転生したので、偽マキマさんはデンジ君を推します   作:フィークス2号

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49話 ハグ

 

 

 

 

 

 「こちら第6部隊!急に黒い悪魔がやってきて、銃の魔人を殺して回り始めました!」

 

 「こちら第24部隊……なんか……助かりました。謎のチェンソーを生やした悪魔が助けてくれました。救援要請を撤回します。」

 

 「こちら第11部隊、デンジみたいなやつが助けに来たんですけど……。マキマさん、何したんですか?」

 

 次々と各部隊から、謎の悪魔に助けられたという旨の報告が入る。謎の悪魔の正体は無論チェンソーマンだ。

 

 「しかしものすごい勢いで銃の悪魔がやられていくな。

 これだったら最初からチェンソーマン頼みで良かったんじゃないか?」

 

 岸辺先生の問いに私は答える。

 

 「ハァ……ハァ……。いえ……私はチェンソーマンに嫌われてると思っていたので。」

 

 「何故だ?」

 

 「デンジ君達は……私がゾンビの悪魔を倒しに向かうその前日に、ヤクザに殺されかけました。結果ポチタはデンジ君の心臓になり各国から狙われる羽目に……。

 私はそんなデンジ君が世界に狙われても大丈夫なように、実力をつけるためにこの厳しい公安という組織に所属させました。

 その結果デンジ君は何度何度も傷つくことに……。なので彼を愛するポチタから、その原因になった私に対して、あまりいい感情を抱いていないと思ったんです。」

 

 「……まぁ、確かにあの年で公安に所属して世界の刺客から狙われるのは可哀想だが……。別に当人は気にしてないし、いいんじゃないか?

 それにそうなったのはお前のせいじゃないし、あいつは今幸せそうだ。

 チェンソーマンとかいう奴だって、お前がデンジの奴のために頑張ってることが分かるから、あんなフレンドリーな振る舞いをしたんだろう。」

 

 岸辺先生はそう温かい言葉をかけてくれた。私なりのデンジ君への思い遣り……それがポチタにも伝わっていた。だとしたら私を殺さないでいてくれたのにも納得がいく。

 

 そんな風に話している最中に、また新しい連絡が入った。

 

 「マキマさんですか!?大変です!先ほど暴れていた悪魔が……特異4課の武器人間、デンジ少年になりました!」

 

 いやチェンソーマンは元からデンジ君なんだけど……。いや違う!何かがおかしいぞ今の報告!

 

 「どういうことだ、第8部隊。詳しい情報をよこせ。」

 

 「はっ!えーと、先ほどまで黒いデンノコを生やした悪魔が暴れ回っていたのですが……。急に苦しみ始めたかと思うと、体の周りが溶け始めて少し縮んだかと思ったら、デンジ少年が変身した時のチェンソーの悪魔へと変貌しました!

 顔は赤いデンノコの姿ですし……ヴァンヴァン言ってるだけじゃなくて『オラァ!』とか言ってるので……。多分デンジ少年だと思います!」

 

 なんでそんなことに!?急にチェンソーマンからデンジ君になるなんて訳がわからない……。いや、もしかして!?

 

 私は死に体の体を無理やり動かしてデビルハンター本部と連絡を取った。

 

 「もしもし?……ゲホ!こちらマキマです。今テレビでチェンソーマンについて報道していませんか?」

 

 「マキマさん!?今戦ってる最中じゃあ……。ちょっとお待ちを……あ!

 大変です!今我々が銃の悪魔討伐をしていることが漏れてます!

 あとなんかデンジ君がチェンソーマンとかいうヒーローとして凄い持ち上げられています!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全世界のテレビ。報道されている内容はどれも同じ内容であった。

 

 

 「正義のヒーローチェンソーマン!彼は常に人を救うために戦いました……そんな彼が今!公安と協力して史上最悪の悪魔、銃の悪魔討伐のために戦っているのです!」

 

 「無敵のチェンソーマン!最強のチェンソーマン!圧倒的なチェンソーマン!チェンソーマン!」

 

 「チェンソーマン頑張れー!」

 

 「どうか銃の悪魔を倒してくれ!」

 

 「チェンソーマンはコウモリの悪魔を倒したんです!この目で見ました!」

 

 「爆弾の悪魔が街中で暴れ回った時、彼は勇敢にも立ち向かった!映像がそれを物語っている!

