転生したので、偽マキマさんはデンジ君を推します 作:フィークス2号
「で?言い残すことはあるマキちゃん?」
「違うんです……違うんです姫パイ、いや姫野
さん、姫野様。本当に違うんです。許してください。」
私マキマ、いや偽マキマは危機に瀕していた。目の前にはブチギレてる我が公安対魔特異4課の眼帯美女、姫パイこと姫野様が仁王立ちしていた。
私は死を覚悟して、床に正座してただひたすらに許しを乞うことしかできない。
「私ね?最初マキちゃんがアキ君のところに武器人間……だっけ?その武器人間の少年を住まわせるって聞いた時はね、半殺しだけで済まそうとしてたんだよ?」
「ひ、姫野先輩!上司を半殺しはまずいです!」
「荒井君は黙ってて」
「は、はい」
「ど、どうしよう……どうしよう……。」
姫パイが殺気を私に向けながら怒り、それを新人の荒井君が静止するも姫パイに封殺され、コベニちゃんはひたすらあたふたしている。
私は休憩時間に姫パイに呼び出されて、お叱りを受けていた。見よ、この部下からお叱りを受ける哀れなポンコツ上司の姿を!
「でもさぁ、女の子の魔人を彼女持ちに同居させるってどういうことなの?ねぇ?んー?」
姫パイがキレイなアイアンクロー(顔を手で鷲掴みして指先の握力で締め付ける技)を私の顔面にかまして、顔に圧力をかけ痛!痛い痛い痛い!冷静に実況してる場合じゃないぞこれ!?ヤバい!ヤバいって!
「ひ、姫野先輩!」
「おっと、力入れすぎちゃったか。で、マキちゃんさあ、何でそんなことしたの?」
「それは……2人をまともにして貰えるように考えた結果、デンジ君とパワーちゃんの面倒をアキ君に見て貰うのが一番という結論に至って。」
「ふーん。で、何でアキ君なの?」
「それは……あの2人をまともに出来るのは、2人を抑えるだけの実力と気合いがあって、常識的な人しかいないと思いまして……。それを考えたらもうアキ君しか居なかったのでそうなりました。」
「本当にアキ君しかいないの?よく考えたのマキちゃん?」
訝しみながら姫パイが私に尋ねる。
「うん、常識的な人だと他には伏さんや円さんがいるけど、実力面で不安だし2人に逆に引っ張られちゃうなーって。
他のメンバーだと実力はあるけど、性格面や常識面で難があるから……。だからそれを考えるとどう足掻いてもアキ君になっちゃう訳なんです。はい。」
「ねぇ、私は?私はどうなの?」
「え?姫パイ?だって姫パイは一応実力はあるけど性格面で一番問題があるタイプだし2人の面倒なんてみ痛い痛い痛い痛い!!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああぁぁぁ!」
姫パイは再び私にアイアンクローをかまして、私に汚い悲鳴を上げさせた。こちとら乙女なのに!姫パイみたいなおっさん女じゃないの痛い痛い痛い痛い!握力強まった!これ絶対握力強くなったって!助けて!助けて!助けて!
「マキちゃん、今絶対私のこと心の中で悪く言ったでしょ。付き合い長いんだからわかるよ。」
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!許して!許して許して許してえぇぇぇぇ!」
私は新人2人の前でみっともない姿を晒しながら命乞いをした。
「全く、これ以上アキ君のところに同居人とかが増えたりしないよね?」
「ヒャ!姫野様!姫野様!ぎゃああああ!増えない!姫野様!言うこと!絶対!アキ君!同居人!増えない!」
「よーし!言質取ったどー!……これで増えたら次ゴースト使うからね?」
「洒落にならないから!ゴーストは洒落にならないから!」
「だったら増やさなければいいだけでしょ?
……あ、2人とも個人的な用事に付き合わせちゃってごめんね?」
「は、はい。」 「うう……怖い。」
姫パイは荒井君とコベニちゃんの2人に謝った。姫パイのせいで新人2人からの印象がだいぶ情けなくなってしまった……悲しい。
「あ、そうだ。お詫びと言っちゃ何だけど、今度飲みに行こうよ!
あ、新人歓迎会も兼ねちゃえば一石二鳥じゃん!
