鎮守府日常奇譚   作:ALF

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雷視点です。
無自覚シュガーテロ、第一の犠牲者。


【閑話】 雷の甘い夜

 

 

 

 

 

「……どうしたの、司令官?」

 

朝の鎮守府執務室。

今日の秘書艦である、(わたし)は、執務室での何時もの書類仕事に励んでいたのだけど、同じように書類仕事を行っている筈の司令官の机の上の書類は、数を減らしているように見えない。

というか、書類を放っておいて、腕組みをして、ウンウンと悩んでる様にしか見えない。

 

身内贔屓(みうちびいき)な発言になるけれど、司令官は、仕事は真面目にやってくれる。艦隊の指揮は、もちろんの事、面倒なだけの書類仕事であってもだ。

聞いた話では、あるけれど、鎮守府によっては、書類仕事を艦娘に丸投げして、何かあったら、『艦娘(おまえたち)が悪い』という、そんな司令官もいるというのだから、家の司令官は、間違いなく良い司令官だと思う。

雷たち、艦娘にも優しいしね。

 

そんな司令官が、書類仕事に手をつけずに悩んでるなんて、相当な難題なのかもしれないわね……。

気になった私は、司令官に声を掛けた。

 

 

 

「司令官。お仕事の手が止まってるみたいだけど、どうかしたの?」

 

「っと……悪い。ちょっと考え事をな。さて、仕事仕事」

 

 

私の問い掛けに、ハッとしたように仕事へ取り掛かり直す司令官。でも、どう見ても身が入っていない。

だから、私は、再び声を掛ける。

 

 

「ねぇ、司令官。悩み事があるんでしょ?もちろん、雷たち艦娘には、話せない事だってあるのは解るわ。でも今の司令官は、明らかに悩みで、お仕事に集中出来ていないもの。そんなんじゃ駄目よ?」

 

「……雷には、バレバレか」

 

「そりゃ、電ほどじゃないけれど、司令官の事は解ってるもの。雷でいいなら話してみたら?解決出来なくても、多少は気が楽になると思うわ」

 

「ん……そうだな。……とは、いえプライベートな事だし執務中に話すのもな。……雷、すまないが、今夜、執務終了後に俺たちの部屋で相談に乗って貰えるか?」

 

「任せて、司令官!雷にもーっと頼っていいのよ♪」

 

「助かる。じゃあ、今度こそ集中して、仕事をやっちまおう」

 

 

 

そう言うと、お仕事に戻る司令官。……うん。今度は、大丈夫そうね。雷が、お話を聞くって言った事で、少しは悩みを軽く出来たのかも。

 

……にしても、プライベートの悩みねぇ。司令官たちのお部屋で、今夜って事は、当然だけど電も部屋に一緒にいる状態での相談って事よね。

電に聞かれて問題ないなら、修羅場案件じゃないだろうし、その辺りは安心かな。

まぁ、いずれにせよまずは、お仕事ね。相談を聞くのは夜なんだし。

 

書類仕事も司令官のお悩み相談だって、秘書艦の大事なお仕事だしね。この雷様にどーんと任せなさい!

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

「雷ちゃん、いらっしゃいなのです!」

 

「こんばんは、電」

 

「悪いな、雷。仕事の終わった後に」

 

「気にしなくて、いいわよ司令官。私が自分から言い出した事だしね」

 

 

時刻はフタマルサンマル。

司令官たちの部屋をノックすると、電、ついで司令官が出迎えてくれた。

 

 

 

……今から半時間ほど前、今日中に処理しないといけない執務を終えた司令官と私は、大淀さんに引き継ぎを行い、それぞれの部屋に一旦戻り、改めて私は、司令官たちの部屋を訪問した。

 

部屋のダイニングテーブルには、サンドイッチとかの軽食と飲み物がセッティングされている。

お昼の内に司令官が、電に連絡をとっていてくれたのだろうと思うけれど、先に今日の業務を終えた電が、部屋の準備を整えてくれていたのかしらね。

 

とりあえずは、執務後の空腹を落ち着かせる為に、皆でサンドイッチを食べる事にする。

うん。美味しい。電も、腕を上げたわね。

 

そうして、人心地ついた所で、いよいよ今夜のメインイベント。雷のお悩み相談室の始まりとなった。

 

 

 

 

 

 

「実は、電の事なんだが……」

 

「電?」

 

 

 

ダイニングテーブルの向かい側。司令官の横に座る電をちらりと見る。本人が、居るのにいいのだろうか?