 わかるでしょ!?彼こそがヒーローなんですよ!」

 

 テレビではアナウンサーやインタビューを受けた市民、コメンテーターが各々チェンソーマンを持て囃していた。

 その報道がチェンソーマンへの好意を育み、チェンソーマンの強さの糧であった悪魔からの恐怖を打ち消しているのだ。

 

 

 「やっぱり……。報道でチェンソーマンを弱体化させてる!」

 

 報告を聞いた私は思わず漏らした。

 

 「なるほどな、悪魔は恐れられれば恐れられるほど強くなる。

 銃の悪魔を保有する各国に、チェンソーマンがいたら困る国。そこらへんが報道でチェンソーマンを褒め称えてるんだろう。

 日本はスパイ天国だ。メディアを裏から操作して報道させるくらいのことは容易いだろう。」

 

 岸辺先生が淡々と語る。外国のスパイ本当にやばいな、日本のメディアが完全に乗っ取られてるとは……。

 私がそんな風に思っていると、空からまた一つ、大きな扉が現れて開いた。

 

 また新しい魔人が来る!そう思って身構えたが、出てきたのは大きな銃口だけだった。

 

 あれ?詰まってる?私がそんなバカなことを思っていると、銃口がこちらを向いて……やばい!

 

 「岸辺先生!」

 

 「うお!」

 

 私はそういうと残された力を振り絞って、岸辺先生を放り投げた。

 そしてその直後に銃口から放たれた弾がこちらに放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バーン!バーン!バーン!

 

 上空から銃声が響く。赤いデンノコの悪魔が上を見上げると、扉から銃口だけを出して銃撃を行っていた。

 彼の記憶が正しければ……その方向にいたのはマキマだ。

 

 デンノコは焦り、近くの岩をチェーンで引っ掛けて持ち上げて、それを扉に向けて投げつけた。

 

 「オラァ!」

 

 そして投げられた岩は直撃して、扉を粉砕した。

 銃撃が収まったことを確認したデンノコはチェーンを使ってマキマがいた方向へと大急ぎで移動したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 体が熱い、意識が朦朧とする、下半身の感覚がない。

 咄嗟に岸辺先生を銃撃から守るために投げちゃったけど怒られないだろうか。

 そんなことを意識が薄れていく中で考えていたら、馴染みのある声が聞こえた。

 

 「マキマさん!大丈夫か!」

 

 「……デンジ君?」

 

 目を開けるとそこには赤いチェンソーの頭をした人物が立っていた。

 

 「………ああ。俺だ」

 

 ぎこちなくその人物は答えた。

 

 「……そっか。」

 

 私は自分の体に目をやると、下半身が先ほどの銃撃で吹き飛んでいたことに気づいた。

 ……これはやばいな。助かりそうにない。でも辛すぎて騒ぐ気にもなれない。

 

 「優しいんだね……君は。」

 

 私がそう言ったあと、場にひたすら沈黙が流れた。

 

 「ねぇ……お願いが……あるんだ。」

 

 「なんだい?マキマさん。」

 

 「『これからきっと辛い目に遭う。嫌なことを思い出したりする。自分が幸せになっていいのかすらも分からなくなってしまう日が来る。

 それでも……ここに君のことを大切に思う人が、愛する人がいたって。君には幸せになる権利が絶対にあるんだって。』

 そうデンジ君に伝えて欲しいんだ。」

 

 私がそう言うと、目の前のポチタは動じずに答えた。

 

 「……気が付いてたんだね。私がデンジじゃないってことに」

 

 「うん、だって……デンジ君のことを出会ってからずっと見てたからね。私に対する言葉遣いとか、雰囲気とか色々違うし。」

 

 「そっか……。頼みの内容が、最後にデンジ君に会わせて欲しいじゃなくて良いのかい?」

 

 ポチタは尋ねる。

 

 「うん、だってデンジ君に私が死ぬところを見せて辛い目に遭わせたくないからね。

 ポチタもだからデンジ君に変わらなかったんでしょ?でも私に気を遣って、最後にデンジ君と会えたと思わせたいから、デンジ君のふりをした。」

 

 「結局マキマさんにはバレちゃったけどね。」

 

 「ははは……。」

 

 私は力無く笑った。

 

 「ねぇ……ポチタ。最後にさ、ハグさせてもらっても良いかな?

 今の君ならハグしても大丈夫そうだし。」

 

 「……マキマ。君は最後の最後まで優しいんだね。」

 

 そう言うとポチタはゆっくりと近づいて、刃が刺さらないように引っ込めて体を差し出した。そして私は報道の力で弱くなっても、まだまだゴツいポチタを抱きしめた。

 

 どんどん消えていく意識。私はポチタを抱きしめながら最後の力を振り絞って支配の悪魔の力を使ったのだった……。

 

 

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