鎮守府日常奇譚   作:ALF

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日常回へ戻れます……


鎮守府の夏休み~あるいは司令官と電~

カッカッカッカ……

 

書類にペンを走らせる音だけが、執務室の中で響く。

纏めているのは、R方面作戦の報告書。

家の鎮守府は、例によって最低限の参加と戦果でお茶を濁した。第一海域の突破である。

 

R方面作戦そのものは、横須賀・舞鶴・呉・佐世保といった名だたる鎮守府を中心に成功を収めており問題はない。戦果を求める鎮守府・泊地ならば、もっとしっかりと作戦へ参加して頑張っているのだろう。

……まあ、家の鎮守府は『いのちだいじに』がモットーなので、だいたいである。

『それでいいのか?』と、言われそうだが、それでいいのである。手元の書類を仕上げ終わり、次の書類をと思うと、もう山は消えていた。

同じように、書類仕事をしてくれている電も、今の書類で最後の様だ。ようやく報告書も終わりそうだ……

 

 

 

……7月も末となり、季節は本格的に夏となっている。

毎年の事ながら、この季節は、ムシムシとした高温多湿が続き、中々に辛い時期である。

もう少し、湿度が低くてカラッとした暑さならば多少はマシなのだろうが、日本の夏にそれは期待出来ない。

 

俺が子供の頃は、もう少しは気温が低かった気がするが、そもそも自分が生まれたのと別の世界線なのだから、考えるだけ無駄かもしれない。

艦娘が、いるくらいなのだから、夏の過ごしやすさがアップしている世界でもいいのに……などと、下らない事を考える。

 

執務室の窓ガラス越しにでも、聞こえる程の蝉時雨。

入道雲が、そびえ立ち、強い陽射しが降り注いでいる屋外。冷房の効いた執務室だからいいが、あまり外には出たくないなと考える。

……子供の頃は、夏というだけで、はしゃいでいた様な気もする。学校のプールで涼み、日に焼けながらセミ取りに興じ……元気だったよなぁ。

 

 

 

「司令官さん、どうかされたのです?」

 

 

 

ふと気づくと、仕上がった書類を整えながら俺の様子を不思議そうに見る電の姿が、あった。

 

 

 

「あぁ、大したことじゃないんだ。窓の外を見ながら、子供の頃の夏の過ごし方を思い返していてな」

 

「……夏の過ごし方なのですか?」

 

「あぁ。小学生の頃とかは、1ヶ月以上の長い夏休みが、あってな。もちろん、宿題とかのやらなきゃいけない事はあったんだが、それ以上に休みの間に何をしようかって、元気に、はしゃいでいたなって」

 

「…ぷふっ!」

 

「……いきなり、吹き出すって、酷いな」

 

「ご、ごめんなさいなのです。……でも元気に、はしゃいでる司令官さんっていうのを想像したら、可笑しくって」

 

 

 

そう、いってクスクスと笑う電。

 

 

 

「……俺にだって子供の頃くらいあったんだよ」

 

「司令官さん、膨れないで下さい……ふふっ」

 

 

少し、ムッとしたようになった俺を見ながらも、やはり電は、どこか楽しそうだった。

……まぁ、電が楽しそうだしいいか。

 

 

「そういえば、今日から淡海鎮守府(うち)艦娘(みんな)も順次、夏休みだったよな?」

 

「はい、なのです。今日は、第一組がお休みなのです」

 

 

 

よく勘違いされがちであるが、艦娘も寒暖の影響を受けない訳ではない。

艦娘が、任務遂行時に、赤道直下のような高温地帯や、極地に近い寒冷地で活動出来るのは、艤装による状況よりの保護機能による面が、大きいのだ。

 

艤装の能力というと、水上での移動能力や、深海棲艦との戦闘能力、あるいは鎮守府や艦娘同士の通信能力といった面をついつい思いがちだが、実は最大の能力は、艤装展開時の環境適応能力なのである。

 

もちろん、人間と同じく、艦娘ごとの個体差は有るものの、艤装による、この機能がなければ、いかな艦娘とて、人間より多少は環境変化に強いといったレベルでしかないのだ。

 

ひらたく言えば『艦娘だって暑いし寒い』のである。

 

その為、この季節はどうしたって様々な効率が落ちがちなので、それならばR方面作戦も終わり、次の大規模作戦まで猶予があるこの時期に、順番に(非番とは別に)『夏休み』をとったらどうかという話であった。

 

大淀たち、一部の真面目な艦娘は、休む事を遠慮していたが、『一人につき一日だけの事だから』と強引に司令官権限で押しきった。

もちろん、最低限の人員は残す必要があるので、全員が一度に休む事は出来ないので、順次という事になるのだが。

 

 

「……本当は、もっと長くゆっくり休ませてやりたいんだけどなぁ」

 

「それは、仕方がないのです。それに皆、夏休みを楽しみにして喜んでいましたよ?」

 

「喜んでくれているなら良かったかなぁ……」

 

「なのです」

 

「……電も、休みが最後になっちまって悪いな」

 

 

 

他の艦娘の休みを優先してあげて下さいと、電が、自分自身の休みを一番最後に振ったのだ。しかも他の艦娘が、休みの間の秘書艦業務も一手に引き受けてである。休み自体は同じ一日とはいえ、色々思うところがあったんじゃないだろうか?

