私を忘れた貴女へ   作:早雪試算

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 初めまして。いつもは別の投稿サイトでラブライブ!スーパースター‼︎の二次創作(主にクゥすみ)を書いているのですが、今はそちらのサイトで書くのが憚れるため、しばらくはこちらでお世話になります。
 クゥすみで記憶喪失ネタが書きたかったので、それをここで書きます。少しずつゆっくりと続けていけたらと思っています。よろしくお願いいたします。


Prologue

 世界で一番幸せになりたいだなんて、そんな高望みはしないから、ようやく手に入れた確かな幸せだけは壊してしまわないようにと、とにかく丁寧に扱ってきたつもりだった。

 私は、可可が隣にいてくれればそれでよかった。

 可可の恋人でいられれば、どんな時も幸せだった。

 だから、私はその場所を大切にしてきたというのに。

 何の覚悟もなく取った友人からの電話で、私の人生は一変してしまった。

『すみれちゃん、落ち着いて聞いて。可可ちゃんが、病院に運ばれていったの』

 その日、可可はかのんとショッピングに出かけると言っていた。

「恋人の私をほっといてかのんとデートに行くの?」とわざとらしく拗ねたように言った時、可可は「今度のデートはすみれの好きな場所のどこにだって付き合ってあげマスから!」と調子良く言ったのだった。

 私は、当然のように次の日曜日には可可とデートができると思い込んでいた。

 だから、可可が事故にあっただなんて、そんなのちっとも信じられなかった。

「……どこの病院?」

 なんとか声を絞り出し、かのんから病院の名前を聞き出した私は、すぐに走り出した。

 

 病院に着き、受付の女性に事情を話せば、可可が一時的に身を置いている病室へと案内してくれた。道すがら、「唐さんの容態はそこまで悪くはありません。ですから、どうかお気を確かに」と激励された。

 聞けば、可可は既に目を覚ましているらしい。とりあえず最悪の事態にはならなかったことを知り、少しだけ肩の荷がおりた。

 病室に近づくと、かのんの声が聞こえてきた。「よかった、本当によかったよぉ〜!」と涙声で話すその声に、私はいよいよ安心しきってしまった。

 病院に搬送されたと聞いたから、よほどひどい事故だったんだと想像したけれど、そこまで無惨なものではなかったらしい。

 部屋を覗くと、ベッドの上で頭に包帯を数周分だけ巻いた可可が、かのんに向かって元気そうに笑っていた。

「可可ちゃん死んじゃうかと思ったよぉ〜!」

「かのんは大ゲサすぎデス。可可はこの通りピンピンしてマス!」

 明るい笑顔を見せている可可に、私は胸を撫で下ろした。

 2人に近づくと、かのんが先に私に気がついた。

「あ、すみれちゃんっ! 可可ちゃん、さっき目を覚ましたんだよ〜!」

 目尻に涙を湛えながら言うかのんに、私は「そうみたいね。本当によかった」と返した。

 恋人の無事に、私は少しだけ舞い上がってしまったのだろう。

「まったく、可可ったら心配かけて……恋人の私を置いて死んじゃうとか、絶対に許さないわよ?」

 そんなセリフを、恥ずかしげもなく言えてしまった。

 けれど、次の瞬間、私は可可の表情に違和感を覚えた。

 可可は、私を見ながら首を傾げたのだ。

「……可可?」

 不思議に思って名前を呼ぶと、可可はすぐに笑顔を作って、かのんにこう言った。

「こちらの方は、かのんのお友達デスか?」

 それは、とても冗談を言っているようには聞こえなかった。

 事故の後遺症か、可可は私のことを忘れていたのだった。

 そのことがはっきりと分かった瞬間、私の中の時間が止まった。

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