その視線の意味を理解した電が口を開く。

 

 

「司令官さんから、電と司令官さんの事で、雷ちゃんが相談に乗ってくれると聞いているのです。電の事は気にせず、司令官のお話を聞いてあげて欲しいのです」

 

「……まぁ、電がいいのなら私は構わないけれど」

 

 

 

電への確認が取れた私は、司令官の方へ向き直り話の続きを聞く事にした。

 

 

 

……司令官の話を聞いた私は、驚いていた。

電が、『司令官に見捨てられるかも』という不安に捕らわれてしまい、あらゆる些細な事に反応して、暴走しかけていたというのだ。

つい先日も、一緒に対潜哨戒任務に就いていたけれど、そんな様子は全く感じられ無かったのに……

 

私が見る限り、司令官が電を見捨てるなど、あり得ない事だと思う。それこそ通常建造で大和さんが着任するレベルであり得ないと思う。

 

まぁ、司令官と電は、事実上の夫婦。男女間の深いそれとして、(わたし)では想像出来ない何かが、あって、電が、不安を覚えたのかもしれない。

とは言え……

 

 

「……司令官を疑う訳じゃないんだけれど、正直信じづらいわね」

 

「……雷ちゃん。本当なのです」

 

 

 

疑問を呈する私に返して来たのは、電本人。

電が、司令官を庇って……ううん。あの表情(かお)は、マジだわね。流石に信じるしかないかしら。

 

 

 

 

「……電の事は、解ったわ。それで、相談というのは?」

 

 

 

もし、男女間の深い話だと、雷では役に立たないわね……だって経験が…………ごほん!

お話を聞くだけでも、違うものね!

さぁ、司令官!どんと来い、よ!

 

そうして、司令官の口から出たのは

 

 

 

 

 

「今よりも、もっと電を甘やかして愛してやりたいんだが、どうしたらいいだろう?」

 

 

 

…………はい?

 

 

 

 

「……ご、ごめんなさい司令官。ちょっと(わたし)が、聞き取れ無かったから、もう一度、言って貰ってもいいかしら?」

 

 

 

 

ウン。私の聞き間違えかもしれないものね。

 

 

 

 

 

「あぁ、構わんさ、それにちょっと言葉も足りなかったしな」

 

「ゴメンね。お願い出来る?」

 

「ん……俺は、今まで電を愛して、甘やかしてきたつもりだったんだ。だが今回、電は不安を抱いて暴走しかけていた。それは、俺が電へ注いでいた愛情が足りなかったからなんだと思った。だから、俺は、今まで以上に電を、愛して甘やかさないと、いけないんだ。その為にはどうしたらいいかなって」

 

「へ、ヘェー。ソウナンダー……」

 

 

 

聞き間違えじゃ無かった!

というか、長文!思わずカタコトみたいに返事をしちゃったわよ!?

あと、司令官!隣に座っている電の顔が、だいぶ赤くなってきてるわよ?

 

 

 

 

「……難しいよな。

雷は、電の姉だし、俺より電の事をよく理解してくれているに決まっているから、きっと俺じゃ考えつかない様な意見を貰えるかなって、勝手に思いこんじまったからな」

 

 

 

 

いや、司令官の中での(わたし)って、どんだけ完全無欠の完璧な姉(パーフェクトシスター)になっているのよ!?

