転生したので、偽マキマさんはデンジ君を推します   作:フィークス2号

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33話 昼休憩

 

 

 東京都内の公園にて、早川アキはタバコ休憩を終えた。そしてその吸い殻とタバコの空箱を捨てて、椅子に座りながらソフトクリームを食べる天使の悪魔を一瞥して言った。

 

「休憩は終わりだ、それを食い終わったらパトロールに行くぞ。」

 

 「ええ〜。早くない?パトロール再開するなら、君もこのアイス食べてからにしてみれば?美味しいよ?」

 

 天使はすぐ隣のアイスクリーム屋台を指差しながら、アキに勧めた。

 

 「銃の悪魔の場所や外国との関係、その他諸々の情報が揃った。

 それでもうすぐ銃の悪魔の討伐の遠征がある。それに参加する為に俺はもっと悪魔を倒した実績が欲しいんだ、バディになったなら協力してくれ。」

 

 それを聞いて天使は軽くため息をつきながら言った。

 

 「わかったよ、全く真面目なんだから……。あと3分だけ待ってよ、それだけあればちゃんと食べ切るから。あむっ。」

 

 そう言うと天使はソフトクリームを食べ切り、アキと共にパトロールに戻った。

 

 パワーと違い素直に言うことを聞き、協力的な天使の悪魔。アキは内心で戸惑いつつも、共にパトロールを続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「皆さん安心してください!もう大丈夫です!」

 

 天使は大声で周りに叫んだ。

 

 「悪魔は処理しました!皆さんは血や肉に触らないようお願いします!」

 

 続いてアキが周りの野次馬に大声で呼びかけて、注意を喚起する。

 

 「けほっ、けほっ……大声出したから喉が痛い……。あ、そこの人!近づかないでください!」

 

 天使の悪魔は喉を痛めながらも必死に声を出して、周りの野次馬に指示を出し続ける。

 

 「おい天使、こっち来い。怪我人だ」

 

 「……」

 

 アキに呼ばれた天使の目に映ったのは、重傷を負った民間のデビルハンターだった。

 悪魔に食われ下半身を失ったが、まだ微かに息がある。

 

 

 「……て……s……て」

 

 消えるようなか細い声で生存者のデビルハンターは呻く。

 

 「あ、ああ大丈夫だ!もうすぐ救急隊も来る!だから……」

 

 「テ……コ……ロ……シテ」

 

 「……………」

 

 だが生存者のデビルハンターは助けなど求めていなかった。ただ苦痛から逃れる為に自ら死を望んでいたのだ。

 

「天使、お前の力なら楽に殺せるだろ。死なせてやってくれ。」

 

 「……………」

 

 「天使?」

 

 黙りこくる天使の悪魔に対して、アキは声をかける。

 

 「嫌に決まってるだろ……死ぬなら僕の目の届かない場所にしろ!」

 

 そう言うと天使は自らの右腕に巻かれたチェーンのブレスレットを解き、瀕死のデビルハンターに巻き付けた。

 

 「天使……一体何を?」

 

 「マキマの力を使う……。マキマは永遠の悪魔の力を使えるから、この鎖を通して間接的に永遠の悪魔の力を僕も使えるんだ。

 効率は悪いけど命に別状がないところまで回復させることはできるはずだ。」

 

 天使の悪魔が言った通りに、民間デビルハンターの傷はゆっくりと、だが徐々に徐々に癒えていった。

 

 「あ、今の僕には触れないでね。普段はマキマの力が僕を抑えてるけど、今はこいつを救うのにその力を使ってるから。

 だから触れたら寿命を吸われるからね。」

 

 「ああ、わかった。だが殺してやった方がそいつも楽なんじゃないか?すごい苦しそうだぞ?」

 

 「……そう思うなら君が殺してやりなよ、僕はごめんだ。

 罪のない人を殺した手で、みんなに触れる気になんて僕にはなれないよ。」

 

 「……そうか。それじゃあ俺は救急隊を呼んでくる。

 ……そいつを救い終わったあと、パトロールはどうする?マキマの鎖なしでもお前はやれるか?」

 

 アキの問いに天使は答える。

 

 「うん、一応できるよ。マキマと会う前はずっと鎖なしでやってたからね。」

 

 アキはその答えを聞くと、救急隊を呼ぶ為に電話を借りにいったのだった。

 先ほど天使と話した時に得た、デンジが殺したはずの永遠の悪魔の力をマキマが使える……という重要な情報を心に刻みながら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 デンジは悩んでいた。デンジは自分がマキマに惚れていると自覚していたし、そのマキマも自分に対して明確な好意を向けてくれていることを認識していた。

 それでも……それでも心が揺らぐのだ。もっとレゼと話したい、もっとレゼと会いたい、そう思ってしまい、もう6日連続でレゼの店に来てしまっている。まるでマキマを裏切っているような感覚に陥っていた。

 そして今日も……今日もまた、レゼの店に来ていた。

 

 「だけど、今日はいつもと違うぜ!」

 

 そしてデンジは勢いよく店の扉を開けて中に入った。

 

 「あ、デンジ君いらっしゃーい!あれ?今日は一人じゃないの?」

 

 「わぁ……なかなか雰囲気のいいお店ですね!」

 

 「どんな店を紹介されるのかと戦々恐々としていたが……案外普通の店だった。すまん、デンジ。」

 

 デンジは店に一人で来たのではなく、同僚であるコベニと荒井を連れてきていたのだ。

 

 (一人で飯を1週間連続で食いに来てるのは流石に変だ……。まるでレゼと密会してる感じになっちまう。

 でも一人じゃねえなら問題ねぇ!3人で行けば浮気になんねぇだろ!どうだ!)

