初めてのキスは…   作:kouga

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一条緋色は思い返したい。

 

 

 

夏。それは人によっては青春の1ページ。夏!それは人によっては人生の分岐点。夏!!それは人によってはエスカレーター。夏!!!それは人によっては黒歴史の生産所!!!!

 

 

「お、おぉ?!おぉぉぉぉ!!!」

 

「あぁ…ぁぁ…、ぁぁ…!!!」

 

「だ、誰か…」

 

「誰か、俺を……」

 

「「殺してくれぇぇぇぇっ?!?!?!」」

 

 

 

そう、この2人にとっては一生忘れることの無い生産所である。場所は一条緋色宅。方やソファーで、方やテーブルに突っ伏し、男二人は声にならない声で悲鳴にも似た痛烈な声を出し響かせながら、、、悶えていた。原因は夏休み。白銀御行は痛感していた。思い返せばテンションが振り切れ過ぎて、イタイイタイイタイ!!!そんなセリフが栓を抜いた湯船から抜けるお湯の如く、出てきていた!一条緋色は理解していた。自分が余りにもチョロい反応をした事に!!

 

 

【四宮の考えを読んで、四宮を探せゲームの事か?】

 

「あ、ぁぁ…?!」

 

【いつものに比べたら、100倍簡単だったよ】

 

「ぁぁぁぁっ?!?」

 

【四宮に花火を見せるんだよ!!!】

 

「おぁぁぁぁぁっ?!?!?!?!」

 

【はぁん?!いくら美人で可愛くて!俺の前でだけ素直な顔見せるからって!】

 

「う、ぅぅ…?!」

 

【あったか…お前の手…】

 

「ぉ、おぉぉぉぉ…?!?」

 

【うるさ…】

 

「げぼろじゃぁぁぁぁ?!?!?!」

 

 

結果、死屍累々である。

 

 

「緋色…」

 

「あぁ…?」

 

「もし、最悪の結末になったら…骨は拾ってくれ」

 

「安心しろ…俺の骨諸共…くれてやる…」

 

「……え?なに?!お前もやらかしたの?!」

 

「今この惨状見りゃわかんだろ!!!」

 

「?!お前程の、男でさえ……夏の魔物に勝てなかった、のか?!」

 

「……ぅん…死にたくなったらから帰りたい……」

 

「いや、ここお前ん家な…」

 

「もっと言うなら…受精からやり直したい……」

 

「何があった?!」

 

「はーぁ…何であの時卵子に入っちまったんだろう……」

 

「そこにお前の意思は介入しねーよ!!」

 

 

一条緋色。もう説明すんのもめんどくさいが、ざっくり言ってすごいスパイ。そんな男がまさか、まさかの!黒歴史を作っていた。事の発端はまたもやあの女、―――早坂愛。ターゲットである四宮かぐやの近侍にして、真っ当な早坂の血を引く女。だが、肩書きがいくら凄かろうと一条緋色には及ばない。何だったら何とか対処出来る相手、のはずだったのだが、、、

あろう事か、一条緋色がやる事なす事、全て!この少女が絡んだとたん!!何も!!!上手くいかない。一条緋色は過去に数多くの男女とまぐわった事のある、スーパー経験者。では何故!そんな経験者が、こんな失態を重ねているのだろうか?いや、大方の検討はつくが、本人が認めたがらない。

 

 

(俺は、スパイ…数多くの営みを経験してきた。何だったら、そこに繋がるまでの過程でさえ失敗したことなんて無い!なのに…!!)

 

「初めての恋愛でもあるまいし…」

 

「…そういや、お前って経験豊富な感じの割にちゃんと恋愛してきたのか?」

 

「あ?恋愛にちゃんともデキちゃったもねーだろ…」

 

「いや、デキちゃったに関しては、恋愛の範疇を超えるだろ…じゃなくて!緋色…お前―――人を好きになった事あるのか??」

 

「?当たり前だろ。好きになったからこそ、それなりに女の子と………」

 

(……あれ?俺…)

 

「緋色?」

 

(恋、してなくね???)

 

「おま、マジで?」

 

「違う!そうじゃない!ちょっと待て…俺の持ち合わせるIQ95が火を噴くから!」

 

「いや、平均値じゃん。」

 

 

一条緋色は頭をとてつもなく悩ませた。こんなに悩んだのは、自らの口に銃口を突っ込んで自殺しようと思い悩んだ事の次に当たるくらいに悩んだ。思い返してみれば、一条緋色の過去の経験は全て―――仕事。泣かせたヤツらは数知れず、皆を泣かせて1人無表情を決め込むくらいにはしっかり任務としてこなして来た!結果…なんと、未だ初恋なし!!