 

 

 

私が、呆気にとられていると、私が返答に困っていると思ったのか、司令官は

 

 

 

「……すまん、雷。いきなりこんな事言われても困るよな。話を聞いて貰っただけでm……」

 

「ちょっと待った!勝手に自己完結しないでよ!」

 

「え……」

 

「少し、考えてただけよ……というか、今のみたいに、決めつけ……というか自己完結しちゃう事、電との間にもあるんじゃない?」

 

「う……」

 

「図星ね……まぁ、とりあえずは、色々と聞かせてもらうわよ?」

 

 

 

 

早とちりというか……正直、割と面倒な事になりそうなのよね。まぁ、なんにせよ、まずは状況把握からね。長い戦いになりそうだわ。

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

真剣な顔の司令官と、少し顔を赤らめている電を前にして現状把握の為に質問を始める。

 

 

 

 

 

「まずは、現状把握から始めるわ。色々と司令官に尋ねるけれど、出来るだけ正確に答えてね。あ、これは司令官と電の二人ともに関わる事だし、電も色々と答えてね?」

 

「あぁ。任せてくれ」

 

「了解なのです」

 

 

 

まずは、状況把握。現在の司令官と電の環境が、解らない事には、対策も何もあったものじゃないしね。

 

 

 

「最初の質問ね。司令官と電は、同じ部屋に住んでいるわよね?当然、仕事があるし、四六時中一緒には居られないわけなんだけど……二人が共通の休み、時間単位でもいいけど、一緒に過ごす事が可能な時間がある時は、どう過ごしているの?」

 

 

 

これは、まず二人の行動の基本を知る為の質問。

二人に共通の休みがあったとしても、一緒に過ごすとは、限らないわ。一人で過ごす時間が欲しい時もあるだろうし、何時も一緒で疲れちゃうって可能性も無いとは言い切れない。そこからのすれ違いが不安を……ウン。ありそうな話よね。

 

 

 

 

「電と共通の時間が取れる時は、何時も一緒に過ごしているな」

 

「……何時も?」

 

「あぁ。例え10分程の時間でも一緒に過ごせる時は、ずっと一緒にいるな」

 

「その……それぞれの時間を過ごすとかは?」

 

「?……個人的な時間は、自分だけが休みの日にとれるしな。電と同じタイミングで休めるのに一緒にいない理由が、無いと思うんだが?」

 

「そうなのです。司令官さんと居られる時間が、あるのに一人で過ごすなんて、もったいなさ過ぎるのです」

 

「あー……そうね」

 

 

 

……まぁ司令官の普段の電への接し方を見ていれば、予想はつく答よね。電のそれもね……うん。

気をとりなおして……と。

 

 

 

「じゃあ、次の質問ね。司令官と電は、ケッコンカッコカリを行っていて、深い絆で結ばれていると思うんだけれど……それとは、別でのスキンシップはきちんと取れているかしら?」

 

 

 

艦娘とのケッコンカッコカリで絆が深まる事に安心してしまい、心が繋がっているから大丈夫とばかりに、スキンシップをはからない司令官も居ると聞いたことがあるわ。司令官が、しょっちゅう電の頭を撫でているのは、知っているけれど、それは、他の艦娘に対しても行っている事。いってみれば、電へだけ行う特別な行為というわけではないわ。いつも一緒の時間を過ごしているといっても、ただ、居るだけじゃダメよね。

やっぱり質……中身よね?

 

 

 

 

「スキンシップ…………えっと、それは、詳しく言わないとダメか?」

 

「どうしても、言いたくないとか、理由があって言えないは、仕方ないけれど。出来たら聞きたいわね」

 

 

 

まぁ夫婦間のそれを、いくら電の姉とはいえ、第三者にペラペラと話すのを躊躇うのは解るわね。逆に考え無しじゃ無いって事だし、司令官の評価が上がるわね。

……まぁ、私も個人的に二人がどう過ごしているかとか興味はあるのよね。だから司令官が、話してくれるなら聞きたいかな?