 

 デンジは独特な考えで、自分がレゼの店を訪れることを正当化していた。

 もっとも、デンジはマキマとは付き合っておらず、レゼと会おうがなんの問題もないのだが……。

 

 「客が多い方がレゼも給料増えんだろ?コイツらは前話した同期のコベニと荒井だ。」

 

 「初めまして、レゼでーす!」

 

 「は、はい!」

 

 「……どうも」

 

 テンション高く挨拶をするレゼに対して、コベニと荒井は応対した。

 

 

 

 

 

 

 

 「しっかしデンジ君よく来るねぇ、友達まで連れて来ちゃって。1週間も連続で来るほど美味しくないでしょココ」

 

 「1週間も!?」

 

 「ず、随分と気に入ってるんだなデンジは」

 

 1週間連続で来ているという話を聞き、驚くコベニと荒井。

 

 「それでデンジ、ここの店のおすすめはなんなんだ?」

 

 「ん?全部うめぇよ?カレーもチャーハンもアイスも。

 あ、マスター。俺の注文はさっきの三つで。」

 

 「そうか、じゃあ俺はチャーハン大盛り一つで。」

 

 「あ、私はカレーライスでお願いします……」

 

 

 そして注文を終えた後、レゼは声をかけた。

 

 「いやー、キミたちがデンジ君のお友達かぁ。話はいろいろ聞いてるよ。デンジ君って普段どんなことしてるの?」

 

 「おいレゼ、お前勉強中だろ。俺たちと駄弁ってていいのかよ?」

 

 「そういうキミは学校に行ってないだろ〜?そっちの方がヤバイと思いますけど。」

 

 「言われてみれば……デンジはまだ16歳だったな……。」

 

 「デンジ君……。」

 

 16歳で同期の中で一番若いデンジが、義務教育すら受けられずにこの公安デビルハンターという職についている。

 その事実を思い出した荒井とコベニの間で暗い空気が流れた。

 しかしデンジは気にすることなく、朗らかに言った。

 

 「へ!残念だったなレゼ!まだ行ってねぇだけでこれから行くんだよ!

 そのための勉強も公安の仕事のうちに入ってんだぜ!」

 

 「……え?」

 

 その言葉を聞き、レゼは驚いたような顔をする。

 

 「そういえばそうだったな、デンジはマキマさんの計らいで勉強の時間があるんだったな。」

 

 「勉強できるって凄くいいことですからね。……私と家族の学費とか、マキマさん出してくれないかなぁ」

 

 「ねぇ……それってほんと?勉強ってどんな感じなの?」

 

 レゼはデンジの勉強について興味を示して尋ねた。

 

 「どんなって……普通のだと思うぜ?国語とか算数とか、あと英語とか社会もやらされてんな。

 そんなかじゃあ、やっぱ算数が一番得意だな!金の計算とかでいろいろ頭使ってたし慣れてっからよぉ。逆に英語はさっぱりだ。」

 

 「へー、そうなんだぁ……。じゃあこれは読める?」

 

 そういうとレゼは自分のノートに金玉と書いた。

 

 「ちょ!」

 

 「え!?え?え!??」

 

 「キンタマ!へへ、この文字だけは勉強する前から知ってたぜ!

 しかも俺もっとすげぇの書けるぜ!」

 

 そう言うとデンジはゆっくりと時間をかけて睾丸と書いた。

 

 「ハハハ!こうがん!デンジ君凄いね!」

 

 「うう……なんでご飯食べにきてこんなの見せられなきゃいけないの……。」

 

 「二人とも!もっと恥じらいを持ってくれ!」

 

 「いいじゃねえか荒井。真面目に勉強してんだからよぉ。しかしやっぱレゼと話してると楽しいなぁ。

 もし学校行くならレゼと同じとこがいいかな……。楽しそうだし。」

 

 そうデンジが呟くと、レゼはデンジを見つめて微笑んだ後、耳打ちして言った。

 

 「ふうん、そっかあ。じゃあ一足先に行っちゃいますか?学校?」

 

 「……え?」

 

 デンジはレゼを見つめ直した後、静かに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「デンジ君たちなんの話を?」

 

 「はい!カレーライスお待たせ!」

 

 「ああ!いいタイミングだ!さぁコベニちゃんお昼にしようか。デンジたちはなんか大事な秘密の話があるみたいだしな、うん。」

 

 「今日は特別サービスだよ、特別にタダでお代わりしていいからね!」

 

 「え、本当ですか!?うわぁ!ありがとうございます!」

 

 そんな二人の密談をデートの約束と捉えた荒井とマスターは、気を遣いコベニの意識を逸らすことに精を出したのだった……。

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