すっかり日も沈み夜の帳が訪れた街中。
そこには後藤勇樹とリアス・グレモリー率いるグレモリー眷属が相対していた。
勇樹は友人の頼みと人助けの為、リアスは、下僕の教育と悪魔の仕事の為にはぐれ悪魔バイサーを狙っていた。だがバイサーは勇樹によって滅ぼされ、しかも討伐に来たリアス・グレモリーたちと遭遇してしまったのだ。
「後藤勇樹、貴方は何者なのかしら?」
リアスはその美しい顔に輝く宝石の様な目を細めて勇樹を問い詰める。グレモリー家は、人間界の闇社会において駒王学園一帯を治める家なのだ。その家の者として彼女は不審人物である彼の正体を明らかにしなければならない。何せ最近自分の領地で怪しげな行動をしているモノたちがいるのだから。
「その前に貴様らの正体を明かして欲しいものだな」
勇樹は礼儀として先に正体を明かすように通達した。彼は現在の状況に多少なりとも混乱していた。何せ、リアス・グレモリーの後ろに控える人物はどれも有名人。
しかも、その中には彼の友人、兵藤一誠が居たのだからだ。
「しらを切るのかしら?」
だがリアスにとってその言葉は誤魔化してる様にしか聞こえなかった。闇の世界において自分のことひいては自らの家の事を知らないモノが居るはずがないからだ。そして、はぐれ悪魔バイサーを滅ぼした彼がただの人間でない事は明白だった。
「そんな事して何のメリットがある僕に分かるのは貴様らが一誠と似た負の波動を放っている事だけだ。」
そんなリアスに勇樹は多少苛立ちながら言葉を返す。何故、友人がいるのか、友人は一体どうなってしまったのか。その焦りが彼の心を焦がしていく。
「負の波動?」
彼女は勇樹の言葉に眉を顰める。今まで聞いたことの無い言葉だったからだ。
「ああ、感じるぞ。邪悪では無いにしろ闇に属する波動をな」
勇樹はヤプールの様に邪悪さこそ感じないが闇を想起させる波動は放っている事を彼らから感じていた。
「・・・いいわ説明してあげる。私たちは悪魔よ」
その言葉にリアスは察する。何らかの能力や神器を持っているかは知れないが闇の世界に詳しくない人間だという事を。無論、不審なのは変わらず半信半疑な状態であったが。
「悪魔、だと・・・?」
リアス・グレモリーの言った単語は彼を警戒を抱いた。彼にとっての悪魔とはヤプールを始めとした邪悪かつ強大な存在ばからだからだ。
「ええ、私はグレモリー家のリアス・グレモリーよ」
しかし、彼女の言葉で別の知識が思い出された。
「グレモリー・・・確かソロモン72柱の序列56位の悪魔だったが・・・」
そう、地球の神話上の悪魔にグレモリーの名前があったことを思い出したのだ。
「あら、良く知っているわね」
闇の世界の事を知らないみたいだが、オカルト系は知っているのか。それともボロが出たのか。彼女はそれを見極めようとした。
「オカルト系にはそれなりの興味があったからな・・・本物か?」
彼の知識の中にはカバラなどを応用した兵器などがあった。それゆえにユダヤ系の文化についてはある程度の知識があるのだ。
「ええ、正真正銘の悪魔よ」
勇樹はリアスの言葉を信じる事にした。地球の悪魔は、いや、十字教の悪魔は他の神話における神々である事が多い。それゆえに彼らから邪悪な気配が無いのだと答えを出したのだ。
「さて、あなたの事も教えてもらえるかしら?」
「ふむ・・・」
勇樹は自分の正体を何処まで明かすか思案する。そして、ある結果を出した。
「世間を騒がしてる奴と同じ存在、つまり宇宙人だ」
自分が異星人の血を引いてる事を明かしたのだ。
「なんですって!?あなた、まさか!」
もっとも、その答えにリアス・グレモリーは驚くしかなかった。一昔前なら嘘偽りだと言われるだろうが昨今の地球は異星人そして怪獣の出現が多発しており、有り得ない事では無かったからだ。
「そのまさかだ。僕は半分ほど異星人の血を引いている」
勇樹は真実では無い事実を言う。彼を構成する因子にユーゼス・ゴッツォがおり、バード星人のハーフだというのは事実だ。だが、彼は純血の地球人そしてウルティノイドの因子も持っていた。
