鎮守府日常奇譚   作:ALF

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艦娘は、艦娘だから、見た目が幼くても
飲酒してもいいんだって、ばっちゃまが、言ってた。


小料理屋・鳳翔~あるいは司令官と電~

鎮守府には、様々な施設がある。

装備品の開発、あるいは艤装改修等を行う為の工廠。

損傷した艦娘の修復を行えて、入浴施設も兼ねる入渠ドック。

新たな艦娘を建造する為の建造ドック。

食料や日用品を含め多岐に渡る商品を取り揃えた酒保。

提督が、作戦立案当の様々な事を執り行う場所である執務室。

艦娘たちが、寝泊まりする艦娘寮。

艦娘や提督が、食事を行い、また戦闘糧食等の制作場所ともなる食堂(厨房)

……まぁ、色々な施設がある。

 

その中で、前述の食堂では、無料で朝・昼・晩と一定の時間において食事をとる事が出来る。任務等で時間中に食事をとれない艦娘の為に、簡単な軽食も用意されている。予め用意されている物以外も(厨房の間宮たちに余裕があれば)有料ではあるが、作って貰う事が出来る。

 

アルコールの提供こそ無いが、呑みたい艦娘の為に酒保等で購入した物の一定量のアルコールの持ち込みは、

許可されている。

 

ただし、酔っ払って周囲に迷惑をかける様な行為を行った艦娘は、その行動の程度により、一定期間のアルコール持ち込み禁止を言い渡される。

 

うちの鎮守府では、そこまでの行為をおこなった艦娘は(現時点では)居ないが、他の鎮守府では、度々見受けられるというから、酒好きは、どこにでもいるんだなと考えさせられる話である。

酒は呑んでも呑まれるなとは、よく言ったものだ。

 

で、前述の通り『一定量』のアルコールは、許可されているものの、呑んべえからすれば、その『一定量』は、物足りないものである事が多い。

そして、そういう艦娘も一定数いるわけだ。

 

寮の自室での飲酒は、禁止されてはいないが、それによる何らかの不祥事が起こった場合に適用される罰則が、

存在する為に、そこでも自制は、求められる。

 

食堂でも、自室でも制限がある。

だが、抑圧された中で不満が増幅され、暴発する可能性もあるだろう。

 

そこで、ガス抜き……あるいは緩衝材的な役目を果たしてくれる場所。それが、『小料理屋・鳳翔(ほうしょう)』である。

 

 

 

 

『小料理屋・鳳翔』は、文字通りに軽空母である鳳翔さんが、営業してくれている店だ。

 

艦娘たちは、自分たちの財布からの支払いで、料理、そしてアルコールを楽しむ事が出来る。

店を訪れる艦娘たちの要望を受けて取り揃えられた、酒は、多種多様にわたり、かなりの種類、そして銘柄が、あるという。

 

更に、それらの肴となる料理も、鳳翔さんの腕が振るわれた素晴らしい物で、店が開いている日の賑わいは、相当のものだ。

 

酒目当てで無くとも、私費で訪れる艦娘は、後を絶たない。流石は鳳翔さんである。

 

ちなみに、鳳翔さんが、任務や出撃についていない時は、ほぼほぼ店を開けてくれており、『無理に店を開けなくても?』と俺が、言ったおりには『好きでやっていますから』と返されたのを覚えている。

本当に流石は鳳翔さんである(2回目)

 

 

そんな、小料理屋・鳳翔の事を俺が何故に延々と語っているかというと……

 

 

「司令官さん。お店についたのです」

 

「お、じゃあ入ろうか?」

 

「なのです♪」

 

 

 

明日が休みである電(俺も休み。執務は終わらせてある)と一緒に夕食を鳳翔さんの店でとる事にしたからである。

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ……あら、提督。電ちゃんもご一緒ですか?」

 

「あぁ、鳳翔さんの所で夕食をと思ってね」

 

「鳳翔さん、こんばんは、なのです」

 

「こんばんは、電ちゃん」

 

 

 

店内を見まわしたが、まだ他の客の姿は見えない。

小料理屋・鳳翔は、カウンター8席とテーブル2組8席で計16席の比較的小ぢんまりとした店だ。

たまにヘルプの艦娘が、入る事もあるが、基本的には鳳翔さんが、一人で店をまわしている為、このくらいの規模が限界なのだとか。

 

俺の感覚だと、16席でも多い気がするのだが、あくまでも俺の感覚だから、実際の所は解らない。

鳳翔さんが、やっている店で鳳翔さんが、決めた座席数なのだから、大丈夫なのだろう。

 

