転生したので、偽マキマさんはデンジ君を推します   作:フィークス2号

26 / 57
23話 暴力団の悪魔

 

 

 日本の地方都市に存在する、公安襲撃に参加したとあるヤクザの事務所。そこはサムライソードの組と同じように、警察と公安に包囲されていた。

 

 「あ、兄貴!本当にゾンビを放つんですか!?」

 

 「ばっきゃろう!そうしねぇと俺らがサツにパクられる!悪魔と契約して銃を手に入れた上に、公安を襲ったんだ!終身刑になって、悪魔との契約の生贄にされるかもしれねえ!

 こうなったら一か八かだ、ゾンビに賭けるしかねえだろう!」

 

 事務所の中でヤクザは怯えつつも、ゾンビという秘密兵器を頼りに状況を打開しようとしていた。

 

 「……たく、いつになったらゾンビの解放が終わるんだ!

 おちおちしてたらサツどもが突っ込んでくんだぞ!あの馬鹿どもが……。まさかゾンビにビビってんじゃねえだろうな?

 おい、そこの。ちゃんと手はず通りにゾンビを逃す準備が整ってんのか見てこい。」

 

 「へ、へい!わかりやした兄貴!」

 

 下っ端のヤクザは指示に従い、部屋を出た。そして……。

 

 「ギャアアアあああ!」

 

 下っ端のヤクザの悲鳴が響いた。

 

 「な、なんだ!?何があった!?

 くそ!テメェらチャカの準備をしろ!」

 

 ヤクザ達はドアに銃を向けて待機した。そしてしばしの沈黙の後、三下の下っ端がドアを開けて帰ってきた。

 

 「オアアアァァァァ」

 

 組が用意したゾンビ達と共に、変わり果てた姿になりながら。

 

 「な!?」

 

 そして部屋に大量のゾンビ軍団が雪崩れ込んだ。ヤクザも当然銃を放ち応戦するが、ゾンビのタフさと圧倒的な物量になす術もなく蹂躙され……部屋の中にいたヤクザは皆ゾンビと変わり果てたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「えっと、ちょっと待ってください。ゾンビ?」

 

 神奈川公安の椎名さんが私に尋ねてきた。

 

 「はい、ゾンビです。

 ヤクザ達はゾンビの悪魔の力でゾンビを保有しています。そのゾンビに噛まれるとゾンビになってしまい大変危険です。

 なのでゾンビの悪魔の力を使用して、逆にそのゾンビにヤクザ達を襲わせています。日本各地で。」

 

 私はニヤリと笑いながら答える。支配の力で小動物達を用い情報収集をおこなった結果、原作通りヤクザがゾンビを保有していたことがわかった。

 ただ厄介なことにサムライソードの組だけじゃなく、公安の襲撃に参加した全ての組がゾンビを保有してると聞いた時私は頭を抱えた。

 原作では、多くの魔人と悪魔を編入した公安対魔特異4課無双でゾンビ軍団に対抗していたが、それができるのは一つの場所だけだ。

 しかも万が一そのゾンビが街に逃げ出して、一般市民を噛んだら大変なことになる。そこで私は無い知恵を必死に絞り、岸辺先生をはじめとする公安の仲間にも相談して対処法を考えた。

 

 そして思いついたのがこれだ!デンジ君が倒してくれたゾンビの悪魔を使い、ヤクザのゾンビを操る!でもって、そのゾンビをヤクザに襲わせれば警察や公安への被害を抑えられる!

