転生したので、偽マキマさんはデンジ君を推します 作:フィークス2号
レゼは真夜中にデンジと学校を訪れていた。
……学校。それはデンジにとって憧れの場所であったが、レゼにとっても同様だった。
「レゼ、この機械ってなんだ?」
「ああ、それは黒板消し掃除機だよ。」
レゼはそう言った後に、使ったこともない道具の説明をする。今日デンジに学校について説明した話は、どれも日本の女子高生という設定のために仕入れた知識だ。
どれも実際に体験したわけではない。
それでも楽しそうに話を聞くデンジと話していると、まるで自分が本当に学校に通ってるような、そんな夢のような気分になった。
「やっぱり、俺どうせ通うなら、レゼと同じ学校がいいなぁ。
しらねぇことはレゼが教えてくれるし、一緒にいると楽しいしよ。」
「私もデンジ君がうちの学校に来てくれるならいいなあ。その時はよろしく」
「そういえばレゼはよぉ、いつもバイトしてるけど遊んだりしないのか?」
「うーん。今度の祭の日とか、休み取ろうと思ってるんだけどね。
あー!一緒に祭りに行って奢ってくれる人居ないかなー!チラッ?チラチラ?」
「ちょ、俺に奢らせる気かよぉ〜?」
「あははは!冗談冗談!無理に奢らせる気なんてないよ。あ!奢ってくれるなら大歓迎ですよデンジ様!」
「全く、調子いいなぁレゼは。」
まるで同学年の友達同士でやるようなやり取り、これは全て演技のはずだった。しかし……レゼはデンジとのやりとりに、どこか暖かいものを感じていたのだった。
「デンジ君お待たせー!……て、またいつもの公安スーツ?変わらないねぇ。」
「そういうレゼもいつもの服じゃねーかよ」
「だってこの服着やすいんだもーん」
祭の日、レゼとデンジは待ち合わせ通りの場所で出会い、ともに祭りを楽しむ事にした。
祭りには様々な店があった。
「私田舎出身でさ……。ほーんとうになんにもない田舎で。こんな祭りも初めてだから、上手くエスコートできないかも。」
レゼは自分が祭りについて無知な理由として、以前から説明していた田舎出身という作り話を用いて説明した。
「大丈夫大丈夫、俺だってはじめてだからよぉ。知らないもん同士、祭りをたのしもーぜ!」
明るい笑顔でいうデンジ……嘘をついているという事実が、またレゼの心を傷つけた……。
「うおー!あの綿飴とかめっちゃ量あるじゃんと思ったのに、もう無くなっちまったぁ!?」
「詐欺じゃん!でも美味しかったから許す!」
「チョコバナナうめぇぇぇぇ!おかわり!」
「本当だ……こんなに美味しいお菓子はじめてかも……あむ!」
「金魚すくいで全部とって、うめぇたい焼き作りまくるぞオラ!」
「デンジ君、多分金魚すくってもたい焼きにはならないと思うよ?」
楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、ついに運命の時間がやってきた。
『レゼは夏休みで自由な時間がある女子高生』、という設定でデンジに接触を図った。
もし夏休みが明けたら? 学校に席がないことがバレて怪しまれるのは必然。
もう時間がないのだ。だが……デンジと過ごした時間はとても心地が良いもので、レゼの心を鈍らせるのには十分すぎるものだった。
レゼはデンジを殺すのがいやで……成功率の低い、低すぎる説得で解決しようとした。
その為にデンジを人目につかない離れた山の、マル秘スポットに連れて行ったのだった。
「ねぇデンジ君」
「ん?」
「色々考えたんだけどさ、デンジ君の状況おかしいよ」
昔の自分に対して、誰かに言って欲しかったセリフをそのまま言う。
「16歳で学校にも行かせないで悪魔と殺し合わせるなんて……。
そのうち学校に行けるようにするって言われてるらしいけど、それも本当だか分かんないし、信頼できないよ。デンジ君は本当にその言葉を信じてるの?」
レゼはデンジの手を取り迫って言った。
「仕事辞めて……私と一緒に逃げない?」
「私がデンジ君を幸せにしてあげる、一生守ってあげる……お願い」
デンジに対してレゼは多くの嘘をついた。だけどこの覚悟だけは……本物だった。
「……わリィ、レゼ。おれ……この仕事続けてぇんだ。だから逃げるのは無理だ。」
だがしかし、デンジは断った。
「最近仕事が認められてきて、監視だって無くなったし。
周りの奴らとも馴染んで来てよぉ……楽しくやれるようになってきたんだ。
ここでこの仕事を続けながら、レゼと……会うんじゃダメなの?」
そして……沈黙が場所を包んだ。
「そっかわかった。デンジ君は私の他に好きな人がいるでしょ?」
「え?」
そして花火が打ち上げられたと同時にレゼはデンジにキスをして……デンジの舌を噛み切った。
「勝負有り!」
「ぐうう……ご指導ありがとうございました!」
「ありがとうございました。」
公安対魔2課の訓練施設にて、早川アキは2課のデビルハンターと手合わせを行い、一方的な実力差で勝利していた。
「アキぃ〜。わざわざ来てもらってすまないな。」
「野茂さんの頼みは断れません。」
「おおそうか?だったら2課に戻ってこい。他の特異課は血生臭い話もちょいちょい聞くしよ。
順当にいけば5年後、俺が副隊長だ。そうなったら本気で誘うからな。」
「ありがとうございます。それまでに俺が銃野郎を殺せて辞めてなければ、考えますよ。」
「お前あの作戦で活躍したから、調子乗ってんなぁ?このこの〜!
