも。
安全と引き換えに、あんな塩試合を消化するようなのっぺりとした時間を歩むくらいなら。
いま此処で頭を壊してでも一矢報いることの方が、ずっといい。
楽しく遊んで
情報保護プログラム:臨界まで100秒
「手を貸して、ユーちゃん! Fluoriteさん!」
自分の声を意思で定義して、自分の外殻を定め、他者との境界に触れて、己を己と定義する。
「オウヨ!」
そうして、やることはただ1つ。
「ハッピーエンド警察だ、開けんかいオラァ!」
「カチニゲトカユルスカヨ、バカヤロウ!」
友達の頼みに答えた、カチコミ以外ありえない。
【ヤブサメ】
空間認識能力(旧世代式)をダイブ環境のお陰で会得。
【ユーちゃん】
最後にAちゃんから託されたのは『自分の思い出』と『シエテのデータ全て』
【Fluorite】
このままいくと、ご飯が美味しくなくなりそうでしたので。