 

それも、いや俺って女経験あるし?遊び慣れてるし?恋愛なんてチョロい(笑)みたいな痛いヤツまっしぐらなことになっている。

 

 

(落ち着け、一条緋色。恋愛がZERO?そんなことは無い、俺のどっかにも微かに、恋情はあったはずだ!そんな感情のない人間じゃなかったはずだ!振り返れ!!きっと、きっとどこかに……!!!)

 

「………ぁるぅれぇ…???」

 

「初恋、おめでとう。」

 

「初恋じゃねーよ!?てか、恋ですらねーよ!?!?」

 

「初恋…か…仲間だな!」

 

「その照れながら、鼻すすって手を差し伸べる感じ、マジでやめろ…!」

 

(くそ!このままじゃ…!)

 

 

―――――――――

 

『へぇ…初恋すらまだなのに…あんなにプレイボーイ気取り、してたんですね』

 

『ち、違うんだ!早坂!!俺、本当は!?』

 

『もしかして、私と手を繋いだだけで?勘違い??してたり???しませんか????』

 

『はぅ…!』

 

『お可愛い人。』

 

 

―――――――――

 

 

なんて言う結末が?!?!

 

「いや、なんでお前が出てくんだよ?!?!」

 

「くっ!幻覚が見えている、重度の熱中症だな!待ってろ!!」

 

「はっ!待てよ…下手をすれば…」

 

 

―――――――――

 

 

『えぇ?もしかして〜やっぱ気持ちよりも先に身体が動いちゃう系〜??マジで猿すぎるんですけど〜』

 

『誰が下半身に脳みそのついた発情期の猿だコノヤロウ!?』

 

『うわ〜ムキになって怒る感じとか〜見るに堪えないってか〜正直ウケる(笑)』

 

『お、おい…いつものウブな感じは…?』

 

『はぁ?何それ?てかさぁ…恋愛教えてあげよっか?』

 

『はぅ…!』

 

『お・さ・る・さ・ん』

 

『へぇあっ…?!』

 

『ふふ…あ〜ぁ、ホント―――可愛い人。』

 

 

―――――――――

 

いつものウブな反応が作り込まれたものだと?!?!

 

「いや、そっちのバージョンでも出てくんなぁ!?!?」

 

「もしもし!救急です!!!親友が幻覚が見えるほどの熱中症になってて!たった今、頭から氷水の入った鍋に突っ込みました!!」

 

「こうなりゃ、聞くしかねーな…」

 

「?あ、すいません。どうやら頭を氷水に突っ込んだおかげで元に戻りました。」

 

ただ1人モンモンとその高スペック頭脳をフル回転させ、様々なパターンをシミュレーションしていく、何故かことある事に早坂愛の登場。そして現実以上に上手くいかない事に痺れを切らし緋色は自らが用意していた鍋の中に自らの意思でダイブした。そして、ポタポタと落ちる雫をよそ目に緋色は決断する。

 

 

「はい、はいすいません。失礼します…で?何するんだ??」

 

「…決まってんだろ。俺達には身近に彼女持ちがいる…」

 

「!まさか、聞くのか?!」

 

「いや、聞かずとも来る…あいつには夏(彼女)があった。」

 

「…まさか…?!」

 

「あぁ、恋のABC…聞くぞ!」

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

「いやぁ〜ホントマジで助かりますわ〜渚との事で、会長達に話、聞いて貰えるなんて」

 

「……」

 

「……」

 

「相談事なら、僕席外しましょうか…?」

 

「いや、優いろ。今回はストッパーになれ。俺たちの。」

 

「え?あ、了解です。」

 

 

ところ変わって、月日も過ぎ去って、白銀御行が走り出して早数日。男達は生徒会室へと集まっていた。だが、何故だろうから空気が重い。いや、若干2名の空気が明らかに澱んでいる。なんだったら訪問者であるあの少年は放つ空気すら変わっていた。

 

夏があった。緋色の培った情報のだいぶ薄いもの達が経験するであろう夏があった。(御行)

 

夏があった。緋色の培った情報の約半数が経験すべき夏があった。(優)

 

夏があった。緋色が培った情報通なら間違いなく自分はこっち側に行くと思い込んでいた夏があった。(翼)

 

そう、彼女(女の子)と過ごしたであろう夏(野郎)が今目の前に!変わり果てた姿で座っていた!!!

