初めてのキスは…   作:kouga

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一条緋色は癒されたい

 

 

「……はぁ……

 

――――――癒しが欲しい。」

 

 

一条緋色。何だかんだすごいスパイであるこの男。現在に至るまであのショッピングの日からいくつもの事が過ぎ去っていた。

 

 

『何それ?かぐやちゃんからの誕プレ?……浮かれんのも程々にな。』

 

『だから優!そこの訳し方は違うっつっただろ!』

 

『あのさ〜御行、十五夜何したんだよ』

 

『…なぁ千花ちゃん?スパイカードって何?……へぇ、マジで暗躍するぞ?』

 

『早坂ぁぁぁ!!!ブレーキ!頼むからそれ以上本気ださないでぇぇー!!』

 

 

「はぁ…………」

 

 

潜入先では、今までとは勝手の違う事象の連続にいつも全力で対処にあたり、その度に疲弊し目の生命力を燃やし、紛争し続けた。それだけなら良かった……だが!この期間まさかの本業の方でも動きあり!!!

 

 

『始末した…回収してくれ』

 

『始末した……回収してくれ…』

 

『始末、した……回収よろ……』

 

『……回収……』

 

『f○○○○○○○○○○○○ck!!!!!!!!!』

 

 

このように普段からは考えられない程の仕事をこなしつつ!最重要案件に取り組み続けた。結果…

 

 

「猫吸いって……ライオンでも猫吸いに何のかな?ダイビングって……海パンとシュノーケルでいけるっけ?爆竹って……打ち上げれば花火だよな……高校生って……

――――――手ぇ出しても……犯罪になんねーよな……」

 

 

大分アウトギリギリのメジャーよろしく頭に硬式ボール直撃のスーパーアウト発言を連発していた。。。一条緋色はこの学園に来てから大分精神面が柔らかくなっていた。原因は分かりきっている。今の関係が心地いい。それだけである。元々荒んだ環境に身を置いていただけあって絆されるのは必然。だが!本人は決して!!口が裂けても認めない!!!そんなこんなのせいで、現在……病みに病んでいた!!!

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

「ん?緋色?」

 

「あれ?緋色さん?…寝てる…」

 

「いや、寝てる、か?」

 

「いや寝てますって、しっかり白目むいてるし」

 

「それは果たして寝てるのか?!」

 

「いやいやこれが意外としっかり眠れてるんですよ!本当、なんの記憶もありませんから…」

 

「それって殆ど死んでない?!」

 

 

それは放課後の出来事だった。白銀御行と石上優が生徒会室を訪れた時である。あろう事か件の人物は、頭から学ランを被り、イヤホンをしたまま白目を向いて寝ていた(?)おおよそ寝ていると言うより気を失っているかに見えるが、時々こういった緋色を見ることのあった石上は自分がなった経験もあり、脳みそが麻痺していたのである。

 

白銀御行はというと睡眠に関してはしっかりととっているため間違ってもこんな事にならない。いや、なりたくない。2人を交互に見ながら戦慄したと言う。

 

 

「会長…」

 

「なんだ?緋色の事なら眠らせておいてやれ」

 

「それは勿論ですけど…気になりません?」

 

「何がだ?」

 

「緋色さんって…何聴きながら寝てるんですか?」

 

「……」

 

「緋色さんが音楽聴いてるイメージなんて皆無だし。こんな図体でリラックス環境BGMとか聴いてたら流石に面白いでしょ…」

 

「コロス…」

 

「うぇっへぇっいっゃぁ?!?!」

 

「安心しろ…寝言だ。」

 

「寝言?!?!」

 

「あぁ、結構頻繁に言ってあるぞ?これがまたいい眠気覚ましになってな。本当、朝まで勉強するには…もってこいだ。」

 

「割と新しい拷問じゃないですか?!」

 

 

白銀御行。この男とて一条緋色との関わりは深い。互いの家にお泊まりするくらいにはいい関係性である。そして、そんな中、必ず白銀御行が泊まりに行った際、一条緋色はこんな寝言が可愛く思えるほどの地獄のような言葉を連呼していた。最初こそ恐怖を感じていた白銀だがしかし!時期に脳みそが麻痺し、次第にそれを睡魔妨害作用として重宝していた。

 

石上優はというと睡眠を妨害されるという事をされたことが無いため未知の領域。こんなふうにはなりたくない。そう思いながら2人を交互に見つめ戦慄していた。

 

 

「……ダメだスマホの画面にはタイトルが出ていない。」

 

「画面は、開けるはずもないですし…仕方ない。直接聴くしか…」

 

「!石上!止ま…!」

 

「へ?」

 

(すんません、ボク、、死にました…!!!)

