転生したので、偽マキマさんはデンジ君を推します 作:フィークス2号
私は公安が管理する殉職者が埋葬された墓地に、デンジ君とパワーちゃんと共に来ていた。その目的は、2人をこの墓場で待つ人物に鍛えてもらう為だ。
そして私は墓の前に立つ1人の最強のデビルハンターの下に辿り着いた。
「デンジ君、パワーちゃん。紹介s」
「シー、黙れ」
「ハイ!黙ります!」
私が岸辺先生の下に行き、紹介しようとするとその前に岸辺先生が静止し、私はビシッ!と気をつけの姿勢で口を塞いだ。
「質問に答えろ。お前らの仲間が銃で撃たれた時、どう思った?」
「別に〜〜?」
「撃たれた!と思った!」
先生の質問に対して、デンジくんとパワーちゃんが答えた。背中越しだけど、先生が少し喜んでるのがわかる。
「もしもその銃撃で仲間が死んだとして、お前らは復讐したいと思うか?」
「復讐とか暗くて嫌いだね」
「ワシも!」
あ、かなり喜んでる。割と期待してるな……。
「お前達は人と悪魔、どっちの味方だ?」
少しだけ間を置いて2人が答える。
「俺の面倒見てくれるほう」
「勝ってるほう」
そして墓の前に立っている、耳まで裂けた傷を持つ白髪混じりの男性が、振り向きながら言った。
「お前達100点だ」
来ましたー!100点!デンジ君もパワーちゃんもおめでとう!私は最初先生と出会った時、ため息吐かれちゃったけど……。
「「あ?」」
デンジ君とパワーちゃんが声をそろえて言う。
「お前達みたいのは滅多にいない。素晴らしい、大好きだ。」
「…………。恐い」
パワーちゃんがデンジ君見ながら言う。
「マキマ、お前は帰れ。今すぐこいつらは指導だ。」
「え?でも私デンジ君の修行シーンを見t」
「帰れ」
「ハイ!マキマ帰ります!デンジ君、パワーちゃん!頑張ってね!マジで!」
私はデンジ君達を一瞥した後、キビキビと行進するように手を大きく振りながら足を上げてその場を去ることにした。
「マキマさん!?」
ごめんデンジ君!岸辺先生が帰れって言うから帰ります!でも小動物使って見守ってるから!強く生きて!
私はデンジ君とパワーちゃんが岸辺先生にシメられるのを聴きながら、その場を離れた。
「コン」
早川アキが公安の訓練施設で、狐の悪魔を呼び出そうとする。しかし狐の顔は現れず、標的であるダミー人形は無事なままだ。
「コォン!コォン!コンコンコンコンコン!コォン!」
そしてその隣では、荒井が必死に狐の悪魔を呼び出そうと、コンと連呼し続けている。
「……ほら出てこないだろ?キミたちは狐を無茶に使って嫌われたんだ。もう二度と狐は使わせてもらえないだろうね、どうやら狐の悪魔と武器人間は相性がすこぶる悪いようだ。」
「そ……そんな。」
荒井はガックリと項垂れた。
「特にアキ君、キミの方は呪いの悪魔にも嫌われている。どうやらマキマが紹介した悪魔との契約で、払う寿命も肩代わりされたようだ。それで呪いの悪魔が欲しかった『アキくんの寿命』が払われなかったらしい。
よかったね、契約内容が『アキ君の寿命を払う』じゃなくて『寿命を払う』で。払われた寿命が君のじゃなくて別の人の寿命であれ、契約には違反してない。だから君は死ななかった。」
黒瀬が飄々と言い、早川と荒井が焦りながら黒瀬を見る。
「え、え!?そ、それじゃあ早川先輩の代わりにマキマさんの寿命が!?」
「ああ、それについては大丈夫。マキマさんが払う寿命の代償は、囚人たちに肩代わりさせてるそうですよ。マキマさんもアキ君への伝言で『気にしなくていい』って言ってました。」
「そ……そうか、ならよかった。」
「……そんなことができるんですか。」
それを聞いた早川と荒井は安心する。
「なに安心してるんですか2人とも、全然良くないですよ。悪魔との契約してない状態じゃあ、この先ろくに仕事できませんよ。」
「……指導ってのはそう言うことか。」
「え?」
「早川君は察しがいいけど、新人君は鈍いなぁ。」
いまいち理解できてない荒井に天童が説明する。
「うちらは特異課にいる人間組のキャリア相談にきました。
今回の事件でやめ時だと思いませんでした?実際君の課でも、ちらほら民間にいったし。」
「続けるなら続けるでそれなりの覚悟をキミ達にはしてもらう。」
