初めてのキスは…   作:kouga

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一条緋色は鈍い?

 

それは偶然の出来事だった!

 

 

「…なぁ、ヘアゴム返して…?」

 

「ダメです。」

 

「…髪下ろしてると落ち着かないんだよ…」

 

「少なくとも今この場では、そのままでいて下さい」

 

「…はーい…」

 

 

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「ちっ…御行の野郎…急なバイトだから仕方ねーけど…男一人をこんなショッピングモールに放置すんなっての…」

 

 

現在、一条緋色はドデカい街のこれまたドデカいショッピングモールに1人、ポツンと放置されていた。事の発端は親友の白銀御行、誕生日が近いため飯を奢りがてらプレゼントを用意する為、約束を取り付けていたのだが、何と!バイト先からの急なヘルプ!白銀御行は重度のバイト戦士。バイト先がピンチとなれば即座に駆けつける都合のいい奴、じゃなくてとても良い奴!

そんなバイト狂いのせいで、現在手持ち無沙汰になってしまった緋色。彼とて本来ならこんな事をしている場合では無いのだが、如何せん最近はやたらと気苦労が耐えない。生徒会室で繰り広げられた犬猫戦争(御行かぐやちゃん戦争)を初め、様々なことが起こり、心身共に疲れきっていた。だからこそたまの休みを満喫しよう思っていたら、このザマである。

 

 

「はぁ…帰って優とゲーム、いやあいつ今日は用事あるっつってたし…書類関係は今見たくねーし……どうしたもんかね…」

 

「そこのガラの悪い、犯罪者予備軍さん」

 

「……はぁ…誰のどこがガラが悪くて、誰の何が犯罪者予備軍なんだ?早坂?!」

 

「?言い得て妙だと思うのですが??」

 

「どこがだ!?」

 

「そのセンスのない髪型に、それを更に悪目立ちさせるワイドパンツとオーバーサイズのTシャツ、そして詐欺師顔負けの気味の悪いニヤケ面…他には?」

 

「うん…ごめん…謝るから…それ以上……虐めないで……」

 

 

1人椅子に座りながらボーっとしていると後ろから不意に声を掛けられる。その声は、かなり聞き馴染みのある声で、なんだった普段から聞かない日なんてないんじゃないか?と思わされる程聞いた事があって、ことある後に俺を罵倒するドS女王さながらの声、早坂愛がいた。

売り言葉に買い言葉、あぁん?!と言わんばかりに緋色もまた食ってかかるが、次々と投げかけられる言葉に思いのほか心臓をグサグサ突き刺され、終いには顔を覆って涙しそうになっていた。

 

 

「で、何してるんですか?」

 

「…見りゃあわかんだろ…途方に暮れてんだよ…」

 

「大方、白銀会長辺りにドタキャンされた、とかですか??」

 

「え?お前、エスパーなの?」

 

「いえ、会長さんそろそろ誕生日らしいじゃないですか。うちの主人同様、それ関連かな、と」

 

「花丸満点の解答をありがとう…で?その口ぶりじゃ、かぐやちゃんも来てる訳??」

 

「えぇ、ですが本日は書記ちゃん達とウィンドウショッピングらしいですよ」

 

「あー延期になったとか何とか…じゃあお前はそのお守りって訳か」

 

「まぁ。ついでにかぐや様の秋物の洋服を揃えようかと」

 

「…洋服…って待て、お前、俺に声掛けたのって…」

 

「荷物持ち、欲しかったんですよね」

 

 

嫌な予感はしていた。この女が自分から声をかけるなどほとんどの確率で面倒事、分かっていたのに為す術なく緋色は半ば強制的に連行された。不敵にフフっと笑う早坂を横目に今日一の溜息をつきながら、一条緋色のクソ大変な一日が幕を切ったのである!

