最低最強個性は出落ち必須   作:八重歯

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消太とロックフェス!

 

 

雲一つない晴天!

朝日は燦々と降り注いでいる!

晴れ渡った空の下、俺は腰に手を当て仁王立ちし、眩い朝の日差しを浴びて目を細めた。

 

 

「いやー!ロックフェス日和!」

「おい、早くテント張るぞ」

「はいはーい!」

 

 

ごそごそとデイキャンプ用のテントを設置している消太に声をかけられ、俺もすぐに駆け寄り杭?かなんかわならん鉄製の金具を掴んだ。

 

 

「消太!これってどうすんの?」

「四隅に輪っかがあるだろ?それに通して、ハンマーで固定するんだ」

 

 

テキパキと組み立てながら指示する消太に頷き、キョロキョロ見渡しながら四隅を探す。

あ、これかな?

 

 

「これだよな?よーし!──えい!!」

 

 

勢いよくハンマーを振り下ろし、カツーン!と杭に打ち付ける。

 

すると、地面に接していた杭がめり込んだ衝撃で、物凄い亀裂が地面に走った。多分かなり深くまで割れてる。

 

 

「──あ」

「……笑心(にこ)…お前…」

「──あっはっはっ!こんな時もある!」

 

 

周りの人達が突如揺れて大きく割れた地面に叫ぶ声を後ろに聞きながら──何人かが立っていられず叫んでいた──俺はベルトポーチから小さな小型セロハンテープを取り出した。

 

 

「ごめんなぁ地球さん!」

 

 

割れた地面にペタペタとテープをちぎっては貼っていく。別に特注のテープではない、近くの100均で買ったやや切れ味と粘着力の悪い良くあるやつだ。

どう考えても地割れを直すことは出来なさそうだが、ちゃんと地面はくっつき元通りになる。

 

 

「よし!」

「よし。じゃねぇよ。いちいち地面が割れてたら合理的じゃねぇ」

「でたー!合理的主義!いやぁでもテンション上がっちゃってさぁ!!」

 

 

うっかり個性を使って地面が割れてしまった。感情が昂ると、ついついやってしまう。消太に長年鍛えられて無差別に個性を使う事はなくなったけど、やっぱ感情が昂ると抑えられないな。

 

感情的になるのも仕方がない!

消太と!ロックフェスに来ているのだから!寝袋でいいだろと言う消太にデイキャンプ用のちっちゃいテントと、ちっちゃいバーベキューセットも用意してもらったし、これでテンションが上がらない方がおかしい!

 

 

そう、俺と消太は後数時間後に開催される大規模ロックフェスに明け方から来ていた。

中学校最後の全国テストで、全ての科目全国1位を取れたら何でも好きな所に連れて行ってやる、そう消太は俺に約束してくれて、なんとかめちゃくちゃ勉強して、ちょっと個性に頼って──全科目1位になり、こうしてロックフェスに来ることが出来たのだ!

 

消太は俺の厄介な個性を制御できるように特訓してくれた師匠のような兄貴のような存在だ。今は一緒に暮らしてないけど、数年はマジでおはようからおやすみまで一緒に過ごしていた。──消太しか、俺の個性を止めれないから仕方ない、めちゃくちゃ不便かけてしまった自覚はある。

 

消太は学校の先生だし、忙しいしで最近は滅多に会えなくて。久しぶりのオフに一泊テント泊のロックフェス!テンションアゲアゲなのは仕方がない!

 

 

「楽しむっきゃない!踊りたい!サタデーナイッ!!」

 

 

右手をばっと上にあげ、人差し指と親指を立ててバキューンみたいにして反対の手は腰に当てる。

するとどこからともなくギラギラ輝くミラーボールが空中に現れ、そこかしこに虹色の光線を発しながらくるくる回る。なんかずんちゃずんちゃと楽しげな音が響き、取りあえず音に乗って腕を振る。

 

 

「サタデーでもナイトでもないが。まぁ、踊っとけ」

「イェイイェイ!フゥフゥ!!」

 

 

俺がテントを組み立てるより、周りでリズムに乗って踊ってた方が合理的だと判断した消太は一人でさっさとテントを建てる。

仕方ない、音楽は止まらないのだから、踊るっきゃない!

