転生したので、偽マキマさんはデンジ君を推します 作:フィークス2号
………オェェェェ
好意の力で偽マキマさんの弱体化をしたはずが、戦争ちゃんの明かした能力から逆にバフになっている可能性が出てきてしまった。
東京都内にある一台の車が走っている。その車には3人のデビルハンターが乗っていた。京都から指導に来た天童と黒瀬、そして2人に指導され新しい悪魔と契約した特異課の早川アキだ。そして車を運転している黒瀬は、早川に話しかけた。
「俺たちはそろそろ、京都の方でも任務が始まるので帰ります。もう会う事もないだろうしひとつ質問させてください。
アキ君は銃の悪魔を狙っとる聞きました、本気で殺せると思ってます?」
黒瀬はそう聞きながら、銃の悪魔を殺すとデビルハンターになり死亡した兄のことを思い浮かべた。
デビルハンターになった者は一度はそのことを夢に思い、現実を知り諦める。あるいは……現実を知る前に殺される。
そんなデビルハンターが多い中、公安という最もこの日本で銃の悪魔に近く、過酷な職業に就きながら本気で銃の悪魔を殺そうしている男。早川アキに黒瀬は興味を持っていたのだ。
「今回の襲撃で、マキマさんは100回くらい死んでてもおかしくない状態でしたよ。
車も血だらけでびちゃびちゃで、もう二度と乗れへんくらいでした。
しかもその後も、マキマさん思い切り攻撃喰ろうてな?俺と天童の服が返り血で台無しになりましたよ。まぁ、車も服も俺んじゃなくて公安の支給品なんでええんやけど」
「ええんかい」
黒瀬の発言に対して天童が小声で漏らす。
「アキ君、今回の襲撃で特異課で死者が出なかったのはマキマさんの力や。
それは君もわかってるんやろ?あの状況下で、もしマキマさんが手を講じてへんかったら君は死んどった。
例え万が一アキ君が死んでへんくても、君の恋人さん。姫野が死んどったのは確実や。それは君もわかってるんやろう?」
車内が暗く、重い空気に包まれる。そして感情を抑えきれない黒瀬は、尚も言い続けた。
自分と親を残して死んでしまった、もはや話すことのできない、自らの兄に想いをぶつけるように。
「なあ?自分、恋人まで巻き込んでこんなこと続けんのか?そんな諦めきれへんか?
もし自分ひとりおっ死んで恋人だけ残されたら、その恋人、どんだけ苦しむかわからへんくらいアホなんか!?」
黒瀬の握るハンドルに強い、強い力が込められる。
「……優しいんですね、黒瀬さん」
少し間を置いて、早川アキは落ち着きながら返した。
「俺が公安に入った頃、自分が死ぬことは怖くありませんでした。銃の悪魔に家族を奪われていたんで、ただただ復讐だけを考えていました。
でもここで働いていて姫野と出会い、大切なものができました。復讐以外のことを考え始めたのはそれからです。
黒瀬さんの言ってた通り、姫野が死ぬことや俺が姫野を残して死ぬこと、色々考えて悩みました。
そんな時、姫野は俺の後押しをしてくれたんです。だから俺はもう迷いません。」
アキは懐から、悩んだ時に姫野から貰った『easy revenge! (気軽に復讐を!)』をと書かれたタバコを見ながら言った。
「……そか。いい彼女さん持ったな。」
「ええ、俺には過ぎた女ですよ。」
早川は静かに返した。
「……ま、俺の愛しのミサちゃんの方がええ女やけどな!」
「やかましいわ!すまんな、こいつうるさくて」
天童が突っ込みながら、早川に詫びた。
そして車が公安本部に着き早川はお礼を言い、車を降りた。そんな早川を見つめていた黒瀬はジュースを投げ渡して言った。
「アキ君!キミん事ムカつくけど応援しとくわ!!最後にこの言葉を送る!!