 

 

石上優が諦めて、緋色の耳に着いているイヤホンを取ろうと学ランをめくった瞬間…拳は眼前へと迫っていた。距離にして数センチ、時間にしてコンマの世界。そんな中でも石上の脳内には走馬灯が流れている。白銀はというと咄嗟に止めようとしたものの時すでに遅し、拳は石上直撃する。はずだった。

 

白目を向いたまま倒れる石上。頭を抱える白銀。寝ぼけ眼を擦りながら、未だにレムレムしている緋色。そう、地獄である。

 

 

「…ん???死んだセミの真似か?優?」

 

「…寝てるんだよ……」

 

「どこの世界に膝曲げて仰向けで白目向きながら寝るやつがいんだよ?死んでんじゃねーか?」

 

「だよな…白目はやっぱり寝てないよな…」

 

「?そりゃそうだろ?」

 

「死にたくない、しにたくない、シニタクナイ…」

 

「深夜に聞いたら頑張れそうな寝言だな…」

 

「?深夜に聞いたら狂いそうな寝言だろ…?」

 

 

一条緋色。開眼!状況整理の為に見渡すと屍とかした石上に、頭を抱えながら、遠い目をしている白銀。うん、さっぱりわからん。何なら白銀御行が言っている事の八割が理解できない。いや、今の自分はきっと理解しようという気力もない。それ程までに疲弊していた。

 

 

「はぁ…」

 

「…だいぶ疲れが見えるな。ちゃんと寝てるのか…?」

 

「今まさに、な…はぁ…」

 

「緋色、本当にだいじょ…」

 

「癒しが欲しい…」

 

「は?」

 

「病み病みオーラを探知!この聖母マリアの包容力を兼ね備え、迷える子羊を導く!そんな大人な女性!藤原千花の出番ですね!!!」

 

「何を言っているの?藤原さん…」

 

 

ストレスサイン危険度MAX!藤原千花襲来である。石上の死亡(気絶)を確認した後、一条緋色はこれからの出来事を一切記憶する気がないのであからさまにネガティブになっている。こんな女の前で弱みを見せることなどないが、今の一条緋色は普段とは違う。大人で冷静な思考は一切消え。思った事を口走る、スーパーわがままフラストレーションボーイになっていた。

 

 

「こんにちはー!会長に緋色君、それと石上君だったもの」

 

「だったものではなくそのものよ」

 

「あ、あぁ…2人とも…ちょっと相談が…」

 

「癒してくれ」

 

「「は?/はい?」」

 

「むっふふ〜!!!」

 

「お、おい緋色。いくらなんでも…」

 

「頼む…何でもいい…癒しが欲しい……」

 

「この男がこれ程までに堪えてるなんて…はっ!?チャンスなのでは…!」

 

「ん?四宮??」

 

「はぁ、仕方ないですね〜緋色く〜ん!」

 

「藤原書記も!悪いことは言わん!!今のこいつに触れれば…!」

 

「会長!静かに!!私…確信してるんです…」

 

「何をだ?」

 

「この病み病み男ムーブの緋色君を退けることで!またひとつ新たな自分を見つけられるということに!!!」

 

「どうせ軽くあしらわれて、藤原書記が一方的に怒るんだろ?やめておけ」

 

「では早速!」

 

「話聞けやゴラァ!!!」

 

 

今の緋色は弱りきっていた。そう、四宮かぐやが今なら会長と引き離せるのでは?!と思う程に。藤原千花が今なら屈服させられるのでは?!と思えるほどに。だが、この2人の認識が甘い事を白銀御行は知っている。この時の一条緋色が、自分たちの知る一条緋色の中で最もヒューマンムーブをしているのである。

 

それに気づくものは、白銀御行と……

 

 

「はい膝枕ぁ〜」

 

「……安直だな…」

 

「藤原さん…あまりにも安直では?」

 

「ちっちっち〜。かーらーのー!!!」

 

「「はぁ…」」

 

「よしよし。緋色君。頑張って偉いね。頑張る君も好きだけど、無理しちゃダメ。辛くなったら、我慢しちゃダメ。ね?」

 

「………」

 

「ふっ!勝った…勝った!勝ちました!!!!!」

 

