転生したので、偽マキマさんはデンジ君を推します   作:フィークス2号

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公安襲撃編
15話 殺意1000%の襲撃


 

 

 

 「月本さん月本さん、京都に何時に着くんだっけ?」

 

 「あと30分ですよ。」

 

 私は新幹線の中で月本さんに尋ねる。私は今、京都のお偉いさんに会うために新幹線に乗っている。

 といってもお偉いさんに会うことはない。なぜなら私はこの新幹線で、ヤクザによって襲撃されるからだ。

 これは原作でも起きたイベントだ。デンジ君に恨みを持つヤクザの孫、通称サムライソードがデンジ君の持つチェンソーの心臓を奪うために、公安対魔特異課、1課から4課全てに襲撃を仕掛ける。その際に原作の真マキマさんも敵に撃たれ、他の4課のメンバーも早川家のみんなと真マキマさん、そして円君を除き皆殺されてしまう。そこで真マキマさんはヤクザを悪魔の力で遠距離から殺害して、そのあと東京へ直ぐとんぼ返りするのだ。

 京都のお偉いさんに合わなくても済むのはいいが、ヤクザに撃たれるだなんてたまったもんじゃない。それにこの私は新幹線でヤクザに撃たれるだけではすまない、公安対魔特異4課だけでなく、1課から3課の職員たちと契約して、そのダメージを私が肩代わりすることになっている。

 つまり、みんながヤクザを撃退するか私が悪魔の力で殺すまで、ずーっと私はダメージを受け続けるのだ。永遠の悪魔の力で、囚人を消費しないとはいえ、大人数のダメージを一身に受けることになる。今から考えても憂鬱極まりない。

 

 「……マキマさん、気分がすぐれないようですが大丈夫ですか?

 酔いが残ってるんでしたら、俺喉乾いてるんでついでにマキマさんの分の飲み物も買ってきますよ?」

 

 「え?いいの?じゃあお願いしてもいいかな?できれば缶コーヒーで。はい、これコーヒー代ね。」

 

 「わかりました、それじゃあ買ってきますね。」

 

 憂鬱な私に気を遣って、月本さんは私にジュースを買ってきてくれるらしい。月本さんは優しいなぁ。昨日コベニちゃんを送ってあげたらしいし。

 私がそんなことを考えて月本さんを見送っていると、前後の席からゴソゴソという音がした。

 はっはーん?これはあれだな?ヤクザがハンドガンを取り出して私をぶっ殺そうとするやつだ。

 月本さんは私の力で死なないけど、それでも撃たれる痛みまでは完全に無くせないからなぁ。巻き込まれないように、逃げてもらえるよう指示出せるよう準備しとこっと。

 私は大声を出す準備をして、撃たれる心構えをした。どんな心構えだ。

 

 「死ね!マキマ!」

 

 「月本さん走って逃げて!」

 

 前の座席から声が聞こえて、私は準備通りに叫んだ。そしてヤクザ達は……

 

 

 

 

 ショットガン、アサルトライフル、サブマシンガン、デザートイーグル(ハンドガンの中でも強いやつ)、などなどのヤバい銃を私に向けてきた。

 ……え?

 

 ババババン!ズダダダダダ!バンバンバンバン!ダダダダダダ!

 ダダダダダダ!バン!バン!バン!

 

 けたたましい銃声が新幹線内に響き続ける。

 

 痛い痛い痛い痛いたいたいたいたいいたい!

 

 ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあああ!!

 

 

 

 めっちゃ撃たれてる!めっちゃ撃たれてる!?原作だとこんなに撃たれてなかったよ!?もう体感10秒くらい撃たれてる!?助けて!?助けて!!助けて!!!

 

 

 

 それからようやく銃撃がやみ、ようやく私は痛みから解放された。

 

 「こちらC班、こちらC班、開始。」

 

 ヤクザがトランシーバーに向かって言う。そして他の客が恐怖して、うずくまり動けない中、1人の男が席から立ち上がり、私に近づいてきた。

 

 「お嬢ちゃん、あんたはやりすぎたんだ。馬鹿だねぇ〜〜。

 これだから学のないやつは。自分を下手に過信して周りに敵を作りすぎたらどうなるか。それが最後までわからなかったかな?ん?まぁ、わかるわけないか?」

 

 そしてその男は新幹線の中だと言うのに、葉巻を取り出して火をつけた。

 私は男の顔に見覚えがあった。そして、『学がない』と言うセリフにも聞き覚えがあった。

 

 その男は、原作で真マキマさんが脅したサムライソードの所属する組の組長であった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 早川アキとデンジ、パワー、そして姫野はラーメン屋である立花食堂でラーメンを啜っていた。

