悪役令嬢、怒りのあまり剣に狂う。   作:4kibou

8 / 30
8/気に入らないヤツ

 

 

 

 

 ――――その昔。

 

 かつて大陸の支配を目論む魔導士たちと戦った剣の女神、聖女ステラ。

 彼女はあるとき、戦勝の宴で暗い表情をしていたひとりの騎士にこんな言葉をかけた。

 

『貴方は折角の祝いの席で陰鬱とした顔をして、私の気分を台無しにしてくれた。よって私は貴方に剣を向ける理由がある』

 

 ベルリオン帝国に代々伝わる決闘の起源である。

 

 先の戦いで旧知の友を殺したコトを悔やんでいた騎士は、それを胸にしまい込みながらも割り切れずにいたのだ。

 その心の機微に触れた聖女ステラによって騎士は救われ、より忠誠を誓うようになる――なんて童話の一頁だが。

 

 王家に残る機密文書……もとい古い時代の記録だと少し違う。

 

 すなわち剣(・)士(・)ステラは、

 

『アンタなに? さっきからため息ばっかついてハァハァハァハァと鬱陶しいのよ表に出なさい。ムカつくからここらで一騎打ちしてやるわ。負けたらそのまま家に帰れタコ』

 

 ……一応付け足(フォロー)しておくと、彼女にはとある〝素質〟があった。

 

 打ち合いの最中に心を見る。

 刃を交わした相手の気持ちを理解する。

 

 剣戟の読心術。

 

 ――ここまで付いてきてくれた騎士のひとりが問題を抱えて、しかも教えてくれない。

 

 分からない、なにもできない――そんなのはまっぴらごめん。

 

 そう思ったステラは決闘を挑み、斬り合い、刃を交え……最後には倒れる騎士の身体を抱きとめ癒し、彼に寄り添ったという。

 

 そんな逸話をもとに広まった決闘だが――――

 

「本来なら介添人が三人、傷を負った時点で勝負アリ、利き手以外は使用禁止の帝国式決闘法が一般ですが、そういうのは七面倒くさいですしどうでもいいですわ。勝負は簡素(シンプル)にいきましょう」

「ぇ…………、」

「――すなわちお互いに参ったと言うか、気を失って戦えなくなるか、死ねば終わり。これ以上ないほど分かりやすい決(・)闘(・)でしょう? 伯爵令嬢?」

「そ、それ、は……そんなの……っ」

 

 クリスティアナの言ったコトはたしかに簡素(シンプル)だ。

 これ以上ないほど余分なモノ、無駄がない。

 

 ……なさすぎて、もはや決闘なんて綺麗な言葉では誤魔化せないぐらいである。

 

「怖いんですの? 逃げるんですの? そんなコトまでしておいて? それとも、わたくしが前に来て今さらビビってますのぉ? ねえ、元平民の養女風情が」

「ッ」

「調子乗ってんじゃねぇんですわよ! 貴女に拒否権なんざあると思ってましてぇ!? どうでもいいんですのよッ!! さっさと頷きなさい!! わたくしが勝てば一生涯殿下に近付かないでもらいましょう!」

「……クリス。そうは言うが、君が負けたらどうするんだい?」

「そんなの決まってますでしょう? 邪魔者はお暇させていただきますわ。追放でも退学でも牢屋にでもなんでも入ってやりますわよ。……まァ、もっとも――――」

 

 くすり、と彼女は母親譲りの紅い唇を歪ませながら、

 

 

「わたくしが負けるだなんて、到底ありえない夢物語なのですがァ――」

「――――ッ!」

「マーガレットっ」

 

 ふらついて体勢を崩したマーガレットを、ライセスが咄嗟に支える。

 

 忙しなく肩を震わせながら強張る少女の姿は実に庇護欲をかきたてるものだ。

 男子ならその様に心も揺れ動くというワケなのだろう。

 

 ――――クリスティアナにはちっとも響かなかったが。

 

 むしろライセスと接触したことでこの女殺してやる容量(ゲージ)がぶち上がったが。

 