 

司令官は、電の方を向き、しばらくの間、電とアイコンタクトをとっていたけれど、やがて考えが纏まったのか意を決したのかスキンシップについて口を開いてくれた。

 

 

 

 

「俺は、電とは一つのベッドに一緒に寝ているんだが、俺が先に目を覚ました時は、電が目を覚ますまで、頭を撫でているか、手櫛で髪をとかしているかな。電は、寝る時には、髪を下ろしているからな。電の長い髪はとてもさわり心地が良くていつまでも髪をとかしていたくなる。電が、目を覚ましたら、おはようのキスかな。まぁ軽めに啄むような口付け(バードキス)だが。といっても、たいてい電が、甘えて抱きついてくるから、抱き締めつつまた唇を重ね(キスし)たりすることが多いな……ん、雷?どうした?」

 

 

 

……ちょっと情報量が、多くてフリーズしかけたわ。

まず、同じベッドで寝ている。ま、まあ夫婦だし普通といえば普通よね。髪をとかしたり、頭を撫でたり。ちょっと羨ましいけど、これもまぁ、予測の範囲。

ただ、おはようのキス……そして、電からねだるというハグと、そこからの更なる口付け(キス)……

 

あぁ、司令官。隣の電の顔が、真っ赤になっているんだけれど大丈夫なの?

……うん。ちょっと落ち着いたわ。

 

 

 

「ううん。なんでもないわ。続けて貰える?」

 

「そうか?じゃあ、続けるな」

 

 

 

まだ慌てる時間じゃないわ。司令官と電だもの。これくらいジャブに過ぎないわよ。うん。雷は大丈夫なんだから!

 

 

 

「平常だと、着替えたあとに二人で食堂に行き朝食をとり、その後それぞれの仕事につくな。別れる前には、電を抱き締めて軽く唇を交わすくらいかな?もちろん、電が、秘書艦を務める日は、一緒に執務室へ向かうぞ」

 

 

 

……さらっと、抱き締めてキスする発言頂きました。

アレよね?キスは習慣みたいな。

 

 

 

「……本当は、もっともっとギュッとして欲しいのです。キスの時間も短いのです……」

 

 

 

……電からの追い討ちが来たわね。顔を赤くしながらも、司令官に告げる電。

 

 

 

「……そっか。うん……朝は、時間が厳しいけど、もう少し長く電と触れ合うようにするな」

 

「……なのです」

 

「ん!んっ!」

 

 

 

二人の世界へ入ろうとしかけた、司令官と電を、私は咳払いをして、現実に引き戻す。

ハッとした表情(かお)をする二人。

オハナシツヅケテクレるかシラ……危ない危ない。

今、何かに引き寄せられた気がしたわ。

 

 

 

「電が、秘書艦の日は一緒に執務に励むが、そこでは特別な事は無いかな。精々が、休憩にお茶を一緒に飲むくらいかな?」

 

「その辺りは、他の秘書艦の時と変わらないのね。ちょっとだけ、安心したわ。司令官と電の事だから、執務中もイチャイチャしているのかと思ったわ」

 

「酷い言われようだな。流石に仕事は、しっかりやるぞ?」

 

 

 

苦笑混じりの司令官。まぁ司令官も、その辺りは弁えてるものね。

 

 

 

「雷ちゃん、酷いのです!司令官さんは、お仕事は真面目にされるのです!電も休憩の時しか、ギュッてしてもらえないのです!」

 

「……は?」

 

 

 

自分でも解るレベルで冷たい声が出た。

『ひぃ』と言う電の声が聞こえた気がしたけど……まぁどうでもいいわね。

 

 

 

「いや、ほら、息抜きって大事だろ?休憩の時に電と触れ合う事でお互いにリフレッシュ出来てな……?」

 

「そ、そうなのです!お仕事へのやる気も復活するのですよ!」

 

 

 