 

 

 

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「これとこれどちらが似合うと思いますか?」

 

「あ〜、こっちの黒いワンピ」

 

「ではこちらは?」

 

「こっちの白のロングスカート。かぐやちゃんにデニムショートパンツのイメージは無い。てか家柄上アウトだろ」

 

「いえ、これは私のです」

 

「……だったらショートパンツ」

 

「理由は?」

 

「……いや、うん。」

 

「早く」

 

「う、うん…」

 

「はーやーくー」

 

「だぁぁぁ?!何の嫌がらせだ?!理由なんてねーよ!!何となくだよ!!!」

 

「本当は?」

 

「いや、まぁ…ほら…生脚が…」

 

「死ね」

 

「何なのお前?俺の答えが悪いのは分かるけど死ねは泣くぞ?」

 

 

現在、一条緋色は生き地獄を味わっていた。この女に連れられて、早数十分。その間、このようなやり取りが幾度となく繰り返された。緋色とて、様々な女を落とし込んで来たプロフェッショナル。そりゃ、着る側に対する服の善し悪しなど見ればすぐわかる。

その為、今回のようにたまに降かかる爆弾で見事に爆破される。早坂相手に生半可な嘘は通用しない、その為ここ数回は正直に答えた結果、このザマである。

 

 

「はぁ…早坂、さん?」

 

「?なんですか?」

 

「お前さぁ…値札くらい見てから買わない?」

 

「ご心配なく、経費ですので」

 

「かもしれないけど!?そんなんバカスカバカスカ買ってるの見たら!うちのポンコツ生徒会長は卒倒するぞ?!」

 

「普段着ているものより、だいぶリーズナブルですが?」

 

「うん…お前はリーズナブルの意味を辞書で引いて、庶民の皆様に謝罪しろ」

 

 

先程から繰り返されている光景。その中で一条緋色でさえ、青ざめてしまいそうになる事柄が一つあった。それは値段!

一条緋色は、そこそこ金を持っている。戦争を終え、スパイとして暗躍し、かなりの額を抱えている自負がある。だがしかし!!!先程から入る店入る店がそこそこのブランド店!それも、1点だけではなくかなりの量を買い込んでいる!!そして、1店舗ごとに使われる金額に軽く引いてしまう。。。

 

 

「お会計、219800円になります。」

 

「カードで」

 

「……怖い上流階級……」

 

「ほら、新しい荷物ですよー」

 

「はいはい…うん、流石に重くなってきた…」

 

「服の重さ?」

 

「いや、金の重さ…」

 

 

現在、一条緋色の両腕には大量の買い物袋がぶら下がっている。確かに数こそ多いが所詮は布切れ、鍛え抜かれた緋色の前にそんなもの大した重みではない。だが、その重みではなかった。そう、それは金額。なんと!現在、その両腕には既に100万は超えたであろう重さがのしかかっていた!!!流石に重い、いや、流石に怖い!

 

 

「たく、気は済んだか?」

 

「えぇ、あとは貴方の服ですね」

 

「……は?」

 

「行きますよ」

 

「いや、行かねーよ」

 

「無理」

 

「なんでだよ?!」

 

「その風貌で隣を歩かれたくない。」

 

「この数十分は何だったんだよ…」

 

「耐えてみましたが、正直キツいです。」

 

「…そんなに…嫌?」

 

「格好自体は悪くない、むしろセンス◎って感じです」

 

「なら良いだろ…」

 

「ですが、その髪型のせいでチンピラ感が否めない。」

 

「お前ほんと失礼な」

 

 

何とあろう事か、今度は緋色の服を選びに行くと言い出したものだ。当然緋色は拒否!それもそのはず、一条緋色の格好は別に可笑しくない!そう、早坂が言うように一条緋色の格好は普通にオシャレで、今どきの青年たちがこぞって着そうなファッションである。

だが、ひとつ欠点があった。そう、それが髪型!あろう事か一条緋色は常日頃からその長い髪の毛を頭の上で結び束ねている。その為、強調されるにやけヅラ、クソほど目立つツーブロック、極めつけに総合した胡散臭さが全面に出ていた。