「大丈夫かい? マーガレット……」

「っ、は、はい……だい、じょうぶ……です……殿下……――」

「――受けるんだ」

「え…………?」

「決闘を受けてくれ。君に彼女と戦って欲しい。それが俺からの最後のお願いだ」

「さ、さい、ご……って……」

「――――もうそれで、君との関係は終わりでいい。そういうことだ」

「…………っ」

「なァにをふたりでコソコソと喋っておりますのォ? ――さァ、返事はッ!!」

 

 唸るような怒鳴り声。

 あまりの声量に興味本位で見物にきた野次馬(せいと)たちがちらほら集まっている。

 

 だが撤回する気はない。

 いまさら取り下げるつもりは毛頭ない。

 

 ――――彼女の魂に火を点けた。

 

 その理由がどんなモノであれ、その時点で誰もこの少女を止められない。

 クリスティアナ・ヴァルトーレとは、そういう存在だ。

 

 依然変わりなく。

 

「…………わ、わかり、ましたっ……」

「――――、」

「わ、私っ……クリスティアナ様とのけっ、決闘を……お受けいたします……っ」

「――――ハ。そう来なくては。泥棒猫の伯爵令嬢――?」

「…………っ」

 

 くるりと踵を返してクリスティアナはその場を去って行く。

 固まっていた人の波はそれだけでズバッと割れていった。

 

 ……その全部が証人、見聞きしたワケだ。

 

 帝国有数の学園とあって荒事の噂はそれこそ流れるのが早い。

 

 朝の始業前だというのに、ふたりの決闘は一瞬にして全生徒へと広まった。

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

 アドレーラ聖神閃学園の制服は他にない特注品だ。

 かつて剣の女神ステラが自ら手を加えて育てたと言われる聖なる樹、レヴァンの木の繊維が加工して編み込まれている。

 

 そのため防刃性は下手な甲冑より高く、素人の振り回す短剣や包丁程度なら難なく弾く優れもの。

 動きやすさも他の正装(スーツ)や婦人服(ドレス)に比べれば格段にいい。

 

 学園内での決闘はこの制服――もっと言えば長袖の冬用制服――を着用するのが絶対の規則(ルール)だ。

 

「ヴァルトーレ公爵令嬢!」

「……あら、イグニス様。急にどうされましたの?」

「ど、どうもなにも、ないと思う、けど……っ」

 

 更衣室から出て決闘場に向かう途中。

 どこか落ち着きのない様子で走ってきたイグニスは、息も絶え絶えに彼女へと心配そうな視線を向けた。

 

「……決闘、なんて……っ、いきなり、なにを言ってるの……令嬢らしくないよ……」

「わたくしらしいかどうかなんてわたくしが決めることでしてよ? イグニス様にあれこれ言われる筋合いなんてありませんわ」

「で、でもっ……そ、そうだ。ルールだって……っ、帝国式じゃないって、どういうコト……? こんなの、決闘じゃなくて、ただの――」

「イグニス様」

「っ」

 

 クリスティアナは振り返らずに名前を呼ぶ。

 

 彼が足を止めたのは恐怖して――のことではなく。

 眼前の光景に、ただただ驚いたからだった。

 

 ……もちろん、それを彼女は一切気付かなかったけれど。

 

「邪魔をしないでくださいませ。これはわたくしの決闘(モノ)ですわ。それをどうにかしようと言うなら――――貴方から、先に片付ける事になりますの」

「……ヴァルトーレ、公爵令嬢……」

 

 本来なら分からない。

 常人なら気付かない。

 

 おそらくこの学園で過ごす生徒のうち、八割はその輝きの意味を知らない。

 

 けれど――――不運にも彼は残りの二割だ。

 

「……っ、なんで、君が……それを……っ」

 

 ――――剣気の光(そんなモノ)を、宿しているんだと。

 

 

 

 

 

「――――――」

 

 一方で、クリスティアナの心は平時よりずっと冷めきっていた。

 

 学園西側に建てられた円形闘技場。

 その舞台に続く屋内通路は薄暗く、そして長い道のりとなっている。

 

 聞こえてくるのは心臓の音、ひとり分の靴音、呼吸、脈拍、わずかな歓声。

 

 怒りに震えるいつも通りの自分と、冷静に己を客観視するもうひとりの自分。

 

 そのどちらも彼女自身だと自覚した上で、腰に提げた剣に触れる。

 