第六駆逐隊で、一緒に休みたかったとか……

 

俺が、申し訳無さから言った言葉を聞いた、電はキョトンとした表情を浮かべた後で、微笑みながら口を開いた。

 

「電は、他の艦娘(みんな)が休みの間、ずっと司令官さんと一緒にいられるので、むしろ嬉しいくらいなのですよ?」

 

「んと……そっか」

 

 

電の素直な気持ちを聞き、俺は、照れくささから素っ気なく、そう言ってしまう。多分、顔も少しばかり赤らんでいるかもしれん……

ちらっと電の表情を覗き見る。

なんというか、穏やかで満足そうな……そんな顔だった。

 

 

 

そんなやりとりの後で時計に目をやる。

時刻は、ヒトヒトサンマル。

午前分の書類は、仕上げ終わったので、とりあえずは一休みすることができる。

少し早いが、昼飯に行くのもありかもしれん。

 

普段なら、様々な連絡、あるいは緊急事態への対応を考え、最低でも一名は、執務室に待機するべきなのだが、今日からの『夏休み』へ対応させたシフト上、そもそも出撃や遠征に出ている面子が最低限度のそれなので、連絡端末を持っていけば問題はなさそうだ。

 

 

 

「電。ちょっと早いが、一緒に昼飯にしないか?」

 

「え……でも、執務室が空になっちゃうのですよ?」

 

「普段ならまずいが、夏休み対応シフトの今なら、さほど問題は無いかと思ってな。ほとんどの艦娘が、休みか待機休養だし。もちろん、連絡端末は持っていくぞ」

 

「んー……司令官さんとのお昼ご飯は、凄く魅力的なのです……けれど、それでも、何かが起こると不味いのです。電が残りますから、司令官さんは、食事へ行って下さい」

 

 

……電の言う事は正しい。自分が電と一緒に昼飯を食いたいからって、都合のいい理由付けをして我儘を通そうとした俺とは、えらい違いだ。

……あ、それなら。

 

 

 

「じゃあ、食堂で間宮におにぎりか何かを頼んで貰ってくるよ。それを執務室で一緒に食べよう」

 

「それは、良い考えなのです。じゃあ、司令官さん……お願いしてよいですか?」

 

「あぁ、まかせてくれ。じゃあ、なるべく早く戻るな」

 

「よろしくお願いします、なのです」

 

 

 

そうして、電に留守番を頼んだ俺は、食堂へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ?」

 

 

俺は、食堂へついたが、食堂には、誰一人居なかった。

食事へ来ている艦娘が、居ないというのは、まだわかるのだが、間宮まで居ないというのは…………まてよ?

ひょっとしたら、間宮も今日が『夏休み』なのかもしれない。しまったなぁ……んー酒保で、何かを……だが、明石も夏休みの可能性が。

しっかりと休みを把握しておくべきだったなぁ……

 

どうしようかと、考えていると、食堂の入り口の掲示板に張られた張り紙が目に入った。

 

 

 

【本日、鎮守府内の浜辺付近で昼食を提供しています】

 

 

 

こんなところに張り紙。見落としていたな……

浜辺付近っていうと、海の方か?とりあえず足を運んでみるか……そう思い移動しようと思った所へ唐突に声を掛けられた。

 

 

 

「あれ?てーとくさん、何してるっぽい?」

 

 

 

この声は夕立か。返事を返そうと振り替えって見た夕立の姿に俺は……固まった。

 

 

 

「てーとくさん?」

 

 

 

目に入った夕立は水着姿だったのだ。黒のセパレートの水着を着た夕立は、駆逐艦にしては、ボリュームのあるボディを……って、違うだろうが!

いかんいかん。食堂で水着姿を見るというそれに、一瞬だが、思考が迷子になってしまった。

俺は、気を取り直して夕立へ話しかける。

 

 

 

「あぁ、夕立か。今、執務室で昼飯に食べられる物を間宮に頼もうと思って食堂へやって来たんだが、誰も居なくてな。ちょうど張り紙に気づいて移動しようと思ってたんだ。夕立は、そんな格好で食堂とは、どうしたんだ?」

 

「なるほどっぽい!夕立は、明石さんに頼まれて、割りばしを取りにきたっぽい!」

 

「明石?割りばし?」

 

