転生したので、偽マキマさんはデンジ君を推します   作:フィークス2号

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21話 岸辺先生

 

 

 

 

 ボロボロになった武器人間と血の魔人が地面に倒れている。

 そしてそれを頬に軽い切り傷を負わされた、白髪混じりの男が見下ろしながら言った。

 

 「……うん、よし。人外の職員を育てるには、ソイツが俺を倒せるようになるまで狩り続ける。

 過去にたった一度だけ、人外のデビルハンターを育てた時に使った手法だが、やはりこれが1番だな。」

 

 白髪混じりのデビルハンター、岸辺はスキットルに入った酒を飲み言った。

 

 「今のは100点だったぞ、指導を踏まえて明日実戦だ。」

 

 「じっせん?」

 

 パワーが繰り返した。

 

 「俺たちを舐めたヤクザ共にカチコミに行く。俺とお前らはその本丸、首謀者の組長とサムライソードがいる事務所にカチコミを仕掛ける。

 お前らがヘマしたら、その時は処分されて俺とマジバトルだ。」

 

 そう言われたデンジは不敵に笑う。

 

 「そん時ゃ俺は、先生を殺さないで見逃してやるよ。

 俺を強くしてくれたからな、これでもっと悪魔を殺せる。

 そうすりゃマキマさんとランデブーよ!!」

 

 岸辺の目からそう答えるデンジは、決して強がりや虚勢で言ってるようには見えず、厳しい訓練を課したはずの自分に対して本気で感謝しているように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「美味しいお酒ヨシっ!美味しい料理もヨシっ!一流のタバコも準備ヨシっ!」

 

 私は指差し確認で、岸部先生達をもてなす準備が整っているかを確認した。

 今夜は明日、ヤクザ達にカチコミを仕掛ける前に岸辺先生達と会食する事になっている。原作でも料亭で岸辺先生と真マキマさんが、2人で話しているシーンはあった。

 だがそのシーンでは最後に、岸辺先生が特異課のみんなを真マキマさんが見殺しにしたのではないかと考え、露骨に圧力をかけてくるのだ!

 当然この私は特異課のみんなを見殺しにしていないし、岸辺先生に怒られるような生き方はしていない。だが原作ではこの会食、岸辺先生がかなりご立腹だったので、ビビりである私としては警戒せざるを得ないのだ。

 

 しかもなんと今回の会食では、原作と違い京都でも指折りの実力者であるデビルハンター、スバルさんも一緒に来る。

 原作と違う展開になっているが、これについては理由がある。

 私はデンジ君を見つける為に、日本全国のヤクザをしばき倒していた。いやもちろん、ヤクザとは関係ない悪魔も地元の公安と協力して倒してたけどね。まぁその結果、多くのヤクザの組が瀕死の状態にまで追い詰められて危機的状況に陥ったのだ。

 そこに私を含めた公安への襲撃の話を沢渡アカネが持ってきて、『憎っくきマキマを殺す!』とサムライソードの組だけでなく日本各地のヤクザまで参加したのだ。

 そして組そのものが窮地に陥っている為に、原作では襲撃に参加せずに静観していたはずのサムライソードの父である組長までもが、なんかヤバそうな悪魔と契約して参加する事態に発展してしまったのだ。

 

 なので原作の『一つの組の極一部のヤクザVS公安』という構図ではなく、『同盟を組んだ日本各地のヤクザ達VS公安』という構図になっている。

 ……正直言って、東京の公安だけじゃ人手が足りん!いやマジで!

 原作と違い日本各地のヤクザを相手にする必要があるから、特異課全部を指揮できてもこれを全て相手にするのは不可能なのだ。

 なので、福岡公安や大阪公安、宮城公安に北海道公安、そして京都公安などなどの地方公安の皆さんにも協力して頂いている。

 そして今夜はそんな地方公安の代表として忙しい中、京都公安のスバルさんにもお越し頂いたのだ。

 ……私がヤクザしばき回ったせいで、余計な仕事増やしてごめんなさい。

 お詫びにめっちゃいい料理とお酒用意したから!しかもいいタバコもあるから!喫煙可能なお店だから遠慮せずに楽しんでください!