 学園から貸し出される両刃剣だ。

 とくにコレといった特徴もなく、聖剣みたいな神秘も宿していない安物の武器。

 

 軽く思えるのはおそらく実家で振るっていた木刀が鍛錬用の重りをつけた代物だったからだろう。

 

 これならなにも問題ない、と彼女は微かに笑みを浮かべた。

 

 

 

「――――あら。逃げずにいたんですのねぇ」

 

 

 

 通路を抜けると、石造りの舞台の上には予定通りの先客がいた。

 

 代理人をたてたのでも、ましてや影武者ですらない。

 学園指定の制服に身を包んだのはマーガレット。パラネロス本人だ。

 

 その証拠に遠くで立ち尽くす彼女の肩はいまだに震えている。

 

 ……本当に。

 ああ、なんて――――

 

「情けない真似。あんな啖呵をきっておいて、まだ怯えているの? そこまでして可愛らしさが要るのかしら。それとも男に媚びていないと生きられない?」

「ち、ちがっ……私は、そんな……っ」

「ウザいんですのよ。いい加減。目障りにもほどがありましてよ」

「…………っ、わ、私は。……私は……っ」

 

 ――――気に入らない。

 

 心臓の毛を撫でられたみたいな気持ち悪さに吐き気がした。

 涙目でクリスティアナと対面するマーガレットは見る人が見れば悲劇の美少女(ヒロイン)なのだろう。

 

 腰に提げた剣だってひとつも似合わない。

 

 こんな少女が命を懸けた決闘をするだなんてありえない、かわいそうだ。

 

 ……ふたりの耳へ聞こえてくる観客の声のうち、三割ほどはそんな同情の声だった。

 

「……はッ。まァいいですわよ。どうせ今から、二度と人前に出られないようにしてさしあげますし。これが最後なのですから、せいぜい可愛い子(カマトト)ぶってれば」

「……っ、クリスティアナ、様……!」

 

 ぎゅっと胸の前で手を握るマーガレット。

 

 気丈に振る舞おうとしている風だが、その震えは一切取れていない。

 誰の目からしても彼女の心情は丸分かりだ。

 

 見るからに怖がっている、恐れている、恐怖している。

 

「や……やっぱり、こんなのやめましょう……! 私たちが戦っても、なんにもっ……どうしようも、ありません……! お、お願いです! クリスティアナ様! 私はっ」

「ボケたコト吐(ぬ)かしてんじゃねぇーーーんですよこのスカタンッ!! て(・)め(・)ぇ(・)はすでにわたくしの逆鱗に触れたコトが分かりませんのマヌケがァッ!! 今さらなにを言ったところで遅いんですのよォ!! すでにッ!! 後に引けなくなっているとなぜ分からないのかしらこのアマぁッ!!」

「ひ、ぅ、ぁ――――――」

「泣いても喚いても手遅れですわッ!! 覚悟を決めなさいッ!! わたくしのモノに手を出した覚悟をッ!! そしてこの場でわたくしにぶっ飛ばされる覚悟をォッ!!」

「ぁ、あぁッ――――あぁぁあぁあッ――――わ、たし――――わたしっ……やだ……やだぁっ……! お父さん……ッ……お母さん……っ!」

(――――チッ。なんて醜い……恥をさらしているとなぜ分からないんですの、コイツ)

 

 

 両手で顔をおさえて涙を流すマーガレット。

 

 彼女は元々町のはずれ、路地裏の隅で暮らしていた貧乏な平民の少女だ。

 ある程度の教育は受けておいても、生まれつき貴族だったクリスティアナたちとは違う。

 

 伯爵家の重さが分かっていないのか、分かっていてもできない愚か者なのか。

 

 どちらにせよこの女に容赦はいらない、と彼女は息を吐いた。

 

 よもや、情が移るなんてコトもないのだから。

 

「――――介添人。宣言を」

「は、はいッ! で、ではこれより、クリスティアナ・ヴァルトーレ公爵令嬢と、マーガレット・パラネロス伯爵令嬢の一対一での決闘を行います! りょ、両者、構えッ!」

 

 宣言に従って剣を引き抜く。

 

 クリスティアナは堂々と。

 マーガレットはその重ささえ不慣れなように。

 