 

俺と電は、店の奥側のカウンター席につく。

鳳翔さんが、温かいお茶の入った湯呑みを置いてくれる。電と二人、礼を言ってからメニューに目を通す。

酒もあるが、基本は夕食だ。さて何を頼むか。

 

隣を見ると電は、メニューとにらめっこをして真剣に悩んでいるようだ。まぁ気持ちは解る。

 

鳳翔さんの料理は旨い。基本的なメニューは、どちらかといえば和食寄りなのだが、客のアドリブにも(材料さえあれば)応えて料理を作ってくれる。

その為に選択の幅が広くなり、より悩む原因となる訳である。

 

んー……造りも食べたいが、酒と合わせたくなる。

となると、最初は飯と汁に焼き物か?

隣の電も、まだ悩み中だ。そんな俺たちへ鳳翔さんが、助け船を出してくれる。

 

 

「提督も電ちゃんも、迷っているようでしたら、食事になる物をおまかせで、お出しする事も出来ますが?」

 

「……頼めますか」

 

「お願いするのです」

 

「畏まりました」

 

 

鳳翔さんの提案に俺と電は、揃って乗った。

美味しそうな物が多すぎるのがいけないんだ。

決して、優柔不断なわけでは……あるかもだが。

 

 

「まずは、こちらを」

 

 

そう言って鳳翔さんが、出してくれたのは、肉じゃが。

じゃがいも、人参、玉ねぎ、豚肉を甘辛く煮込んだ定番の煮物だ。俺達がお腹を空かしているだろうと見越して仕込んであったであろう肉じゃがを最初に出してくれたのだろう。

 

電と二人で『いただきます』を言い、肉じゃがに箸を伸ばす。崩れることなく箸でつまめるじゃがいもを口へ運ぶと、芋は口の中でさらりと崩れる。そして広がるのはしっかりと出汁の効いた甘辛い味。やや甘めのそれが旨く、芋の風味と一緒に煮込まれた豚肉により加えられたコクと相まって、素晴らしく旨い。

 

これは、ご飯が欲しくなると思った所に『どうぞ』と茶碗に盛られた白ご飯と味噌汁が置かれる。

 

ありがとうと言いながら、今度は、じゃがいもを口に入れるとほぼ同時にご飯を口にする。

酒のアテにもなる様に単品では、やや濃い目に思える味付けの肉じゃがだが、ご飯と一緒だとちょうどよい濃さとなる。まさにベストマッチだ。

 

ご飯で口の中が、リフレッシュされた所で、一緒に出された味噌汁の椀に口をつける。極めてシンプルな豆腐とワカメの味噌汁。それが、口に入ったと同時になんともホッとする。肉じゃがと同じく、しっかりと出汁が効き絶妙の塩梅の味噌の濃さ。

椀を置き、茶碗のご飯を口へ運ぶ。

いかん、味噌汁とご飯だけで、無限連鎖が、出来てしまうじゃないか!

 

隣の電も、蕩けた表情で、肉じゃが、ご飯、味噌汁、ご飯、肉じゃが……と無限コンボの如く続けて、たまに思い出したかのように『美味しいのです』と口にしている。

 

 

「だし巻き玉子です。熱いのでお気をつ下さい」

 

 

肉じゃがの猛攻に晒されていた、俺たちへ続けてだされたのは、だし巻き玉子。

きれいに巻かれたそれの一切れを口へ運ぶ。

……柔らかい。いや、心地よい固さは、あるのだ。

だが、その食感は、やはり柔らかいとしか言えない。

卵に歯をいれる……広がる出汁の味と塩気。

 

鳳翔さんの料理は、本当に、出汁の使い方が上手い。

簡単な料理しか出来ない俺とは、比べ物にならないような凄さだ。

 

 

「はわー……ふわふわなのです……」

 

 

だし巻き玉子を口にした、電が、声を上げる。

うん。声を上げたくなるのが、解るぞ。

 

 

「お二人共、ご飯のおかわりは、いかがですか?」

 

「貰えますか」

 

「電もお願いするのです」

 

 

 

鳳翔さんの提案に、電と二人してノータイムで返答。

ご飯不足が当選確定だったのだから仕方ない。

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

 

「はふー……お腹いっぱいなのです」

 

 

電が、満足そうな声を上げる。

あのあとからの様々な鳳翔さんの料理を満喫し、今は食後のお茶を幸せそうな顔で、飲んでいる。

本当に旨かったな。流石は鳳翔さんだ。

 