「油断、傲り…怠慢」

 

「……ガキじゃねーんだよ…」

 

「ぅぇ…?!」

 

「膝枕に頭なでなで…体は大人でも頭脳は小学生…逆コ〇ンくんか?バカリボン。」

 

「へ、へぇ…???」

 

「今どき、これでトキメクガキもいねーだろーよ。これは年上のおねーさんにやられて初めて意味を成す。同い年、推定脳内年齢小学生にやられたんじゃ屈辱でしかねぇ。義務教育習ったのかアホリボン。勝ちを確信し、舞い上がり、打ちのめされる…泣いて飛び出していくのが目に見えてわかる。それとも必死に強がって下唇噛んで涙こらえて退場か?どっちでもいいけど、ハッキリ言って論外、害悪、もういい―――出ろ。」

 

「うっ?!うっあぁぁぁぁっ?!緋色君のボケナス!ド畜生!!クソったれ!!!チ〇カス!!!!メンヘラぁぁぁ…!!!!!」

 

「……癒し…」

 

((藤原書記/藤原さんを撃退した?!))

 

 

パターン青撃退?!あろう事か1番の難題と思われた藤原を完膚なきまでに倒し、過去に類を見ないほど、ぐぅのねも出ないほどの勝利を収めた!それも1人。そう、一条緋色はたった1人であの怪物を退けて見せたのである。まさかの事態に動揺を隠せない2人を!バグを隠せない緋色!!白目を向いて死んだセミのモノマネをしながら気絶する石上!!!

 

こんな中我先にとって動きを見せたのは意外にも…

 

 

「一条さん?」

 

「…紅茶、か…」

 

「えぇ、一条さんはストレートでしたよね。どうぞ。」

 

「どれ、俺も一息つくか。すまない四宮少しもら…」

 

「会長のはこちらのダージリンを用意してますので!さ、どうぞ。」

 

「あぁ、気が利くな。」

 

(計画通り!)

 

 

四宮かぐや!この女常日頃から一条緋色に対して腸が煮えくり返るくらい嫉妬していた!きっかけは白銀御行に少しずつ心を許していた時だった。白銀御行を知り、人を知り、生徒会の皆を様々な友人たちを知った。そんな時気がつく!

 

『あれ?この男。会長と時間の共有をしすぎでは?』

 

そう!一条緋色は24時間の内長ければ24時間、短くても20時間という同性カップルもドン引き!結婚夫婦でさえ引き攣るほどに日常的に一緒にいる。それもそのはず、互いに会わないのはバイトの時間か時折別々に過ごす深夜の間だけ、それ以外は絶対に2人でセット!この生徒会室においても無論その事実は変わらない!!ボロを出させようにも、一条緋色という男はすこぶる優秀で、何一つ弱みを握れなかった…だが、そんな時この絶好の機会が訪れ、四宮かぐやのテンションは限界値に達していた!!!

 

 

(ごめんなさい一条さん。少々強めの睡眠薬を盛らせていただきました。ですが、元はと言えばあなたが悪いんですよ?会長と四六時中行動を共にしあまつさえ私にマウントを取ろうだなんて。まぁ、別に会長の事を独り占めは狡いとか?そんなんじゃないですけど?ただ?ずっと同じ人間と2人きりというのも?何ですから?たまには、私が2人きりの時間を過ごしたって!バチは当たらないでしょう!!!)

 

「ふ、ふふふ…」

 

「相変わらず美味いな。四宮の紅茶は…」

 

「あぁ…また腕を上げた…前までの洗礼され、淀みひとつなく…透き通るものも良かったが…この甘さ、いや…この甘酸っぱさ…頭を抱えたくなるくらい…恋、してるな…?」

 

「ふふふ…!ふ、フ…ふぇぁ?」

 

「……緋色?何言って…?」

 

「初恋ってやつかな…生娘特有の甘だるさの中に、ツン強めの酸っぱさ…だがその奥深くには冷たさを残した透き通る後味。だが、鼻を抜ける香りは甘々だ……間違いない……恋、してるな??」

 

「は、はっっ!?はぁぁぁぁっ?!?!」

 

 

何と!なななんと!!ここに来て大逆転さよなら満塁ホームラン!!!勝ちを確信したように笑みを浮かべていた四宮かぐやの顔に一気に熱がほとばしり、顔中を真っ赤に染め上げる!!!その上、生き恥を晒されるかの

ように一条緋色の口から放たれる言葉の数々!この場に白銀御行がいなければポーカーフェイスを保てるかもしれないものの、思いっきりいる!本人が!想い人が!!好きな人が!!!状況整理が間に合わずあたふたあたふたしている四宮かぐやに追い打ちをかけるように屍(一条緋色)は口を開き続ける!!!!