特異課にはまともな奴がいないから気をつけな!」
そう言い残し、去っていた黒瀬の車に対して、早川アキはしっかりと頭を下げて見送ったのだった。
神奈川県の某所にて、大勢の警察がとあるビルを包囲していた。
彼らは今回の公安襲撃を行ったヤクザを追い詰める為に、手助けしてくれている神奈川県警の皆さんと、公安の対魔2課の皆さんだ。
「神奈川県警より来ました、警部補の椎名です。」
「退魔2課の古野です」
神奈川県警と神奈川公安の椎名さんとへ古野さんが挨拶してくれる。
「特異1課隊長、岸辺だ。」
「特異4課のマキマです。本日はご協力、誠に感謝いたします。」
私たちも一緒に2人に挨拶した。岸辺先生は堂々と立ったままだが、小市民の私はペコリと頭を下げた。
岸辺先生くらい威厳と貫禄が有れば問題ないが、こちらは見た目も中身も小娘なので何もせず立ったままでいるのは心理的に辛い。
というか赤ん坊の状態ではなく少女の状態で生まれたから、見た目以上に小娘なのが実態だ……。
あれ?そのことを考えると、もしかして年齢的にデンジ君と付き合っても問題ないのでは?
「やだなぁ、マキマさん。そんなに畏まらなくていいですよ。
マキマさんにはうちの者達が世話になってますからね。これぐらい協力するのは当然ですよ」
変なことを考えてる私に対して、古野さんが笑顔で言う。や、優しい……。
「こっちのも、『あのマキマさんと協力したって自慢できる!』って張り切ってますよ。
あ、そうそう。これが終わったらサインもらっていいですか?俺の娘、マキマさんのファンなんですよ。」
「ええ、わかりました。娘さんにもよろしくと伝えておいてください!」
私は笑顔で返す。割とメディア露出してるからか、サインをねだられることはたまにあるが、子供にも人気と聞くとやはり嬉しい。
そんな感じで軽いやり取りをしてから、岸辺先生のブリーフィングが始まった。
「今回、警察と退魔2課は出入り口の封鎖。そして特異1課4課及びマキマ直属人外部隊が突入し、内部を制圧。主犯格の組長、サムライソード、そして沢渡アカネを確保する。」
「なるほど……それでは特異課の突入作戦について、詳しく教えてくれますか?」
「作戦はない。特異課と人外職員、全員をビルにぶち込む。」
尋ねる椎名警部補に対して岸辺先生は毅然と返した。
その言葉を聞いた古野さんと椎名警部補は困惑する。
「まぁ、突っ込むのは私が一仕事を終えてからですけどね。強いて言うならそれをしてから突っ込む事が作戦です。」
「一仕事ですか?」
「ええ、おっと。ちょうど準備が整ったようです。」
厳重な武装をした護送車が、ビルの近くにある指揮本部に到着した。この護送車が来てくれなかったら、実質私はこの作戦でニートと化してしまうから助かる。
いや、万が一ビルから逃げ出したヤクザが居たらそいつを捕まえる為に残るって役割があるけど……。ほぼ万全な1課4課が揃ってる上に、暴力さんを除いた人外職員も揃ってる。
この状況で逃げ出せる奴がいるとは思えない。サムライソードは壁を壊してどっかに行くかもしれないけど、デンジ君がいるからなんとかなるでしょ。
そんなことを考えているうちに、護送車から悪魔の死体の入った棺桶が運び出される。
そして棺桶が開けられ、中から悪魔の姿が見えた。
「こ、この死体は一体!?」
椎名警部補が困惑しながら聞く。
私はそんな椎名警部補に、笑顔で返した。
包囲されたビルの中でヤクザ達が武器を持ち、これから突入するであろう警察達に備えていた。
「く、組長……完全に包囲されてます。すごい数ですよ。」
「落ち着け、ここで迎え撃つ準備はしてある。静かにしてろ」
恐怖するヤクザに対して、沢渡アカネはぶっきらぼうに言った。