 

……時刻は、ヒトキュウゴーゴー。

俺達が店に入ってから2時間程が過ぎている。

いつもなら席が埋まっている時間だが、今日はまだ俺たち以外の来店が、無い。珍しい日もあるものだ。

 

 

 

 

ガラガラガラ……

 

 

 

店の入り口が開く音がする。入ってきたのは、二人組。

青み掛かった銀の髪の少女である駆逐艦・(ひびき)

そして、茶色の長い髪を左右のツインテールにした軽空母・龍驤(りゅうじょう)だった。

 

 

 

「お、今日は空いてるなー。ラッキーやわ」

 

「あぁ、ついているね」

 

「いらっしゃいませお二人共、空いているお席へどうぞ」

 

「了解……ん?司令官と電……珍しいね」

 

「響ちゃん、龍驤さん。こんばんは、なのです」

 

「ほんまやね……って、二人してデートか?」

 

「で、デート……」

 

「まぁな」

 

「キミはからかい甲斐が、ないなー。電の反応を、ちっとは、見習いや?」

 

 

 

 

龍驤の発言を流しつつ話を聞くに、響と龍驤は呑み友達らしい。

元々は、バラバラで、店を訪れていたのが、何度か一緒に店で呑む機会があり、今ではよく一緒に来店するとの事だ。

 

 

 

「まぁ、ここで会うたんも、なんかの縁やし、一献付き合わんか?」

 

「今日は、電と飯を食いに来たからなぁ……」

 

「なんやなんや冷たいなぁ……ウチ泣いてしまうで?」

 

 

 

龍驤からの酒の誘いを、やんわりと断ると、ヨヨヨとばかりに嘘泣きを始め出した。おいおい。

 

 

「まぁ、中々こういう機会はないだろうし、たまにはいいんじゃないかい?司令官」

 

 

響までが、言ってくる。……しかし電が、なぁ。

 

 

 

「司令官さん。電は、食休みするのです。だから、龍驤さんたちに付き合って、あげて下さい」

 

「ほれほれ。嫁さんの許可も出たんやし、覚悟きめーや?なんやったら、電も一緒に呑んだらええやろ?」

 

「鳳翔さん。私は、ウオッカを。あと、適当にツマミを頼むよ」

 

 

 

悩む俺を他所に、注文する響。フリーダム過ぎるだろ。

 

 

 

 

「解った解った……少しだけだぞ」

 

「そうこなな!鳳翔!湯呑み三つ貰えるか?」

 

「うぉい!?」

 

 

 

なんで、盃じゃなくて湯呑みなんだよ!

 

 

 

「コップ酒と、ちゃうだけ、きー、つことるやろ?」

 

「気の使い方が間違ってるぞ……」

 

 

鳳翔さんは、ニコニコと微笑みながら、湯呑みを三つと一升瓶を龍驤の前に置いた。

えぇ……。鳳翔さん、止めない所か、徳利で出すことすら、して貰えないんですか?

 

 

 

「まぁ、いこか♪」

 

「ウオッカ、おかわり」

 

 

 

容赦なく日本酒を湯呑みに注ぐ龍驤。

マイペースでウオッカを呑む響。

 

俺と電の前に置かれた酒の入った湯呑み。

龍驤は、自分の湯呑みにも酒を注ぐと、一気に呑み干した。

 

 

「かー!この一杯の為に生きとるって奴やね。ほれほれ、湯呑み、はよ、空けや?電もぐーっと行こか?」

 

「おいおい……てか、電は、m」

 

「は、はいなのです!」

 

 

龍驤の無茶ぶりを聞きつつ俺が、電に無理をするなよと言おうとした時には、電は、返事と共に湯呑みの酒を一気に空けていた……おいおい

 

 

 

「電!大丈夫か!?」

 

「おー!電、えぇ呑みっぷりやなー」

 

 

呑気に言う龍驤だが、俺はそれどころじゃ無かった。

電に飲酒の習慣は、無い。というか、酒を呑んだ事が無い。そんな所へあんな呑み方をしたら、いくら艦娘が丈夫といえ、悪影響が!

 

 

 

「……美味しいのです♪」

 

「……電、平気なのか?」

 

「大丈夫なのです♪」

 

「ほんま、キミは、心配性やなー」

 

 

 

電は、大丈夫と言い、龍驤は、心配しすぎという。

本当に俺の取り越し苦労か……?