二人とも言い訳……いけないいけない。

私は二人が、きちんとスキンシップを取れているかの確認をしているのよ?きちんと取れているのだから、良い事よね。うん。

若干、口の中が甘いけれど気のせいよね。

 

 

「あぁ、別に怒ってないわよ。状況把握だって、むしろきちんと話してくれているしね。……電、悪いんだけれど、飲み物を貰ってもいい?出来たら渋めのお茶か、コーヒーがいいんだけど……」

 

「あ、いいな。電、俺も飲みたいし、コーヒーを頼んでいいか?確か、買い置きの豆があったと思うし」

 

「雷ちゃん。コーヒーでもいいのですか?」

 

「えぇ、お願いね」

 

 

 

電にコーヒーを頼んで、小休止。時刻はフタヒトヨンマル。話を聞き出してから30分ちょいだ。

わずかに、半時間ほどで、ここまで消耗するなんて……

 

 

 

「お待たせなのです」

 

 

 

10分ほどして、電がコーヒーを淹れて持ってきてくれた。豆を挽いて今淹れてくれたばかりであろうコーヒーは、いい香りを漂わせている。

カップを持ち、コーヒーを一口だけ口へふくむ。

うん、苦味が、心地好いわね。

見れば、司令官もコーヒーを飲みながら電へ、微笑んでいる。電も幸せそうに微笑み返している。

 

……いや、本当に、なんでこれで不安なんて覚えるのかしら?

しばし、コーヒーを楽しんでから、本筋に戻る。

さぁ、雷。気合い入れて行くわよ!

 

 

 

 

「さてと、仕事がある日の様子はまあいいわ。次は休日……二人が、一緒に休める日の話を聞かせて貰っていいかしら?」

 

「もう平日はいいのか?部屋に戻ってからとか……」

 

「その辺りは、休日のそれと被る所もあるでしょ?

それに時間もそこそこいい時間だし」

 

 

 

私が喰らう精神的疲労の事もあるけど、時間がかなり遅くなってきているのも事実だしね。

 

 

 

「了解。っと休日なんだが、その日ごとに色々なパターンがあるな。出掛ける予定がある時は、だいたい平日と同じパターンで起きてからの時間を過ごすな。

出掛ける先は、買い物だったり、食事だったり色々だが、だいたい朝から夜までだな」

 

「ふむふむ……その間のスキンシップは、どう?」

 

「電と手を繋いだり、腕を組んだりはするが、外……公共の場だからな。流石に良識(モラル)に反するような事はしないぞ」

 

「……ねぇ電。キスとかは、人目に付かない所でやっているのよね?」

 

「もちろんなのです。人前では、キスは出来ないので、ちょうどいい場所を探すのに、何時も苦労するので……あっ!」

 

「…………」

 

「い、雷ちゃん!誘導尋問はずるいのです!」

 

 

 

電が、何か言ってるけど黙殺する。

 

 

 

「いや、本当に色々と配慮してるんだぞ?」

 

「そうみたいね。うん。出掛ける時の様子は、もういいわ。部屋で過ごす時の事をお願い出来る?」

 

 

 

正直、今迄の話で、もうお腹いっぱいだったけど、聞くしかないわね。

 

 

「ん、解った」

 

そう言ってから、司令官は、電の方を見て再びのアイコンタクトを取っていた。

それに対して、電が覚悟を決めた表情(かお)で頷いていた。

そんな表情(かお)を見せなきゃ駄目な事を、司令官

は、話そうとしてるの……?

