転生したので、偽マキマさんはデンジ君を推します   作:フィークス2号

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27話 会食と杞憂

 

 

 

 

 「おう、悪い悪い。待たせて済まんな岸辺さん」

 

 「先に酒飲んで待ってたから気にしなくていいぞスバル。」

 

 「いや俺の祝いなのに先に酒飲むなや!」

 

 岸辺とスバル、二人のベテランデビルハンターが料理屋の個室で会食していた。

 今回の公安襲撃した暴力団に対する討伐作戦、オペレーションビックブラザー。今回の作戦で京都地域での指揮を担当したスバルは、今回の功績が評価されて昇進が決まったのだ。

 

 「いやー、しかしそっちの方は大変だったみたいやな?

 こっちはマキマちゃんがゾンビどもを操ってくれたおかげで、だいぶ捗りましたけど。

 天童と黒瀬のやつも『マキマに手伝わん言うたのに、逆に手伝って貰って申し訳ない気分やわ』言うてはりましたよ」

 

 スバルは明るい普段通りの口調で喋りながら、同時にマキマへの傍聴対策に筆談を始めた。

 

 「とりあえず、今回の俺の不自然な出世から教えて貰おうか。

 俺が相手をしたヤクザ達は確かに規模こそ大きかった、せやけどもマキマが操ったゾンビ軍団のお陰でヤクザ達は戦う前から半壊状態やった。

 今回の大阪での作戦も殆どマキマの手柄や、俺が出世すんのはおかしい。一体東京で何があったんや?」

 

 怪訝な表情を浮かべながらも、声色を変える事なく、スバルはメモを用いて岸辺に問いかけた。

 

 「政治的なあれこれの結果だ。一言で言うなら公安のお偉いさん達の地位が吹っ飛んだ。」

 

 「なんやそれ!?一体何が起きたんや?……マキマが何かしたんか?」

 

 公安の上層部の失脚、岸辺の書いた言葉を聞きスバルは驚愕した。

 今回の事件において、確かにヤクザに襲撃を許してしまった事や、武器を手に入れさせてしまった事などの公安の失態とも言うべき点はあった。

 しかし今回のビックブラザー作戦の成功で、それらの失態を十分挽回できるほどの成果は出せた筈だった。その作戦の成功がマキマの功績が大きいとしても、そのマキマの上司である上層部も評価される筈である。

 にも関わらずに失脚した公安の上層部。岸辺はその理由についてスバルに説明をする。

 

 「いいや、マキマが何かしたというよりは上層部の自爆だな。

 近々出世したお前にも知らされるだろうから説明しておく。

 まず今回の事件についてだが……国外勢力が絡んでいた。」

 

 岸辺から明かされた、銃の悪魔についての衝撃の事実。スバルは驚きのあまり、思わず盗聴対策にしていた口頭でのダミーの会話を一瞬止めてしまった。

 

 「銃の悪魔が第三国と協力関係に?それ何かの間違いとちゃうんか?」

 

 「いいや、コレに関しちゃ証拠がある。マキマが中心になって公安が集めた情報や、今回捕まえた沢渡アカネの証言、そして状況証拠。その全部がこの事実を証明している。

 どの国が銃の悪魔と絡んでるのか、それがどこの国なのか、一国なのか複数の国々なのか。

 その関係性は対等なものなのか、あるいはどちらかが明確に上と決まっているのか、そこらへんについちゃ、まだ確定していない情報だから断言はできないがな。」

 

 そして岸辺は、出世したスバルが知れる範囲で教えられる情報をもとに、銃の悪魔が外国の管理下にある根拠を述べて説明した。

 

 「なるほど……そう言う事なら筋は通っとるし納得や。

 しかしその大層な話と上層部の失脚、どう関わってくるんや?」

 

 「上層部は、今俺がお前に話した以上の情報を知っていた。その上でお偉いさんは『銃の悪魔が外国と関わりのある可能性』を端から完全に否定していたんだ。

 『可能性が低い』とか『疑わしい』とかじゃなくてな。そこが問題となった。」

 