「うーんと、今日のお昼ご飯は、明石さんと間宮さんが、外で焼きそばを作ってくれているっぽい。でも、みんなに渡す割りばしを持ってくるのを忘れたっぽい。だから夕立は、お手伝いで、取りにきたっぽい!」

 

「あぁ……」

 

 

ようやく理解した。今日からの夏休みで、鎮守府内の浜辺で遊ぶ艦娘も多いだろうし、それなら昼食はその場で提供する方が利用しやすい。それで、配りやすく、比較的手間の掛からない『焼きそば』な訳か。

念のため、食堂を訪れる者に向けた張り紙もしておいた……そんな所だろう。

 

そうこうしていると、厨房の端に忘れられていた、割りばしのつまった袋を回収した夕立が、戻ってきた。

 

 

 

「おまたせっぽい!割りばし回収完了っぽい。てーとくさんも、夕立と一緒に焼きそばを貰いに行くといいっぽい!」

 

 

 

そう、いって俺の手をとって駆け出そうとする夕立。

 

 

 

「ちょ!夕立、解ったから引っ張るな!うぉい!?」

 

 

 

こうして俺は、夕立に手を引かれたまま食堂から海辺へと足を運ぶ事となった……

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

 

「おまたせっぽい!割りばし到着っぽい!」

 

「夕立ちゃん、ありがとうね……あら、提督もいらし……大丈夫ですか?」

 

 

 

 

夕立に引っ張られるようにして、炎天下を(短い距離とはいえ)走ってきた俺は、少しばかり息を切らしていた。

運動不足を実感する。

なんとか、息を整えたあと間宮に問題無い旨を伝えたあと、俺はここに来た経緯を伝える。

 

 

 

「提督、申し訳ありません。事前に食堂の件は周知するべきでした……」

 

「いや、間宮も当然ながら夏休みがあるんだから問題ないさ」

 

「いえ、その……」

 

「?」

 

 

 

やけに歯切れの悪い間宮に違和感を覚え、どうかしたのかと尋ねようとした時……

 

 

 

「間宮さん、焼きそばあがりましたよ~♪あ、夕立ちゃん、割りばしありがとうね……あれ?提督じゃないですか~」

 

 

 

呑気な声を上げながら明石がやって来た。

エプロンっぽいのを付けているし、今の発言からして、焼きそば作りの手伝いでもしているんだろうが……

 

 

 

「明石、間宮を手伝っているのか?」

 

「んー……手伝いというよりメインですかね?ほら、せっかく提督が、『夏休み』を作ってくれて、浜辺で遊ぶのに、食事の為に食堂へってのも、アレじゃないですか。そこで、浜辺で食事っていうと焼きそばじゃないですか?いや、カレーやバーベキューも捨てがたいとは、思ったんですけどね~。まぁ、そんなこんなで、間宮さんと相談して、こうなったんですよ」

 

「突っ込み所が多いが、とりあえず明石が元凶というのは、解った」

 

「提督~さすがに、元凶は、酷くないですか?」

 

「提督、本当に申し訳ありません……」

 

「いや、間宮は何も悪くないから」

 

「私をガンスルーは、酷くないですか!?」

 

 

 

明石が、騒がしいが放っておく。

 

 

 

「てーとくさんも焼きそば食べるっぽい?」

 

 

自分の分であろう焼きそばを、ズルズルとすすりながら夕立が、聞いてくる。

いかんいかん、電を待たせてるしな。

 

 

 

「あぁ、執務室に電を待たせてるし、二人分を貰おうと思ってるんだが」

 

「あら、電ちゃんが……すぐにご用意しますね」

 

「あぁ、間宮。わるいけど頼めるか?」

 

 

 

とりあえず、間宮に二人分の焼きそばを頼む。

もう昼時だし、夏休みで浜辺で遊んでいた艦娘(みんな)も昼飯の焼きそばを貰いに集まってくるだろう。

……なんとなく、妙な事に巻き込まれそうな気がするし、早く執務室へ戻るとしよう。

 

 

 

「明石、さぼってないで、配膳の手伝いを……提督!?」

 

 

 

声の方を向くと水着姿の大淀が居た。

セパレートの水着姿は、普段の委員長然とした雰囲気と違い、新鮮ではあるな……というか珍しい。

 

 

 

「ち、違うんですよ?明石が、浜辺で遊ぶのに、水着をって言って、私の分の水着を渡してきて、焼きそばの準備とか、その……」

 

 

 

顔を赤らめて、早口で説明しようとする大淀。

まぁ、慣れない水着姿を男に見られるのは、恥ずかしいのかもなぁ……

そんな事を思っているとまた声を掛けられた。

 

 

 

「あれ~ご主人様?大淀さんが真っ赤ですよ?セクハラはどうかと、(さざなみ)は思いますよ~♪」

 

 

 

声の方を向けば、ニヤニヤとした漣。そして、一緒に遊んでいたと思われる、(うしお)(おぼろ)(あけぼの)の3人。

 