 

 

「?あの〜どうしたんすか??2人とも、険しい顔して」

 

「いや、うん…」

 

「まぁ、その…翼?くん?いや、翼さん???」

 

「なんすか??」

 

「いやチャラい!!!この数ヶ月間で何があった?!?!」

 

「え?そんなに変わってます??」

 

「髪!口調!!ピアス!!!見ろ!あの緋色がさん付けで呼んでんだぞ!!!」

 

「落ち着け御行。取り乱すな…観察するんだ。よーく見ろ…」

 

「!緋色…」

 

 

目の前には、かつての少年(チェリーボーイ)はいない。いるのはただの歴戦の戦士と同等の風格を漂わせる期待のルーキー。取り乱す御行を抑止しながらも、緋色は冷静に少年を見つめていた。ちなみに何故か心の奥底では勝手に声が震えて、手汗を滲ませていたがそんなことはどうでもいい。

 

 

「まず初めに…あの髪色…あれは……」

 

「あ、あれは……」

 

「………ふっ…染めてるな。」

 

「それっぽい雰囲気出して、さも当たり前のこと言ってんじゃねーよ!!!」

 

「ふっ…これだから童帝は…」

 

「何だと?!」

 

「優…どう思う?」

 

「……間違いありませんね…あれは夏を生きた髪だ…その上あのピアス…あれも、夏を生き延びてます。それだけじゃない…あの口調…夏、そのものです…」

 

「…ほう…中々いい目をしてるな、悪くない。」

 

「え?何?俺が変なの?!俺が可笑しいの?!?!」

 

「ところで…なぁ優」

 

「ふっ…何すか…緋色さん…?」

 

「はっ…」

 

「ふっ…」

 

「「夏って…何?」」

 

「俺が一番聞きてーよ!!!」

 

「黒歴史がシロくなって屋根の上ぁばばばばば!」

 

「エアコンの効いた快適豊かな部屋でボッチ、PCとボイチャでえぺぺぺぺぺ!」

 

「戻って来い!2人とも!」

 

 

閑話休題。

2人が軽い脳死状態に陥った瞬間、御行の鋭いツッコミ(ショック療法)により何とか大事を生した。だが、戦いは始まってすらいない。むしろ始まりの町を出てすらいないのにこのザマである。

 

 

「で?今更どうした?上手くいってるんじゃないか?」

 

「いや、まぁ…上手くっていうか…なんてか…―――まぁまぁすっね〜」

 

「!」

 

「!」

 

「落ち着け2人とも!石上会計はトイレットペーパーをしまえ!緋色は…その鎖鎌どっから出した?!」

 

「会長、この人悩み?なんて言っておいて相談風自慢しに来てんじゃないっすか?」

 

「御行…彼女持ちは殺しても罪にならないってどっかの国で習ったんだが?」

 

「疑いすぎだ!緋色も!そんな憲法は聞いたことが無い!落ち着け!!」

 

「ちっ…はぁ、翼?お前…次のステップに進む為にここに来たのか?」

 

「え?いや、まぁ〜次のステップっていうか〜…まぁ、そんな感じっすね…」

 

「ぐぎぃっ!?」

 

「ぶぎやぁっ?!」

 

「だから!そのトイレットペーパーで何するつもりだ!?緋色も!そのピアノ線しまえ!!!」

 

 

売り言葉に買い言葉?違う。単純に羨ましくて2人はほぼ暴走状態にあった。ストッパーとして買われたはずの石上は御行をは差し置いて、緋色と共にほぼバースト状態である。

血走る目に、手元の狂気を隠しもせずにただただ、本気で嫉妬していた。そう、次のステップ、言わば神聖なアレ。のはずだが、このリアクション。間違いなく至っている!恋のABC、最後まで行っちゃってる。そんな反応にこの数年間ご無沙汰な緋色はついつい本気のさっきを漏していた。

 

 

「神ってるじゃないかぁ?!」

 

「お、ちつけ…優…」

 

「!緋色、さん…」

 

「ふぅ…つば…」

 

「あ、会長達の話、聞かせてくださいよ!エンジョイしてたんでしょ?」

 

「バイトに勉強。…痛々歴史製造…」

 

「…仕事に仕事…痛々歴史製造…」

 

「…ゲーム…ですかね?あ、後花火」

 