 早川はラーメンを食べながら思い出す。3年前、今では恋人である姫野とこの店のチャーハンをよく食べていた日々を。昔からここのチャーハンは絶品だった。客は皆ラーメンではなく、チャーハンを目当てに来ていた。それくらいここのチャーハンは絶品なのだ。

 ただ、店主自慢のラーメンは昔は不味く食えたものではなかった。出前で最初に食べた時など、不味さのあまりに吐いてしまったものだった。

 だが、この3年でラーメンの味は劇的に変わった。新作のラーメンは食べても決して吐き気などしない、むしろチャーハンよりも美味いくらいだ。昔と違い、客はチャーハンではなくラーメンを目当てに来ている。これはチャーハンではなくラーメンを食べて欲しがっていた、ラーメン屋の店主にとってはとてつもない進歩だろう。

 

 ……進歩。そう、どんなものも進歩している。俺の復讐もそうだ。着実に銃の悪魔の肉片は集まっている。俺自身も、この3年間で経験を積みデビルハンターとしての腕を上げた。今では班のリーダーを任せられるほどにだ。

 そして新しく部下になったデンジを見る。こいつは……まぁ、性格は酷いがデビルハンターとしての才能は目を見張るものがある。この前も永遠の悪魔と3日に渡り殺し合いを続け、最後には勝利してみせた。

 そしてこいつは、チェンソーの悪魔の心臓を持っている。銃の肉片を取り込んだ、悪魔も狙った心臓を。デンジが悪魔を引き寄せるなら、話が早い。

 そのデンジに群がる悪魔を殺して、銃の悪魔の肉片を集めれば、いずれヤツにたどり着く。

 俺は奴を殺す覚悟を胸に、テーブルに届けられた新作のラーメンを啜ることにした。

 

 「なぁなぁなぁ!お主ら交尾したんじゃろ!?交尾!チョンマゲも眼帯女も、2人で二次会いって、帰ってきたのが朝!これはもう交尾じゃろ!」

 

 「ぶふぉ!」

 

 「うわっ汚ねぇぞテメェ!」

 

 「え〜?パワーちゃんそこ聞いちゃう?聞いちゃうの〜?」

 

 パワーがとんでもないことは真昼間から聞き、姫野のやつは嬉しそうに対応する。

 

 「はっ!ゲロキス女なんかとしても羨ましくなんてねぇな!羨ましくなんて……畜生!

 クソ羨ましい……!おれもしてぇ!マキマさんとそういうことしてぇ〜!」

 

 「お前ら黙れ!もうこの店で飯食えなくなるだろうが!」

 

 俺はキレながら言う。くそ、問題児ばかりのメンツでこの店に来たのは失敗だった。万が一出禁にされて、ここのラーメンとチャーハンが食えなくなるのは嫌だ。

 

 「ふ〜ん。やっぱりデンジ君ってばマキちゃんのこと好きなんだ。」

 

 「超好き」

 

 「マキちゃんがデンジ君が思ってるよりもポンコツちゃんでも?」

 

 「糞好き」

 

 「へぇ〜。そっかそっかぁ!」

 

 デンジが姫野に言う。それを聞いた姫野は嬉しそうな顔で聞いている。

 

 「じゃあデンジ君とマキちゃんがくっつけるよう、協力してあげよっか?」

 

 「マジで!?」

 

 「あっ餃子じゃ!餃子は全部ワシのじゃ!」

 

 2人が盛り上がってるのを尻目に、パワーはもう飽きたのか餃子を独り占しようとしている。俺はそれを阻止しつつ、2人の会話に耳を傾け続けた。

 

 「マジマジ、私たちってマキちゃんにくっつけてもらった所もあるしね。私も恩返ししたいんだよ。ね!アキ君!」

 

 「くっつけてもらったって……。ただ休みを揃えたりとかして貰ったぐらいだろ?」

 

 「いやいや、アキ君からしたらそれだけかもしれないけどさ。私はデートプランとか、プレゼントとか、他にも色々相談に乗って貰ってたのよ。」

 

 「マジで?」

 

 「マジマジ。まぁ、マキちゃん恋愛経験ゼロなんだけどね。それでもマキちゃんなりに真剣に悩んでくれてさ、色々一緒に考えてくれたり手助けして貰ったんだよ。

 だからさ、私もマキちゃんに春が来るように応援したいわけよ。」

 

 そう言いながら、姫野は俺がパワーから死守した餃子を頬張る。

 

 「ああ!ワシのギョーザ!ギョーザが……。ワシのじゃったのに…‥。」

 

 「お前だけのじゃねぇよ。」

 

 「だからさ、デンジ君。今日から私たちは先輩後輩じゃなくて……友達でいこう。だって、そっちの方が相談しやすいでしょ?」

 

 「いいぜ!それじゃあ俺がマキマさんと付き合えるようよろしくな!」

 

 「いいよいいよ、そのかわり……ちゃーんとマキちゃんのこと、幸せにしてあげてよね?」

 

 「おー任せとけ、俺がマキマさんと付き合って幸せにしてやるからよぉ」

 

 そう言うとデンジは姫野に向かってVサインをした。

 

 俺はそんな2人のやりとりを微笑ましくながめていた。

 

 

 

パンパン! パンパンパン!