 

 

「漣ちゃん、やめなよ。提督に失礼だよ……」

 

「朧もそう思う」

 

「クソ提督。アンタ、何やったのよ?」

 

 

 

漣を(たしな)める潮と朧はともかくとして……

漣の言を真に受けては、いないが、疑念の目を向けてくる曙。……いや、マジで勘弁してくれ。

 

 

 

「漣、そういうネタ振りはいらん。あと、曙。俺は何も言っても、やってもない」

 

「なら、なんで大淀さんが真っ赤な顔してるのよ?」

 

「……俺が、聞きたいわ」

 

 

 

 

とりあえず、早く執務室へ戻りたいんだが。

そんな事を思っていると、漣が再び口を開いた。

 

 

 

「まぁ、セクハラの真偽はおいておいて、こんなに沢山の水着姿の女の子を見て、感想の一つも無いのは、男性としてどうかと、漣は思いますぞ?」

 

「……皆、似合っていると思うぞ」

 

「ご主人様、テンプレ過ぎ!感情が、込もってないですよ~?ほらほら、潮ちゃんのけしからん水着姿とかどうですか♪」

 

「さ、漣ちゃん!?」

 

 

 

……漣の奴、潮まで巻き込んで。ちょっとばかり度が過ぎるな。

 

 

 

「……漣?」

 

「ひぃ!?ご、ご主人様…じょ、冗談ですよ?」

 

 

 

明らかなレベルで、トーンの変わった俺の声を聞いて青ざめる漣。……いかんいかん。せっかくの夏休みを楽しんでいる所へ、この空気を持ち込むのはダメだな……

 

 

 

「はぁ…………冗談なのは解ってるし、せっかくの休みでテンションが上がるのも解る。けどな、漣。むやみに潮を巻き込むな。仲間をネタの為に巻き込むのは、いい事じゃないぞ?」

 

「……はい。潮、ごめんね」

 

「ううん。大丈夫だよ」

 

 

 

 

なんとか、収まったか。そう思った所へ……

 

 

 

 

「でも、提督~?私も、ちょっとばかり、そっけないテンプレ感想だと思いますよ?私の水着姿を褒めて下さってもいいんですよ?……キラキラっ♪」

 

 

 

 

むしかえす明石(バカ)がいたよ……

……よろしい、ならば戦争(ほめまくり)だ。

『君が!謝っても!俺は!褒めるのを!止めない!』

って奴だな。俺は、明石へ視線を向ける。

そして、()()()()()()口を開く。

 

 

 

「……明石」

 

「はい?なんですか提督?」

 

「普段の、作業着や制服姿の明石も『らしくて』いいんだが、水着姿だと普段は隠されている女性らしいふっくらとして丸みを帯びたラインが強調されて、より一層魅力的だな」

 

「……へ?」

 

「割と大胆なデザインのビキニだが、腰部分のリボン調の結び目のような可愛いアクセントも良いし、今の様にエプロンで隠されていると、かえって想像を掻き立てられてしまうセクシーさがあるな」

 

「ちょ、提督!?」

 

「普段の気安い友人という雰囲気の明石が、水着姿になる事で、少しだけ非日常を演出され、それによって元々の明石の魅力を数倍に高めてくれている。本当に、惑わされてしまいそうなくらい、可愛くセクシーで魅力的な姿だぞ……」

 

「わ、解りました!解りましたから!私の負けです!だから、もう止めて下さい!?」

 

「……なんだ、まだまだ続けられるぞ?」

 

「ごめんなさい~!!」

 

 

 

褒められ慣れていないからか、恥ずかしさで真っ赤に茹で上がった明石。

単純な表現の羅列でしか無いんだし、褒め方としてのレベルは低いと思うんだが…………

 

 

 

 

……ご主人様の褒め方、エグいんですけど

……エグいけど……あんま、クソ提督っぽくない。電が相手だともっと自然な感じよ……いや、もっと甘いけど

……へー?ボノたん、ご主人様の事をよく見てますなぁ

漣、うっさい!あと、ボノたん、言うな!

 

 

 

「あ、あの提督。間宮さんが、焼きそばを用意してくれました。電さんを待たせているのも悪いでしょうし、執務室にお戻りになられては?」

 

 

明石への助け船も兼ねてか、大淀が俺に話し掛けてきた。

確かに、大淀の言う通りだな。漣と曙が、ボソボソ言っている内容は、気になるが、電も待ってるしな。

俺は、間宮に礼を言って、執務室へ戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

「司令官さん、おかえりなさい、なのです……ふにゃ?焼きそばなのです?」

 

「ただいま。待たせてしまって悪かった。実は……」

 

 

執務室の椅子に座っていた電は、目を通していた冊子を置いて、俺を迎えてくれた。

時刻は、ヒトフタフタサン。

一連の騒ぎを終えて執務室へ戻ってきた時には、部屋を出てから1時間近くが経ってしまっていた。

俺は、電へ焼きそばを渡しつつ、事情を説明する。

 