 ふたりの姿は正反対。

 決して交わらない平行線のような在り方が、ただ一人と関係を持ったが為に絡まった。

 

 ……少女はまだ気付かない。

 

 それが誰にとって得になったコトか、そんな頭すら回せずに。

 

 

 

 

 

「――――はじめッ!!」

 

 

 

 

 

 介添人の手が振り下ろされるのと、クリスティアナが駆け出すのは同時だった。

 

 待ち侘びた、待ち焦がれた。

 もう我慢なんて効かないと彼女は疾駆する。

 

 手にした刃の重さ。

 胸にうずまく溶岩(マグマ)じみた熱量。

 凍てつく思考と支配された全身の感覚。

 

 そのすべてがこの瞬間のためにあったなら――ああ、それこそ十二分。

 

「っ!」

「大人しくやられなさいッ! 小娘ェ!!」

 

 

 ――――十日間。

 

 学園を休んでいる間、彼女は毎日のように屋敷を抜けだして夜の庭園で剣を振った。

 

 はじめはただ打ち込み用の丸太を叩き割るためだけに。

 母親との剣戟を経験してからは、その真理に辿り着くために。

 

 時間はあった。

 

 毎日のように傷を負ったが、それでもはじめの頃よりかずっとマシ。

 

 日に日に彼女の才能は研ぎ澄まされていく。

 腕の振り、足捌き、体重移動、重心の位置、すなわち身体駆動はキレを増した。

 

 ――――踏み込みひとつで足を挫いていたのは過去の事。

 

 

「わたくしの、手でェッ!!」

「――――――ッ」

 

 

 距離を詰めるのは一瞬だった。

 

 飛ぶように跳ねたクリスティアナが勢いを乗せて刃を走らせる。

 

 真横に引き裂くような薙ぐ剣閃。

 

 ……残念なことに。

 

 いまのマーガレットでは、それを受け止めきれなかった。

 

 

「ぃッ…………!?」

 

 

 剣を合わせただけの防御。

 その威力は殺しきれない。

 

 どすん、と脇腹に刺さる刃金の重さ。

 

 鈍い痛みが少女の身体を駆け巡っていく。

 

 たったの一撃。

 されど一撃。

 

 初手の挨拶代わりで――――もう、視界が霞む。

 

 

「ぅ、ぁ…………――――」

「どぉうしましたのォ!? クソ女ァ!!」

「ッ!!」

 

 

 クリスティアナの声で辛うじて意識を保つ。

 

 追撃は速かった。

 

 今度は頭から真っ二つに裂くような振り下ろし。

 

 反撃の余暇はない。

 防ぐ以外の方法など存在しない。

 

 でも、ああ、それは。

 

 頭上からの体重が乗った一撃を、彼女が無事に受け止められるならの場合で。

 

 

「ぁ、あ、ぁ、ぁ――――――」

「死ねぇええぇえぇえええええぇええぇええッ!!!!」

 

 

 叫びながら刃が叩きつけられる。

 

 剣は――――辛うじて間に合った。

 

 眼前で散らされる火花。

 嚇怒の表情を崩しもしない公爵令嬢。

 

 背筋に走る悪寒は間違いなくマーガレット自身のモノだった。

 

 ――――怖い、怖い、怖い、怖い……!

 

 

「ぁ。ぅ――……ゃ……ッ、ぁ――――」

 

 

 怖い! 怖い!! 怖い!!! 怖い!!!!

 

 

「なぁにその顔、その涙ァ!! 無様に泣いて! ガタガタ震えてみっともないったらありゃしませんわねぇ伯爵令嬢ォ!! ですから貴女は小娘なんですのよねぇ!!」

「ぁあぁッ、ぁああぁぁあああ――――――ッ」

「疾く失せてッ、疾く消えてッ、とっととわたくしの視界から去りなさいクソビッチがァ――――!!」

 

 

 ――――ぞくり、とマーガレットを襲う総毛立つような感覚。

 

 大人げないとか、空気を読めとか。

 そういった手心の類いなんてはじめからクリスティアナには一切ない。

 

 だからこれも決まっていたことで、避けられないことで、どうしようもない現実だ。

 

 