「覚悟……?」
「覚悟ですか?」
覚悟という言葉にオウム返しをする荒井と早川。
「そう、覚悟」
「やめないならちゃーんと悪魔と契約して、特異課に貢献して貰わなきゃいけないみたいです。今のキミ達じゃ、なにか悪魔と契約してないと実力が足りない。
公安やめて残りの人生楽しむか、公安続けて地獄を見るか」
その言葉を後に、訓練室は静寂が支配した。そしてしばらくして、早川アキが口を開いた。
「今まで銃の悪魔の動きは掴めなかった。ただアイツは、銃をばら撒いて自分への恐怖を煽ることだけをしていた。
だが……生捕りにされたヤクザの1人が吐いた。『銃の悪魔がデンジの心臓を狙っている』と。
ようやく、ようやくあいつの動きを……目的を掴んだんだ、3年働いてようやくだ。
目の前に銃の悪魔に繋がるチャンスがあるのに、ここで辞められるわけがないですよ。」
アキは静かに、だがしっかりと力強く言った。
「なるほど……で、新人のキミは?」
「……俺はもう2回も足を引っ張っている。一度目はホテルで錯乱し、同僚を殺しかけた。
二度目は今回だ。死なないと知ってたのにも関わらず、コベニちゃんを庇って逆に混乱させてしまい、主犯格とも言える2人を逃した。
……三度目の醜態を晒す気はない!次の任務で挽回してみせる!」
荒井も力強く黒瀬に返した。
「……そですか、わかりました。全く、スバルさんの言葉はつくづくホンマのことやったと痛感しましたわ。
『特異課にはまとも奴がいないから気をつけろ』ってね。」
呆れ顔で黒瀬が言う。
「月本とか言う付き人は『また新幹線に乗るよりは車乗りましょう!』てやけに車推してくるし、迎えに来てくれた人らはお詫びの為の食事に当然の如くタカろうとするし、マキマは言わずもがな……。
もうちょっとキミら自分を客観的に見たほうがいいですよ?」
「う、うちの先輩達がご迷惑をおかけしたようですみませんでした!」
荒井は申し訳なさそうに黒瀬に謝った。
「ハハハ、別に新人のキミが謝る必要なんてないですよ。
それじゃ。ほな、行きまひょ〜か。」
「行く?どこへですか?」
荒井は困惑しつつ尋ねる。
「決まってるでしょ?悪魔と契約しにですよ。」
「いや多いよ!もうキミらで20件目だよ!?」
天使の悪魔、エンジェルは大声で抗議した。
「わかるよ!?僕が寿命武器を作れば、ヤクザを捕まえられて早く休暇に行けるって。
でも一日中、寿命武器を作らさせ続けるのはおかしくない!?」
「早くしろ、後がつかえてるんだ。」
早川アキは一切動じずエンジェルに構わず急かした。
「早川先輩……。」
そんな早川を京都組と東京の新人デビルハンターを、少し引きながら見つめていた。
「……キミ本当に悪魔に対して容赦ないね。噂通りの悪魔嫌いだね、早川アキ君。」
アキの態度に対して、エンジェルはため息を吐きながら言う。
「俺を知ってるのか?」
「うん、マキマから色々聞いてるよ。さっきも『アキ君が新しい武器を手に入れるために協力して!』って頼み込んできてたし。」
「……さっき?」
「あれ?一緒に来た訳じゃないんだ。マキマの方も色々とこっちに用事があるらしくて、今来てるんだよ。」
「なるほど……マキマが既に頼んでるなら話が早い。天使の悪魔、俺と契約しろ。」
早川アキはなんの躊躇いもなく言った。
「いやアキ君、エンジェル君は基本契約しないんですよ。」
黒瀬はアキに言った。
「どう言うことだ?」
「僕は基本、誰かと契約して能力を貸すとかそう言うのはしてないんだ。
僕は既に公安に貢献する代わりに、僕の能力を抑えてもらう条件で仕事をしてる。
その貢献の中には、他の公安職員のために寿命武器を作ることも含まれているのさ。
だからわざわざ君が僕と契約して、何かを対価に差し出す必要はないよ。あ、でもアイスとか奢ってくれるなら大歓迎だけどね。」
「あ……アイス。」
天使は飄々と言い、それに対して荒井は困惑する。
「ああ、別に僕が貰ったら嬉しいってだけで別にくれなくてもしっかり仕事はするから。安心していいよ。
……はぁ。」
天使は言い終わると、どこか憂鬱そうな顔でため息をついた。
「何か手伝いたくない理由でもあるのか?」