俺がクラブダンスを踊り狂っているうちに、テントの設置がようやく完成した。

 

 

「笑心」

「──おっ。ありがとう消太!」

 

 

消太が俺を見た事により、ミラーボールと音楽を消太の個性で消えて、ようやく俺はダンスの呪縛から解放された。

 

 

「俺は時間まで寝る」

「えー!」

「クーラーボックスとカゴにあるものは好きに飲み食いしていい。──じゃあおやすみ」

「…おやすみぃ」

 

 

仕方ない、消太は深夜から車運転してくれたし、まだ朝の5時だし、ロックフェス開催は10時だからあと5時間はある。

ごそごそとテントの中にいつもの寝袋を広げミノムシ状態になって寝てしまった消太を見てため息をつきつつ、俺はテント近くに置いたアウトドアチェアに座り、クーラーボックスの中からアセロラジュースを取り出して飲みつつケータイのプレイリストをぽちぽち洗濯してイヤホンをつけ、温かい日差しの中消太が起きるまでゆったりとした時間を過ごした。

 

まぁ、1時間くらいで眠気が来て、俺も消太の隣でミノムシになって時間まで爆睡してしまったのだが。

 

 

──ピピピピ

 

 

 

ケータイからアラームが響き、もそもそと起き出して欠伸を噛み殺す。アイマスクをつけている消太はまだ夢の中にいるようで一向に起きる気配はない。

 

 

「おーい、フェス始まるぞー」

 

 

肩らへんを揺すれば、消太の眉間に皺が寄り、小さな呻き声をあげ、俺の腕から逃れるようにもぞもぞと動く。

個性のせいで酷使されている目は5時間寝てもまだ疲れているように見える。……俺の願いを叶えるためにフェスに連れてきてもらったけど、本当は寝たかったんだろうなぁ。

 

 

「……寝かしといてやろうかな」

 

 

消太はロックフェスに全然興味無さそうだし。このまま存分に寝かした方がいいかもしれない。一緒にイェイイェイしたかったけど、消太がフゥフゥしてるところなんてあんま想像出来ないし。

 

 

俺は音を立てないようにテントから抜け出し、遠くから響く重低音の方へと駆け出した。

 

 

すでに数々の出店が並んでいて──小腹が空いていたからフランクフルトを購入した、うん、うまい!──沢山のロックファンがステージへと集まっている。近くで配られていたタイムテーブルを見つつ、目当てのバンドが出演している1番大きなステージへ向かう。

 

消太はいないし、あんま感情的にならないようにしないとなぁ。個性出して他の人に迷惑かけるわけにもいかないし。

 

頬をぴしゃりと叩き、気合を入れて俺はロックフェスへと身を投じた。

 

 

 

 

暫くは平和だった。ときどき休憩を挟むためにテントに戻って消太の様子を見つつ、飲み物を飲む。もう夕方の5時だけど消太はいつ見ても変わらずミノムシ状態だった。

 

夜になればバーベキューする予定だし、お腹も空いたら起きてくるだろう。

 

 

そう思い、夕方になるとさらに盛り上がりを見せる観衆と共にヘイヘイ!しながら音楽に乗り腕を上げ身体を揺らし叫んでいた。

 

 

楽しく熱気に包まれたステージとロックファンの最高の気分を台無しにしたのは、つんざくような悲鳴と大きな破壊音。

 

 

「うわっ!?」「な、なにっ!?」「きゃあーーっ!!」「ヴィラン!?」

 

 

混乱した人たちは押し合いへし合い逃げ出そうとする。爆発音がしたところから飛び上がったのは、なんか馬鹿でかいゴリゴリのゴリラとライオン足して割ったみたいな、どう見てもパワータイプの個性を持つらしい男。

 

その男はステージの上に着地すると──べこりと床が凹んだ──逃げ出せなかったバンドマンをむんずと大きな手で掴み叫んだ。

 

 

「ぬるい!!ぬるすぎる!なんでこんな奴の曲が売れて俺の曲が売れんのだ!!動くなよ!?俺の曲を聞かせてやろう!!コイツとどちらが優れているのかはっきりさせようではないか!!──逃げ出したなら、コイツはポッキーよりも簡単に折れるぞ」

 

 

とんでもない宣言により、逃げかけていた人たちは足を止めて混乱しながら辺りを見渡した。

逃げ出したいが、そのせいでバンドマンが折れたポッキーになるのは見たくはない。

怖々とその男を見ながら口々に「ヒーローすぐくるかなぁ」「折角のフェスが最悪だ…」と呟く。

ここまで大規模なロックフェスだから、ある程度のヒーローは警備として配置されているだろうけど。ここのステージ一番奥だからなぁ、異変に気づいて駆けつけるまで何分かかるんだろうか。

