転生したので、偽マキマさんはデンジ君を推します   作:フィークス2号

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6話 デンパワコンビ爆誕!

 

 

 

 

 夢を見ている。これは夢だ。きっと悪夢に決まっている。

 私はそう自分に言い聞かせた。

 

 私の眼下には筋肉の悪魔によって殺され、無惨な死体となって転がっているデンジ君の姿があった。

 「あはははハ八八ハハははは!こいつ弱い!こいつ弱い!」

 

 

 筋肉の悪魔が高笑いしながら、すでに息絶えたデンジ君を殴り、その死体を弄ぶ。

 

 「あははは!あはハ八ハ!あ……は?」

 

 たった一瞬だった。何かを切るような鈍い音がしたと思えば、高笑いをしていた筋肉の悪魔は笑いを止め、真っ二つになり血を噴き出して倒れた。

 

 デンジ君のお腹の中から血と腸が出た。

 その腸がデンジ君の首に絡まり、デンジ君は立ち上がり胸のスターターを引っ張ると……。

 デンジ君は真っ黒でゴツい体をした、チェンソーマンになった。

 ポチタの昔の頃のチェンソーマンだ。

 

 「ポ……ポチタ?」

 

 私は声をかける。

 

 「ヴァァァ!ヴァ!ヴァ!ヴェエエ!!!」

 

 ポチタ、いやチェンソーマンは私に向けて怒鳴った。

 その声からは明確な敵意、殺意、そして何よりも……怒りが感じられた。

 

 なぜデンジをこんな危険な目に合わせた。

 なぜデンジを傷付けさせた。

 なぜデンジを守ろうとしない

 

 私にはチェンソーマンがそう怒っているように感じた。

 

 そしてチェンソーマンは私に飛びかかり、何度も何度も私の体を切り刻み続けて……。

 

 

 

 

 

 私はそこで目が覚めた。

 

 私のベッドは寝汗でびっしょりだった。

 

 私は朝の支度をしながら、今朝の夢について考える。夢の内容は、私が筋肉の悪魔とデンジ君を戦わせ、デンジ君が死んでしまいポチタがチェンソーマンとして復活するものだった。

 

 

 

 デンジ君が筋肉の悪魔如きにやられる、あまり想像しづらい話だが決してあり得ない話ではない。デンジ君だって人間だ。失敗だってするしミスだってするだろう、あの夢はもしかしたら起こり得たかもしれない未来だ。

 

 私がもしもっと早くデンジ君を見つけていれば、デンジ君は原作と違って激しい戦いに身を投じる必要はなかっただろう。だが私は見つける事ができなかった。

 いや、原作と違ってデンジ君が生き残れるとは限らない。私は原作のマキマさんではない。

 原作のマキマさんは私と違って優秀だし、デンジ君が死なないように色々手を回していたのかもしれない。ポンコツである私が原作の真マキマさんのように、うまく立ち回れるとは到底思えない。

 そもそも私自身の出自が原作のマキマさんと大きく異なっている可能性がある。私は日本で出現した支配の悪魔だ、そこを日本政府に悪魔と戦うことを条件に保護された。そして私は日本政府のもとで厳しい訓練を受けて、内閣官房長官直属のデビルハンターになった。

 

 その過程で私は一切昔のポチタ、チェンソーマンとは絡まなかったし話すら聞いたこともなかった。つまり原作の真マキマさんのようにチェンソーマンオタクになる機会が一切なかったのだ。

 もしかしたら真マキマさんは支配の悪魔の持つ、物事を掌握する力を駆使し記憶を保持しながら、ポチタチェンソーマンに何度も殺されるたびに、地獄と人間世界を何度も往復して生き返ってたのかもしれない。それなら一応、このマキマさんとしての人生でポチタチェンソーマンと絡まない理由にも説明がつく。

 だがそうでなかったら?原作マキマさんが送った人生とは全く違った人生を偽マキマである私は送っていたのなら?そのズレの影響が何処まで大きいのか、私には把握できない。

 私が把握しているものでは、姫パイとアキ君が付き合っているという割とデカいズレが生じている。このズレが今後どのような影響を与えるのか、下手したらデンジ君が死に至るかもしれない。私は今更になって不安になった。

 

 てかよく考えたら私、彼女持ちの男にデンジ君を住まわせようとしてたのか!?

