ジムリーダー失格   作:聖成 家康

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オンバーン大好き、イエヤスです。
ポケモンの二次創作を書かせてもらいます。よろしくお願いします。


菫色の流星 その1

 

 天空に向かって聳え立つ、歴史深きレンガ造りの建物。

 ナックルシティの中でも、一際目立つここは、数多くのポケモントレーナー達がやってくる、ポケモンジムである。内部にはスタジアムがあり、そこでトレーナーとジムリーダーが激闘を繰り広げる。

 激しい戦闘により、建物に穴が空くこともしばしある。

 

「オレットさん。挑戦者が来られていますよ」

 

 控室に顔を覗かせる、ドラゴンタイプのトレーナー服を身に着けた青年。

 

「えぇ……今行くわ」

 

 菫色に輝く、揺れる髪をポニーテールに束ねながら、パープルカラーの瞳の少女は淡い声音で返事を返す。

 燃え尽きたボクサーのように、控室の椅子に座っている少女。細く、引き締まった体つき。

 紫の稲妻模様が入った、黒い襟詰めシャツの上から明らかにサイズの合っていない紫のパーカーを羽織り、下はシャツと似たような柄のミニスカートとタイツという服装。

 

 その出で立ちは、奇抜ながらも何処か美しさを感じられるものだった。

 

 少女は握りしめたバッジを左胸元へ付ける。

【SUMIRE・OREETO】それが彼女の名前だと言うことを示している。

 少女――スミレは椅子から立ち上がり、パーカーを羽織り直して気合いを入れる。

 

 控室のドアノブに手を掛けて、ぴたっと静止する。

 

「……しっかり」

 

 静かに自分に言い聞かせ、スタジアムへと向かう。

 背中に描かれたドラゴンのマーク。彼女は今日も、それを背負って戦うのだ。

 あまりに重く、投げ出したいくらいのそれを。

 

 

 

 

 

 

「スミレさん! ほ、本日はよろしくおねがいします!」

 

 白いユニフォームに身を包んだ少年が、元気よく頭を下げた。いかにも、ジムチャレンジ中の夢見る少年と言った感じだ。

 

「対策はバッチリかしら」

「はい! 勿論です」

「じゃあ、後悔はないわね」 

 

 少年は、自信たっぷりに黒と黄色の球体、ハイパーボールを手に取った。

 スミレも同じく、パーカーのポケットからそれを取り出し、スタジアムのフィールドへと立つ。

 

 両者睨み合い、場に緊張が走る。

 

 天井付近に設置されたモニターに、カウントダウンが表示され、電子音が木霊する。

 

 カウントが零になり、一際大きな音が会場に響く。

 

 少年は腕を大きく振るい、ハイパーボールを投擲する。

 

「いっけぇ! バイバニラ!」

 

 ボールが割れ、光の粒子に包まれた存在が姿を現す。

 

 ポケットモンスター――縮めて、ポケモン。個性豊かな生き物。少年のような、ポケモントレーナー達の頼れる相棒となりうる生き物。

 

 まるで二つ並んだソフトクリームのような形をした白いポケモンの名は、バイバニラ。彼がくるりと回転すると、左側の額にある筒の中から冷気が出てきて、やがて空から氷の結晶が次々に落ちてくる。

 

 スミカもボールを投球。彼女のボールから出てきたのは、紫色のヌメヌメしたドラゴン、ヌメルゴン。身体から絶え間なく液を垂らし続ける彼は、あまり怖くない威嚇を行った。

 

「バイバニラ! れいとうビーム!」

「かえんほうしゃで相殺よ、ヌメルゴン」

 

 二体のポケモンから放たれる、凍てつく光線と灼熱の渦。ステージの中央で激しく衝突し、せめぎ合いとなった。

 それを制したのは、バイバニラのれいとうビーム。凍てつく冷気の凝縮線が、ヌメルゴンを襲った。

 ポケモンの技、及びポケモン自身にはタイプと呼ばれる概念が存在する。

 ヌメルゴンはドラゴンタイプ。対するバイバニラはこおりタイプだ。ドラゴンは、こおりに弱い。

 

 しかしヌメルゴンは、弱点の技を喰らっても怯む様子すら無かった。

 

「そんな、バイバニラはヌメルゴンに強いはず……!」

「タイプ相性で言えば……確かにそうね」

 

 ヌメルゴンは、得意気な笑みを浮かべる。

 

「ヌメルゴン、かえんほうしゃ」

 

 竜の小さな口から放たれる、膨大な量の爆炎が、バイバニラの身体を焼き尽くした。

 弱点技を諸に受け、再起不能となったバイバニラはボールの中へと戻された。

 