 

 

「ですので、」

 

「あ?!お、おい!!」

 

「……い、意外と…幼い、ですね…」

 

「言うな…たく…」

 

 

早坂はと言うと、何と両手の塞がった緋色からその髪をしばりあげるヘアゴムを奪い取ってしまった。その瞬間、束ねられていた髪が一気にバサッと下へ落ちる。すぐ様視界を確保するべく、顎まで落ちた髪をかきあげる緋色。だが、そこで早坂は気づく。

この男、普段はイカつい見た目に、胡散臭い風貌だが、髪を下ろした瞬間それは一転した!あろう事か、そこには明らかに美少年が立っていた。艶々の髪をかきあげながら、困ったように早坂を見つめる緋色。早坂曰く、その瞬間の彼は5歳ほど若返ったのでは?(早坂はこの男が20歳位に見えている。)と言わしめる程に美少年だった。

 

 

 

「……」

 

「おい」

 

「………」

 

「おい!」

 

「?!何ですか?」

 

「ヘアゴム返せ」

 

「返して欲しかったら、着いてきて下さい」

 

「……はぁ…何なんだよ…」

 

 

早坂は少し楽しくなっていた。普段であればこの男に振り回されっぱなしだが、今日、この今だけは振り回すことが出来ている。その上、何か知らんが好き勝手に弄り回せるこの現状にほんの僅かな高揚感を抱いていた。

 

 

「革靴にジーンズ、白シャツに革ジャン……」

 

「んー今の顔には似合いませんね」

 

「あのなぁ…」

 

「次はこちらを」

 

「スニーカーにクリーム色のワイドパンツ、緑のロゴ入りトレーナー…」

 

「ふぅん…3歳マイナス」

 

「14歳になっちゃうよ」

 

「いえ、普段20歳くらいなのでギリ高校生です。」

 

「誰が年齢詐欺だ。はっ倒すぞ」

 

「ではこちらを」

 

「ねぇ、楽しんでない?」

 

「楽しいですよ」

 

「…あっそ……スキニーパンツにパーカーとMA-1…」

 

「非常に遺憾ではありますけど、The高校生って感じですね。」

 

「…なぁ、ヘアゴム返して…?」

 

「ダメです。」

 

「…髪下ろしてると落ち着かないんだよ…」

 

「少なくとも今この場では、そのままでいて下さい」

 

「…はーい…」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

ひとしきり買い物を済ませ大変満足気な早坂はフゥ〜と息を吐きながら、飲み物片手にベンチへと腰掛けていた。一方片割れの緋色はと言うと大変疲れた面持ちではぁー…とバカでかい溜息をつきながら早坂のコーデに身をまといげっそりとベンチにうなだれていた。

 

 

「急に缶コーヒーが板に会いましたね…老けた?」

 

「バカか…俺は元々缶コーヒーの似合う高校生だ…」

 

「現状、意気消沈の社会人みたいですけど?」

 

「お前に俺を労う気持ちはねーのか…?」

 

「缶コーヒー、奢ってあげたでしょう?」

 

「せめて高いコーヒーが良かったよ…」

 

「味なんて分かるですか?」

 

「俺の事なんだと思ってるの?!?!」

 

「いえ、ブラックコーヒーを飲める俺、カッコイイ…とか自分に酔ってる119番必須の末期の疾患を抱えたイタイ人、かと?」

 

「うん、わかった…泣く、泣くよ…俺を泣かせたいんだよな……」

 

「フフ…冗談ですよ…」

 

 

早坂はと言うと、終始緋色を弄るように真顔でナイフをぶん投げていたが、実の所、大変満足していた。むしろ、面白くなってしまい、最後の方にはからかいがいのある人、と言ってクスクスと笑い始めた次第である。緋色はと言うと、冗談である事を理解しながら、こちらもまたそれに乗っかり悪ふざけの応酬を重ねら次第には笑顔になっていた。