 あ、私はタバコはむせちゃうタイプなのでちょっと距離を離れさせてもらいますね。……タバコを理由に、岸辺先生から距離を取るくらいは許されるよね。

 

 私は岸辺先生とスバルさんが来るのを今か今かとドキドキしながら待っていた。

 

 すると右の障子を突き破り、ナイフが私めがけて飛んできた!?

 

 「!?……き、岸辺先生、お、怒ってらっしゃるんですか!?わ、私が岸辺先生のダメージを肩代わりしなかったのは、能力の関係だと申し上げましたけど……まさか疑ってらっしゃる!?」

 

 私は真剣白刃取りの要領でナイフを防ぎ、冷や汗をかきながらいう。

 

 「いいや?ただ可愛い弟子が腑抜けてないか確認したかっただけだ。大事な任務が明日あるのに、その日の夕方にはTVに出る予定みたいじゃないか。

 ちゃんとそれだけの余裕があるのかを確認したくてな。」

 

 「いやいやいや!TVの出演を決めたのは私じゃありませんから!上が任務の日程が決まった後、急に連絡してきたんです!私悪くないです!」

 

 私は必死に抗議した。ヤバい、岸辺先生から見た今の私って、ヤクザを倒し切る前から調子に乗ってるように見えてんじゃん!?

 私が必死に喋っていると、岸辺先生の後ろから天然パーマの髪型をしたベテランの風格を纏う男がひょっこり顔を出して言った。

 

 「まぁまぁ、岸辺さん。マキマちゃんは上司に逆らえないタイプのか弱い女の子やし、そういうのは許したれよ。」

 

 「す、スバルさん!?助かった!もっと助けて!いっぱいお酒とか料理とか、タバコもあるから!あるから!」

 

 「マキマちゃん必死すぎるやろ。そんなに岸辺先生怖いんか?」

 

 「はい!」

 

 「全く……。そんなに昔に修行した時のことがトラウマになってるのか?」

 

 「それもありますけど、たまに挨拶がわりにナイフ投げてくる人は普通に怖いですよ!?」

 

 「岸辺……お前そんなことしとったんか。」

 

 「おいおい、スバルにチクるのは卑怯だろ。

 ま、お遊びでナイフ投げられる程度で騒いでるようじゃまだまだだな。

 俺は昔、『同僚の狙ってる女が、同僚じゃなくて俺のことが好きだった』って理由で任務中に殺されかけたことがある。だがその時の俺は動揺なんてしなかったぞ。」

 

 岸辺先生は嘘か本当かわからない話をしながら、スバルさんと一緒に席に座った。

 しかし、女がらみで任務中に岸辺先生を殺そうとするとか……。そんなことで殺そうとするとか、昔の公安怖っ!その人はその後どうなったんだろうか……まさかその時に岸辺先生の手によって既に亡き者に!?

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、私と岸辺先生、そして京都のスバルさんは料亭で明日についての話をしながら食事を進めた。

 そしてその話についてもつつがなく進み、私がスケジュール的に一足先に帰らせて貰う時間が近づいてきた。

 そんな頃に、岸辺先生は私に質問してきた。

 

 「そういえばマキマ、お前の能力についてちょっと気になることがあるんだが……。

 お前の他人のダメージを肩代わりするアレ。アレって逆のことは出来るのか?」

 

 「ああ、アレですね。出来ますよ、ていうかそれが本来の使い方です。

 むしろあの使い方は一種の規格外運用ですからね……チェンソーを2本稼働させたまま合わせて火おこし機がわりに使う並の無茶運用なので、そんな便利な代物じゃありません。」

 

 「……なるほど。で、その本来の使い方をした時、お前のダメージを肩代わりさせられるのは理論上の最大値だと、何人にまで押し付けられる?」

 

 岸辺先生がめっちゃ私の能力について聞いてくる。普段私の能力にあんまり聞いたりしないのになんでだろう……。え?もしかして私これ生贄の如く特攻させられるんですか!?……やだなー。

 でも岸辺先生に嘘ついて、それがバレるのもやだから正直に答えとこうか。

 

 「り、理論上ですか?そうですね……色々と条件はありますが、日本国民全員をダメージの肩代わりの対象にすることができますね。」

 

 「……そうか。」

 

 岸辺先生はそう言うとお猪口に入った酒をグイッと飲んだあと、私に向けて言った。

 