というわけでマキちゃん、今回の件許すから飲み会のセッティングとかお願いね。それと奢りもよろしくぅ!」
スムーズな流れで姫パイが飲みの予約を入れる。
「おっしゃあ!マキマさんにお任せあれ!姫パイはどこのお店がいいとか最近オススメある?
実はアキ君と同居してる新人なんだけど、デンジ君まだ未成年なんだー。だからお酒だけじゃなくて、ご飯も楽しめるお店がいいんだけど。」
姫パイの怒りが収まり、いつもの付き合いやすいノリに変わったので私もそれに合わせて柔軟に対応する。
やっぱいつもの姫パイは付き合いやすいなぁ。
「マジで!?あのアキ君と同居してる男の子の新人って未成年なの?何歳?」
「16だよ。姫パイも酔っ払って飲ませたりしないでね。
あ、そうそう!荒井君とコベニちゃんは同期とはいえ年上だから、デンジ君になるべく優しく接してあげてね。」
私は荒井君とコベニちゃんにそれとな〜くデンジ君のことを頼んだ。これでデンジ君に優しくしてくれたら儲け物だ。
「いやいやマキちゃん、私が飲ませるわけないでしょ!そこら辺しっかりしてるの知ってるでしょ?」
「うん、酔ってない姫パイが信頼できるのは知ってる!酒が入ってなくて酔ってない姫パイはなぁ!
酒が入ってるとそこの信頼すらも吹き飛ぶし……。ね!そうだよね荒井君!コベニちゃん!」
私はここで荒井君とコベニちゃんに話題を振った。
「え!?あ、あ、あ、その」
「あ、あー、俺はよく姫野先輩のおふざけで緊張をほぐして頂いてます。」
急に話題を振られて慌てるコベニちゃんに対して、荒井君は言葉に詰まりつつも返答した。
「私の質問に対して肯定しつつ、姫パイを持ち上げる返答……おお!荒井君上手い!機転が利くねぇ!その機転を悪魔討伐にも活かせれば問題なしだ!
コベニちゃん、こういう人が出世するんだよ!」
私は荒井君に拍手しながらコベニちゃんに言った。
「荒井君ありがと!てかマキちゃん、そんなに酔った私って信頼ない?」
「ない、ない、ありません。逆に聞くけど姫パイは酔った自分を信頼できるの?酔った自分に責任を負えるの?」
「んー無理!」
「判断が早い!」
元気よく返す姫パイに対して私は突っ込みながら、呆れて笑ってしまった。
「そうそう2人とも、姫パイは飲み会の時だと、普段とは比にならないほど酒癖悪いから気をつけてね。」
私は新人2人に姫パイの飲み会での酒癖の悪さについて警告した。
「むー、マキちゃん私の事ばっかり言って……。そんなこと言ってマキちゃんこそ変なことするんじゃないのぉ?」
「えー?私はそんな酔わないし酒癖も酷くないじゃん。」
膨れっ面した姫パイが私に言う。
「いやいや、聞いたよアキ君から?アキ君と同居してる男の子、好みとか言ってたらしいじゃん?手ぇ出したりしないでよね?」
姫パイが私を揶揄いながら言う。……どうしよう、ニャーコを通してデンジ君を観察したら原作通りパワーちゃんの胸を揉んだみたいで、なんか表情から魂が抜けてたんだよなぁ。
原作だと真マキマさんが胸を触らせて元気付けてたなぁ。原作の展開になるべくなぞることでデンジ君を強化しようとしてるし、このイベントもやっぱり起こすべきだよね!いや、公安襲撃の際の死者を減らす為の原作ブレイクしちゃう予定だけども!それでもこういうイベントとかは大事だろうし、しっかりと再現すべきだよね!うん!
「………」
「……マキちゃん?」
私は姫パイの心配に対して無言で返すことにした。嘘をつく事はできないし、デンジ君に手を出すだなんて公言できるわけもない。答えは沈黙、これでいい!これがベスト!