 

 

 

 その時だった。外から何か破裂するような音が響いたのは。

 

 「なんだこん音……」

 

 「しらんとは愚かな……太鼓の音じゃ」

 

 「祭りか……」

 

 俺は気にせずラーメンを食い続けようとしたが、その時近くの席の男が声をかけてきた。

 

 「ここのラーメンよく食えるな……味ひどくないか?」

 

 「……誰?」

 

 姫野が思わず聞き返す。男が食べていたのは3年前の頃から唯一味の変わらない、クソ不味いラーメン。沼ラーメンであった。他のラーメンは全て味が良くなったのに、なんでかあの沼ラーメンだけは唯一味が変わらずクソまずいままだった。

 

 「俺はフツーにうめぇけどな」

 

 「ワシに気安く話しかけるな!」

 

 デンジとパワーが男に反応する。そりゃデンジの感想はもっともだ。こいつが食ってるのは不味い沼ラーメンじゃない。ちゃんと美味いラーメンだ。

 

 「味の良し悪しが分からないんだな。幼少期に同じような味のモンしか食べてないとバカ舌になるらしい。舌がバカだと幸福度が下がる」

 

 「ワシ幸福じゃが!」

 

 パワーが言い返す。この男はよく知らずに沼ラーメンを頼んでしまったのだろう、この店について詳しくなければそういうこともある。それだけならただの可哀想な男として同情するが、知らない俺らに絡んできた上に唐突に見下してくる。そんな男とは関わりたくない。

 それにこのまま付き合ってたらデンジかパワーがヒートアップしそうだ。既にパワーは臨戦体制に入っている。

 

 「店出るか」

 

 あらかたラーメンは食い終わってはいるし、面倒はごめんだ。

 

 「俺のじいちゃんは世界一優しくてな。じいちゃんの仕事がうまくいかなくて苦しんでたにも関わらず、俺にいいモン食わせてくれてたんだよ。」

 

 男は構わず喋り続ける。

 

 「じいちゃんヤクザやっててさ、必要悪っていうのかな?街を守るために頑張っててさ、女子供も数えるほどしか殺したことがないんだと。薬売った金で欲しいもん買ってくれてさ、み〜〜んなに好かれてた江戸っ子気質のいい人だったんだ。

 

 それなのに……じいちゃんはずっとクソ女に邪魔されててさ。外国のヤクザどもから街を守ってんのに、理不尽に取り締まられててな。どんどんシノギもシマもクソ女のせいで失っちまったんだよ。

 そして挙句の果てには、じいちゃんが面倒見てやった奴が、そのクソ女に拐かされてさ。恩知らずにも襲いかかり、最後は無惨にもぶち殺されちまったんだ。本当に酷い話だよな……。

 

 お前もそう思うだろ?デンジ。」

 

 男はそういうと一枚の写真をデンジに見せつけた。

 

 「なんのつもりだテメぇ……。」

 

 「知り合いか?」

 

 俺はデンジに尋ねた。いまいち話が飲み込めない。急に話しかけてきたと思ったらデンジと面識があったのか?

 

 「テメェと糞マキマを殺すってことだよ!」

 

     ズダダダダダ!

 

 そして男は勢いよく懐からサブマシンガンを取り出し、俺たちに向かって乱射した。

 

 「がっ!」 「ぐっ!」 「きゃっ!」

 

 一瞬だった、咄嗟のことに反応し切れず俺たち3人は撃たれた。

 だが、唯一臨戦体制だったパワー。あいつだけは襲撃に対応でき、男を殴り飛ばして銃を離させた。

 

 「チョンマゲ!」

 

 俺は激痛のあまり薄れかける意識をなんとか保ちつつ、身体に喝を入れて狐の悪魔を呼び出した。

 

 「コン……!」

 

 そして狐の悪魔が召喚され、男を飲み込んだ。

 

 俺は仲間の安否を確認した。そして俺の目には撃たれてちまみれになったデンジと……姫野の姿があった。

 クソ!2人はあいつの近くに座っていた、だから俺よりも遥かに傷がひどい。デンジは武器人間だからなんとかなるが姫野はそうじゃない!

 

 「早川アキ……私の口にとんでもないモノを入れてきたね…。

 人でも悪魔でもなっ……」

 

 キツネの悪魔が俺に話しかける途中で、狐の顔が思い切り何かに斬られる。

 そして中から出てきたのは……両手と頭から刀を生やした存在。おそらく……デンジと同じ存在、武器人間だった。

 


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