ポケモンの二次創作を書かせてもらいます。よろしくお願いします。
天空に向かって聳え立つ、歴史深きレンガ造りの建物。
ナックルシティの中でも、一際目立つここは、数多くのポケモントレーナー達がやってくる、ポケモンジムである。内部にはスタジアムがあり、そこでトレーナーとジムリーダーが激闘を繰り広げる。
激しい戦闘により、建物に穴が空くこともしばしある。
「オレットさん。挑戦者が来られていますよ」
控室に顔を覗かせる、ドラゴンタイプのトレーナー服を身に着けた青年。
「えぇ……今行くわ」
菫色に輝く、揺れる髪をポニーテールに束ねながら、パープルカラーの瞳の少女は淡い声音で返事を返す。
燃え尽きたボクサーのように、控室の椅子に座っている少女。細く、引き締まった体つき。
紫の稲妻模様が入った、黒い襟詰めシャツの上から明らかにサイズの合っていない紫のパーカーを羽織り、下はシャツと似たような柄のミニスカートとタイツという服装。
その出で立ちは、奇抜ながらも何処か美しさを感じられるものだった。
少女は握りしめたバッジを左胸元へ付ける。
【SUMIRE・OREETO】それが彼女の名前だと言うことを示している。
少女――スミレは椅子から立ち上がり、パーカーを羽織り直して気合いを入れる。
控室のドアノブに手を掛けて、ぴたっと静止する。
「……しっかり」
静かに自分に言い聞かせ、スタジアムへと向かう。
背中に描かれたドラゴンのマーク。彼女は今日も、それを背負って戦うのだ。
あまりに重く、投げ出したいくらいのそれを。
◇
「スミレさん! ほ、本日はよろしくおねがいします!」
白いユニフォームに身を包んだ少年が、元気よく頭を下げた。いかにも、ジムチャレンジ中の夢見る少年と言った感じだ。
「対策はバッチリかしら」
「はい! 勿論です」
「じゃあ、後悔はないわね」
少年は、自信たっぷりに黒と黄色の球体、ハイパーボールを手に取った。
スミレも同じく、パーカーのポケットからそれを取り出し、スタジアムのフィールドへと立つ。
両者睨み合い、場に緊張が走る。
天井付近に設置されたモニターに、カウントダウンが表示され、電子音が木霊する。
カウントが零になり、一際大きな音が会場に響く。
少年は腕を大きく振るい、ハイパーボールを投擲する。
「いっけぇ! バイバニラ!」
ボールが割れ、光の粒子に包まれた存在が姿を現す。
ポケットモンスター――縮めて、ポケモン。個性豊かな生き物。少年のような、ポケモントレーナー達の頼れる相棒となりうる生き物。
まるで二つ並んだソフトクリームのような形をした白いポケモンの名は、バイバニラ。彼がくるりと回転すると、左側の額にある筒の中から冷気が出てきて、やがて空から氷の結晶が次々に落ちてくる。
スミカもボールを投球。彼女のボールから出てきたのは、紫色のヌメヌメしたドラゴン、ヌメルゴン。身体から絶え間なく液を垂らし続ける彼は、あまり怖くない威嚇を行った。
「バイバニラ! れいとうビーム!」
「かえんほうしゃで相殺よ、ヌメルゴン」
二体のポケモンから放たれる、凍てつく光線と灼熱の渦。ステージの中央で激しく衝突し、せめぎ合いとなった。
それを制したのは、バイバニラのれいとうビーム。凍てつく冷気の凝縮線が、ヌメルゴンを襲った。
ポケモンの技、及びポケモン自身にはタイプと呼ばれる概念が存在する。
ヌメルゴンはドラゴンタイプ。対するバイバニラはこおりタイプだ。ドラゴンは、こおりに弱い。
しかしヌメルゴンは、弱点の技を喰らっても怯む様子すら無かった。
「そんな、バイバニラはヌメルゴンに強いはず……!」
「タイプ相性で言えば……確かにそうね」
ヌメルゴンは、得意気な笑みを浮かべる。
「ヌメルゴン、かえんほうしゃ」
竜の小さな口から放たれる、膨大な量の爆炎が、バイバニラの身体を焼き尽くした。
