転生したので、偽マキマさんはデンジ君を推します   作:フィークス2号

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30話 DATER!

 

 

 

 

 

 「ハァ……ミスったなぁ。ご飯を食べさせすぎてデンジ君のお腹壊しちゃうだなんて……。」

 

 私はトイレの前でデンジ君が戻ってくるのを待っていた。

 といっても、デンジ君が並んでいるのはデビリーランドにきた客は必ず利用する下手なアトラクションよりも人気のある施設、トイレだ。その列に並ぶ人の数も膨大な量となり、私の伝家の宝刀ファストパスも使用できない。

 デンジ君が帰ってくるのはお腹のダメージも考慮して後45分くらいはかかりそうだ。

 

 そんなことを考えていると園内放送が鳴り響いた。

 

 「ご来場のお客様にご連絡いたします。ただいま園内、ファンシーエリア付近で悪魔の出現が確認されました。

 現在当デビリーランド所属のスタッフであるプロデビルハンターが対応に当たっていますが、念のためご来場のお客様は一時的にセーフティエリアにまでご避難ください。

 繰り返しますご来場の……」

 

 どうやらデビリーランドに悪魔が出現したようだ。私も3回ほど悪魔の討伐をしたけど、良く出るなぁ……悪魔を題材にしている遊園地とはいえ、こんな頻繁に出なくてもいいのに。

 

 私がそんなことを考えていると、デビリーランドのスタッフの一人が私に近づいてきた。

 ああ、私が避難してないから避難の誘導にきたのだろう。だけど今はデンジ君を待っているから離れるわけにはいかない。事情を話して後から避難する旨を伝えよう……。

 

 「あの……お休みのところ申し訳ございません。公安のデビルハンターをしていらっしゃるマキマ様……ですよね?

 ご来園して遊んでくださりとても有難いのですが……どうか助けて頂けないでしょうか?」

 

 「……え?避難誘導じゃないの?」

 

 「お恥ずかしながら本当に申し訳ございません……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ギャアアアアア!」

 

 悪魔に捕まり、ジェットコースターのカートや、ゴーカートの小さな車に乗せられ、シートベルトなどでぐるぐる巻きにされて拘束された客やデビルハンターが勢いよく射出されていく。

 射出……そう表現するのが一番適当だった。宙に浮く円状の無限にループするジェットコースターのコースを中心にして、その周りにシートベルトで出来た触手がアトラクション乗り場となる小さな四角い箱のような部屋から生えている。そしてその四角い箱のような部屋がいくつも宙に浮いていた。

 シートベルトで出来た触手が客を掴み、アトラクション乗り場となる四角い箱に人間を入れ、そのなかでカートに人を乗せていく。悪魔は客の乗ったカートを中心のジェットコースターのコースに乗せて勢いよく走らせたあと、意図的に脱線させて吹っ飛ばしているのだ。

 

 その恐ろしい光景を見て、民間デビルハンターのケンゾウは後悔していた。彼はかつては公安のデビルハンターを志すほどに、やる気に溢れたデビルハンターだった。

 デビルハンターとしてのキャリアもベテランで、堅実な仕事を続けてもう7年も民間デビルハンターとして活躍している。

 しかしこの恐るべき惨状は、彼の対応できる実力を大きく超えていた。

 

 (畜生……なんだあの悪魔!?おそらくありゃあ、絶叫マシンの悪魔とかそういう奴だ!)

 

 彼はデビリーランドに雇われた民間のデビルハンターだった。デビリーランドの護衛ということで安定した収入が期待でき、悪魔を倒すことよりも来園客が避難できる時間を稼ぐことを最優先とされる仕事内容。

 堅実な仕事を得意とし、そういった仕事を好むケンゾウとしては、まさしく天職だと考えて最近この仕事を始めた。

 それにデビリーランドほどの施設となれば、公安のデビルハンターが加勢にくるし、彼が聞いた話では実際何度か、あのマキマほどの人物が直々に助っ人に来たという話も聞いた。

 ケンゾウは過去に公安のデビルハンターと共に仕事をした経験がある。それゆえに、そのイカれ具合と常軌を逸した実力を把握していた。

 

 『もし強い悪魔が来ても、公安が助けに来るならば安心だ。』

 

 そんな軽い気持ちでデビリーランド専属のデビルハンターになったのが運の尽きだった。

 公安のデビルハンターが来る……それはつまり民間レベルでは暗に対処できない案件が来ることがしょっちゅうだということを示していた。

 

 悪魔のシートベルトの触手がケンゾウを捕まえんと伸びる。

 

 「クソ!させるかぁ!」

 

 しかしケンゾウは素早く手に持った日本刀を振るい、シートベルトを切断した。

 切られたシートベルトの返り血を浴び、カートに乗って吹き飛ばされた同僚の悲鳴を聞きながら、転職することを心に決めたケンゾウ。彼は奮起して、次々と襲い来るシートベルトを片っ端から切り落としていった。

 しかし実力は並に比べまで十分あるとはいえ、常人の範疇であるケンゾウ……。終わりなき悪魔のシートベルト攻撃にスタミナが尽き、ついには他の哀れな被害者たちと同様にシートベルトに拘束されてしまった。

 

 「し……しま!?おい!やめろ!離せ!離せよ!いや離してください!どうかお願いします!嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だあぁぁぁぁぁ!誰か!誰か助けてぇぇぇぇ!」

 

 命の危機を前にして、ケンゾウはみっともなく叫ぶ。ジタバタと身を捩り抵抗を続けるが、悪魔は我関せずとケンゾウを宙に浮かぶアトラクション乗り場の部屋へと運ばんとする。

 

 「う、うわぁぁぁぁ!」

 

 ケンゾウが一際大きく叫んだ。

 

 その時だった。悪魔が作り出した部屋に思い切り、巨大な鎖の塊が激突して、その部屋を叩き潰したのは。

 

 「お、おひぃ!?」

 

 そしてその部屋が叩き潰された影響で、ケンゾウを縛るシートベルトが緩み、そのままケンゾウは落下した。

 

 そして地面に激突する直前、何者かによって抱き抱えられてケンゾウはことなきを得た。

 

 「大丈夫ですか?私は公安デビルハンターです。もう安心してくださ……て、ケンゾウさん?」

 

 「た、助かった……て!?公安デビルハンターのマキマ!?あ、マキマさん!?