 ふっふっふっ、完璧な作戦!今ごろ公安の襲撃に参加したヤクザの事務所は、阿鼻叫喚の大惨事に違いない。実際、目の前のビルから銃声の音がすごいし。

 

 「ヤクザがゾンビを持っている……初耳なんですが」

 

 「ヤクザ達にとって秘密兵器だからね、ヤクザなりに全力でゾンビの存在は隠してたよ。

 だから油断させるために、気付いてないふりをしてたんだ。もし警察がゾンビの存在に気付いてるとバレたら、また別の対策を立ててくるだろうしね。」

 

 私は椎名さんの質問に答える。ゾンビという秘密兵器は、ヤクザにとって心の拠り所だ。『自分達は危険な状況だが、対抗策がある』、そう考えているからこそヤクザ達は未だ心の平静を保っていられるのだ。

 もしそのゾンビの存在を警察が把握してると気付いたらヤクザも余裕が無くなり、なりふり構わず暴れ始める可能性がある。恐怖のあまり街中で銃乱射をし始めたり、ゾンビを警察を迎え撃つためでなく、街中に放って撹乱するために使用したり、そんな迷惑なことをされたらたまったもんじゃない。

 だから私は、こうやってゾンビをヤクザの事務所に集めて迎撃のために使おうとするヤクザを放置していたのだ。そうしてくれれば、あとはゾンビの悪魔の力でゾンビを操って、ワンサイドゲームができるし。

 

 「全く、ヤクザが可哀想になってくるな」

 

 銃声が響く事務所を眺めながら、岸辺先生が漏らす。

 

 「ええ。でも万が一無関係な市民や警察が噛まれることになったら、そっちの方が100倍可哀想ですよ。でもヤクザの方は自業自得ですし。」

 

 ぶっちゃけて言うと、実はそこまでヤクザには同情とかしてない。だってダメージの肩代わりで100回くらい撃たれたし……いやもっとか?

 それにヤクザのせいで特異課の職員が減るわ、ヤクザを捕まえるための公安特別捜査本部の指揮を取ることになるわ、そのせいで忙しくてデンジ君とあんまり会えないわで散々だった。

 

 「マキマさん、そろそろ投降を呼びかけますか?」

 

 「あ、月本さんありがとう。それじゃあスピーカー借りるね」

 

 ゾンビの悪魔を操りながら、ヤクザへの不満を考えていた私の為に、月本さんが拡声器を持ってきてくれた。そろそろヤクザの中にも音を上げる奴が出てくるだろう。私は月本さんから拡声器を受け取り、投降を呼びかけた。

 

 「あー、あーあーあー。事務所に立て篭もる暴力団員に告ぎます!速やかに投降しなさい!貴方達は完全に包囲されている!そして頼みの綱であるゾンビ達も、我々警察が掌握した!

 速やかに武器を捨て投降せよ!そうすればゾンビは貴方達にこれ以上危害を加えることはありません!もし今の段階で投降するのであれば、今回の襲撃事件の罰として死刑、及び終身刑は免れます!私が保証します!」

 

 私は拡声器でヤクザ達に呼びかけた。

 

 「終身刑と死刑を免れる……か。そんなこと言っていいのか?」

 

 岸辺先生が尋ねる。

 

 「一応、検察の人には話を通してありますから。今回の事件は死者は出ていないですし、投降するならば反省の余地ありとして、ギリギリ終身刑よりは軽い判決で済ませてもいいとのことです。

 といっても、今回の事件の罰にのみ限りますけどね。

 他の事件でやらかしていたら、普通に死刑や終身刑はあり得ます。」

 

 私は岸辺先生に答えた。いやぁ……検察の人には頭が上がらない。これで少しでも多くのヤクザが投降して、仕事が楽になればいいんだけど。

 でもサムライソードとかは投降しないだろうなぁ、だからデンジ君は普通に原作通り戦いそう。

 

 私がそんなことを思っていた時、突如ビルの事務所にある窓ガラスが割れて、何かが飛び出してきた。そしてその何かは、私が操っているゾンビめがけて飛んできた。

 

 

 私は咄嗟に鎖を広げて盾を作り、自分と岸辺先生、そして周りにいる警察と公安職員、それとゾンビの悪魔をガードした。

 

 「オラァ!」

 

 そして窓から飛び出してきた何かは一直線に、ゾンビの悪魔を目指して飛んできて、私の鎖にぶつかる。

 あ、やばいこれ防ぎきれない!みんなを守る為に鎖広げすぎた!軌道をよく見て、ゾンビだけ守っときゃよかった!