 しかもここから女の子のパワーちゃんを住まわせようとしてるとか……。これ姫パイに殺されないか私?

 ていうかそもそもアキ君が了承するかわかんないじゃんこれ!?原作だと真マキマさんは支配の力でどうにかしてたけど……ヤバい、ヤバすぎる。

 なーにが『出来るだけ原作の展開をなぞる』じゃボケェ!自分の原作改変で既に窮地に立たされてるじゃないか!

 

 

 しかもこの後、未来の悪魔の力を借りてやった原作ブレイクの生存者爆増も起こす予定だからなぁ……。仲間の命が大事だし、デンジ君と交流が生まれるであろう人たちを生かしたいし、岸辺先生と対立したくないからやったけど、これ原作なぞる展開とか不可能にならないか!?

 どーしよう……。今私焦ってる、アキ君を刺しちゃった姫パイよりも焦ってる。うっかりアキ君を100回刺しちゃった姫パイよりも焦ってる……。

 

 取り敢えず姫パイになんて言って謝ろうか……。私はそれについて悩みながらデビルハンター本部へと出勤した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ということがあったんです。」

 

 アキ君が、デンジ君が魔人を殺す際に、変身せずに殺したことについて報告する。

 

 「こいつはペットにしてた悪魔……ポチタでしたっけ?それのせいで、悪魔に対する対応が甘過ぎるんですよ。

 別に悪魔と馴れ合いたいのは構いませんが、それでデビルハンターの仕事に支障が出るのは困ります。

 それで俺は、こいつとパワーを組ませてみようと思うんです。」

 

 「パワーちゃんを!」

 

 目を煌かせながら、私は尋ねる。こう言う流れでデンジ君とパワーちゃんが組むことになるのか!

 

 「な、なんでそんなに嬉しそうなんですかマキマさん。」

 

 「ああ、ごめんごめん。私もそろそろパワーちゃんの活躍が見たくてね。」

 

 「別にあいつとコイツが組んでも成果なんて出ると思えませんけど……。

 俺がコイツにパワーと組ませようと思ったのは、コイツに敵じゃない悪魔がどんなやつなのかをハッキリと分からせるためです。

 敵じゃなくてまともな奴もまぁ、ほんの一握りはいるかもしれませんけど大多数はそうじゃない。そのことをコイツに理解させて、悪魔を殺す際に無駄な感情を抱かないようにさせたいんです。」

 

 アキ君は淡々と言う。

 

 「そっかー。わかった、アキ君がそう言うならデンジ君とパワーちゃんを組ませてみよう。

 デンジ君もそれで大丈夫?」

 

 私はデンジ君に尋ねるが、当のデンジ君は神妙な顔をして何か考え込んでいる。

 

 「……デンジ君?」

 

 「おいデンジ、何か不満でもあるのか?お前の望み通り悪魔と友達になれるよう、バディに悪魔を選んでやったんだ。悪魔っていうか魔人だけどな。」

 

 そう言われてもデンジ君は黙りこくっている。

 

 「デンジ君、どうかし」

 

 そう言いかけた所で、デンジ君がガッツポーズをしながら勢いよく発言した。

 

 「胸だ!!」

 

 「ムネダ?」

 

 あ、デンジ君。自分の中に夢がない事を悩んでて、たった今胸を揉む事を目標に設定した所だ。

 デンジ君は今私の胸を揉みたいのかー。そうかー。いよっしゃあぁぁぁ!