 ど、どうして俺の名前を……。」

 

 自分を助けてくれた人物、その正体は内閣官房長官直属であり、つい最近『全国暴力団討伐作戦 オペレーションビックブラザー』を成功させたことで、さらに名声が高まった公安デビルハンターのマキマであった。

 

 「どうして……って、お会いするのは3度目ですし。ほら、ナマコの悪魔をうちの部下が横取りしてしまった件と洋館の悪魔の件。」

 

 「お……覚えてくださってたんですね。」

 

 ケンゾウはマキマの言う通り、2回ほどマキマとあったことがある。彼にとってそのことは軽い自慢話であったが、まさか当のマキマ本人もそのことを覚えているとは思っていなかったのだ。

 

 「それじゃあケンゾウさん、他の人の避難をお願いしてもいいかな?

 この悪魔は私にとって相性がいいから、私が担当したいんだけど……。」

 

 「あ、ああ。わかった、こいつは逆に俺とは相性が悪いタイプの悪魔だからな。うん。マキマさんの言う通り避難誘導に専念するよ。うん。」

 

 相性が悪い……これはある意味嘘ではない。この悪魔はケンゾウの手に追えるレベルをとっくに超えていた。そういう意味では、相性が悪いというのも嘘ではないだろう。

 マキマが君では勝てないとは言わず、あえてぼかしたのはケンゾウの自尊心を傷付けぬ為だろう。それを理解したケンゾウは、ありがたく相性を理由に悪魔から離れて避難誘導に徹することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さてと……覚悟はいいかな?」

 

 私は目の前にいるよくわかんない悪魔……ジェットコースターか、絶叫マシンか、はたまたアトラクションか遊園地か、そのいずれかであろう悪魔に向けて言った。

 

 私の発言を理解したのか、目の前の悪魔はシートベルトの触手を私に向けて伸ばしてきた。

 私はそれを身を捩ることで最低限の動きで躱し、幾つもあるシートベルトが生えてる四角い箱?に向けて指鉄砲を構えた。

 

 「バンバンバンバンバーン」

 

 私は銃の悪魔の力を雑に使い箱を次々と破壊した。

 今までこの銃の悪魔の力は人前では使わないように意識してきた。だけどヤクザの一件で、沢渡アカネに私が銃の力を使うことをバラされたから方針転換をしてもう隠すのはやめたのだ。

 多分、沢渡アカネや組長は他のヤクザにも私が銃の力を使ったことを話してるだろうし、そこ経由でどこかもっと別の場所にもバレてる可能性もある。

 だったらもう、隠して奥の手にするよりはガンガン使いまくったほうがいいだろうと考えたのだ。

 どうして使えるの?って質問には「詳しくは言えないけど悪魔の力で色々やってる」で誤魔化すことに決めた。私ほどのデビルハンターになると色々と秘密にできることも多いし。

 

 そんなことを考えていると、ついに残りの箱は一つにまで減った。

 私はその最後の箱が伸ばすシートベルトにあえて捕まり、悪魔のジェットコースターにあえて乗ることにした。

 

 シートベルトによって四角い箱の中に入れられると、私はジェットコースターのカートに乗せられて幾つものシートベルトにぐるぐる巻きにされた。

 どうやらこの四角い箱はアトラクション乗り場の役割をしているようだ。そしてカートはポンっと箱の外へ出された後、ジェットコースターのコースに乗せられて勢いよく走りだした。

 どんどんスピードが上がり、せっかくデートの為に整えた私の髪が乱れまくる。美容院にも行ったのに……。

 

 「ふん!」

 

 私は腕に力をこめてシートベルトの拘束を引きちぎった。

 そして私は鎖を召喚して、私の下にあるレールに引っ掛けるように輪を作り、それを思いっきり引っ張りカートと鎖でレールが縛られるようにした。

 そうする事で悪魔の肉体であるレールが、カートと鎖で挟まれたまま擦られることにより削れていく。

 

 ぐぐぐぢぢぢぢぢぃぃぃぃぃ!

 

 めちゃくちゃ嫌な音を出しながら、私の作った鎖は悪魔のレールを削り夥しい量の肉片の血を撒き散らしてダメージを与えた。

 

 そして20周ほど回転したあたりでジェットコースターのカートの勢いが落ちてきて、50周もするとついにコースそのものもがブチ切れることで私は吹き飛ばされた。

 私は華麗に着地した後、振り返り無惨な姿になった悪魔を確認した後、憂鬱につぶやいたのだった。

 

 「悪魔をすぐに倒せたのはいいけど……服も髪も血でベチャベチャだ……。」

 

 私はため息をついた後、スタッフさんやデビリーランドの専属デビルハンター達に悪魔を討伐したことを伝え、シャワーと替えの服を頂くことにした。

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