「「ごふっ?!?!」」

 

「うっへぇ〜なんかすいません。」

 

「「ぐっぎぃぃっ?!?!」」

 

「会長!緋色さん!そのお○りセレブでナニをするつもりですか?!?!」

 

 

形勢逆転と言うべきこの状況、ストッパーとして呼び止めた優が初めて仕事をした。石上会計。この場に置いて、あれ?なんで僕?ととばっちりを受けたかに見えた少年。だが、その反骨精神的とも言える言動はまるで火に注いだ油のごとく燃えていた。

そんな炎上さえも鎮火してしまうくらいに後のふたりは燃え滾っていた。白銀御行は自らの黒歴史を思い出しつつ、その裏ではこんな夏があったことに対する見事な嫉妬。一条緋色は自分は本来そっちなのでは?という幻想を打ち砕かれ、スパイとしてしっかりと仕事をしたのに、やらかした事で謳歌出来なかった夏に対するやるせなさ。

互いの不満が爆発するかように顕著に現れた。

 

 

「あ、ここにいた〜」

 

「ん?あ、渚〜」

 

「……優」

 

「はい…」

 

「「エロいな」」

 

「そういう目で見るからだよ!」

 

「だったら…試すか?」

 

「はぁ?」

 

「見ててください…会長」

 

 

そう言うと石上会計は用事があるからと緋色と御行を連れ出す形で生徒会室を後にし、その扉に聞き耳を立てて、覗いていた。ちなみにその上から緋色も。

 

 

「神ってる奴らは意外と馬鹿な事をする。」

 

「そうだ…うん…エロいな」

 

「ナニを馬鹿な…緋色、お前はそろそろ戻れ。」

 

「あの〜通して貰えます?」

 

「何やってるですか〜?」

 

「し、四宮!?藤原書記まで!」

 

「シー…静かに今、あの2人が神ってるかどうか確かめてるんですよ。」

 

「神っ?!?!」

 

「そういうこった…ちなみに…御行…エロいな」

 

「お前、ホントに緋色か?!」

 

 

現在、2人を生徒会室に置き去りにする形で男達は観察していた。そこに、生徒会メンバーである藤原書記と四宮副会長が加わったが、それでもアホになった緋色は止まらない。バカ丸出しと言わぬが如く極めている。

その後、藤原書記が察知した言葉を伝えられたかぐやちゃんが頭から湯気を吐いたのは言うまでもない。

 

 

「セッ?!」

 

「!会長!恋人繋ぎです!これは!?」

 

「いや!初デートでする!」

 

「あぁ!確かに初デートでした!」

 

「?!」

 

「あ!?頬っぺにチューしましたよ?!これは神じゃ…?!」

 

「いや!3回目でする!!」

 

「あぁ初デートでしたが、四捨五入すれば初デートだ!!」

 

「え?!」

 

「か、会長!会長!!首筋に、キッスしてますわ!これは!!!」

 

「4回目だ!」

 

「初デートでしたけど!ギリ四捨五入!」

 

「4回で?!?!」

 

「じゃあ何回目のデートでヤるんですか?!?!」

 

「5回目だよぉ!!!」

 

「…うん…四捨五入したけど…ギリ…初デート…だよね…?」

 

「ぇ…?!?!」

 

「なら、何回目で!ゴ○無しですか?!」

 

「10回目だぁぁぁ?!?!」

 

「初デートで、したな…」

 

「…死ね…!」

 

 

何故だろうか…石上の問いかけに御行が答える度に喉の奥から鉄の味がしたが、それを飲み込む度に苦しくなる。いたたまれなくて緋色は藁にもすがる思いで、その場から立ち去った

 

後ろの方で何やら悲鳴にも似た声が響き渡るが、緋色なは一切聞こえなかった。

 

そして、もう1人、話を聞いていたメイド。いや、近侍は…

 

 

「3回目で…キス…5回目で…?!」

 

 

本日の勝敗

 

 

「か、かぐや様…」

 

「な、何?早坂…」

 

「10回目で…その…」

 

「あなた、まさか?!」

 

「後…回…なんですけど…」

 

 

早坂の負け。

 

と思いきや…

 

 

「御行」

 

「?なんだ?緋色」

 

「俺さ…旅に出ようと思う…」

 

「何があった?!」

 

「恋って、難しいな…」

 

「…聞いてやるよ…ABC…」

 

 

緋色の大敗

 

 

 

 

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