「宇宙人・・・!まさか、実際に遭遇するとはね」
かつてリアスは、イッセーの言葉から後藤勇樹に不信感を持ち、調査した。だが、その結果得られたのは、彼が情報を改竄して潜り込んだ事だけで三大勢力や他の神話勢力との繋がりがあるかどうか分からずじまいだった。
だが、それも彼が宇宙人だというならある程度は納得出来る物だった。
「イッセー、お前に聞きたいことがある」
リアスやその眷属が宇宙人との遭遇に驚いている時、勇樹は気になっていたことを聞いた。
「な、なんだ・・・?」
「天野夕麻は、オカルト関係だったのか?」
彼の推測の一つ天野夕麻はオカルトの存在であるという事を。
「あ、ああ・・・部長が言うには、夕麻ちゃんは堕天使らしい」
イッセーはそれを肯定した。
「そうか・・・結局、僕は役立たずか」
イッセーの言葉に肩を落とす。友人の助けになる事が出来なかった。そして、心に落ちた影はすれ違いを起こす。
「リアス・グレモリー、貴様に聞きたいことがある」
勇樹は、元々鋭い目を更にリアス・グレモリーを見る。いや、もはや睨むと言っても良いだろう。
「・・・何かしら?」
雰囲気の変わった勇樹に彼女は身構える。
「イッセーから負の波動・・・悪魔の力を感じるのは、お前が原因か」
そう気に成っていた事をだがあえて避けていた事を聞いた。それは、イッセーは既に人間じゃないのかという事を。
「そうよ、堕天使により死に掛けていたその命を私が拾い上げて下僕としたのよ」
兵藤一誠は堕天使により殺されかけリアス・グレモリーがその命を救ったのだ。だが悪魔社会について詳しくない勇樹にとって見過ごせない言葉があった。
「下僕だと・・・!?貴様!イッセーに何を!!」
下僕にした。その言葉で勇樹は激昂した。イッセーが怒っている勇樹を宥めながら、リアスは説明をした。三大勢力の事を、悪魔のことを、神器の事を・・・。
「・・・理解はした」
リアスの説明に勇樹は理解を示した。だが・・・。
「だが、納得できるか!お前はそれで良いのか?人と異なる時間を生きる事になるんだぞ」
感情は別だった。そしてイッセーに言う。その内容は彼自身の恐怖でもあった。地球人と異星人そして人工ウルトラマンが一つになった彼は、親しいものが自分を置いていなくなるのではないか?そういう思いを心の何処かで思っていた。そして、その恐怖は激しい感情となってイッセーにぶつかる。
「納得できるも何も異なる時間って言い割れても実感がわかないし、それにあのままじゃ俺は死んでいたらしいし」
だがイッセーにとって死んだ命を救われたのだ。そして、時間に置いてかれると言われても今の彼には実感がわかなかった。
「ぐぅ!・・・だが!」
イッセーの言葉に怯む勇樹。言葉を更に重ねようとするが・・・。
「はいはい、ストップ」
成り行きを見守っていたリアス・グレモリーに止められた。
「これ以上ここで言い争っていても仕方が無いわ」
リアスは勇樹の正体が何であれイッセーの事を気にかけていることがわかった。そして、これ以上続けるとヒートアップして話どころか関係がこじれる事も。
「後日、日を改めて話ましょう」
その言葉により彼らは別れた。だが、勇樹と一誠の関係に暗いものを落としたままで・・・。
***
彼らが夜の街中で遭遇した後、駒王学園ではこのような事があった。
「おい、イッセー。後藤となんかあったのか?」
元浜が一誠に話しかける。勇樹と一誠、学校で顔を会わせた彼らは気まずそうに顔をそらした。そして、一日中どことなくヨソヨソしくぎこちない日を過ごしていた。
「い、いや、別に・・・」
イッセー、彼もまた勇樹との接し方を悩んでいた。友人の正体が宇宙人である。これについては、悪魔が回りに居る時点でそこまで気にする点ではない。むしろ、喧嘩別れに近い形で別れた事が一誠を躊躇わしていた。
「まあ、良い。実は、お勧めの品が手に入ったのでな・・・これだ!」
「お、おおおぉぉ!!」
