転生したので、偽マキマさんはデンジ君を推します 作:フィークス2号
昼の東京湾にある某港にて、港の職員達がある貨物船の確認をしていた。
「しっかしこの船は……何だ?予定だとこんな貨物船が来る予定はなかった筈だが。」
外国との交易を行う貨物船に、予定にない船があったのだ。不審に思った港側は、確認のために職員を派遣したのだ。
「もしかしたら悪魔が化けた、貨物船の悪魔とか」
「だったらとっくのとうに、この船の乗組員も殺されてると思うぜ?」
そう言いながら職員の一人が貨物船のコンテナを開けると……。
ダダダダダダダダダ!
「「「う、うわぁぁぁぁぁ!」」」
中から大量の人間、いやサンタクロースが作った人形が一斉に飛び出して、職員達に掴み掛かった。
「ぐ、グギィぃぃ!!?」
そして悪魔の能力が発動して……港の職員達は人形に変えられたのだった。
同時刻 東京デビルハンター本部
マキマの執務室に一人の男がノックもせずに駆け込んだ。その男は息を切らしながらも、大声で部屋の主人、マキマに報告した。
「マキマさん!大変です!東京湾の港が襲撃されました!人形の悪魔の力を用いた襲撃……サンタクロースによる襲撃です!」
「月本さん連絡ありがとう……。ついに来たか。
特異2課3課を港に回して、対魔1課と2課は特異2.3課の撤退ができるように、その周りで防衛ラインを構築。一部の人外職員も人形の殲滅に参加させて。
特異1課と4課、地方公安のみんなは引き続きデンジ君の護衛を。
そしてデンジ君達は民間人が避難する時間を稼ぐために、近辺に留まって人形達を引き付けて貰って。心苦しいけど民間人への被害を抑えなきゃいけない。難しいかもしれないけど、公安のみんなが人形を抑えてるから、デンジ君のところまで行く人形は数が限られるはず……!」
「はい!わかりました!ところでマキマさんはどうなされますか?」
月本に尋ねられたマキマは答える。
「私は……クァンシさんの足止めをする。どれくらいやれるかわからないけどね。
おっと、その前にちゃんと作戦開始の合図と演説をしなきゃ。」
マキマはそう言うと備え付けの無線機を用いて、演説を始めた。
そして、無線越しに公安のデビルハンター達に向けてマキマの演説が流れた。
「我々が過ごした暖かくも優しき日々、それは今過ぎ去ろうとしています。
それは避けることができず、あまりにも残酷な真実で、過酷な現実です。
我々に対して外国からの魔の手が迫り、その手によってわが国を照らす光が遮られ、冬が来るのです。
その手はあまりにも大きく、我ら公安の全てを闇に包み、全ての終わりだと思わせるには充分すぎるほどです。
そして一度……その手が全力で振り下ろされれば、我々公安は叩き潰されるでしょう。跡形もなく、無残に、まるで虫ケラのように。
そんな巨大な魔の手に対して最も、堅実で容易な対処法があります。それは逃げる事です。
我々公安デビルハンターは強力です、私が認めましょう。
現在の公安デビルハンターは精鋭です、歴史が認めましょう。
客観的に見て公安デビルハンターは圧倒的な存在です、世界が認めましょう。
故に……我ら公安デビルハンターはその気になればこの巨大な魔の手から、逃亡することができるでしょう。
一度この場を離れ、実力をつけ、それから改めて挑む。それが最適解でしょう。
……ですが、我々にはそれは許されません。
何故なら、この場にいるのは我々だけではないからです。
この場には大勢の市民がいます。彼らは我らとは違い、脅威に対抗するべく生きているのではありません。
彼らは、彼ら自身の幸福を……彼らが幸せに生きてほしいと願う、自分以外の全ての人々の幸福を、それらを支えるために生きているのです。
彼らは守られるべき存在なのです。
では私たちは?私たちはそんな彼らを守るべき存在です。それが存在意義であり、目的であり、使命です。
我々には脅威からの逃走は許されません。許されるのは脅威との闘争だけです。
民間人の保護と悪魔の討伐……この二つを天秤にかけた時、どちらを選ぶか?我々公安に選択肢はありません。最初から決まっているのです。この公安という組織は、人を守るためにあるのだから。
認めましょう、この脅威と向き合うことはとてつもない困難であると。
ですが、我々がこの脅威に屈服することは、誇りが、義務が、正義が、そして……我ら自身が許しません。
故に絶望的であろうと、どれだけ過酷だろうと、この脅威という寒さに対して我々は抗い、そして勝利を勝ち取らなくてはいけないのです。
さあ……抗いましょう。敵に……恐怖に……運命に……そしてこの逃れられない闇がもたらす寒さに……。
『オペレーション・フロストパンク』開始!」
演説を終えると、マキマは無線機の通信を切り、椅子から立ち上がった。
「それじゃあ月本さん。行ってくるね」
「はい!頑張ってください!」
マキマは月本に見送られながら、その場を後にした。
路地裏にて、スーツを着た公安のデビルハンター達が、大通りにいる避難する人々を眺めていた。
「しかし圧巻ですね……これだけの大人数が避難する姿は。」
「これもマキマさんの能力らしい。新人の爆弾の武器人間が暴れた時も、こうして避難させてたんだと。」
公安デビルハンター達の目には、まるでロボットのように、静かに整然と移動する民間人の姿が映っていた。
「しかしあまりにも静かで、不気味ですね。本来の悪魔からの避難はもっとパニックになるはずなのに。まさかもう人形になってるとか……。」
「それは無い。特異課が引いて前線が下がったらしいが、それでもまだ突破されるに早すぎる。
それでも信じられないなら市民に触ってみればいい。人形にならないからそれでわかるぞ?」
「その確かめ方、嫌すぎますよ!」
男達が雑談をしていると、後ろから魔人を引き連れた眼帯の女、クァンシが近づいてきた。
「小姐们!一如往常,请妳们处理 剩莱剩饭了(お嬢さん方!いつも通りに、残ったのを頼むよ。)」
「魔人が複数……。」
「サンタの仲間か?」
「いや違う!こいつはクァンシだ!マキマさんが言ってた岸辺先生の元バディだ!」
キィィィィン!
クァンシが剣を抜き構え、それに対抗してリーダー格の公安デビルハンターも構える。
しかしその実力差は天と地ほどの差があった。クァンシは目にも止まらぬ速さで切り掛かり、デビルハンター達を斬り殺そうとした……その瞬間だった。
ガギイイィィン!
「ほう?」
「へ?」
「あ?」
「嘘……クァンシ様の剣が止められた!?」
どこからともなく悪魔の力を使い、現れたマキマが鎖でクァンシの剣を防いだのだ。
「お前がマキマか……まさか直々に来るとはな……。」
マキマを見つめながらクァンシが呟く。
「ええ、そうでもしないと仲間を守れませんからね。さぁ……クァンシさん。勝負です!」
マキマは鎖を両手に巻き、ファイティングポーズを構えながら言った。