だが、楽しい時間はすぐに過ぎ去ってしまう、ここで互いにお別れを告げればこの一時は終了。互いに心地よい時間だっただけにほんの僅かな寂しささえ感じられる。そんな時…

 

―――事件は起きた。

 

 

「つーか…マジでいいのかよ?俺の服、大半がお前買っただろ?」

 

「構いませんよ。これも労いの一つ、という事で。」

 

「は、ありがたく受け取るか…そんじゃ、そろそろヘアゴム…」

 

「ただし、それらを着る時は絶対に髪は下ろしてください。」

 

「……は、い……」

 

「よろしい。では…?!?!」

 

「?早坂、どうし…」

 

「あー!早坂さんだぁ!!!」

 

「?!?!」

 

 

パターン青、新種のF(藤原)。いや復活のF(藤原)。いや、藤原千花のF。そう!!!そこにはかつてないほどのアクシデントが起きていた。買い物に集中していた早坂は見落としていた!四宮かぐやたちの行動をパターンを!!!その結果、最悪の対象と大変面倒な状況で鉢合わせる。

 

 

「書紀ちゃんじゃーん!どうしたしぃ?買い物??ってあれ〜四宮さんにもいる〜!それに可愛らしい子達まで!」

 

「そうなんですよ〜実はみんなでウィンドウショッピングに来てまして〜」

 

 

えへへ〜、と笑いながらかぐや達に手をやる藤原。表情ひとつ崩さず笑顔を作ってやるかぐや。姉同様にあはは〜、と笑っている萌葉。困ったような顔をしながら挨拶をする白銀圭。気苦労が来たことに落胆する緋色。咄嗟のことにほんの少しだけ動揺している早坂!

三者三葉に反応をしたかと思えば爆弾はすぐさま投下される…

 

 

「早坂さんは…はっ?!これはまさか!」

 

「そ、そうそうウチもウィンドウショッピ…」

 

「デート!デートなんですね?!?!」

 

「違うから!!!」

 

「だって!恋愛の匂いがプンプンします!ラブ探偵千花にはごまかせません!!!」

 

「いや、ホントマジで…違…」

 

「誰、誰なんですか?!同じクラス?他校の生徒?!はたまた年上年下のいけない関係?!?!」

 

「待って千花姉ぇ…その人…よく見て」

 

「え?…ん?……は?―――何してんですか?緋色君」

 

 

追い詰められる早坂!幸い、緋色からは見えない位置であるものの、柄にもなく顔を赤く染め上げられ、少しワナワナしながらもギャルモードと通常モードの狭間を行き来しだしてしまう!

絶体絶命の早坂!ワクワクの止まらない藤原千花!頭を抱える緋色!その光景に頭を抱えるかぐや!姉同様にワクワクの萌葉!そして、ただ1人、冷静な圭。そう、彼女は分かっていた髪型を変えようが雰囲気を変えようが分かる。その人物が誰であるのか、そしてその事実を告げられた時の藤原千花は…一瞬でスン顔になった。

 

 

「いや、荷物持ち、だけど?」

 

「そんな若作りまでして?」

 

「おい、失礼リボン、マジでそれ毟るぞ。」

 

「へぇー!緋色さんって圭ちゃんが言ってた通り…!」

 

「しっ!」

 

「むぐ?!むー!!!」

 

「…バカ…」

 

「はぁ…それでお2人は何を?」

 

「…いや〜皆と同じでウィンドウショッピングだよ??友達がね?急に用事出来ちゃったから、暇そうにしてた緋色君がいたから声掛けたんだ〜ね?」

 

「……」

 

「ね?」

 

「………」

 

「 ね? 」

 

「はい…暇で暇で死んじゃいそうで、早坂愛さんに誘われなきゃ孤独死してたであろう可哀想でイタくて可哀想で髪型が変な一条緋色(荷物持ち)です。」

 

 

もはや考える事さえも放棄してしまった一条緋色。先程までは疲労の中に楽しさがあった。だが、この一行との出会いにより、一条緋色は脳死状態!今彼の頭には大量の下垂体前葉ホルモンが分泌されていた!それにより、本能的にストレスから身を守ろうとし、このザマである。

それに追い打ちをかけるかのような藤原千花(対象F)が迫る!

