転生したので、偽マキマさんはデンジ君を推します 作:フィークス2号
砂浜に波がうち、東から太陽が昇る。見事な夜明けだった。
レゼはデンジとの戦いの後、敗北して死んだ……。しかし、デンジが血を分けたことで蘇ったのだ。
「信じられない……どうして私を蘇らせたの?」
レゼはデンジに尋ねる。
「俺は素晴らしき日々を送ってる。何回もボコボコにされてひどい目にあって死んでも、次の日ウマイもん食えりゃそれで帳消しにできる。
でも……ここでレゼを公安に引き渡したら、なんか……魚の骨がノドに突っかかる気がする。
素晴らしき日々を送っていても、ノドん奥がチクッとなりゃ最悪だ。」
「今私に殺されても同じこと言える?」
「殺されるなら美人にってのが俺の座右の銘!」
それを聞いた後レゼは爆笑してから、冷たく言い放った。
「もしかして……私がまだキミを本気で好きだと思っているの?
キミにあってからの表情も頬を赤らめたのも全部嘘だよ。訓練で身につけたもの。
私は失敗した、キミと戦うのに時間をかけすぎた。それじゃあ私は逃げるから。」
そう言って離れていくレゼに対して、デンジは声をかけた。
「なあ?レゼも公安にこねぇか?」
「は?」
「公安ってさ、悪魔や魔人とか、俺みたいな武器人間も雇ってんだしさ。レゼの一人くらい雇えんじゃねーかなって思うんだよ。
幸い今回死んだやつは出てねーし、行けんじゃねーかと思うんだけどよ。」
「バカなの?2課の人たちを吹っ飛ばしたの忘れたの?」
レゼは呆れた表情で言う。
「でもよぉ、2課の連中もやり返してたし、マキマさんの力で死んでねぇんだろ?だったらなんとかなるんじゃね?」
「なんとかって?」
「なんとかは……なんとかだよ!マキマさんに頼み込むとか……。」
マキマの単語、それを2度も聞かされたレゼは顔を一瞬顰めた後、デンジに近づいて……首の関節を外して動けなくしてその場を離れた。
「レゼ!……なぁ!レゼ!今日の昼……あのカフェで待ってるから!」
デンジの声に背を向けながらレゼは去っていった。
カフェに向かう道、その道をゆっくりゆっくりとレゼは歩く。デンジが待っているカフェに行くためだ。
駅を出て、デンジと出会った公衆電話を過ぎ去り、階段を上り、ついにすぐ近くの路地裏にでやってきた。
そして路地裏の真ん中まで来て……レゼは葛藤した。
本当に私は行くべきなのだろうか?私が行ったら迷惑がかからないだろうか?
デンジは学校に通えるようになると言っていた。自分と違って、デンジの周りの環境は恵まれている。部分的に似通っているところはある。しかし、デンジの周りの人を見ればわかる。
彼はモルモットのように扱われていない、彼は周りから人として扱われている。自分とは住む世界が違うのだ。自分がいても迷惑なだけじゃないか?あんな大暴れをした自分がいてもデンジの負担になるだけじゃないか?
そう考えてレゼは最後の最後で引き返そうとした。
「行かないの?」
……そして振り返るとそこには赤髪の女が、マキマがいた。
レゼは驚きつつも後ろに下がり、首のピンに手を掛け戦闘準備を整えた。
「待って待って!レゼちゃんをどうこうするつもりはないよ。ただ……デンジくんのところに行かないのか気になって。」
マキマは大袈裟に両手を上げて、敵対の意思はないというジェスチャーを行った。
「何が望み?」
「……望みってほどのものもないけど。強いていうなら、レゼちゃんが公安に入る事とかかな?」
「……なるほど。話が読めてきた。デンジ君が公安を辞めれる云々の話。その後釜に私を添えるつもりだったってわけか。」
「え?違う違う違う!そんなこと考えてないよ、デンジ君が辞める頃にはレゼちゃんも辞めれるようにする予定だから……。レゼちゃんが続けたいなら別にウチで仕事しても構わないけど」
まるで本当に大慌てしているような身振り手振りと表情で、マキマは話を続ける。実際、マキマは大慌てしているのだが……。
「……あなた、何を考えているの?」
「うーん、デンジ君とレゼちゃんが付き合わない程度に仲良く公安やってほしいなーって。私もデンジ君と付き合いたいし。
あー、でもデンジ君がレゼちゃん選ぶ時は諦めるけどね。」
「……本当に訳わかんない。あなた、デンジ君と付き合いたいってことは好きなんじゃないの?」
レゼは怪訝そうに尋ねる。
「うん、好きだよ。私はデンジ君が大好きで、恋してて……でもそれ以上にデンジ君を愛してるんだ。私はデンジ君に幸せになってほしいんだ。」
マキマはレゼに微笑んだ。
そしてその後、レゼはデンジの待つカフェに行き二人で話し合い……。レゼが公安に入ることが決まった。
オペレーション・ブレイヴニューワールドから数日後。早川アキはデビルハンター本部にある、マキマの執務室へと向かっていた。
その理由は一つ、マキマを問いただすためである。
早川アキはマキマの執務室のドアの前に立ち、ドアをノックした。
「ん?どうぞー」
中からマキマの機嫌の良さそうな声が返ってくる。アキは決意してドアを開けた。
「あ、アキ君!珍しいね、アキ君がこの部屋に来るなんて。」
「ええ、ちょっとあんたに聞きたいことがあってな。銃の悪魔について、あんた何か隠してないか?」
「銃の悪魔……確かに機密の上で隠してる情報はたくさんあるけど。」
「じゃあ質問を変えよう。デンジについて……チェンソーマンとやらについて、詳しく話してくれ。
新しく入ったレゼと戦った時、ビームが漏らしていた。『ボムが来る、銃の悪魔の仲間』ってな。」
アキの言葉を聞いたマキマは、表情が固まった。
「マキマ。デンジの心臓、ポチタは……チェンソーマンは昔銃の悪魔と戦ったんじゃないか?
