転生したので、偽マキマさんはデンジ君を推します 作:フィークス2号
「な……何が起きた!?」
先ほどまで戦おうとしていた白髪眼帯のデビルハンター、クァンシ。その女は何故か急に現れた東京公安対魔特異4課のマキマと相対していた。
「地方公安のみんな……一旦離れて岸辺先生と合流して。
クァンシさんとこの魔人達は強いから、私に任せて欲しい。」
マキマはいつになく真面目な口調で言った。その雰囲気に圧倒されて、地方公安のデビルハンター達はその場から離れた。
「わざわざ仲間を逃して、自分が不利になりに行くなんて頭おかしいんじゃ無いの?」
「ハロウィン!」
「馬鹿?」
ピンツィは呆れた顔をしながら言い、コスモとロンもそれに続いて言う。
「いや、賢明な判断だ。あいつらは足手纏い以上の何者でも無いし、1秒も持たない連中だからな。
おそらく私以外の他の刺客対策に集めた人員だったんだろう。
だとしても……弱すぎるけど。」
「御名答、人形対策に集めた人員だったんだけどね……まさかクァンシさんに当たっちゃうとは。
悪いけど、彼らは見逃してあげてほしいな。」
「ああ構わない、お代はデンノコの心臓で結構だ!」
そう言うとクァンシは剣を振るい、マキマに斬りかかった。
ヤバイヤバイヤバイヤバイ!
私はめちゃくちゃ焦っていた。何故ならあの全盛期の岸辺先生バディを務めていた、あのクァンシさんと戦っているからだ。
余裕そうに振る舞ってた?あれは演技だ!あからさまに怖がる素振りをみせると、敵が調子に乗ってますます不利になってしまう。私がデビルハンターをやって学んだことの一つだ。
多少はクァンシさんとの戦いについていけてるけど、まだクァンシさんには武器人間に変身するという手も残ってるし、何なら4人の魔人が残っている。
乱戦状態になってるから、まだ魔人達は機を窺ってるけど、隙を見せて加勢に入られたらお終いだ。そう思いながら鎖でクァンシさんの剣を鎖で防ぎつつ、魔人の方に気を向けると……。
「見えた!」
レンズの魔人?と思われるピンツィが思いっきり私の分析をしていた。弱点がバレる!?ヤバさがました!?
私が不安に思っていると、ピンツィがヘナヘナとヘタレこみながら、怯えた声で言った。
「う……嘘?ありえない。そんな……そんなことが。
く、クァンシ様!逃げましょう!そいつやばいです!超越者ほどじゃ無いにしてもヤバいですよそいつ!」
ピンツィの声を聞いたクァンシさんは私に警戒して、距離を取る。
「あいつの契約してる悪魔がわかったのかピンツィ、あいつは何と契約してる?」
「し……してません。あいつは契約してるんじゃありません。あいつ自身が悪魔……あいつは悪魔です!」
「悪魔?」
「ハロウィン?」
「ま、予想はしてたが……。ピンツィ?」
ヘタレこんだピンツィはブルブルと震え始めた。あれか!支配の悪魔だから真マキマさんみたいな存在だと過大評価してくれてるのか!
なんか勘違いしてくれてるっぽいので、私は堂々と余裕を持った振る舞いをしながら、交渉のチャンスを引き出そうとする。
「あーあ。ばれちゃいましたか。どうです?取引といきませんか?
私の正体を黙ってて、公安に降ってくだされば、身の安全は保証しましょう。どうです?」
まず最初に尊大な要求をする。それを拒否られた後、徐々に徐々に要求を引き下げてお互いに納得できる条件まで持っていく。これが交渉の基本だ。
もちろんこんな要求を受け入れるわけがない、けれどまず最初にふっかけるくらいは許されるだろう。
「ふざけるな……死にたいのか?」
不機嫌な声でクァンシが言う。
あ!まずい!ダメだった!死にそう!ふっかけすぎた!
「ダメですクァンシ様!逆らっちゃまずいです呑みましょう!その提案を!」
あ!いけそう!頑張れピンツィ!せめてクァンシさんの怒りを抑えて!お願い!
私が澄ました顔をしながら、クァンシさん達を見つめていると、ピンツィが語り始めた。
「マキマは……あの女はやばい悪魔です!超越者には劣るとしても、その力は十分に強大……下手したら銃の悪魔なんかよりも強いかもしれません!」
銃の悪魔よりも!?私そんな強いと思われてんの!?過大評価されすぎな気が……。
そう思う私をほっといて、ピンツィは続ける。
「悪魔の格としてあいつはあまりにも強すぎます!最盛期の戦争や、飢餓、死にすらも並ぶほどの大物悪魔です!あんなの、公安の下っ端やってるなんて異常すぎます!何かがおかしい!訳わかんない!怖い怖いこわいこわいコワイ!」
なんかすっごくやばい悪魔と同格みたいな評価をピンツィちゃんからされてる。
あれかな、真マキマさんが言ってた四騎士云々のやつなのかな?