「ッ――――――――!?」

 

 

 急に襲ってくる息の詰まり。

 

 呼吸の阻害。

 

 心臓が萎縮して血がうまく回らない。

 

 肺の中、喉の奥、口も肌も目もなにもかも。

 

 鋭い刃物で刺し貫かれるような痛み。

 

 …………見れば。

 

 この闘技場に於いて彼女(マーガレット)だけに向けられた、暗緑色の剣気(ヒカリ)が――――

 

 

「大嫌いッ、なんですのよォ――――!!」

「かッ――――――!?」

 

 

 心臓を目掛けて打たれる鋭い突き。

 

 刃を合わせられたのは間違いなく偶然だった。

 

 息ができない。

 意識がボウッとする。

 

 一瞬の浮遊感は空を飛んだと錯覚するほど。

 

 ――――数秒して、小さな彼女の体躯は闘技場の壁面に突き刺さった。

 

 

「ぐッ、ぇほッ、ごぼォ――――!?」

 

 ……血が止まらない。

 

 骨が折れている。

 内臓にも刺さったのだろう。

 

 痛みが全身を包んだ。

 

 ……苦しい。

 

 辛い、痛い、泣きたい、やめたい。

 

 

 ……………………怖い。

 

 

「ぁ……ッ、ぁあッ…………、ぅ…………」

 

 

 剣を握る手は痺れて震え続けていた。

 

 呼吸をしなくてはならない。

 でもうまくできない。

 

 息の仕方を忘れたみたいに、いくら喉を動かしてもマトモな酸素が取り込めない。

 

 怪我だってそうだ、診ずとも分かる重傷。

 

 

「ま――……ッ、ぁ、ぃ…………ッ」

 

 

 ――――言えない。

 

 参った、負けだ、降参だ、私の敗北でいい。

 

 ――――言えない。

 

 理由をつければ息ができない。

 

 言葉が発せない。

 声帯すらも痺れている。

 

 ――――言えない、言えない、言えない。

 

 

 ……でも、それは。

 

 

 それはどうして、言えない――――?

 

 

「弱い」

「ッ――――」

 

 

 壁に背をあずけて崩れ落ちたマーガレットへ声がかかる。

 

 ……クリスティアナだ。

 それ以外の人物はありえない。

 

 

「弱い、弱い、弱い、弱いッ! 弱すぎますわ伯爵令嬢ッ!! 所詮は媚びを売るしか能のない阿婆擦れだったということですのォ!? 本ッ当にィ――――」

 

 

 振り上げられた刃が光る。

 

 血反吐に塗れた少女に力はなかった。

 

 反抗する手段など、傍から見て一切なく。

 

 

 ――――怖い。

 

 

「くだらない女ですわッ!! 元平民――――――ッ!!」

 

 

 手が震えている。

 

/怖い。

 息ができない。

 

/怖い。

 苦しい。

 

/怖い。

 痛い。

 

/怖い。

 死ぬのは嫌だ。

 

/怖い。

 辛いのは嫌だ。

 

/怖い。

 もうダメだ、お終いだ、どうにかしてしまうこのままじゃ。

 

 

/怖い、怖い、怖い、怖い!

 

 

「ぁ、あァ――――ッ」

 

 

 

 

 

 死(敗)――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――はァ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場内に響く甲高い音。

 

 銀閃は掬い上げるようにクリスティアナの剣を弾いた。

 

 絶体絶命、瀕死の重傷、窮地に陥った少女を救ったのは――

 

 

 

 

 

「――――、――――…………ぁ……」

 

 

 

 

 

 ――誰でもない。

 

 いまだボロボロの状態で剣を握る、目の前の伯爵令嬢(マーガレット)だった。

 

 

 








》決闘
これがなくっちゃはじまらない。さあ斬り合おうぜぇ!(彼は剣に狂っていた)


》悪役令嬢
たった数日で剣気使えるようになってる化け物。才能の塊だからね、仕方ないね……(諦観)なお本来なら年単位の時間がかかる模様


》ヒロインちゃん
なにが怖くてなにが嫌でなにをそこまで怯えているのかというところ。純粋なんです、信じてください! 本当に超獣が(おまえは一週間の謹慎だ)


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。