 

 

「これじゃあフェス中止かな…」

「──えっ!?ま、まじですか!?」

 

 

隣からの呟きに、フェスのタオルを首からかけている、小柄で短めのボブカットをしている女の子に声をかける。おお、なんか耳たぶがプラグみたいな形してる。

 

 

「多分ね」

「そ、そんなぁ…俺、このフェスめちゃくちゃ楽しみにしてたのに!」

「ウチも。早くヒーローが来てくれたらいいけど」

 

 

いきなり話しかけてしまって、女の子は驚いていたけど、こういうフェスに来る人たちは割と気さくな人が多いし同じバンドが好きならすぐに友達にだってなれる。

特に俺にドン引きする事もなく会話を続けてくれた。

 

 

ギャイン!!と不協和音が響き、俺と女の子や周りの人たちは耳を塞いで身体をこわらせる。

ステージの上でエレキギターをたたき折ったときの音らしく、そのエレキギターはかわいそうなほど木っ端微塵になっていた。

 

 

「中止……そんなの嫌だ!俺はここに来るために血が滲むような努力をしたんだ…!」

「それは──って、ちょっと!何する気?」

「ぶっ飛ばしてくる!!」

「はぁ!?やめなよ、ヒーローが来るまで大人しくしないと…!」

 

 

女の子の静止を振り切り、俺はぐっと足を曲げそのまま高く跳躍した。

ステージまでは30メートルくらい離れていたけれど、俺がステージに向かいたいと思って個性を発動させればどこからともなく沢山の鳥が現れ俺の服の至る所をがしりと嘴で器用に咥えてステージまで運んでくれた。

 

優雅に空を飛ぶ俺を見上げて、さっきまで話していた女の子も、ステージの前で身を寄せ合っていた観衆達も、ぽかんと口を開けている。

 

 

「──とう!……やいやいヴィラン!神聖なステージで何してるんだ!」

「……なんだこのガキ。…動物を操る個性か?」

 

 

俺は鳥達によりステージの上に降り立った。なんか大量に羽が抜けていて、ライオンのたてがみのように俺の頭にプスプス刺さってるが気にしてられん。だいたい鳥と関わるといつもこうなる!!

 

 

「残念!違うね!」

 

 

俺の個性は動物を使役することではない。

消太曰く、最低最悪最強であり、狂ってる個性だとかいう俺の個性。

 

 

「俺の個性はどうでもいい!ロックフェスを、邪魔するなーーっ!!」

 

 

俺は腕をぐるぐると回し男に向かう。

よほど身体に自信があるのか──俺の細腕のパンチなんか効かないと思ってるんだろうな、男は特に防御もせずにやにやと俺を見ていた。

 

バンドマンじゃなくて、俺が折れたプリッツになる。きっとみんながそう思ったのだろう、ステージの下から「やめなさい!」「きゃー!」とか切羽詰まった大人の声が響いた。

 

 

俺は思い切り、渾身の力を込めてその男を殴った。

 

 

──ぺちん

 

 

その音はあまりにちいさく男の上半身裸の臍の上を殴っただけで、男はニヤリと笑ったが──。

 

 

 

「──なっ!?うおおおおぉぉあああああっ!!?」

「ばいばいきーん!」

 

 

男は見えない何かに引っ張られるように勢いよく後ろに飛び、そのまま大車輪を描くように大の字になり──バンドマンはぽんと離されステージの上にへたり込んでいた──ぐるぐると回転しながら空を突き進む。

 

 

「あああああぁぁぁ───」

 

 

物凄い勢いで回転しながら遠ざかっていく男。次第に米粒のようになり、最後はキラーンと輝く星になって消えた。

 

 

「──よし!おっけー!これでフェス再開出来るかなぁ!」

「──そんなわけ、ないだろ」

「うわっ消太!!いたのかよ!ってかいつ起きたんだ!」

 

 

いきなり肩を叩かれてびっくりして振り向けば、眉間に皺を寄せた消太が後ろに立っていた。

 

 

「…あの男はどうなった?」

「んーと、多分あと数秒で地球一周旅行から帰ってくるかな」

 

 

俺は男が星になって消えた方の反対側に体を向ける。

すぐに少しして「ぁぁぁああー!」と男の悲鳴が遠くからだんだん近づいてきた。

 

 

 

「ああああ──ぐふっ!!」

「おかえりー」

 

 

地球一周旅行から帰ってきた男はステージ上にべしゃりと落ちて痙攣している。

消太はため息をついて身につけていた鞄から捕縛布を出し、完全に気絶している男をぐるぐると巻いていき、引きずりながらステージから降りる。俺もその後に続いてぴょんとステージから降りた。

 

 

何が起こったのかわからない観衆達はぽかんとしていたが、わっと歓声を上げると俺に向かって大きな拍手をしてくれた。フェス並みの盛り上がりだ!