「くっ……まだまだ、行くぞツンベアー!」

 

 次のボールから放たれるは、白い毛並みの巨体を持つツンベアー。両腕を広げ、けたたましい咆哮を上げた。

 

(少しは考えてるみたいね……)

 

 ポケモンには、それぞれ特性と呼ばれるものがある。先程のバイバニラは霰を降らすゆきふらし、このツンベアーは霰下で真価を発揮するゆきかき。

 

「ツンベアー! つららおとし!」

 

 相手が物凄い速さで腕を振るうと、ヌメルゴンの上空に複数本の氷柱が現れる。

 勢いよく降ってくるそれに対応しきれず、ヌメルゴンは全てに直撃してしまう。

 

「頑張ったね」

 

 ボールに入れる瞬間、労いを言葉を掛け、間髪入れず次のポケモンをフィールドに放つ。

 

 登場と同時に咆哮する、漆黒の甲殻に身を包みしドラゴン、オノノクス。本来の色とは異なる、珍しい個体である。

 

「怯むなツンベアー、つららおとしだ!」

「オノノクス、アイアンテール」

 

 再び落とされる氷柱。それを華麗に回避しながら、オノノクスは敵へ迫りゆく。

 飛び跳ねて尻尾を振りかざし、一瞬鋼色に輝いた尾をツンベアーに叩きつける。

 

 ツンベアーはあまりの衝撃に、スタジアムの外壁まで吹き飛ばされてしまう。もう再起不能だと知り、少年はボールへ戻す。

 無傷のオノノクスをボールに戻すスミレ。赤と白のボール、モンスターボールを取り出し、フィールドにポケモンを放つ。

 

「もう決めさせて貰うわね」

 

 フィールドに放たれたポケモン。夜空に溶け込んでしまいそうな漆黒の美しい体皮、大きな翼の内側は青空かのように綺麗な色で、スピーカーに酷似した大きな耳が特徴のポケモンだ。

 オンバーン。彼女の相棒だ。

 

「まだ、まだ負けてない! 行くぞルカリオ!」

 

 少年は、勇ましき蒼の戦士、ルカリオを繰り出した。

 

 両者とも、互いのポケモンをボールに納める。

 すると、腕に付けたバンドから赤いエネルギーが溢れ、ボールを包み込む。

 

 巨大化したボールを自分の背後へ思い切り投擲すると、凄まじい轟音と共にボールが開かれ、中のポケモンが解き放たれる。

 

 ボールと同じように、巨大化したルカリオは、真っ赤に染まった空に向かって雄叫びを上げた。

 ――ダイマックス。ねがいぼしのエネルギーを利用し、ポケモンを巨大化させる技術だ。

 

 しかし、向かい合うオンバーンの様子が違うことに気づく。

 

 オンバーンも巨大化しているのは勿論の事、飛行していた筈だが地面に脚を付いており、翼は刺々しく変貌している。胸元の白い体毛は逆立ち、何よりも変わっているのは耳。丸みを帯びていたそれは、歪な刺々しいものへなっており肥大化。中に広がる渦巻き模様も波打つような模様へ変わっていた。

 

「キョダイマックス……初めてじゃないでしょ」

 

 特別なダイマックス、キョダイマックス。一部のポケモンにのみ発言するそれは、ダイマックス時の姿を著しく変貌させる。

 

「ルカリオ! ダイスチル!」

 

 ルカリオが地面を殴りつけると、そこから鋼鉄の荒波が放たれ、オンバーンへ接近してくる。

 

 スミレは臆する事なく、冷静さを保ったまま腕を突き出した。

 

「オンバーン、キョダイハウリング」

 

 巨大な耳に、紫のエネルギーが収束する。やがてそれは耳の中で凝縮され、凄まじい渦をうねらせながら一気に照射される。

 まるで龍の咆哮かのような轟音と共に、紫の渦が漫画の音エフェクトに似た波長を作り出しながら、鋼の荒波を打ち砕き、ルカリオを攻撃する。

 

 ルカリオは最後まで攻撃を受けたが、終わると同時に倒れ、身体がみるみる内に小さくなっていく。

 ルカリオはボールへ戻され、バトルは終わる。

 

 相棒の入ったボールを握りしめる、少年の悔しそうな表情。

 その顔が、酷く脳裏に焼き付いた。何度も、見てきたようなものなのに。

 

 

 




ジムリーダーって辞めることあるんですかね……ありますよね。
この作品には、オリジナルジムリーダーが多数登場するのでお楽しみに。
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