 

 

 

 

「電、もう一杯行くか…………ん?えらい顔が、あこうなっとらんか?」

 

 

 

 

龍驤が、言うように電の顔は、一気に赤くなった。

やはり、無茶な呑み方だったんだ。

 

 

「電!」

 

「……」

 

「……いな……づま?」

 

「だんなしゃま~♪」

 

 

気が気でなく電に声をかけたが、無反応だった事を訝しく思った俺に向かい、電は突如、抱きついて来た。

そして俺の胸に顔をスリスリとこすり付けながら甘えてくる。

 

 

 

「……電て、酒初めてか?」

 

「少なくとも、私は、電がアルコールを口にしたのを見たことも、聞いたこともないかな」

 

「マジか~」

 

 

 

 

龍驤が、電の様子に呆気にとられている間も電は、俺に抱きつき甘え続けている。自室ならともかく店でこれは、どうしろと言うんだ!?

半ばテンパりながら必死で、頭を回す俺。

そうしていると、電の動きが止まって、俺から体を離しだした。少し落ち着いたのか?そう思って電を見ると

 

 

 

 

「だんなしゃまー♪ちゅー♪」

 

 

 

 

そう言って、電がいきなり唇を重ねつつ飛びかかって来た。咄嗟の事で俺は電に抱きつかれながら椅子からずり落ちた。幸い、龍驤は、俺を避けてくれていたが、俺は電にのし掛かれられたままだ。

 

 

 

「あらあら……」

 

「こんなとこで、イチャイチャすなや……」

 

「ウオッカ、おかわり」

 

 

 

微笑んでる様が想像できる鳳翔さんの声。

自分の行動を棚に上げ悪態をつく龍驤。

変わらずマイペースの響。

 

そんな中で唇を重ねたままの電。

そんな電が、唇を離して体をずり下げた。

 

 

「……電?」

 

 

 

返事の代わりに聞こえてきたのは、電の寝息。

……寝ちゃったか。なんというか……うん。

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました。提督。お気をつけて」

 

「はぁ、もっぺん呑みなおすか……」

 

「司令官。妹を頼んだよ。……鳳翔さん。ウオッカをもう一杯もらえるかな」

 

 

 

 

三者三様に見送り(?)の言葉をかけられた俺は、眠ってしまった電をおぶって、店を出た。

 

安らかな寝息をたてる電を背中に感じながら、月明かりの下、俺は自室へと歩を進める。暫くして、背中に少しの振動を感じた。電が、起きたのかもしれない。

 

 

 

「ん……ここは?…………しれい……かん……さん」

 

「お、目が覚めたか……気持ち悪かったりしないか?」

 

「はい……」

 

 

 

目が覚めた電は、俺の問い掛けに、言葉少なく返答すると、黙ってしまう。俺は、再び静寂の中を歩く。

 

 

 

「……司令官さん、ごめんなさいなのです」

 

「……何がだ?」

 

「電が、お酒に酔っぱらってしまって……その」

 

「覚えているのか?」

 

「……なのです」

 

 

 

 

自分の酔った時の記憶が残っているのは、電の性格だとキツイだろうなぁ……そう思いながら歩き続ける。

 

 

 

 

「……その、怒らないのです?」

 

 

 

電が、心配そうな声色で問い掛けてくる。

 

 

 

「怒る理由が、無いしなぁ……」

 

「でも、電は……」

 

「……電は、な。何時でも頑張ってくれていてな、自分が、大変なときでも周りを気遣える優しい女の子でな」

 

「……」

 

「甘えん坊の癖に、色々と気遣って、我慢する子で……だから、お酒の妖精さんが、電に力を貸してくれて、甘えさせて、くれたんだよ……」

 

「お酒の妖精さんってなんなのですか……」

 

 

 

呆れたような照れくさいような口調の電。

 

 

 

 

「俺は、また一つ電の可愛い所を知れて嬉しかったぞ」

 

 

 

 

電からの反応は、無い。再び、静寂の中を歩く。

 

 

 

「……本当に、旦那様は、電の事を好き過ぎるのです」

 

「誰よりも、愛しているぞ?」

 

 

ノータイムで答える。

 

 

 

 

「…………電も、愛しているのです」

 

 

 

 

 

月明かりの下、俺は電の心からの想いを受け止めた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




途中ちょっと飯テロっぽくしたかったけれど、文章力の無さには勝てなかったよ……
糖分は、後半に詰め込んだよ!甘さ控えめだけどね!
(当社比)
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