 

 

「緋色君のアホ!バカ!!ヘンテコちょんまげ!!!」

 

「はい、アホでバカのヘンテコちょんまげです…」

 

「よくも乙女の気持ちを踏みにじってくれましたね!休日に女の子と2人で出掛けておいて!何ですかその死にっぷりは?!謝れ!ボケナス!薄情者!!!」

 

「うん、言い過ぎ。その寄生虫除去すりゃ、ちったぁマシになるか?」

 

「藤原さん?一条さんは疲れているんですよ。ほら、先程から今の格好にはそぐわない程、雰囲気がどんどん老けていきますし」

 

「え?ナイフが飛んできた。フォローじゃないの?!優しい言葉はないの?!」

 

「でもでも!緋色さん今の雰囲気は三十路のおじさんだけど!めっちゃイケメンだね圭ちゃん!」

 

「ちょっと萌葉!」

 

「え?フォロー?罵倒?」

 

 

緋色の心はもうあと一押しでポキリと折れるところまで迫っていた。それもそうだろう、この女性陣間違いなく緋色が過去に相手をした者たちの中でも最強クラス。むしろここまで首の皮一枚で繋げていた緋色が凄いのだ!間違いなく石上優であれば、死にたくなったので帰ります、と言ってすぐ様帰宅するだろう。

だが、そこは一流のスパイ。メンタルが持たないからなどという言い訳はしない。いや、したいけど出来ない。何とか繋ぎ続けていると、助け舟は意外な人物から来た。

 

 

「早坂さん?私、見たいものがあるのですけれど」

 

(さっさと回復しなさい)

 

(気遣い痛み入りますかぐや様)

 

「誰がかぐや様よ!早坂でもあるまいし!!辞めてちょうだい!!!」

 

「あ、あー!!…オッケー!折角だしみんなで見に行こうよ!!」

 

「え?かぐや、様?」

 

「ほ、ほらほら〜書紀ちゃんも妹ちゃんも行くよ〜」

 

「…はぁ〜疲れた」

 

 

何とかぐやちゃんの一言で全員が一斉にそちらを向く。あまりの出来事に緋色はついつい早坂のように改まってかぐやにアイコンタクトを送ると、その瞬間寒気が経つかのように両肩を手で掴み、若干身体を震わせながら怒り出すかぐや。それをいち早く察知し、何も言わさず、ズイズイと残りを連行して行く早坂。

その光景を見て、ようやく静かになったことを確認し、再び緋色はベンチにうなだれ始めた。そんなところに、、

 

 

「……」

 

「圭、ちゃ…あ、いや…白銀さん?」

 

「けぃ…んで、いいです…」

 

「へ?」

 

「圭ちゃん…で、いいです…」

 

 

あろう事か隣には何故か白銀圭が座っていた。一条緋色の脳内には幾つもの疑問が浮かぶ。まず初めに何故買い物に行っていないのか?次に何故嫌いな男の隣に座ったのか?そして最後に、圭ちゃんと呼んでいいのか?

緋色は疲弊しきった頭脳をフル回転させる!結果…分からない。

 

 

「……疲れた?」

 

「…うん、久しぶりに大勢だったから」

 

「そ…なんか飲む?」

 

「いえ、さっき飲んだばっかり…です…」

 

「そっか…」

 

(何が起こってる…?)

 

「……」

 

(どー見ても怒ってない…でも…)

 

「!」

 

(目が会う度に逸らされる?!やっぱりあの件が尾を引いて…)

 

(バカァ!何してるの!?折角2人きりなのに!)