松田がイッセーの机に子供禁制のDVDがぶちまけられる。松田と元浜、彼らなりにイッセーを慰めようとしているのだ。
「うわー・・・・またやってるよ、あの三人組」
そしていつも通り周囲に顰蹙を買っていた。
「・・・・・・・・」
それを横目にしながら勇樹は黄昏ていた。一誠と仲直りする切欠が掴めない状態だったのだ。
本来、リアス・グレモリーはあの邂逅の日から数日の期間を置いて勇樹を呼び出すつもりだった。しかし、その数日の間にある事件が起こり、それどころでは無くなってしまったのだった。
そして、切欠が掴めずままで過ごしていた。
***
あれから数日後、彼は下校している時、意外な人物と再開した。
「あ、あなたは!?」
「む・・?」
街の中で彼に話しかけて来た女性が居た。年の頃は自分と同じくらいで学校の制服を着ていた。清楚なイメージで黒い長髪が少女の印象を大和撫子とつなぎ合わせていた。一言で言うなら可憐な美少女であろう。
そして、勇樹はその少女に会った事がある。
「お前はあの時の・・・」
「先日は助けていただいてありがとうございます!」
そう、グレモリー一党と邂逅した日に滅したはぐれ悪魔に追われていた少女だった。
「ふむ、無事だったようだな」
無事な姿に双方安堵する。勇樹にとっては、救った人物が助かった事。少女にとっては、自分の代わりに犠牲になったのではないかという不安から脱せたことだろう。
「ええ、おかげさまで・・・あの」
少女は感謝しながら言葉を紡ぎ出す。
「何だ?」
「お礼がしたいのですが・・・」
助けてくれた事、生きていてくれた事、それらのことに彼女は感謝と礼をしたかったのだ。
「別に礼を言って貰うほどの事では無いが・・・」
勇樹にとって、あの程度の敵は片手間でしかなく、どのみちグレモリー率いる悪魔たちによってあの化け物は退治されることを知っていた。それゆえ、自分が礼を受け取るほどの事では無いと思っていた。
「あの・・・ご迷惑でしたか?」
少女は顔を俯かせながら、勇樹を見つめる。
「いや・・・わかった、礼を受けよう」
少女の姿に罪悪感が沸いたのか、礼を受け取る後藤勇樹。
「それじゃあ、近くに私の家があるので、どうぞ!」
少女は勇樹を案内しようとする。
「あ、そうだ!自己紹介を忘れてましたね・・・私は服部夏美と言います」
「そうか・・・僕の名は後藤勇樹だ」
彼らはお互いに自己紹介をして、少女の家を目指す。
***
夏美の家は普通の一戸建て住宅で、彼は和室に通された。
「あの粗茶ですが、どうぞ」
勇樹の前にお茶が出されるが、お茶の匂いからそれが高級なモノだと言う事は分かる人には分かるだろう。
「本当にあの時はありがとうございます。あの時はもう駄目かと思いましたよ」
夏美は先日の化け物を思い出したのか身を震わせながら言った。
「もう気にする事は無い。それにあの化け物はもう存在しない。」
勇樹は夏美を宥める様に、アノはぐれ悪魔が滅ぼされた事を告げた。
「・・・あ、あの!」
夏美は勇樹の言葉を受けて、勇樹の顔をまっすぐ見つめた。あの時の化け物の事などを聞こうとしているのだろうか。
「おや、夏美。帰ってきてたのかい?」
しかし、それは遮られてしまった。
「あっ、お父さん!」
服部夏美の父親が部屋の奥から出てきたのだ。彼女の父親は人の良さそうな顔をした男性だった。
「ん?夏美、その方は?夏美のボーイフレンドかい?」
夏美の父親は勇樹の姿を見つけた。
「ち、違うよ、この人は私を助けてくれた勇樹さんだよ!」
夏美は慌てて否定する。あくまで恩人であって恋人ではない。夏美自身は、無意識にある意味王子様的な登場をした勇樹を多少気にしているが。
だが、勇樹はそれどころでは無かった。
「・・・ゼットン星人、だと」
「「!?」」
普通の民家に緊張が襲う。
勇樹の持つ力には相手の正体を暴く力がある。そして、その力により夏美の父親を見た瞬間、彼の真実の顔が見えたのだ。
それはこの世界に存在しないはずのM78スペースの異星人、ゼットン星人だった。
次回は、堕天使戦の開始です。