 「いやいやいや、流石にそれはあかんやろ。俺も相手すんのは悪魔だけであって欲しいと思うで?そこに外国が加わったらヒーヒーやもん。

 でも考慮すらしないのは流石に……」

 

 「ああ、そうだ。悪魔と戦うなら常に最悪を想定しておくべきだ、なのに上層部はそれを怠り、楽観に基づいた対策しかしてこなかった。

 それが今回のヤクザ達の逮捕で、その楽観が完全に間違いだった事が明らかになってな……。」

 

 「あー、そりゃあかんなぁ。今回のヤクザの襲撃を死者0で乗り切れたのもマキマちゃんの手柄やし、上層部の落ち度が半端あらへんなぁ。」

 

 酒を飲みながら会話を続ける岸辺とスバル。二人は食事とダミーの会話、そして本命の筆談というマルチタスクを平然とこなし続ける。

 

 「しかも……だ。銃の悪魔が外国となんらかの形で絡んでいるという予測。これをマキマはかなり初期の方からしていたんだ。」

 

 「ほおう。やっぱ優秀やなぁ、マキマちゃんは」

 

 「そしてマキマはその予測を上層部に伝えて、対策を練るなど、事前に備えるよう訴えていたんだが、それを無視していてな。

 マキマは指揮系統的には内閣官房長官直属のデビルハンターだ。公安上層部だけでなく官房長官にも、銃の悪魔に関する予測を伝えていてな。

 その結果、『初期から銃の悪魔について適切な予測を立てた上で襲撃を防いだマキマ』と『その予測を聞いていたにも関わらず、楽観論を持ち続けて襲撃を許し、その後始末もマキマに任せた公安上層部』という図式が出来上がってな……。まぁ、実際その通りなんだが。

 それで公安上層部の評価がボロボロになって、お偉いさんが失脚してポストが空きまくった。

 そこでそのポストを埋めるため、白羽の矢が立ったデビルハンターの一人がお前というわけだ。」

 

 岸辺の説明を聞いてスバルはようやく状況が飲み込めた。上層部の自爆と評した理由も含めて。

 マキマが銃の悪魔について得た情報を上層部に隠し、失態が酷くなるように襲撃を見逃したのであれば、マキマが何かをしたとも言えるだろう。

 だが実際のところ、マキマはしっかりと公安上層部に情報とその予測を伝えている。伝えられた上でその可能性を否定したのなら、それは間違いなく上層部の自爆だ。

 マキマが優秀なのもあるが、相対評価によって酷く見られるのは上層部自体に問題がある。

 

 「大体俺が出世した理由については把握できたわ。」

 

 「そうか。それじゃ、お次はその『優秀なマキマちゃん』の話に移ろうか。」

 

 「茶化さんといてくれや。」

 

 岸辺は酒を飲んで喉を潤してから、マキマについて新しく入った情報をスバルに伝える。

 

 「悪い悪い。で、マキマについてなんだがな。どういうわけか銃の悪魔の力を使えるらしい。」

 

 「銃の悪魔の力を……?それは確かなんか?」

 

 「ああ確かだ。俺もマキマが今回の主犯である組長と戦ってる時に、その力を使うのを直接この目で見た。

 マキマの付き人をやってる月本や、新幹線で襲撃に居合わせた民間人も同様に銃の悪魔の力を使う所を目撃したそうだ。

 そして何よりマキマ本人に直接聞いて確認した。」

 

 「マキマに直接聞いたんか!?度胸あんなぁ……。」

 

 岸辺の行動力にスバルは驚く。

 

 「あの時、沢渡アカネが『マキマが銃の悪魔の力を使った』『マキマが強いのは銃の悪魔の肉片を自分の悪魔に食わせたからだ』……と言っていたらしくてな。聞き出すのにあれ以上に適したタイミングはなかった。