 

 

「はぁ……そんな事があったのですね」

 

「あぁ」

 

 

電が、入れてくれた麦茶を飲みながら、二人で焼きそばを食べる。俺の説明を聞いた、電は『なるほど』と納得の表情だ。

 

 

 

「(もぐもぐ……ごくん)焼きそば美味しいのです」

 

 

『ふにゃっ』と電の表情(かお)が緩み、笑みが浮かぶ。

電は、美味しいものを食べる時には、本当に幸せそうな表情を浮かべる。見ているこちらが、嬉しくなるレベルでだ。

……本当に、俺の嫁さんが、可愛いすぎる。

 

 

 

「?……司令官さん。どうか、されたのです?」

 

「いや、電は本当に美味しそうに食べるなと思ってな」

 

「だって、美味しいのですよ?」

 

「違い無いな」

 

 

 

ざく切りのキャベツと豚バラ、それに焼きそば麺を、塩コショウとソースで味付けした焼きそば。

特別な事は、何もしていないが、まとまった量を鉄板で作ったそれは、実に旨い。

浜辺で遊んだ後だと、こういうシンプルな食事が、似合う気がする。

こういうので、いいんだよ。こういうので。

 

二人で焼きそばを食べ終わり、食休み。

電が、入れてくれた、おかわりの麦茶を飲み、一息をつく。

 

……そういえば、電が、何かの冊子を見ていたな。

少し、気になった俺は、電に問い掛ける。

 

 

 

「電。俺が、執務室に戻ってきた時に冊子を見ていたけれど、何か残っていた書類とかあったのか?」

 

「いえ、そういうのでは、無いのです。」

 

 

 

そう言って、立ち上がり、冊子を手に取った電は、俺に冊子を渡してくれる。

 

 

 

「……あぁ、地元の公報か」

 

「なのです。先日に、鎮守府にも配られていたのですよ。司令官さんを待っている間に目を通していたのです」

 

「へぇ」

 

 

 

なんと言うか、懐かしい。こういうのって、地元のローカルな案内やニュースが乗ってたりするんだよな。

俺は、椅子に座ってパラパラと冊子をめくる…………うん?

 

 

 

「夏祭りの案内か」

 

「はい。近くの神社の境内でやるみたいなのです」

 

 

 

 

案内を、見ていると鎮守府から歩いて15分ほど。淡海堂の近くの神社でやるんだな。日程は……

 

 

 

「明後日の夕方からか。へぇ……夜には、花火も上がるのか。中々に本格的だな」

 

「明後日……なのですか」

 

「ん……確か、電の夏休みは、明後日だったんじゃ?」

 

「はい。3日目が、電の夏休みなのです」

 

「ふむ……じゃあ、電。俺と一緒に夏祭りに行こうか?」

 

「……司令官さん。いいのです?」

 

「あぁ、夕方なら、仕事も一段落してるだろうし、執務室は、大淀に頼めると思う……多分」

 

「多分って……もう」

 

 

 

少し呆れながらも、嬉しそうな電。

 

 

 

「じゃあ、司令官さん……」

 

 

そう言って、俺に向かって小指を差し出す電。

3年前のあの時からの二人の間の決まり事。

小指の約束(ゆびきりげんまん)

 

 

 

「……明後日、楽しみにしているのです」

 

 

 

新しい約束を交わした電は、そう言って、嬉しそうな笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

「そろそろ時間か……」

 

 

 

 

鎮守府の夏休み3日目。今日は電と夏祭りに行く約束をしている日だ。

昨日の昼時、大淀に今日の夏祭りに行く為に仕事を早めに終わりたいという希望を伝えたら

 

 

 

『……提督、バカなんですか?電さんと約束しているんですよね?仕事は、私が対応しますから休暇を取って下さって構いません。むしろ、休んで下さい!』

 

 

 

と、怒鳴られてしまった。むぅ。

 

まぁ、有難い話なので、電には昨日の内に休暇を取れた旨を伝えてある。休暇を取れた為、確実に夏祭りには行けるので、電は嬉しそうにしてくれていた。

何よりである。……大淀に感謝。

 

いつもの休みで、二人が同時に休める日なら、朝から出掛けたりとかが、多いのだが、連日の業務・任務疲れを考慮して、電には、ゆっくりとした時間を取ってもらっている。朝からもまったりタイムを満喫して貰った。

『司令官さん。電を甘やかしすぎないで欲しいのです』

と言われた様な気もしたが、おそらく気のせいだろう。

多分、maybe……

 

午後は、少しやりたい事があるという電。

その電から言われた『せっかくの夏祭りなのでそれっぽく、待ち合わせしたりするのです』との提案を受け、現在は、待ち合わせ場所の淡海堂前に待機している訳である。暑さは厳しいが、夕方になり風が出てきたし、淡海堂の前が日陰になっているので、待つのもさほど苦では、無い。

