鎮守府日常奇譚   作:ALF

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電視点です。半分説明回かもです。


回想~あるいは電と司令官~

カッカッカッカ……

夜の静かな執務室に、ペンを走らせる音だけが、響き渡ります。

少し視線を移すと、そこには、私と同じように書類と向き合う司令官さんの姿。

その机の上の書類は、未処理の山がほぼ無くなっている状態になっているのが、見受けられるのです。

 

……現在、鎮守府には、大本営からの限定任務に関する文章が、送られてきており、通常業務との兼ね合いで、ここしばらくは、とても忙しい日々が続いているのです。今夜も司令官さんと電は、机の上で書類とにらめっこ……流石に疲れてきているのです。

 

部屋の壁掛け時計が、示す時間は、フタサンマルマル。

あと一時間程で日付が変わってしまいますが、この調子なら、それまでには、なんとか書類の処理は終わりそうなのです。

 

 

「……電。疲れたら、休んでくれて構わないぞ?」

 

 

ペンの音が、止まっているのに気づいた司令官さんが、私に声を掛けてくれます。その表情は純粋に私の事を気に掛けてくれています。

そんな司令官さんの心遣いが、電にはとても嬉しく……

そうじゃ、ないのです!

 

 

「司令官さん、心配して下さってありがとうなのです。

でも、あと少しで終わりそうですし、電は、大丈夫なのです」

 

「……そうか。まぁ、無理はするなよ?」

 

「はい、なのです」

 

 

司令官さんに返事を返して書類に再び取り掛かります。

司令官さんと、二人っきりのお仕事。

今では、鎮守府の艦娘も随分と増えました。

でも、二人っきりだと、電と司令官さんの二人だけだった最初の頃を思い出します。

 

あれから、3年になるのですね……

私は、あの頃へと想いを馳せました。

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

「…えっと、ここなのですか?」

 

 

私は、大本営の一室へとやってきていました。

今日は、電を初めとした艦娘の配属辞令の交付日なのです。

 

私たち、艦娘は、この世に生を受けると、艦種ごとに訓練を行い、その訓練中に判明する適正や能力により、各鎮守府へと振り分けられます。

 

戦艦、正規空母といった、戦力に直結する艦種は、もとより、軽空母、重巡洋艦、軽巡洋艦、水上機母艦。

潜水艦、海防艦、そして電達のような駆逐艦も、各鎮守府からの要望、あるいは戦況に応じて配属されるのです。

 

そんな中でも電を初めとした数艦種は、特別な配属をされる事があるのです。

 

 

部屋の扉を数回ノックすると、どうぞと声がします。

女の子の声……やはり、ここで間違いなさそうなのです。

 

 

「失礼します」

 

 

そう声かけをしながら、部屋へ入ると4人の女の子達がいました。私は、早速挨拶を行います。

 

 

「暁型四番艦・電。只今着任しました」

 

 

「吹雪型駆逐艦一番艦・吹雪(ふぶき)です。電ちゃん、よろしくね」

 

 

後で黒髪を束ねた、真面目そうな女の子、雪吹さん。

 

 

「吹雪型駆逐艦五番艦・叢雲(むらくも)よ」

 

 

銀の長い髪の、気の強そうな女の子、叢雲さん。

 

 

「綾波型駆逐艦九番艦の(さざなみ)だよ♪よろしく~」

 

 

ピンク色の髪の元気な女の子、漣さん。

 

 

「白露型駆逐艦六番艦・五月雨(さみだれ)っていいます。電ちゃん、初めまして」

 

とても長い青髪のお淑やかそうな女の子、五月雨さん。

 

 

この部屋に集められた、吹雪、叢雲、漣、電、五月雨の五艦種は、初期艦と呼ばれる存在なのだそうです。

 

各鎮守府の提督……司令官さんは、深海棲艦に対抗する手段である艦娘を指揮するのですが、新しく着任したばかりの状態では、鎮守府の運営はとても難しい事なのです。

 

深海棲艦との戦い以前に、資源をやり繰りして艦隊を上手に運営する。言葉で言うと簡単そうな、それはもちろん簡単では、無いのです。

 

単純戦力で言えば戦艦や正規空母の艦娘は、非常に強力ですが、運用には多くの資源を必要とします。

そして、初期の鎮守府では資源は、最低限しか支給されません。

 

これは、大本営が、意地悪をしているのでは無く、着任したばかりの司令官さんに艦隊の運営をしっかりと学び考えて貰う為のそれだと、聞いたことがあるのです。

 

その為の補佐役として、司令官さんお一人に初期艦と言われる私たちの一人が配属される……そういう仕組みとなっているらしいのです。

艦娘学校の講義の受け売りですが。

 

 

ともかく、電達と同型の各娘は、初期艦になるのです。

 

同型……えっと、電達は、艦なので、同じ名前の別艦娘が、存在します。電は、何人もいるのです。

もちろん、全員が同じ性格、行動をする訳ではなく、個体差……個人差があるのですけど、たとえば、電だと比較的大人しいというか、引っ込み思案気味なのです。

 