 「ま、お前が何を考えていようが真っ当に仕事して、俺んとこの犬やおもちゃが死なないようにしてくれてるうちは何も言うことはない。むしろ感謝したいぐらいだしな。

 ……だがくれぐれも良からぬ事をしようだなんて、トチ狂わないでくれよ。そうしたらお前の能力がどれだけ強力だろうが、俺もお前とマジバトルしなきゃいけなくなるからな。

 お前もお気に入りの武器人間と魔人が殉職するより先に死にたくないだろ?」

 

 岸辺先生は私に対して、軽い口調で釘を刺してきた。

 原作のような敵意のこもった感じではなく、本当に念の為に釘刺しておくみたいな感じだ。よかった……『人類の敵っぽい動きしたら即殺す!』みたいな感じではないから、やっぱりそれなりに信頼してくれてるっぽい。

 

 「殉職なんてさせませんよ、デンジ君もパワーちゃんも。

 2人のダメージは私の能力で肩代わりすることは出来ません、それでも……決して死なせるつもりはありません。」

 

 私はそう言うと最後に残ったお猪口の中のお酒を飲み干した。……そして気づいた、岸辺先生が言っていた悪いことの意味の可能性を!

 

 「……あの〜すいません。もしかしてその良からぬ事って、デンジ君とランデブーする事だったりしますか?」

 

 「ええ……。マキマちゃんって、未成年に手を出すつもりなの?」

 

 「……万が一スキャンダルになっても、その件でマジバトル始めようとはしないから安心しろ。ただそれで庇ったりもしないがな、めんどくさいのはごめんだ。」

 

 セーフ!圧倒的セーフ!いやスバルさんには呆れられちゃってるけど!それでも岸辺先生とマジバトルしなくて済むならセーフだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「で、スバル。お前は今日、マキマと話してどう感じた?」

 

 マキマが帰った後の料亭にて、岸辺とスバルの2人は軽い雑談を口でしながら、本当にしたい会話を誰かに聞かれぬようにメモで筆談で行っていた。

 

 「何か企んでるという雰囲気は感じなかったなぁ、普通の仕事で苦労してる一般人の範疇に思えたで。

 岸辺さんはマキマのどの部分に警戒してるんです?」

 

 「マキマは人間じゃない、人外職員だ。」

 

 岸辺の見せたメモを見たスバルは思わずダミーの雑談を止めてしまう。

 

 「会話を止めるな、盗聴されてることを想定しろ。現にデンジとの修行中の会話を、マキマはしっかり聞いていた。」

 

 『デンジ君とランデブー』、このフレーズは一見何気ない台詞にも思える。だが、この台詞はデンジが言った『マキマさんとランデブー』という台詞が元だろう。無意識的に聞いていたセリフを真似てしまったのかもしれない、だが……『お前を監視しているぞ』、そういうマキマからのメッセージにも受け取ることができる。

 

 「……なるほど。そんくらいの被りなら幾らでも言い訳ができてスッとボケられるし、岸辺さんに対する圧力とも受け止められるな。

 しかし、マキマちゃんが悪魔か。岸辺さんがマキマを警戒しているのは、その盗聴が原因なのか?他にもあるんとちゃうか?」

 

 「お察しの通り。俺が警戒するのはあいつの得体の知れないところだ。

 実はあいつと最初に会った時、俺は思わずため息をついたよ。感性があまりにも一般人によりすぎている。

 並のデビルハンター以下の頭のネジの固さだった。あんな常識人はすぐに死ぬ、俺はそう思っていた。

 ……だが、あいつは死ななかった。無論、あいつがデビルハンターとして活動していく上で、途中でネジが外れたと考えることもできる。だが……本当にそうなのか?」

 

 「というと?」

 

 「俺が最初にあった時も、そして今も、あいつは演技し続けてるだけなんじゃないか?

