後藤勇樹の朝はネットサーフィンから始まる。
「また、ウルトラマンを神様扱いしているな・・・まったく、『ウルトラマンはヒーローだ』っと」
彼は【ネット紳士ザギさん】のハンドルネームで世界各地のネットワークの情報を操作しているのだ。彼を構成する因子の一つダークザギの石堀光彦時代の経験と技術を生かし、ウルトラマンを神とした新興宗教の発生を防いでいた。もっとも、やってることと内容が激しくつりあってないように思われるが。
「さて、次は先日結成された国連防衛軍に技術提供だな・・・」
情報操作が終わった後は、匿名で防衛軍に技術を提供していた。地球人類が自身の力で地球を守れるようにするため、そして地球環境をこれ以上悪化させないためである。
「宇宙人の襲来、怪獣の目覚め・・・これらは地球人類の異常なスピードによる技術発展、それと発展に伴う環境破壊が関係してるの違いない。あの時の論文も送るか」
彼が送った論文の名前は「環境破壊と怪獣発生のメカニズムについて」という物だった。これはユーゼス・ゴッツォがTDFに所属していた時に書いていたものだった。
ネットでの活動を終えると彼はシャワーを浴び、朝食を取って駒王学園に登校する。
「行って来ます。・・・と言っても返事を返してくれる相手は居ないのだがな」
勇樹は、苦笑しながら家を出る。彼は情報操作で戸籍などの問題は解決したが、孤独だけはどうすることも出来なかった。今、彼が持つ絆は防衛隊との戦友としての絆、そしてクラスメートとの絆だった。
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駒王学園でいつも通りの日常を勇樹は過ごしていた。今日は授業中に怪獣が出現せず、日常を謳歌できていた。だが、一つだけいつもと違う事があった。
「居たはずなんだ・・・それで俺は・・・」
いつも陽気で馬鹿をやっているエロ三人衆の一人にして勇樹の最初の友人、兵藤一誠の元気が無いことだった。
「どうした、イッセー?そんなに気を落として・・・彼女にでも振られたのか?」
勇樹は、イッセーが元気を落としたのは彼女に振られたからだ推測した。名前や姿は見たことは無いが元浜達曰くかなりの美人だったことから、幸せの絶頂だったらしい。だから、それとはまったく逆の彼の様子に振られたのだと推測した。しかし、それはイッセーにとっては地雷だったのだ。
「知ってるのか、後藤!?夕麻ちゃん、居たんだよな!本当に現実に居たんだよな!?」
「お、おい、いきなり如何した!?」
イッセーは勇樹に詰め寄った。それに困惑した勇樹はイッセーに訳を話すよう促した。
「す、すまない・・・なあ、後藤は夕麻ちゃんの事を覚えているのか?」
「夕麻・・・響きからして女性の名前だな。その夕麻なる奴がお前が先日彼女が出来たと言っていた彼女のことか?」
「覚えてるんだな!夕麻ちゃんは居たんだよな!?」
「い、いや、名前は聞いていないが、お前が彼女が出来たと騒いでいたのは覚えていただけなのだが・・・」
「そ、そうか・・・」
「・・・詳しく、話してみてくれないか?僕で良ければ力になろう」
イッセーは勇樹に自分に起きた出来事を話す。綺麗な少女に告白されたこと、オッパイが大きかったこと、初めてデートをしたこと、天野夕麻が黒い羽を生やしたこと、そして・・・。
「殺されただと?だが、お前は生きてるじゃないか」
「ああ・・・。それに皆、夕麻ちゃんの記憶が無くなってんだ」
「・・・ふむ」
イッセーは、浜田を始めとした友人やクラスメートが天野夕麻の存在どころか彼が彼女が出来たと騒いでいた事実すら忘れていたことを語った。
「もう、俺、本当に何がなんだかさっぱりで、・・・」
(蘇りか・・・確かに以前のイッセーとは違い、負の力の波動を感じるな)
「イッセー、その天野夕麻なる人物について調べてみようか?」
「・・・えっ!?ど、どうやって?」
「これでもネット関係には強いからな、それで情報を集めてみるさ」
彼はイッセーから天野夕麻の夕麻の特徴を聞き出す。その説明の中でおっぱいの品評がことさら詳しく解説されてたのは、勇樹も苦笑いをせざる終えなかったが。
「ふむ、把握した。任せておけ」
「すまねえな、後藤・・・」
「気にするな友人が困っているときに手を貸すのは当然だろう?それに謝罪より礼の方が嬉しいのだけどね」
「あ、ああ、ありがとう、後藤。今度お勧めのDVD貸してやるぜ!」
「・・・エロ系ではなく、熱血系を頼むぞ」
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「天野夕麻・・・制服から通っている学校は判明した。・・・だが、学籍どころか戸籍が存在しないだと?」
彼は自宅に帰宅後、ネットの海から情報を探し、調べていた。だが、天野夕麻が存在していたという痕跡は何処にも見られなかった。
「イッセーの証言から、この学校の筈なのだが・・・。僕と同類か?」
勇樹はあまりにも痕跡を掴めない天野夕麻という少女は自分と同じ地球外の存在では無いかと推測した。