 

「…いや、むしろ…あれが、これで、、地球が……」

 

(ブツブツ言ってる…だけなのに…―――カッコイイ)

 

 

恋、それは戦。好きになった方が負け。でも、それだけでは無い。恋とは人を強くするもの。恋とは人を臆病にするもの。恋とは…人を盲目にするものである。

現在、早坂達が姿を消して数分経っていた。その間!特に!!何も!!!無かった…このやり取りを他のところでも見た方は気づいいるだろう。そう!白銀圭は一条緋色にガチ恋している!それもそのはず、あの日の出来事を圭は一瞬たりとも忘れたことは無い。その結果、色々巻き込んでの好き避けをしてしまっていた。この状況は圭としては非常にまずい!何としてでも抜け出したい!そして、何としてでも…!

 

 

(渡したい…)

 

「圭ちゃん…」

 

「!は、はい…」

 

「御行ってプレゼント欲しがらないじゃん?」

 

「まぁ…変なプライドで縛り上げられてますから…」

 

「そうだよな…でも、祝ってやりたいんだよね。友達だから…」

 

「!喜ぶ、と思う」

 

「ん?」

 

「緋色さんから祝われたら…私だったら嬉しい」

 

「!そっか…おし、盛大に祝う、とまではいかないが…そこそこ祝ってやるかな…ありがと、圭ちゃん。」

 

「……」

 

(あぁ…これだ。この顔…滅多に見れない。本当の顔…)

 

「そうと決まれば…ケーキ1つくらい…」

 

「好き。」

 

「…ん?」

 

「…え?」

 

 

それは唐突に訪れた。白銀圭にとって一条緋色は恋愛対象であり、尊敬すべき先輩であり、かっこいい人だった。そのせいだろうか、思い募った言葉がついつい漏れ出てしまった。白銀圭は感情を隠すのが上手い。あの四宮かぐやにさえ悟られないほどにポーカーフェイスが上手だ。だが、そんな彼女でさえ、この男の前では、ただの恋する乙女になっていた。

自分の口から出たであろう言葉に、自分で驚いてしまう。それもそのはず、彼のその表情を圭は知っている。普段繕っているであろうその表情。恐怖さえ覚えたそれの裏には見るものを虜にするほどに、可愛くも惚れ惚れする笑顔があった。

 

 

「圭、ちゃ…」

 

「こ、これ!」

 

「へ?ん?」

 

「遅めの誕プレ…あの、緋色さん…ピアス開けてるから…よか、ったら…」

 

「…つけても、いい?」

 

「…うん…」

 

 

白銀圭は乙女であり、まだ中学生である。思春期真っ盛りで反抗期の最中。けど、それでも、恋する気持ちには勝てなかった。普段素っ気ない態度を取り誤解されガチで兄にさえ勘違いされているが、白銀圭はどうしようもなく一条緋色が好きだ。マセたプレゼントだとは分かっている。でも、渡さずには居られなかった。

 

 

「いいね…リングのピアス買おうと思ってたんだ。似合う?」

 

「……」

 

「?圭、ちゃ…」

 

「わ、わたし、皆のとこ、行ってきます…!」

 

「ん?あ、行ってらっしゃい」

 

「ん…行ってきます―――緋色君。」

 

「???」

 

 

 

本日の勝敗

 

 

「圭ちゃんどうし…」

 

「…ん…ー!!!」

 

「はぁ…かーわいい!!!」

 

「ねぇ早坂…」

 

「なんですか?」

 

「貴方絶対に男の趣味悪いし、悪影響受けて、染まるタイプよ?」

 

「かぐや様にだけは言われたくない」

 

「はぁ…恋愛センサーはビンビンなんですけどね〜」

 

 

白銀圭の勝利。早坂愛の敗北。

 

 

「御行。ほい、これ。」

 

「……なにこれ?」

 

「コーヒー豆」

 

「いや分かるよ?量!!!」

 

「安心しろ。1年分ある。」

 

「過労死させたいのか?」

 

「いや?甘かったから」

 

「?何がだよ?」

 

「色々…な」

 

(好き、ね〜)

 

緋色の勝ち。

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