ところでそこの天使……だったか?お前も一戦手合わせしないか?」
急に振られた天使はダルそうな顔で言った。
「ええ〜。バディが二人とも模擬戦でヘトヘトとかヤバいんで止めときます。」
「天使安心しろ。俺は余裕だ」
「だってよ!」
「さっき手合わせした人に可哀想だと思わないのねぇ!?」
「い、いえ。自分の実力不足は事実なんで……。」
先ほどのデビルハンターが、申し訳なさそうにいう。
「畜生!君ももっと頑張れよ!疲弊させろよ!」
そんな愉快なやり取りを繰り広げていると、他の職員が訓練室に駆け込んできた。
「早川さん!来てください!特異課の人が大変な事に!」
その職員の声を聞いた早川と天使は、大急ぎで走り出した。
「そろそろか、緊張するなぁ……。また痛いんだろうなぁ。」
公安の悪魔収容施設にて、私は緊張しながらその時が来るのを待っていた。
そう、私が恐れながら待っているのは、対魔2課とレゼの戦闘で生じる、2課職員のダメージの肩代わりの瞬間だ。
市民の被害を支配の力で防ぐことはできても、デンジ君が逃げるまでの間、2課の職員には戦ってもらう必要がある。
だが相手は爆弾の武器人間であるレゼだ。当然やりあえばタダじゃ済まないだろうし、原作では強者たちがバンバン死んでいた。
なのでこうして、前回のサムライソード達による特異課襲撃事件の時のように、ダメージを肩代わりする事にしたのだ。
「そんなに嫌なら、最初からとっ捕まえておけば良かったんじゃないか?」
私が待機する部屋に入ってきた岸辺先生が私の独り言を聞いたようで、それに答えながら近づく。
「あ、岸辺先生。いえ、現段階だとレゼちゃんは特に問題を起こしてないので、この状態だと引き込むには弱いんですよ。
それに問題を起こさせて、ソ連側にレゼちゃんを切り捨てさせる事で、こちらに安心して引き込めるようにする狙いもあります。
私としては司法取引として、罪をチャラにして普通の生活を送れるようにする代わりに、公安に貢献するというストーリーで行きたいので。
それとここで初手で潰してしまうと、デンジ君も2課も経験を積むことができないので……。」
「デンジはともかく2課に経験を積ませる必要あるか?徒に苦しめて退職者出すだけだと思うが……。」
岸辺先生は優しいから、2課の人たちが死なないとはいえ、戦闘で負傷するのが嫌なのだろう。
ちょいちょい岸辺先生の優しさが滲み出ている。やっぱり教え子は可愛いんだろうなぁ……。その優しさを私にもプリーズ。
「近いうちに銃の悪魔の討伐作戦がありますからね、どのような形になるか、まだ予想しかできていない状態です。しかし討伐作戦が長引いた際、その時は2課をはじめとする対魔課の皆さんには、不在となるだろう特異課の穴埋めをしてもらう必要がありますから。
退職者が出たとしても、経験を積ませて質を上げるのは必要だと思います。」
「銃の悪魔討伐ね……。銃の悪魔強奪とは言わないんだな。」
岸辺先生はもう、銃の悪魔が米中ソの3カ国に分割して保有されていることを知っている。だからこんな言い方になるのだろう。
だがしかし! 私は銃の悪魔を強奪で済ませる気はない!
「ええ、しっかりと討伐するつもりです!政府としては是が非でも確保したいでしょうが、それでも米中ソが銃の悪魔を喪失して、銃の悪魔討伐国という名誉を得るだけでも十分満足します。
そこを利用して、銃の悪魔を独断でぶっ殺して『確保するつもりだったが、難しくて討伐に切り変えた』と言い訳して済ませる予定です。
銃の悪魔が生きているのは、公安として……いえ私としては許容出来ないです。やっぱり仲間のことを考えますとね。」
「……そうか。まぁ、その判断は妥当だろう。銃の悪魔を生かしておきたくないのは、デビルハンターやってるやつなら納得できる。
しかしマキマ、お前が政府に堂々と逆らう宣言するとはな。意外だったな。」
あ、やばい!?もしかして岸辺先生キレてらっしゃる!?今まで岸辺先生が怖くて、必死に従順な悪魔ムーブしてたからなぁ。
やばいかも……。てかガチでやばいかも!?
「あ、あの、これは、その、逆らうとかそういうんじゃなくてぇ……その、その、ご、ごめんなさい!違うんです!違うんです!
仕方ないじゃないですか!みんな銃の悪魔殺したがってるのに!殺したくてこの仕事続けてるのに!そんなみんなの期待を裏切って、銃の悪魔生かし続けますって、そんなのダメじゃないですか!そうですよね岸辺先生!?」
私はパニックを起こしたコベニちゃん並みのどもりで、岸辺先生を必死に説得した。
「そんなに慌てるな。銃の悪魔を殺すという判断や、お偉いさんに逆らう事に不満なわけじゃない。
ただ珍しいと思っただけだ。今まで割と従順な悪魔のように振る舞ってたからな。」
いつも無表情だった岸辺先生が、何故か少し笑顔を浮かべたような気がした。
「あ!レゼちゃんがデンジ君とキスした!あああああああああ!
おあああああああああ!今度はした噛み切ったァァァァ!
あ!あ!あ!あ!うお!ビーム君ナイス!ナイスううう!
……あ、岸辺先生すいません。この後私は爆弾で吹っ飛ばされて大変な事になるので、退室していただいた方がいいと思います。」
「……ああ。わかった、それじゃあ頑張れよ。」
叫び出した私を、今度は可哀想なものを見る目で見つめた後、岸辺先生は静かに退出した。