 

 

(え?何言っているのこの人?え?!何を言ってるのこの男?!?!事実無根にしても!!!そんなことを言って会長が勘違いしたらどうするの?!?!てゆーか!服薬したら3秒持たずに意識が飛ぶんじゃないの?!?!?!)

 

「し、四宮が…恋、して、る…???」

 

「ち、違うんです!私恋なんて?!」

 

「ほう…熱が少し引いた……それだけで味を変えるか…」

 

「ちょぁぁぁっ?!?!」

 

「苦労が見えるな…気づいて欲しい…でも気づかないで欲しい…気づきたい…でも気づきたくない。触れて欲しい、呼んでほしい、そばにいて欲しい……もう少し……このままで居て欲しい…茶は口ほどにものを言うとは言うが、饒舌だな…かぐや嬢。」

 

「四宮、が…し、の、…みや…が…恋…鯉?…コイ………」

 

(〇す!じゃなくて一刻も早く!口を塞ぐ!!!)

 

 

おかしなスイッチの入った人形とは恐ろしいものだ。それもこれを一切記憶しないのだからタチが悪い。慌てふためく四宮かぐやなどお構い無しに、どれもが一撃で意識を失うほどのスーパーカウンターを連発でお見舞している。それもあらぬ所で誤爆している者まで現れる始末で現場は既に取り返しのつかない事になっていた。そんな中しびれを切らせた四宮かぐやはどこから出したかも分からない吹き矢を一条緋色へと打ち込む。

 

 

(アフリカ象を一瞬で眠らせる程の麻痺毒を塗りこんだ矢!お願いだからもう寝てて!!!)

 

「……ん?吹き矢、か…?イタズラにしては…手が込んでるな…」

 

(何で普通に立ってられるの???)

 

 

四宮かぐやはドン引きしていた。あろう事か永眠させるつもりで打ち込んだ矢はなんの効力も出ていなかった。くらった対象は変わらず、何食わぬ死にっ面で立って、自らの手で吹き矢を除去して見せた。その光景にかなりドン引きし、一瞬だけ顔の熱が引き、青ざめる。そして……

 

 

「緋色、悪い…俺も体調不良みたいだ…ちょっと寝てくる…」

 

「ん?白目むいてるから寝てるんだろ?」

 

「か、会長?!ま、っ!…ぁぁぁもう!!早坂!すぐに生徒会室に来てちょうだい!私は会長を保健室に連れていくから!!!」

 

『は?』

 

「覚えておきなさい!一条緋色!!!」

 

「……癒し、ねーのかよ…」

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「失礼します…1人?」

 

「……」

 

「ん?寝て…るかは…微妙…」

 

 

四宮かぐやに呼び出されるや否や、早坂愛は生徒会室へと赴いていた。だが、以前のようなどんちゃん騒ぎは聞こえてこない。不気味なまでの静けさが生徒会室に漂っていた。そこにはただ1人白目を向いて眠りにつく一条緋色がいた。

 

 

「取り越し苦労…でもないか…」

 

「ん…?んん……」

 

 

白目を向いきながらも何とか保っていた座位が突如力が抜けたかのように崩れ落ちた。頭がソファー目掛けて脱力し、落ちていく。このままではせっかくの睡眠に支障をきたす。早坂が動くのは必然だった。

 

 

「セーフ…かな。」

 

「…いい、匂い…」

 

「ひっぱたきますよ?」

 

「やめてよぉ…」

 

「ふふ…寝顔だけなら、100点満点ですね…本当に―――可愛い人」

 

 

本日の勝敗…

 

 

「ありがとう…早坂…」

 

「!…寝言…貸し、ですからね?」

 

 

早坂の勝ち

 

 

(やばい……)

 

「ゾウの暴れる音声…」

 

(やばいやばいやばいやばいやばい!!!なんて言うタイミングで目覚めてんだ僕のバカぁぁぁぁぁっ?!?!)

 

「はぁ…ニヤけて、バカみたい…」

 

(ニヤける要素どこぉぉぉぉぉぉ?!?!?!)

 

 

石上の負け

 

 

 

 

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