「しかしそれなら、何故イッセーを・・・?今日、イッセーから感じた負の力が関係しているのか?」
勇樹は、記憶操作や情報操作の線から捜査を開始する。だが、捜査を始めようとした瞬間、彼は因果の乱れを感知する。
「これは・・・何者かが運命に干渉しようとしている?愚かな、そのようなことをすれば因果の乱れにより世界から存在を抹消させられるだけだというのに・・・」
何者かが力技で運命を捻じ伏せようとしているのだ。それは神の所業、だが太陽に近づきすぎたイカロスは墜落するのみ。
「仕方が無い・・・警告ぐらいはしておくか」
そういうと彼は空間転移を行い、因果の乱れの原因の元へ転移した。そこで彼は意外な存在とであう。
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海鳴市、名前の通り海がある綺麗な町だった。だが、その名は、ある物語の舞台として観測者たちに知られている。そして、この町には観測者から転げ落ちた者が存在していた。
「よし、これでアリシアは蘇らせれる!プレシアもアリシアの妹が欲しいという願いを思い出して、フェイトと和解した。これでハッピーエンドに出来る!!」
彼は、知りえざる知識と有り得ないような力を持つ者、俗に言う転生者だった。彼はテスタロッサ一家を救済する為に行動しており、遂にその最終段階に入ろうとしていた。
「死者蘇生か・・・」
「っ!?誰だ!」
突如、聞こえた声に彼は思わず振り返る。そこには、短い黒い髪の鋭い眼差しの男が居た。その男は彼に比べれば年をとっているが、それでも少年と呼べる姿でしかなかった。だが、その見た目とは裏腹に圧力すら感じるプレッシャーを放っていた。
「アリシア・テスタロッサの蘇生を止めろ」
「・・・なんだって?」
「アリシアの蘇生は、世界の筋書きにない。それは因果律への反逆だ」
「なんだと、人を救うのに理由がいるのかよ!!」
「人を救うのに理由などは要らんな」
「は・・・?」
彼は、謎の少年の言葉に惚けるしかなかった。アリシアを蘇らすなと言っていたにも関わらず人を救うのに理由は要らないと矛盾したことを言ったからだ。
「僕は、君のために忠告にしに来た」
「俺に、忠告・・・?」
「人の魂は世界の観測端末でもある、その端末が予想外の行動を起こしたら世界は排除しようとするだろうな。その結果、蘇らせたお前はアキサム・ドーウィンや鹿目まどかと似たような罰を受けることになるだろう」
「・・・つまり、何が言いたいんだよ」
「つまりだ、お前はアリシア蘇生の代償として、この世界の全ての存在から忘れ去られると言う事だ」
「なっ!?」
「世界に干渉できるほどの力があるならともかく、人間でしかない貴様は世界から弾き出されるだろう。それでもアリシアの蘇生を行うか・・・良く考えるのだな」
そういうと謎の少年は現れたときと同じように突然姿を消したのだった。
話をしよう。
少年は、あれから悩んだ末、アリシアの蘇生を敢行した。
彼にとって忠言は、虚偽だと思ったのか、真実だと知りながら覚悟したのか。
分かるのは、彼という存在は忘れ去られ、世界線が変わったということだ。
彼がかつて居たには別の同類が変わりに配置され、更には踏み台とも呼ばれる者も発生した。
ただ、前の世界線と決定的に違うのは、アリシア・テスタロッサが自縛霊として存在していたことだ。
彼女が霊として存在する、それは彼が存在していた証であろう。名前すらも忘れ去られた転生者の存在証明・・・。
「しかし、リリカルなのは、か。この世界には魔法も存在するのか・・・もしや、天野夕麻はオカルト関係か?」
謎の少年、後藤勇樹は、転生者と海鳴市の存在から魔法が存在することを認識した。そして、それは彼に新たな視点を与えたのだった。
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「俺はハーレム王になる!」
あれから、しばしの時が流れ、兵藤一誠は事の真実を知る。天野夕麻が堕天子である事、神器〈セイクりっど・ギア〉を狙われて殺された事、悪魔になる事で自分は生き残れた事などだ。そして、悪魔社会の情勢を聞きリアス・グレモリーの眷属として生きる事決めたのだ。
「あれ・・・そういや、あいつなんで・・・?」
「どうしたんですか、イッセー君?」
リアス・グレモリーのクイーンにして駒王学園3年生の姫島朱乃は兵藤一誠に話しかける。
「いや・・・一人だけ夕麻ちゃんの事・・・って言うか俺が彼女が出来た事を覚えていた奴がいるんですよ」
「なんですって?イッセー、そいつの名前は?」
オカルト研究部部長にしてグレモリー眷族の王、リアス・グレモリーはイッセーを問い詰める。この周辺の裏社会は、グレモリー家の領地であり、そこの秩序を守る者なのだ。
「ええと、そいつは、ちょっと前に転校してきて、名前は後藤勇樹って言うんです」
歯車がカチリと嵌った。本来なら重ならぬ存在が重なり合った。それは、彼がタイムダイバーだからなのか、太極のシナリオの配役だからなのか、それは誰にも分からない。
分かる事は、これは新たな可能性ということだけだ。