 私は飛んできた何かが、ゾンビの悪魔を殺す前に、ゾンビの悪魔が操る全てのゾンビの活動を停止させた。

 日本各地のゾンビの活動を止めて、新たなゾンビが作られないようにし終わったのと、ゾンビの悪魔が飛んできた何かに攻撃されて、もう操ることができなくなったのはほぼ同じタイミングだった。

 

 「……たく、マキマ。テメェはとことん人の邪魔をするのが好きだなぁ?

 お陰で俺が考えた作戦が全部おじゃんだ。この落とし前、どうつけてくれんだぁ!?」

 

 飛んできた何かの正体……それは上半身裸で、左手にドスを持ち右手にはハンドガンを構えた刺青をした大男、組長の姿であった。

 あれ組長でかくない!?前新幹線で見た時とか原作だと、あんなに大きくなかったよね!?てか肉体的に強すぎない!?

 

 「作戦がおじゃんになったのは、貴方の計画が杜撰かつ稚拙な楽観に基づくものだったからでしょう?」

 

 「あ゛ぁ゛ん!?」

 

 私はムキムキになって怖くなった組長に対して、毅然と返した。ここで怯えたところを見せたら、他の警察達の士気が下がっちゃうし……。

 

 「古野、こいつの対処はマキマがやる。他の公安職員には距離取らせて援護に徹するよう命令しろ。

 椎名警部補、県警は引き続き人外職員の逃走に対する警戒に当たってくれ。」

 

 岸辺先生は私を信頼して、躊躇なく他の職員達を下がらせた。元々逃げ出すヤクザがいたら、私が対処することになってたしね。

 

 私は露骨に不機嫌そうな態度をとる組長に対して、改めて投降を促した。多分無意味だけど。

 

 「貴方がここの暴力団の最高責任者であることは分かっています。

 今すぐ他の構成員達の武装を解除し、投降するように指示を出しなさい。

 これが貴方が減刑される最後のチャンスです。さあ武器を捨てて両手を上げ、ゆっくりと膝をつき、地面に伏して手を頭に回しなさい。」

 

 私は指で鉄砲を作り、組長に向けた。まるで新幹線で襲われた時のような構図だ。

 ただあの頃と違うのは、私は無傷で大勢の仲間がこの場にいることだ。

 それにビルに突入しているが特異課のみんなもすぐ近くにいる。

 今の私は1人じゃない、そのことを思うと勇気が湧いてくる。目の前の組長がなんの悪魔と契約していようが知ったことか!

 

 「……はぁ。随分と余裕だねぇ、まぁ虎の子のゾンビ軍団も無効化したし、大方武器人間であるうちの若いのの対策も万全済ましてきたんだろ?

 だがなぁ、俺はもう契約しちまったんだよ。

 『暴力団の悪魔』とな。その契約の代償の一つはマキマ、テメェを殺すことだ。もしテメェを殺さなかったら結局俺は契約違反で死ぬのさ。

 投降しようがどうせ生きれねぇなら、テメェをぶっ殺して生き残れる可能性に賭ける。それしかないだろ、ん?」

 

 組長は私に向けて言った。組長が契約したのは暴力団の悪魔だったのか……。

 いや、確かに悪魔と契約したあんたは死ぬかもしれないけど、他の構成員は普通に生き残れるんじゃないの?

 新幹線の時より明らかにパワーアップしてるし、契約したのって多分襲撃の後だよね……?なんで一度失敗した賭けに追い銭しちゃうかなぁ。

 組長の父もゾンビと契約して、結果死んだしもう悪魔と関わるのやめた方がいいと思う。

 

 「さ、お喋りもここまでだ。マキマ、決着をつけようぜ?」

 

 暴力団の悪魔と契約して、上半身裸で刺青をした筋肉隆々の大男と化した組長は、ドスを私に向けて言い放った。

 

 「いいでしょう。貴方を倒して、法の裁きを受けさせます。覚悟しなさい。」

 

 私は鎖を構えて答えた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。