そして当のピンツィちゃんは超過大評価された私が公安職員やってることに頭の中で整合性を取ることができず、パニックに陥っているようだ。
「貴様……ピンツィに何をした」
静かに……されど怒気を孕んだ声で、 クァンシさんに尋ねられる。いや何もしてないけど……。
「何もしてませんよ。」
私は誠実に答える。
「シラを切るつもりか!」
誠実に答えたのに!酷い!
「クァンシ様、マキマは何もしてません。まだしてません。逃げるなら今です!何もしてない今こそがチャンスです!
あいつは……支配の悪魔です!」
「ハロウィン!?」
「支配!?」
「支配だと……!」
その言葉を聞いた途端、クァンシさん達の警戒度が一気に上がった。
そしてクァンシさんは刀を捨てて、眼帯を開けて矢を引っこ抜き……ボウガン(弓?)の武器人間へと変身した。
「お嬢さん方……作戦変更だ。この女から距離をとって離れなさい。コイツは……私がなんとかする。」
「み、む、無理です!腰が抜けました……。コスモ、おぶってぇ……。」
「ハロウィン!」
情けない声を上げるピンツィを、コスモが抱えて、魔人四人は裏路地から逃げ出し、その場には私と変身したクァンシさんが残された。
「……やれやれ。岸辺のやつもどうやってこんな支配の悪魔なんかを飼い慣らしたのか……。いや逆か?岸辺も飼い慣らされてるのか?どうなんだ?」
「私如きが岸辺先生を?無理に決まってるじゃないですか。先生が私如きに支配されるとお思いですか?」
とんでもないことをクァンシさんが言ってのける。冗談でも岸辺先生が支配されるとか、どんだけ岸辺先生が嫌いなの……。
「やれやれ、嘘か本当かわからないな。まぁ、岸辺がどうなってようがやることは一つ。お前を殺させてもらう。」
そう言うとクァンシさんは腕からボウガンを発射して、私に攻撃をし始めた。
私はそれを走って躱し、路地裏の壁を駆け上りながら銃の悪魔で牽制射撃を行い動きを封じる。そして勢いよく近づき拳を放つ!
「もらった!」
「甘い!」
しかしその拳はクァンシさんの腕のボウガンの矢尻によって防がれる。
手に鎖を巻きつけていなければ、こちらの腕が傷ついていた。あぶないあぶない。
「近接戦なら分があると思ったのか?マキマ。」
「さぁ?どうでしょうね。」
やばい!思考が読まれてる!そうだよ!銃の悪魔とか使い慣れてなくて、ステゴロと鎖を合わせた戦いが一番得意だから、そっちの方がマシだと思ったんだよ!
ああ……どうしよう!このまま時間稼ぎなんて出来るかなあ?
私がそんなことを思っていると、クァンシさんは跳び上がってから、下にいる私に向けて矢の雨を降らせた。
「効くか!」
私は鎖を大量に召喚して、それで傘を作り矢の雨を防いだ。
ズダダダダダ!
矢が鎖に刺さりまくり、けたたましい音がする。
そして私は鎖の傘を解除して、上を見上げる。
しかしそこにはクァンシさんの姿はなかった。右を見ても、左を見ても、前にも後ろにもいなかった……。
「…………………………?」
私は顎に手を当てて考える。
「…………………!」
そして私は気づいた。クァンシさんは私をガン無視してデンジ君を捕まえに行ったのだ。
「しまったあぁぁぁ!デンジくぅぅぅぅぅん!」
私は全力で走り、デンジ君の元に急いだのだった。
デンジ君の周りの護衛と連絡を取ろうしたが、おそらくサンタの襲撃で連絡が取れず途方に暮れた私は街を駆け巡っていた。
「デンジクゥゥゥゥン!どこおおおおおお!」
そしてついに見覚えのある人影を私は見つけた。
青い長髪に泣きぼくろが特徴的な、縦セーターの女性……ドイツのサンタクロースだった。
そしてそのサンタクロースは人形になった人を椅子にしながらつぶやいた。
「その代わりに地獄の悪魔よ、このデパートにいるすべての生物を地獄に招いてください。」
ああああああ!このままじゃデンジ君が地獄に送られちゃう!でもどうやって防げば?
防ぐ方法が思いつかない!南無さん!
「うおおおおおおおおおお!」
私は全力で走り、ショッピングモールにスライディングをかまして駆け込んで入った。
そして巨大な手にショッピングモールが包まれて……デパートにいたみんなは地獄へと送られた。