早川アキはなんとなく、その表情の理由が気になり質問した。アキが知っている悪魔といえば、凶暴で襲ってくる駆除対象の悪魔や、パワーくらいのものである。アキはこんな表情をする悪魔など初めてみたのだ。
「……僕の能力で出す武器は、僕が人間に触れることで奪った寿命を消費して作ってるんだ。
僕が寿命を奪うのは死刑執行直前の囚人や、仕事で駆り出された時の犯罪者くらいだけどさ。それでも……罪悪感を感じるんだよ。なんの罪もない人の寿命を使ってない分、まだマシだけどね。」
天使は自分の右腕に巻かれたブレスレット状の鎖を見つめながら言った。
「悪魔はみんな、人の死を望んでいる。俺はそう聞いたが?」
早川の問いに天使が答える。
「……僕はこの現世に生まれた時、村の……故郷のみんなに優しくして貰ったからね。
そんな経験をした後じゃ、そう軽々しく人の死なんて願えないよ。」
天使の言葉を後に、沈黙が流れた。
「ああ、ごめん。後がつっかえてるんだったね。ちゃんと仕事はするよ。……それで、どんな武器が欲しい?」
「……。そうだな、俺は今までカースの釘を剣にして戦ってきた。だからそれと同じように剣の武器がいい。」
「わかった。で、そっちの方は?」
「お、俺は……」
言い淀む荒井をフォローする為に、黒瀬が割って入る。
「新人君は今までキツネだけを使ってきたんで、これだ!って武器がないんですよ。だからまだ決まってない感じです」
「え、ええ……?じゃあ何できたの?」
「す……すまない。早川先輩が武器を貰うついでに、取り敢えずどんな武器があるのかとか、どういう武器が俺に合ってるのかの相談をしたくて……。」
「あー、そっか。精一杯考えても、その武器が僕が作れない物だったら無駄骨になっちゃうもんね。」
「そうなんです、まぁ新人君はこの後他の悪魔との契約も控えてるんで、取り敢えずは軽い質問と、寿命武器の見学させる為に連れてきた感じですね。」
天童が言い、それにエンジェルは納得して答えた。
「わかった、それじゃあ取り敢えず君のから作らせて貰うね。新人君の相談はその後で……といっても、僕は武器の専門家じゃないから大したことは言えないけどね。」
エンジェルと一通り話した後、荒井は早川アキと黒瀬の2人と別れ、天童に連れられてある悪魔を収容した一室に向かっていた。
「これから向かう悪魔と、俺は契約するんですか?」
「まぁ、そうなんですけどそいつは本命じゃないみたいです。
なんでも本命の悪魔と契約する為の土台を整えることが目的とか……。
ああ安心してください、こいつはマキマに従順な悪魔なんで、なんも取られんで済むと思いますよ。いやー、ホンマにマキマさん凄いわ。どうやったら悪魔を手懐けたりできるんやろ。ウチも楽な条件で悪魔と契約させてくれるよう頼んでみよーかなぁ。」
「悪魔を……手懐ける?」
「あー、手懐けるって言い方はちょっとエンジェル君とかに失礼かな?
でもマキマさんの悪魔と仲良くするスキルは、ずば抜けとると思いますよ。荒井君はサメ君とかもう会ってたりします?」
「え、ええ。新人歓迎会の時に。」
「新人歓迎会で!?ええ……特異課って、ここで歓迎会しとるん?」
「いや、マキマさんが飲み屋にサメの魔人を連れてきてました。」
「怖!?何その飲み会!?だ、だいじょうぶやったんかそれ!?」
「ええ、どちらかというと血の魔人の方が迷惑でした。」
荒井の発言に天童は衝撃を受けてドン引きした。
「……ウチ特異課じゃなくてホンマよかったわ。おっと、話してるうちに着きましたね。荒井くんはまず手始めにここの悪魔と契約してもらいます。」
そう言うと天童は収容室の扉を開けて、荒井と共に部屋に入った。
その部屋の中にはガッチガチに鎖に縛られた、肉肉しい赤色の一つ目の悪魔がいた。
「あははは!ハハハ!ハはははハハハ!」
そして一つ目の悪魔は狂ったように笑いながら、自己紹介を始めた。
「あは!あはははハハはじめまして!マキマ様から話は聞いてる!オレは筋肉の悪魔!オマエ荒井ヒロカズだな!?契約!契約する!オレはオマエと契約して力をかす!あははは!ハハハハハハ!あはははハハハハハハハハハ!」
部屋の中で、狂ったような笑い声が響き続けた。