 

 

「にいちゃんすげぇな!ヒーロー志望か?」「応援してるよ!」「すごいなぁなんの個性?」

 

 

人々は男を引き摺りながら歩く消太に道を開け、その後ろにいる俺の肩をぽんぽんと叩きながら激励を送る。

 

俺はにっこりと笑い、大きく頷いた。

 

 

「ありがとう!俺がヒーローになったらよろしくな!」

 

 

強い個性を持つ者は、プロヒーローになるものだと、誰もが思っている。だから、俺はプロヒーローになるしかない。別にやりたくないけど!!でも消太も笑ねぇもなんか国のお偉いさんもヒーローになれってうるさいし、それしか道が残されていないのも、理解している。

だから、とりあえず、ヒーローになるために勉強してるんだ。なりたくないけど、仕方がない。

 

 

 

「あれ?ニコちゃん!」

「笑ねぇ!あ、ここの警備するヒーローは笑ねぇだったんだ!」

 

 

騒ぎを聞きつけてやってきたヒーローは、福門笑こと、笑ねぇだった。

笑ねぇは俺を見るとすぐにいつものように明るく笑って、俺の頭をがしがしと乱暴に撫でる。

 

 

「ニコちゃんが倒したのか?」

「あー…うん。フェス邪魔されたくなかったから」

「そーかそーか。ま、いいや、イレイザーがやったって事にしとこう!」

「ナイス!!」

 

 

ぐっと互いに親指を立てて笑う。

消太はだるそうにしながら捕縛布の先を笑ねぇに渡した。

 

 

「ステージの上にコイツに捕まっていた男がいる。まぁ、見たところ怪我は無さそうだった」

「そっか!オーケー!ありがとう!私と結婚するか!」

「しない」

 

 

辛辣ぅ!と笑ねぇはケラケラ笑いながら言う。笑ねぇは会う度に消太にプロポーズしているが、残念ながら一度も頷かれてないし、むしろかなりばっさり断られている。

 

 

「消太と笑ねぇが結婚して、俺を養子にしてくれたらいいのに!」

「……馬鹿言うな」

 

 

消太にぱしんと後頭部を叩かれてしまった。

ここまでが俺と消太と笑ねぇが揃った時のショートコントの流れである。

 

 

笑ねぇは、俺の父さんの妹だ。かなり歳の離れた妹だったが、若い時に2人で漫才コンビ結成して家族を笑わせる程、兄妹仲はかなり良かったらしい。

2人ともお笑いが大好きで、いつも笑顔に溢れていた。

 

 

つまり、俺は笑ねぇの甥っ子……ってやつなんだと思う。親が死んでからかなりの頻度で笑ねぇが会いにきてくれたし、色々あって消太と暮らすまでは、暫く笑ねぇの家族として過ごしてたから俺は笑ねぇの事をお姉さんか──お母さんのように、思っているけど。

 

 

父さんも母さんも、俺が5歳の時に死んだ。自動車事故だった。

トラックとトラックに挟まれた車は豆腐のようにぺちゃんこになってしまっていたらしい。

 

 

運転していた父さんは即死。助手席に座っていた母さんも即死。運転席の後ろに座っていた俺も、即死だった。

 

 

救出のためにヒーローがやってきた時は、俺たちが乗る車もトラックも大炎上していて、水を出すヒーローがようやく炎を鎮火したけれど──車の形からしても、生存は絶望的だった。

 

だけど、俺は割れた窓から這い出て、素っ裸の身体に真っ黒な煤を沢山つけ、唖然とするヒーロー達を見上げて「…喉乾いた」と呟き、気絶したらしい。

──らしい、ってのは、事故にあった時、俺はその日遊園地で遊んだ帰りであり、普通に疲れて爆睡していた。

 

 

車の事故も、這い出た事も、何も覚えていない。

目が覚めた時には、ほとんど空っぽの棺が用意されていた。開けない方がいい、と医者やヒーローに言われたから、俺は、確か開けなかったと思う。

 

ぶっちゃけ親が死んだ記憶もなく、まだ生と死についてちゃんと理解できなかった俺は、ただ笑ねぇに抱きしめられたまま、葬儀を終えた。

 

それから暫く、笑ねぇの家族として過ごしていた。笑ねぇのお父さんやお母さんも俺にすごく優しくて、なにより大切な人たちだ!