 もっとも本人が言うには、『自分の能力で悪魔の力を使ったのであって、銃の悪魔の肉片は食べていない』と言っていたがな。」

 

 「ほーん。で、実際のところどうなんや?公安が管理してる銃野郎の肉片は、マキマのつまみ食いのせいで減ってたりしとんか?」

 

 「いや全く。むしろ……マキマが活動を始めてから、集まる銃の肉片はどんどん増える一方だ。」

 

 そう言うと岸辺はあるデータの書かれた書類をスバルに手渡した。

 それは公安が集めた銃の肉片の量に関するデータであった。公安が集め出した初期は、集めるのに必要な銃の肉片が少なくその収集スピードは非常に遅い。

 だがある時期を境に、収集スピードが爆発的に増えている。そう、マキマがデビルハンターとして活動し始めた時期だ。

 無論、銃の肉片が増えれば増えるほど、捜索に使える肉片の量も増えて、銃の悪魔の肉片集めは捗るものだ。だとしてもこのデータの指し示す予測では、本来現時点で集まっているであろう銃の肉片の量は10キロにも満たなかった。

 この書類は、マキマが公安に対して銃の肉片だけでも大きすぎる影響を与えていることを示していた。

 

 と言っても、マキマが銃の肉片をこんなに集められるのは、小動物を利用して情報を大量に集められることや、銃の肉片を支配する事で他の肉片の位置を把握できるからであるが。

 

 「これ……ほんまか?こんなにマキマの影響力ってあるんか?」

 

 「ああ事実だ。公安が集めた銃の肉片は9割方マキマの手柄だと思って問題ない。

 これだけの量を集められるんだ。実は裏でもっと集めてて、バレないように肉片を食っているという可能性も考えられる。

 そう考えると沢渡アカネが言っていた、銃の肉片による強化も説明がつく。だとすると、マキマの弱体化で行っていたメディア露出作戦が無意味なのも納得だ。恐れられてるのはマキマという悪魔じゃなくて、銃の悪魔なんだからな。

 マキマの強さが銃の悪魔由来だとすると、恐れられていない概念も候補になるな。」

 

 「それは難儀やなぁ……。」

 

 スバルは口にまで出かかったため息を、ビールで流し込んでやり過ごす。

 

 「ああ、だが考えられる中で最悪なのは……マキマの正体が銃の悪魔である場合だ。」

 

 「……………」

 

 あまりにも衝撃的な言葉に、スバルは筆談で何かを返すことも出来ない。

 

 「マキマが銃の悪魔である、この前提で考えても今までの件についてもある程度納得のいく説明ができる。

 銃による襲撃で、公安の職員を死なせずに済んだのは銃の悪魔の能力によるもの。

 他の悪魔がマキマに従っているのは、現世にいる悪魔の中でトップクラスの悪魔だから。

 そして……銃の肉片を効率的に集められるのは、マキマ自身が銃の本体だから。」

 

 「だったら……なんで襲撃に協力したんや。今回の襲撃には銃の悪魔が関わっとったんやろ。なんのメリットがあるんや。」

 

 「今回の活躍でマキマの地位は盤石なものとなった。ゾンビの悪魔を使う事で、公安の死者は0で抑えた上に日本中のヤクザはボロボロになった。

 しかも銃の肉片も10キロ以上手に入れられたんだ。公安も警察も、そして一般民衆も大喜びの大戦果だ。

 もし……今の状況でマキマの正体が悪魔や魔人だって明らかになっても、どれだけの人間が問題視する?」

 

 岸辺はそのあと『流石に銃の悪魔だと知られたらそうもいかんだろうがな』と付け足した。

 だがそれでもスバルの表情が晴れることはなかった。

 

 「そういえば、ビックブラザー作戦の後にやってたマキマが出てた番組……。大好評だったらしいな。」

 

 「ああ、そうだな。」

 

 岸辺は食後の一服をしながら、マキマのことを考えた。

 

 (本当に……考えすぎであって欲しいもんだ。)

 

 

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