 

 あ、アキ君が『コイツまじか』って顔でデンジ君を見つめてる。

 

 「おい!話を聞けバカ!」

 

 「はなし……?」

 

 「公安では小規模任務とかパトロールでは安全のために2人1組で行動する事になるんだ。

 ちょうどよかった、来たみたい。気をつけてね、彼女は魔人だから。パワーちゃんお待たせ、入っていいよ」

 

 そう言うとガチャリとドアが開いて1人の魔人、私が捕まえたパワーちゃんが腕をぶんぶん振りながら入ってきた。

 

 「おうおう!ひれ伏せ人間!!ワシの名はパワー!バディとやらはウヌか!?」

 

 デンジ君は呆然としながらパワーちゃんを見つめる。

 

 「パワー!?名前パワー!?つーか魔人なの!?魔人がデビルハンターなんてやってもいいのか!?」

 

 そう困惑しながら言った後、デンジ君はパワーちゃんの胸に一瞬だけ注目し、

 

 「まぁいいか!!よろしくなあ!」

 

 と元気よく挨拶した。

 

 デンジ君パワーちゃんの胸しっかり見てたなぁ……ぐぬぬ。

 

 あ、アキ君がなんかすげー真顔してる。そう言えばアキ君、パワーちゃんのこと話でしか知らなかったなぁ。

 確かアキ君が聞いてた話って、『仲良くなるのが難しい』とかだったか。人間に露骨に敵対的とか、そういうのを想像してたんだろう。

 アキ君は大方、デンジ君とパワーちゃんがなんか上手くいきそうな感じがしてるのと、2人揃って大馬鹿やらかしそうな未来を予想して自分の選択が失敗だったことを悟り、この真顔の表情なんだろうけど……大正解です!

 私は念の為の輸血パックを渡した後に、元気よく2人が出ていったのを確認して、2人のために2人がやらかした時用の書類を用意しておいた。

 

 

 あ、アキ君まだ出て行ってなかったわ。あ、これ?念のためだよ、うん、そんな暗い顔しないで!アキ君じゃなくて許可出した私の責任だから!うん!なんかあったらね!うん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論から言う、原作通りなんかあった。民間のハンターが手をつけたナマコの悪魔をパワーちゃんがぶっ殺したのだ。

 

 「民間が手につけた悪魔を公安が殺すのは営業妨害だからね。普通だと逮捕されちゃうよ」

 

 私は優しくそう言うが、パワーちゃんは不満気だ。

 

 「パワーちゃんはもうちょっと考えて行動しないといけないね。

 デンジ君もパワーちゃんが突っ走っちゃった時に抑えれるようにがんばってね。」

 

 「え?俺も〜?」

 

 「そうだよ、デンジ君はパワーちゃんのバディだからね。支え合うのがバディだよ。」

 

 「そうじゃぞデンジ!しっかりワシを支えんか!」

 

 ノリノリでデンジ君を非難し始めるパワーちゃん。

 

 「はあ〜!?何言ってんだテメェ!テメェがナマコの悪魔殺したのが悪いんだろうが!」

 

 「それはウヌが殺せって言ったからじゃろ!」

 

 「ふざけんじゃねえ!マキマさん俺そんなこと言ってないです!言ってねぇ!よ〜んな嘘が言えたもんだなあ!?」

 

 「嘘をつくな嘘を!ワシはしかとこの耳で聞いたぞ!」

 

 2人はどんどん激しく口論を始める。

 

 「うん、パワーちゃん、静かにできる?」

 

 私は能力で鎖を出して、懐から怖い話のたくさん載った本とピーマンを取り出した。

 パワーちゃんは恐怖して静かになった。しめしめ、私のエンドレスホラーヤサイマシマシヒメパイイタズラゴースト祭りが功を奏したようだ。いや姫パイのゴーストを使ったイタズラは別に私じゃなくて姫パイが勝手にやったんだけど。

 

 「で、できる」 

 

 「ああ……!?」

 

 急にだまったパワーちゃんにデンジ君が困惑する。

 

 「偉いねパワーちゃん。それじゃあ、どういう経緯でナマコの悪魔を討伐したのかもう一度思い出してみよっか。勘違いや聞き間違えがあったのかも知れないしね。」

 