 

……自己紹介を終えた後、しばらく皆とおしゃべりをしていましたが、やがて大本営からの通達を受け、電たち五人は、それぞれの鎮守府へと向かう事になりました。

それぞれの鎮守府の司令官さんを迎える為に。

 

 

そしてこの後に着任される電の司令官さんと

出会ったのです……

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

「……ふにゃ!」

 

意識が、戻ると私は執務机に突っ伏していた事に気づきます。時計を見ると、既に日付が変わってから半時間以上が経っています……私は、いつの間にか眠ってしまっていたようなのです。

電の背中には、司令官さんの上着が掛けられていました。この季節でも夜は、冷えるので、司令官さんが、私に掛けて下さったのだと思います。本当に司令官さんは、優しいのです……そうじゃなくて!

 

 

「し、司令官さん!ご、ごめんなさいなのです!電、お仕事の途中なのに……」

 

 

ガバッと起き上がり、司令官さんに謝罪の言葉を掛けます。本当に、電は、何をやってるのです……少し自分が嫌になって泣きそうになった時……

 

 

ポン

 

 

司令官さんの手が、電の頭の上に置かれました。

そうして、電の頭をゆっくりと撫でて下さったのです。

5分…10分でしょうか、ゆっくりとゆっくりと電を撫でて下さる司令官さん。

自分の中の嫌な感情が、消えていくのが、解ります。

 

 

「目が覚めたのなら、部屋に戻って休みな。もう日付も変わったし、ここのところの激務で疲れているんだろうし……な?」

 

 

司令官さんが、優しく声を掛けて下さるのです。

でも、司令官さんは?ふと疑問に思い司令官さんに問い掛けると、処理の終わった書類を纏めたら休むからとの事。だったら、電も待っているのです。

 

そんな、私の言葉に司令官さんが、改めて声を掛けようとして下さっている所に、更に言葉を重ねます。

少しだけ、勇気を出して。

 

 

 

「終わったら、一緒にお部屋に帰って休むのです……いいですか……旦那様?」

 

 

 

 

普段は、司令官さん。二人だけで、気が緩むと『さん』を外す私。

そうして、二人っきりで感情が、昂ると……

『旦那様』あるいは『あなた』と呼んでしまうのです。自分で言った言葉で、自分の顔が熱を持つのが、解るのです……恥ずかしいよぅ……

 

 

少しだけ、伏せていた目線を上げて、旦那様を見る。

……旦那様が、少しだけ、悪い顔をしているのです。

 

 

 

「……旦那様。また、おかしな事を考えているのです」

 

 

「おかしな事とは、酷いな。俺は、電が可愛すぎると思っているだけだぞ?」

 

 

ストレートに告げてくる旦那様に少しだけ呆れてしまう。けれど、それ以上の嬉しさが、胸に込み上げてくるのが、解ってしまうのです。

照れ隠しで、旦那様へ向け冗談半分、本音半分で言う。

 

 

 

「本当に……旦那様は、電の事が好きすぎるのです」

 

「嫌か?」

 

「……そんな事は、ないのです。だって……」

 

「だって?」

 

 

……旦那様は、普段は凄く凄く優しいのに、こういう時だけは、とっても意地悪なのです。私は、顔が更に熱を帯びるのを感じながら、ちょっぴり、自棄気味に言う。

 

 

 

 

「電も旦那様の事が大好きなのです!」

 

 

 

 

あぁ、もうダメなのです。

きっと、顔だけでなく、全身が、真っ赤になっているのです。頭の上から『ぷしゅー』とか聞こえながら湯気が出ているに決まっているのです……

 

 

突然、電の体が、引き寄せられて、旦那様の胸が目の前に現れたのです!はわわわわわわわ……あ、頭が回らないのです……

 

 

少しして、ようやく旦那様に抱き締められたと理解できた私は、旦那様を抱き締め返す。電の鼓動の音が大きすぎて旦那様に聞こえないかななどと少し間の抜けた事を考えたり……でも、すぐに幸せな気持ちが、電の全身を包んで、何もかもが気にならなくなるのです。

 

この時間が何時までも続くといいな……そう思っていると、旦那様が、電の背中から手を離したのです。

正直、少し……ううん、凄く、名残惜しいのです。

 

 

「……さて、休もうか?」

「はい……なのです」

 

 

旦那様と手を繋いで二人で執務室を出る。

深夜の鎮守府の廊下は、ぼんやりと灯る常夜灯の明かりがあるだけ。

旦那様と二人で自分達の部屋へ向かう。

そんな中で、私の口が、自然と開く。

 

 

 

 

「旦那様……」

 

「……ん?」

 

「……何時までも一緒なのです」

 

「……あぁ」

 

 

 

 

 

この世界一、大好きな人と何時までもどこまでも

 

電は、生きていきたいのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あれ……なんで、こんなに糖分マシマシに
なったんだっけ……
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