 

今は一緒に暮らしていない。俺は悠々自適な一人暮らしをしている。

 

 

「じゃあ、私はコイツを連れて行くよ。ニコちゃん、イレイザー、続きを楽しめよ!」

 

 

にかっと笑って、笑ねぇは大きく手を振り男を引っ張りながら警備室…テント?へ向かった。

 

近くにあるスピーカーから、フェスのスタッフの声が響く。どうやらフェスは1時間後、破壊されたステージとは別のステージでタイムテーブルを組み直して行うらしい。

よかった!フェスが台無しにならなくて済んだ!

 

 

 

「消太!俺、お腹すいた!」

「……飯にするか」

「やった!」

 

 

目当てのバンドが出るまであと2時間はあるし、その間にバーベキューだ!と意気込んでテントに戻った。

俺はるんるんで肉や野菜を焼いて食べてたけど、消太はクーラーボックスからいつものゼリー飲料を飲んでいた。

 

 

「折角のバーベキューなんだから肉食べよーぜ!」

 

 

綺麗な紙皿にちょっと焦げた肉をポイポイといれて割り箸と共に消太に差し出せば、渋々受け取って一番薄い肉をめんどくさそうに食べ始める。

 

 

「……硬い…合理性に欠ける…」

「たまにはいいじゃん!たっぷり寝て、もう疲れも取れただろ?」

 

 

俺が笑いながら美味しいカルビ肉を口一杯に頬張って言えば、消太はちょっとだけ笑った。

 

 

バーベキューを楽しみながら、俺は見知らぬ人に言った「ヒーローになったら応援よろしくな!」の言葉をぼんやりと思い出していた。

 

 

俺の個性で、みんなが憧れるようなヒーローになれるんだろうか。

 

 

 

俺の個性は動物を使役することでも、超人的な力でも、物を作り出すことでも、瞬時に治癒する力でもない。

 

 

俺は、死なない。

頭に剣が突き刺さり体が真っ二つになっても問題なくケロリとしている。

 

俺は、何だって出現させる事が出来る。

たとえミラーボールでも、ハリセンでも、ロケットでも。

 

俺は、不可能を可能にする。

どんな個性だって、消太の個性以外は正しく効果を発揮しない。

 

俺は、全てを狂わせる。

この世のルールも、常識も、理も。

 

 

 

なんでもありなんだ。

どんな致命傷も次の瞬間には無かったことになる。何百メートルから飛び降りても地面に人形の穴が開いてそこから起き上がる。

俺が殴ればどれだけ力を持つ人だって、くるくる回転しながら星になる。

地球を真っ二つにしてしまう事もあるが、それはセロハンテープでぺたぺたしたら元通り。

ピーマンが嫌いで食べたくない!って思ったらピーマンに手足が生えてグレて暴走族になり俺を金属バットで殴る。

規則性が無いように見えて、俺の個性はたった一つの規則に従っている。

 

 

 

消太の言うところの、最低最悪最強の狂った個性。

 

 

 

それは、『ギャグ漫画の法則』だ。

 

俺が個性を使えば全てギャグ漫画の法則に従う。なんでもありだろ?ギャグ漫画って。

人はどんな致命傷を負っても絶対に死なない。よくわからない武器が現れて、とんでもない展開になる。

 

この世界で、俺だけがギャグ漫画の住人であり、世界と乖離している。

 

 

喜べばいいのか悲しめばいいのかわからないが、俺の個性は少年ジャンプでいう伝説のギャグ漫画、ボボボーボ・ボーボボのような、マジでとんでもないギャグ漫画の法則を基本としている。

 

いやーギャグ漫画でも銀魂とかなら楽しいだけの個性だったのになぁ……。

 

 

こんな訳の分からない個性、受け入れられるのかどうか、わからない。俺自身──たまにどうしようもなく嫌になるし。

 

 

「…笑心?……どうした」

「──んん?肉美味しいなぁ!もぐもぐ!──げほっうぇえっ!!」

「……」

 

 

俺は誤魔化すようにすっかり焦げてしまった肉を食べ、盛大にむせて吐き出した。

 

 

 

 






ドラゴンボールで伝説のアラレちゃんコラボ回を見て思いついたネタ。
続くかどうかは不明です。
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