弱点技を諸に受け、再起不能となったバイバニラはボールの中へと戻された。
「くっ……まだまだ、行くぞツンベアー!」
次のボールから放たれるは、白い毛並みの巨体を持つツンベアー。両腕を広げ、けたたましい咆哮を上げた。
(少しは考えてるみたいね……)
ポケモンには、それぞれ特性と呼ばれるものがある。先程のバイバニラは霰を降らすゆきふらし、このツンベアーは霰下で真価を発揮するゆきかき。
「ツンベアー! つららおとし!」
相手が物凄い速さで腕を振るうと、ヌメルゴンの上空に複数本の氷柱が現れる。
勢いよく降ってくるそれに対応しきれず、ヌメルゴンは全てに直撃してしまう。
「頑張ったね」
ボールに入れる瞬間、労いを言葉を掛け、間髪入れず次のポケモンをフィールドに放つ。
登場と同時に咆哮する、漆黒の甲殻に身を包みしドラゴン、オノノクス。本来の色とは異なる、珍しい個体である。
「怯むなツンベアー、つららおとしだ!」
「オノノクス、アイアンテール」
再び落とされる氷柱。それを華麗に回避しながら、オノノクスは敵へ迫りゆく。
飛び跳ねて尻尾を振りかざし、一瞬鋼色に輝いた尾をツンベアーに叩きつける。
ツンベアーはあまりの衝撃に、スタジアムの外壁まで吹き飛ばされてしまう。もう再起不能だと知り、少年はボールへ戻す。
無傷のオノノクスをボールに戻すスミレ。赤と白のボール、モンスターボールを取り出し、フィールドにポケモンを放つ。
「もう決めさせて貰うわね」
フィールドに放たれたポケモン。夜空に溶け込んでしまいそうな漆黒の美しい体皮、大きな翼の内側は青空かのように綺麗な色で、スピーカーに酷似した大きな耳が特徴のポケモンだ。
オンバーン。彼女の相棒だ。
「まだ、まだ負けてない! 行くぞルカリオ!」
少年は、勇ましき蒼の戦士、ルカリオを繰り出した。
両者とも、互いのポケモンをボールに納める。
すると、腕に付けたバンドから赤いエネルギーが溢れ、ボールを包み込む。
巨大化したボールを自分の背後へ思い切り投擲すると、凄まじい轟音と共にボールが開かれ、中のポケモンが解き放たれる。
ボールと同じように、巨大化したルカリオは、真っ赤に染まった空に向かって雄叫びを上げた。
――ダイマックス。ねがいぼしのエネルギーを利用し、ポケモンを巨大化させる技術だ。
しかし、向かい合うオンバーンの様子が違うことに気づく。
オンバーンも巨大化しているのは勿論の事、飛行していた筈だが地面に脚を付いており、翼は刺々しく変貌している。胸元の白い体毛は逆立ち、何よりも変わっているのは耳。丸みを帯びていたそれは、歪な刺々しいものへなっており肥大化。中に広がる渦巻き模様も波打つような模様へ変わっていた。
「キョダイマックス……初めてじゃないでしょ」
特別なダイマックス、キョダイマックス。一部のポケモンにのみ発言するそれは、ダイマックス時の姿を著しく変貌させる。
「ルカリオ! ダイスチル!」
ルカリオが地面を殴りつけると、そこから鋼鉄の荒波が放たれ、オンバーンへ接近してくる。
スミレは臆する事なく、冷静さを保ったまま腕を突き出した。
「オンバーン、キョダイハウリング」
巨大な耳に、紫のエネルギーが収束する。やがてそれは耳の中で凝縮され、凄まじい渦をうねらせながら一気に照射される。
まるで龍の咆哮かのような轟音と共に、紫の渦が漫画の音エフェクトに似た波長を作り出しながら、鋼の荒波を打ち砕き、ルカリオを攻撃する。
ルカリオは最後まで攻撃を受けたが、終わると同時に倒れ、身体がみるみる内に小さくなっていく。
ルカリオはボールへ戻され、バトルは終わる。
相棒の入ったボールを握りしめる、少年の悔しそうな表情。
その顔が、酷く脳裏に焼き付いた。何度も、見てきたようなものなのに。
ジムリーダーって辞めることあるんですかね……ありますよね。
この作品には、オリジナルジムリーダーが多数登場するのでお楽しみに。