少なくとも何か情報をあんたは持っているはずだ!なんで隠していたんだ!実際にあんたが口止めしていたビームは情報を持っていた!銃の悪魔が爆弾の悪魔の仲間だったって!」
アキは声を荒げながらマキマに問い詰める。それに対してマキマは静かに返した。
「確かにアキ君の予想は部分的にはあってるよ。ポチタは……チェンソーマンは銃の悪魔と戦った。その時におそらく爆弾の悪魔とも戦ったみたいだね。」
一呼吸置いてから、マキマは口を開いた。
「アキ君、チェンソーマンについて話さなかったのには理由があるんだ。
チェンソーマンについての情報は、銃の悪魔討伐の際にノイズでしかないしね。」
マキマは淡々と語りながら、続きを言った。
「ねぇ、アキ君。クラカチットって知ってる?」
「……いえ、知りません」
「クラカチットってのはカレル・チャペックという人が1922年に描いた小説の名前で、その小説に出てくる爆弾の名前でもあるんだ。
その爆弾はとんでもない力を持った爆弾で、小瓶一つの量のクラカチットで家を完全に破壊できる。ダイナマイトなんて比べ物にならない威力で、量によっては東京だって木っ端微塵にできてしまう爆弾なんだ。」
「あくまで小説の中での話でしょ?現実にはそんな爆弾なんて存在しません。……そのクラカチットがどうしたんですか?」
「チェンソーマンは、そんなクラカチットのような超すごい爆弾とも関係がある。
もしかしたら、チェンソーマンが望むのならそんな恐ろしい爆弾。そのクラカチットが現実のものになるかもしれないんだ。」
「は?」
途方もない威力の爆弾、それが現実のものになると聞いて、アキは思わず驚きの声を漏らした。
「考えてごらん?そんな爆弾が存在したらどんな悪魔が生まれるか。それは銃の悪魔なんて比較にならない悪魔が生まれる。
いや、クラカチットの悪魔なんて必要ない。その爆弾を人類が量産して、世界を2度滅ぼしてもお釣りが来るくらい作り始める可能性だってある。敵対国に備える為にね。そして万が一そのクラカチットを使って戦争が起きたら?世界は滅ぶよ」
マキマの言葉、それをアキは静かに聴きそして少しの間をおいて答えた。
「そんなことになるとは思えません。人類は学んだ。人類が最後に戦争をしたのはもう80年も前です。世界大戦を最後に人は戦争をやめました。
クラカチットがこの世に生まれても、戦争が起きないのであれば問題ないでしょう。」
部屋の中で沈黙が流れた。そしてマキマは笑うように、何かを嗤うように微笑みながら言った。
「うん、そうだね。人類は第一次世界大戦の後に戦争をやめたね。」
「第一次?」
「ごめん、今のは間違い。でも戦争をしないとしても……だ。ソ連がデンジ君を狙ったように、他の国がクラカチットを手に入れようと、今回みたいに襲うかもしれない。
そしたら公安は身動きが取れなくなる。
チェンソーマンについての情報が出回ると、公安がそんな陰謀に巻き込まれて、銃の悪魔討伐どころじゃなくなると思った。だから私は、チェンソーマンの情報を秘匿したんだ。」
アキはそれを聞いて、不満そうな顔をしながらも言った。
「わかりました、銃の悪魔を殺す為に必要なこと。それが真実であるのならば、俺は受け入れます。
ただ最後に教えてください、その超すごい爆弾……クラカチットの悪魔は存在するんですか?」
「……存在した。今はしない。それが答えかな」
マキマは微笑みながら言った。