「うるせぇぞ女!テメェのせいでこんな目になったんだろうが!」
「おい、確かに話を持ちかけたのは沢渡だがそれに乗ったのも作戦を考えたのも俺らだ。
爺ちゃんが居たら、そんなみっともない言葉吐くなんてゆるさねぇぜ」
激昂するヤクザに対して、サムライソードが窘めた。
「若いもんは落ち着きがなくて困るねぇ……。ま、策はあるから安心しな。親父が残した置き土産があるからな。
警察が銃を使おうが、こっちには秘密兵器がある。」
「ひ、秘密兵器ですか?」
「ああ、親父が残したゾンビで作ったゾンビ軍団だ。
銃でドタマをぶち抜こうが、心臓を撃とうがその程度じゃゾンビは止まらない。頭を砕けば別だが、銃でそれをやるのは一苦労……。
警察がてんやわんやになってるうちにチェンソーの心臓を奪うって寸法よ。
他の組にも配ってあるから、そいつらもそれで逃れて義理も立つ。その組のどこか一つでも。ゾンビパニックを起こしてカタギに被害がだせりゃ、マキマの責任問題で一矢報いれて一石二鳥。
学のある奴はこうやって賢く戦うんだよ、ん?」
どっしりと深く椅子に座った組長が、余裕そうに部下達に言った。
作戦開始を前に、緊張する日本全国の警察と公安のデビルハンター達。
そんな彼らに、無線を通してマキマの声が聞こえた。それは作戦開始前の激励の言葉、正確に言えば演説であった。
「みなさん、この任務に参加してくださり有難うございます。
この任務に参加した警察官、公安職員の皆様にはさまざまな思いがあるでしょう、考えがあるでしょう、夢があるでしょう、望みあるでしょう。
ある者は今を生きる家族のために、ある者は今は死せる家族のために。
ある者は未来を掴むために、ある者は過去と決別するために。
ある者は正義から、義務から、欲望からこの場に参加することになったでしょう。
そして目指す場所も、見たい景色も、その想いの強さすらも、何もかもがそれぞれ千差万別でしょう。
それでも私たちは今、たった一つの目的のためにいます。
それはこの日本の裏社会における一つ時代を終わらすことです。この事件は、警察史、デビルハンター史、犯罪史、そしてなによりも日本史に残る一大事件として残ることになります。我々の勝利という形で……。
みなさんはこの事件を、どのように語るのか。
新しく入った新人に対して、この事件の凄まじさと共に教訓を語る者。
家族や友に自らの活躍と栄光、そして勇敢さを語る者。
飲みの場で、一つの鉄板話のひとつとして場を賑やかせるために語る者。
……あるいは、この件について口をつぐみ、ただただ、他者が残した記録の中にある行動でのみ語る者。
それもまた千差万別でしょう。
それでも、みなさんの語り方が幾千通りあろうとも、幾万通りあろうとも、その語られ方は一つ。
我々の後に続く者達にとっての、偉大なる先立として語られるのです。
かつて私たちの父が、母が、より良い時代を築くために、奮闘したように……。
私たちは、私たちが今日築き上げる新しい時代を最初に生きる長子となるのです。そして私たちの弟や妹が尊敬する、偉大な兄弟として語られるのです。
さあ、犯罪者による無秩序の時代を完全に終わらせて、法の支配がなされた秩序ある新時代の幕を開けましょう。
オペレーション、ビックブラザー。開始」
マキマはそう無線で語り、一呼吸を置いて落ち着いた後に安堵しながら言った。
「よし!噛まずに言えた!」
「…………………」
ガッツポーズをしながら安堵しているマキマを見つめていた岸辺は、身を乗り出し無言で無線の通信を切った。
「……すみません、もしかして最後のやつ、聞こえてましたか?」
「ああ、バッチリとな。」
岸辺の一言を聞いたマキマは。顔を赤くして、顔を両手で押さえたのであった。