 

腕時計を見るとヒトロクヒトヒト。

待ち合わせまで、20分程か……

 

 

 

「あら、(おさむ)ちゃん。どうしたの?」

 

「あ、春さん。すみません、お店の邪魔をしちゃって……」

 

「それは、大丈夫だけど、お店にも入らないし、暑い中にいるからね?」

 

 

店の中から出てきたのは、淡海堂の店主の春さん。

 

俺の元の世界での、知り合いだったのだが、こちらの世界にも同じ名前、同じ姿で居て、更に俺との関係性も同じという存在だ。

俺を孫の様に見ていて『修ちゃん』と呼ぶのも一緒。

閑話休題……その春さんにしてみたら、自分の店の前で、暑いさなかに人が居れば気にかかる……

それくらい少し考えれば解るのに俺も大概抜けてるよな。

 

俺は、春さんに事情を説明する。

 

 

 

「……なるほどね。だったら、お店の中で待たない?電ちゃんも、修ちゃんを暑い中で待たせてたら、気にしちゃうでしょ?」

 

「まぁ、そう……ですかね?」

 

 

 

とりあえず、春さんの薦めに従って店内に入る。

冷房の入った店内は、やはり涼しい。

 

一息ついていると、春さんが、冷たい麦茶と紺色の何か……畳まれた布地の様な物を持って出てきた。

俺が、麦茶を頂き飲んでいると春さんが、口を開く。

 

 

 

「修ちゃん。これね、お爺さんの若い時の浴衣なんだけど、物が良いから勿体なくてね。サイズが合うのなら貰って着てくれないかしら?」

 

「え、浴衣ですか?」

 

「ええ。今の待ち時間で試してみない?ほら、店の奥で着替えられるし……ね?」

 

「……解りました」

 

「ありがとうね。脱いだ服は、置いてあるカゴに入れておいてね。あ、下駄も試して欲しいから、靴下も脱いでおいてね?」

 

 

 

春さんには、世話になってるし、これくらいの頼みは聞いてもいいだろう。俺は了承の旨を伝えて、着替えに向かった。

 

 

 

 

……袖を通した濃紺の浴衣は、(あつら)えた様にぴったりだった。着心地もとてもいいし、春さんの言っていたように、物が良いのだろう。着替え終わり、置いてある下駄を履く。これもぴったりだ。偶然にしても凄いな……

 

そろそろ待ち合わせの時間だし、春さんに浴衣の事を伝えたら、着替え直さなきゃな。そう考えながら、店に戻る。

 

 

 

「春さん、着替えられ…………え?」

 

 

 

言いかけて、目に入るモノに固まってしまう。

 

 

白地に青、藍、黄と色々な朝顔の花と蔓が、染め抜かれ、紫の帯を巻いた浴衣姿。

薄く頬を染めた、恥ずかしげな表情(かお)

見慣れた髪形でさえ、何処か新鮮さを感じて……

 

 

 

「……司令官さん」

 

「いな……づま?」

 

 

 

そこに待っていたのは、浴衣姿の電だった……

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

「行ってらっしゃい。足元には、気をつけるんだよ。修ちゃんは、電ちゃんをきちんと見てあげる事。電ちゃんも、修ちゃんと手を繋いで離さないのよ?」

 

「……はい。行ってきます」

 

「春さん、ありがとうなのです。行ってきます」

 

 

 

春さんに見送られ、淡海堂の裏手にある神社へ向かう。

時刻はヒトナナサンマル。この季節のこの時間は、まだまだ明るい。

そんな中、手を繋いで歩いている電が、不安そうに口を開く。

 

 

 

「司令官さん……浴衣の事、内緒にしていたの……ごめんなさい、なのです……」

 

 

 

 

……あの後で、春さんからネタばらしをされた。

 

電から俺と電が、夏祭りへ行こうとしている事を聞いた春さんは、電に浴衣の話を持ち掛けた。

浴衣を着てみたいと思っていた電がそれに乗り、どうせなら一緒にと、俺の浴衣の話が出たらしい。

ちなみに俺の着ている濃紺の浴衣は、春さんの旦那さんの物だが、電が、着ている浴衣は、春さんの若い時の物らしい。サイズ等が、電にぴったりというのも凄い話だ。

俺は、不安そうに返事を待つ電へ向けて口を開く。

 

 

 

「うん。浴衣の事は、驚いたけど……別に怒ってたりは、してないから。むしろ、電の可愛い浴衣姿を見られて嬉しいかな」

 

「……なのですか。……司令官さん……その……浴衣、電に似合っていますか?」

 

「凄く似合っている。春さんの浴衣って聞いたけど、まるで電の為に誂えたみたいだ」

 

……良かったのです

 

 

 