 

 

 

 

「休日の朝で、かつ、出掛ける予定の無い日の朝。俺と電は、二人でゆっくりとベッドの中で過ごす。一緒に微睡む事もあれば、先に起きた方が相手を撫でていたりもあるし、まちまちだな。二人共が、覚醒していたら、抱き締めあって相手の体温を感じたり、気が済むまで口付けをしたり……その、愛し合ったり……な?」

 

「電が、先に起きた時は、司令官の寝顔を楽しんだり、抱きついて胸元にスリスリしたりするのが、好きなのです。後は、ほっぺにキスをして、ちょっとづつ唇へ近づきながらキスを続けるのも、とっても好きなのです。

でも、たまに司令官さんが、寝たフリをしている時があって、そういう時は、司令官さんの方から唇を重ねてきて、息が苦しくなるまで続けるとかも、あるのです」

 

「……仕方ないだろ?電が、可愛い過ぎるんだし、一緒に過ごせて、後ろの時間も気にしないでいい時に自制なんて、出来るわけが無い」

 

「それは、解るのです。でも司令官さんが、先に起きているお休みだと、電が、司令官に色々と……その…あ、愛されていて、電ばかりが、その……して……貰ってるから、電も司令官さんに色々としてあげたいのです!」

 

「俺は、好きでやってるし、電が……その……、愛されるのを受け入れてくれて……よろこびを表してくれるのが、その……な?」

 

「……旦那様は、本当に電の事が好き過ぎるのです」

 

「…悪いかよ」

 

「ちっとも、悪くないのです。だって電も旦那様の事を…………」

 

「電……」

 

「旦那様……」

 

 

 

ストーっぷ!!!!

 

 

 

私は、我慢できずに大声を上げていた。

 

 

 

あんたたちねぇ!!雷が、居る事を忘れてるの!?解っててスルーしてるの!?

 

 

「い、雷。どうした?」

 

どうしたじゃないわよ!黙って聞いてたら、惚気ながら二人の世界に入って!そりゃ、状況把握の為に話をしてって言ったわよ!でもね?誰が目の前でイチャイチャしろって言ったのよ!?

 

「い、雷ちゃん、おちついてなのです!?」

 

落ち着ける訳ないでしょうが!?大体、最初からして抱き締めあって、相手の体温を感じたりって!裸で抱き締めあってるっての!?

 

「……よく解るな」

 

解るわよ!ってか、冷静に返してんじゃないわよ!?それに、愛するとか、愛してもらうとか!絶対にメンタル的なそれじゃ無くて、フィジカルな意味でしょうがっ!?そこまで赤裸々に聞かされる雷の身にもなってよっ!!!

 

 

「……改めて言われると照れるな」

 

「……恥ずかしいよぅ」

 

 

 

 

「今さら過ぎるわー!!!!」

 

 

 

 

 

 

私は魂の叫びを上げた…………

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、私は帰るわね……」

 

 

時刻はフタサンサンマル。

あと、半時間ほどで日付が変わる。

 

あのあとしばらくは、暴走気味だった私だったけれど、むしろ日付が変わる前に冷静になれた自分を誉めてあげたい気分だ。

 

 

司令官と電の仲だが、メンタルはもちろんの事、スキンシップというか、フィジカルな方もバッチリっぽい。

むしろ、これ以上どうしろと言うんですか状態。

夜の夫婦生活(ヤること)も、しっかりやってるっぽいし。

(むしろ乙女に聞かせる事じゃ、ないでしょうが!)

 

 

結論から言うと、どうしようも無い。

少なくとも、今以上に司令官と電(バカップル)が愛し合うとか、想像が出来ない……というか、したくない。

 

 

 

「今日は、本当に済まなかったな。雷。そして、ありがとうな」

 

「雷ちゃん、ありがとうなのです」

 

 

二人が、謝罪とお礼を告げてくる。

うん。本当は、(わたし)も解っている。

司令官も(いもうと)も、悪気は全く無いのだ。

 

 

 

 

「とりあえず、二人共、お互いに想いをきちんと言葉にして伝えあえば大丈夫よ」

 

 

 

 

私は、そう告げて二人の部屋を後にした。

 

 

 

 

……当分の間、甘い物は、いらないわねと考えながら。

 

 

 




タイトル詐欺だが、前書きで書いてるのでセーフ。

誤:雷の甘い夜
正:(惚気を聞かされた)雷の(口の中が)甘い夜
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