「ねえ、ねえってば。マキちゃん?マキちゃん!?」
姫パイが私をユサユサと揺さぶる。
「マキちゃん考え直して!未成年に手を出すのはまずいって!」
「……姫パイがアキ君と付き合ったのって確か3年前だよね?その時アキ君何歳だっけ?」
私は姫パイを黙らせるべく最終兵器をぶちかます。
「あ!もうこんな時間だ!そろそろ次の任務に行かなきゃヤバい!というわけで私は失礼しまーす!それじゃあ荒井君、コベニちゃん。今日のパトロールは私抜きだけど頑張ってね!」
急所をつかれた姫パイは形勢不利と悟り素早く撤退した。
そしてその場には私と荒コベコンビが残された。
「いやー、上司2人で盛り上がっちゃってごめんね?やり辛かったよね?」
「いえ、俺は大丈夫です。」
「あ、私も大丈夫です……普段からあまり喋れないタイプなので……」
「あはは、気を使ってくれてありがとね!」
姫パイと盛り上がってて、2人とあまり喋れなかったので私は荒井君とコベニちゃんと軽く雑談に興じた。
「マキマさんって、結構フレンドリーなんですね。なんていうかデビルハンターとして有名だし、ベテランだから近寄り難いオーラとかある気がしてました。」
「あ、私もそんなイメージでした。たくさん悪魔とか討伐してるって話を聞いてましたし、もっとエリートな感じを想像してましたけど、結構愉快な方なんですね。」
2人は私と話してるうちに、私に対して好感……というか親しみを抱いてくれたようだ。そりゃ今の私は、側から見れば直属の上司にしばかれるその上のお偉いさんという威厳も何も感じられない女だ。そしてその上で、姫パイとノリノリ楽しく談笑して、2人とも話したのだ。
お偉いさんというイメージから、ノリのいい優秀な先輩というイメージにシフトしたっぽい。私も原作で見覚えのある2人とは仲良くしたいから、ポジティブな印象を持ってもらえるのは正直嬉しい。
「テレビとか新聞の広報に出てる時はザ・できる女感を出してるけど、実際はこんなもんだよ。でも流石に悪魔退治の際はもうちょっと頼りになるから、そこは安心して大丈夫!無駄に場数を踏んでる訳じゃないからね。」
「姫野先輩からもマキマさんの活躍は聞いてます。なんでも悪魔と契約してる暴力団と戦って、いくつもの組を潰したとか……。」
荒井君が尊敬の目で私を見ながら言う、だが実際はこんなポンコツ女でごめんね。
私が暴力団を全国でしばき回っていたのは、ヤクザのもとでデビルハンターをしているデンジ君を救い出すためだ。情報収集を兼ねてヤクザをしばく活動していたのだが、荒井君に褒められるとあの活動は全くの無駄ではなかったのだとわかり感動する。
「うん、暴力団と悪魔が結びついた犯罪は一筋縄ではいかないからね。ヤクザが関わってる分民間は関わりづらいし、普通の対魔課にはハードルが高い、そこを考えると特異対魔課の私が出張るのが一番なんだよ。
もし順調に君達が経験を積んで出世したら、今度は2人がヤクザをしばき倒す番になるかもよ?」
「お、俺がですか!?」
「ひ、や、ヤクザ相手に戦いを……!?」
おっと、2人をビビらせてしまったようだ。そりゃそうか、ヤクザとやりあうだなんて普通は怖いに決まってるよね。ヤバい、長年の公安勤めで感覚が麻痺ってる!
2人とも怯えてるけど、ヤクザと戦うのは将来なんかじゃなくて、もうすぐ先の事なんだよね……。
「おっと脅かしすぎたかな?ごめん、ごめん、でも安心してよ。
万が一2人がヤクザと戦うことになっても、絶対に生き残れるよう先輩兼上司であるマキマさんが守るからさ。
絶対にね。」
私は力強く言う。この宣言を決して嘘にするつもりはない。
「はは、あのマキマさんが言ってくれると心強いですね。それでは万が一ヤクザに襲われた時は頼りにさせてもらいます。」
「わ、私も死にたくないんでどうか、どうか絶対に助けてください!絶対ですよ!」
荒井君が笑いながら言い、コベニちゃんが半泣きで言う。
「うん、絶対に助けるよ。だから安心してね。」
私は2人に対してそう言い、パトロールに向かう2人を見送ったのだった。