そう、小さく呟く電の顔は、少し嬉しそうに見えた。

 

 

 

……少しづつ人の増え出した神社への道を、電と手を繋いでゆっくりと歩く。下駄が、土を踏む感覚を久しぶりに感じる。となりを歩く電は、慣れない下駄に苦戦中の様だ。

電に合わせて、少しペースを落として歩く。焦る必要も急ぐ必要も無い。ペースが変わった事に気づいたらしい電が、繋いだ手を少しだけ強く握り、体を寄せてくる。

サクサクと土の参道を二人で進む。

何も言葉を交わさないのに、全てを伝えあえているような不思議な感覚……視線を向けると、電も俺を見ていて、二人で微笑み合う。

なんていうか……うん。悪くない。

 

 

境内に入ると、数が多くは無いが屋台が出ていた。

少しづつ明るさを落とす空の下で、屋台と祭提灯の灯りがその存在を強くしていっている。

 

 

 

「司令官さん!色々なお店が、あるのです!」

 

「そうだなぁ……お、りんご飴。わたあめもあるな」

 

「ふわぁ……すごいのです」

 

 

 

夏祭りを初めて経験する電には、全てが新鮮に映るのだろう。キラキラとした目で屋台を見渡している。

俺も子供の頃は、そうだったしな。電の今の気持ちも解らなくは無い。

 

 

 

「何か、欲しい物や、やってみたい事があったら言ってくれるか」

 

「はい……えーっと、えーっと……あ、司令官さん。その……りんご飴を食べてみたいのです。いい……ですか?」

 

「もちろんだ」

 

 

 

電と一緒にりんご飴の屋台へ、向かう。

 

 

 

「へい、いらっしゃい!」

 

「すみません。りんご飴を一つ下さい」

 

「まいど!500円だよ……はい、確かに。お嬢ちゃんが、食べるのかい?好きなのを取ってくれるか」

 

「は、はい!えーっと、えーっと、……」

 

 

 

真剣に、りんご飴を選ぶ電の姿に、ほっこりする。

屋台の親父も、暖かい目で見ているな。

 

 

 

 

「これに、決めたのです!」

 

「うん。いい奴、選んだな」

 

「えへへ……なのです」

 

「お、嬢ちゃん決まったかい?兄ちゃん、可愛い妹さんじゃないか。仲が良くていいな!」

 

「電は、妹じゃ無いのです。修さんのお嫁さんなのです!」

 

 

 

怒って言う電の言葉に、少し驚いていた屋台の親父。

やがて親父は、表情を微笑ましいモノを見るそれに変え、電に謝罪した。

 

 

 

「おっと、そりゃすまねぇな嬢ちゃん。兄ちゃん。可愛い嫁さんと一緒で、羨ましいな?」

 

「えぇ、最高の嫁さんですよ」

 

「かー!惚気られちまったぜ!暑くってしょうがねぇ!」

 

 

 

そう言って、豪快に笑う親父。場馴れしていて、妙な騒ぎにならずに済んだな。

りんご飴の屋台を離れて、次はどうするかと電に問い掛けようとした時に、電の表情が暗い事に気づいた。

 

俺は、電を連れて境内の端へ移動し、電に暗い顔をしている訳を聞いてみた。

 

 

 

「電。気分が、優れないのか?」

 

「いえ……その、私。りんご飴の屋台で、司令官さんの妹って言われて、ついムキになって怒ってしまったのです。司令官さんのお名前も言っちゃいましたし……」

 

「あぁ……」

 

「電は、艦娘で、人間さんとは違うのに、司令官さんのお嫁さんになれて幸せなのに、電の見た目で言われた事に過敏に反応しちゃって。皆に、司令官さんのお嫁さんなんだって、見てもらいたくて。……でも、ひょっとしたら電は、艦娘だから、そんなことは、現実的じゃ無いのかなって考えちゃって……」

 

「…………」

 

「……旦那様の事が、大好きなだけじゃダメなのでしょうか?」

 

 

 

 

 

……気がつくと、俺は電を抱きしめていた。

 

 

りんご飴の屋台で、俺は何を考えた?

『妙な騒ぎにならずに済んだ』

それは、俺が周りの事を気にしすぎて、電の気持ちを(ないがし)ろにしたのに他ならない。

 

なのに、何故、電が心を痛めないといけないんだろう?