 あいつは人に好かれる常識人のような振る舞いをしている。それが本性なのか、あるいはそう振る舞うことで仲間を増やす算段なのか……。

 それにあいつはデビルハンターになってから、とんでもない速さで適応した。敵を殺して味方を生かさなきゃいけない場面、そんな状況に直面した時あいつはすぐに成長してちゃんと敵を殺せるようになった。まるでそれがこの世界のルールだと知っていたかのようにな。

 あいつが常識的な人間だったら、頭で理解していようともそれを簡単に実行するにはもっと時間がかかるだろう。」

 

 岸辺はそうメモに書くと、酒を飲んで喉を潤した。

 

 「となると、岸辺さんにビビりまくって見えるのも演技かも知れないと?」

 

 「ああ、最強のデビルハンターにビビりまくってるとくれば、お偉いさん達も俺がいる限り安心してマキマを使えると考えるだろうからな。

 その分、上は油断してマキマへの対策が疎かになる。」

 

 「……ほんま嫌んなるなぁ。」

 

 スバルは頭を抱えた。

 

 「ま、俺の考えは多分杞憂だろうがな。」

 

 岸辺のメモを見てスバルは少し気が楽になり、胸を撫で下ろす。

 

 「岸辺さん、あんまビビらせんといて下さいよ。」

 

 「多分って言っただろ?可能性は低いが、あいつが俺たちを騙して何かを企んでる可能性はゼロじゃない。

 現にあいつは日本中を回ってヤクザを捕まえる過程で、地方公安のデビルハンターや警察、そして地元の市民達から信頼を得ている。お前も俺に言われるまで、マキマに対して好印象を抱いていただろ?

 あいつの振る舞いがもし演技なら、騙されてる奴はとてつもない数になる。しかもメディアにも露出しまくってるからな、今じゃマキマは日本の人気者だ。そして今回の暴力団連合一斉検挙作戦で指揮を任されたあいつの人気はさらに高まるだろう。

 あいつの地位はさらに盤石なものになる。そうなって来ると、もしマキマが良からぬ事を企んでた場合、止めるのがさらに困難になるな。」

 

 それを聞いたスバルは質問する。

 

 「そもそもじゃあなんで上はマキマを人気者になるようしたん?

 悪魔を人気者にしてなんか意味あるんか?」

 

 「恐らく……上はマキマを弱体化させようとしたんだろう。」

 

 岸辺は続けた。

 

 「悪魔は恐怖で強くなる、なら逆に恐怖されるのではなく親しまれたら?愛されたら?その悪魔は力を失い弱まる。

 上はそうする事でマキマを程よく弱体化させて、脅威にならずとも十分に仕事をする程度の強さにしたかったんだろう。」

 

 「それで弱体化はしてるのか?」

 

 岸辺はかぶりを振って答えた。

 

 「いいや、今日もナイフを投げて確認してみたがさっぱりだ。むしろ最初の頃の方が手応えがあったくらいだ。弱った結果、俺を騙すのが下手になったという考えも出来るが……だとしたら元が強すぎてどっちみち弱くなっても焼石に水だろう。」

 

 「なるほど……それは難儀な話やのう。ほんま、岸辺さんの杞憂である事を祈るで。

 マキマちゃんと何度か仕事しとるけど、今までのが全部演技やったってんなら割と心折れるで。うちの若いのもマキマのことを好いとるし、アイツらもメンタルやられそうやな。」

 

 「ああ、特異課の職員でもマキマのことを頼りにしてるやつは多い。もしマキマが裏切ったら、良くて士気はダダ下がりだろうな……。」

 

 「……悪かったらどうなるんや?」

 

 「マキマと一緒に離反する奴が出るかもな。」

 

 「おっかないなぁ……。全く、そんな話知らんときたかったわ。」

 

 スバルは暗い感情を洗い流すように、酒をグイッと飲んだ。

 スバルの言葉を聞いた岸辺は思う。確かにそうだ、マキマが脅威であるという事実。そんなことを知らずにいれば、もっと気楽に過ごせるだろう。

 だが、自分はデビルハンターだ。あらゆる状況、特に最悪の状況も想定しなくていけない。それでも……だ。岸辺の記憶の中にいるマキマも、今日あったマキマも、そんな危険人物とは思えない。いや、思いたくないの間違いだろう。

 公安でデビルハンターをやっていて、多くの同僚や部下が死んでいった。その中でしっかりと生き残ったのはクァンシとマキマの2人だ。特にマキマという弟子は、今日の今日までマキマ以外の弟子達の命をも救いながら、クァンシと違い公安を辞めることなく生き残ってきた。

 

 (本当に、裏切らないでいて欲しいもんだな……。)

 

 料理と酒を平らげた岸辺とスバルは、タバコに火を灯して食後の一服した。岸辺が吐いた煙は、いつもより長く、長く消えずに残った。

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