 コクリ……とパワーちゃんが頷く。

 

 「まずどういう経緯で悪魔を見つけたの?」

 

 「まずワシが血の匂いを嗅いだんじゃ」

 

 「デンジ君、その話はどう?」

 

 「ああ、確かパワーがそう言って動き出したな、それで……。」

 

 「ああ、デンジ君。ちょっとだけ待ってもらって良いかな?デンジ君の話も聞きたいんだけどさ、一旦パワーちゃんの主張を聞いてからにしたいんだ。私的には今回はその方が状況を把握しやすいと思ったんだけど……ダメかな?」

 

 「大丈夫です!」

 

 デンジ君が元気よく返事する。

 

 「まったく、ワシが話す番なのにそれを無視しようとするとは、デンジは子供じゃのう。」

 

 「ああ!?」

 

 パワーちゃんが余計なことを言い、デンジ君が怒りそうになる。

 

 「ストップストップ、パワーちゃんも余計なこと言わないの。デンジ君も言いたいことはあるだろうけど、我慢してもらっても良い?」

 

 「マキマさんがそう言うなら……」

 

 デンジ君が不満そうにパワーちゃんを睨みながら言う。

 

 「ありがとうデンジ君。じゃあパワーちゃん、その血の匂いを嗅いでどうしたの?」

 

 「ワシは悪魔と戦うために、走りながら、血で武器を作り、ビルの屋上から飛び降りたんじゃ!」

 

 「ふむふむ、それで?」

 

 「そしてワシは下にいた悪魔に血のハンマーで鉄槌を下して、叩き潰してやったのじゃ!」

 

 「うんうん、それでその時デンジ君はどうしてたの?」

 

 「デンジはすっとろいからのぉ……。何もせずに終わったぞ!」

 

 「………そっかぁ。そっかぁ……デンジ君?今の話でおかしいところとか、変なところはない?」

 

 「あー、ありません。パワーが言う通りに俺が何かする暇もなく終わりました。」

 

 パワーちゃんは自分が自白したことに気づかず、ガハハと誇らしげに笑っている。

 パワーちゃん……。デンジ君を煽って楽しんでいるうちに、勝手に殺したせいで怒られたことを忘れてしまったようだ。おそらく言い訳を始めてから時間が経っていなかったため、都合のいい記憶改変も起きてなかったのだろう。

 

 私はパワーちゃんを鎖でぐるぐる巻きにして、抵抗できなくしてから、今日のお昼ご飯の野菜オンリーなヘルシーサンドイッチをパワーちゃんに無理やり食わせた。

 

 デンジ君が少しビビってたけど……仕方ない。

 

 

 

 

 

 「パワーちゃん、デンジ君。私は2人の活躍が見たいんだ。私に活躍が見せられそう?」

 

 「み、み、み、みせ!みせっみせる!見せる!見せますから!どうか!どうか!ご慈悲を!ワシにご慈悲を!もう、あの部屋に行くのは!あの幽霊部屋だけは!」

 

 パワーちゃんがビビりながら、必死に命乞いをする。

 

 「よし、パワーちゃんはちゃんと反省して、頑張ろうとしてて偉いね。」

 

 私はパワーちゃんを優しく撫でる。でもパワーちゃんは恐怖でガタガタ震えてる。

 そりゃ、野菜サンドイッチ無理やり食わせたし、私にされたトラウマを思い出してるんだ。そりゃそうだろう。

 

 「デンジ君」

 

 「あ、は、はい。なんすか?」

 

 「パワーちゃんもちゃんと反省したみたいだから、次は頑張れる?」

 

 「……はい。」

 

 デンジ君が少し元気なく言う。

 ……もしかして、ビビられてる?悲しい……。




 流石に生ピーマンを食わせないで、野菜サンドイッチで済ませるだけの良識が偽マキマさんにはあった。
 姫パイには無さそう……嬉々として生ピーマン食わせて笑ってそう。生ピーの原罪。
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