艦娘という存在が、世界に現れて9年。世間への艦娘の認知は、深まってきてはいるが、溝はまだまだ深い。

そんな中での俺たちは……

 

…………違うな。

世間が、どうかとかじゃ無い。俺が、電をどう思い、電が俺をどう思うかだ。『人間(にんげん)』と『艦娘(かんむす)』が、同じ未来を描こうとすることが、今はあまり現実的で無いのは、解っている。

 

けど、だからといって、『人間(おれ)』と『艦娘(いなづま)』が、同じ未来(あした)描けない(みられない)って、決まったりしていない。

 

未来(あした)は、いつだって白紙(blank)なんだから。

 

 

 

 

 

「電。少し長くなるけど、聞いてくれるか……?」

 

 

 

 

俺は、想いの丈を電へと伝えていく……

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

「うわぁ……」

 

 

打ち上げられた花火が、夜空に大輪の花を咲かせる。

 

 

 

「司令官さん!凄く綺麗なのです!」

 

「本当だな……お、次が上がるな」

 

 

 

時刻は、フタヒトマルゴー。

俺と電は、夏祭りのクライマックスの打ち上げ花火を淡海堂前の縁台から、眺めていた。

花火大会の様な大規模な物では無いが、十分に見ごたえがある花火だ。

俺の隣の電は、目を輝かせて見入っている。

 

 

 

 

……あの後で、俺は自分の中の想いを、考えを電に伝え、電の中の想いと考えを俺に伝えて貰った。

色々含めて、明確な答が、出た訳ではない。

ただ、俺と電が出会ってからまだ3年。まだ焦る時間では無い。だから、とりあえずは『時の過ぎ行くままに(As time goes by)』だ。

 

暗い顔をしていた電は、話を終えた時には、明るい顔に戻っていた。

そうして、二人での夏祭り堪能を再開。

晩飯代わりに屋台のたこ焼きを食べたり、射的に挑戦したり、迷子の子供の親を探したり……とにかく、祭りを楽しんだ。

そうして、花火の打ち上げ時間となる前に、神社へ足を運んでくれた春さんが、『神社は、ごった返すから家の店の前で見たらどうだい?』と提案してくれたのに乗ったのだった。

 

いくつめかの花火を最後に、打ち上げ花火は終了。

辺りは、再びの静寂に包まれた。

しばらく花火の余韻に浸ったあとで、浴衣からの着替えを終え、鎮守府へ帰ろうとする。

すると、そこへ春さんが、大きな紙袋を持ってやって来た。

 

 

 

「修ちゃん。電ちゃん。今日着ていた浴衣。良かったら、持って帰っておくれ」

 

「え?でも、その浴衣は、春さんの大切なモノなのです」

 

「どうせ、家にあっても箪笥の肥やしだからね。だったら、電ちゃんたちに着て貰った方が、浴衣も喜ぶわよ」

 

「……司令官さん?」

 

「……解りました。春さん。有り難く頂きます」

 

「!……ありがとう、なのです!」

 

「どういたしまして。電ちゃん。浴衣を着るのが難しかったら、持ってくれば着付けてあげるわよ?」

 

「……お願いします、なのです」

 

 

 

 

 

……春さんから頂いた浴衣の入った袋を持ち、今度こそ鎮守府への帰路につく。

 

 

 

「電。夏祭りは、楽しかったか?」

 

「はい!屋台の食べ物も美味しかったですし、花火も綺麗でしたし……何より、司令官さんと二人、浴衣を着て過ごせたのです」

 

「……そっか」

 

 

 

……月明かりの下、電と一緒に夜道を歩く。

月明かりは、決して強くは無いが、しっかりと足元を照らしてくれる。

きっと、俺たちの未来 (あした)も同じ。

強く無くとも、足元(すすむみち)を照らしてくれる明かりは、きっと、ある。

 

 

……ふと電を見ると、少しむくれてこちらを見ている。

 

 

 

「むぅ……『そっか』って、なんなのです!司令官さんは、お祭り……楽しく無かったのです?」

 

 

 

少し、怒った様に切り出した電は、最後には不安そうに言葉を終えた。俺は、電へ言葉を返す。

 

 

 

「俺も、とても楽しかった。特に電の浴衣姿が、素敵すぎてな。ただ、一つだけ心残りが……な」

 

「司令官……さん?」

 

「浴衣姿の電とキス出来なかったしなぁ……」

 

「……なのです?」

 

 

 

いや、実際に浴衣姿の電とキス出来る機会って、そうそうないんだよなぁ……

 

 

 

「……時々、旦那様が、凄く馬鹿に思えるのです 」

 

 

俺の言葉を聞き、少し呆れたような電。

 

 

 

「まぁ……電が、絡むと色々アレなのは、否定出来ん」

 

 

 

そう返す俺に電は、微笑みながら言葉を紡ぐ。

 

 

 

 

「でも、そんな旦那様も、とっても好きなのです……」

 

 

 

 

どちらからともなく寄り添ったあと

月明かりの下、俺たちは唇を重ねた……

 




甘さ控えめ。
以下チラシの裏。


朝顔は、朝に咲いて昼には、しぼんでしまうので『はかない恋』という花言葉を持ちますが、支柱にしっかりと蔓をはるその姿から、浴衣の朝顔の柄は「固い絆」・「愛情」という意味を持つらしいです。
電さんの浴衣の柄は、ここから決めました。
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