バトラーズ〜召しませお嬢様〜Sweet School of Life***   作:夏憐

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夜3

(コンコン)

 

小鳥:

  「は、はいっ!」

右京:

  「失礼いたします。お飲み物をお持ちいたしました」

小鳥:

  「は……?」

 

大広間で杉浦くんたちに会った後、何度か迷いながら部屋に戻ると、新崎さんがパジャマを持って待っていた。

ここは銭湯なの!?ってぐらい広いお風呂に案内され、「入浴のお世話を……」という新崎さんになんとか帰ってもらって、一息ついたところ。

 

───オノミモノってなに?

 

右京:

  「本日はお疲れで早くにおやすみになるかと思い、普段よりもかなり早い時間にお持ちしております」

小鳥:

  「は、はあ……」

右京:

  「これからは毎晩、おやすみ前のお飲み物はこうしてご用意させていただきます」

小鳥:

  「それは……決まりごとなんでしょうか」

右京:

  「はい」

小鳥:

  「そうですか……」

 

ということは、自室だからって気は抜けないんだ……。

うーん……私、右京さんが来てくれるまでパジャマにも着替えられないよ……。

 

お嬢様のシキタリっての?表情の変わらない右京さんからは、何も窺い知ることはできないけれど。

このお屋敷につれてこられて一日?、半日?過ごしてみて、何度か遭った「決まりごと」。

お茶の時もディナーの時も、周りに人はいるのにテーブルには私一人しかいなくて、一緒に食べないのかと聞いたら「そういうものです」と。

 

右京:

  「ホットミルクでございます。どうぞ、お召し上がりください」

小鳥:

  「ありがとうございます……」

 

渡された薄いピンク色のマグカップにおそるおそる口を付けると、猫舌の私に丁度いい温度だった。

蜂蜜が入ってるのかほのかに甘く、どこか懐かしい味。

 

右京:

  「それでは、失礼いたします。おやすみなさいませ、お嬢様」

小鳥:

  「あ、あのっ」

右京:

  「はい、お嬢様」

 

……て、毎晩のお飲み物はいらないとはとても言える雰囲気じゃないな。

右京さんにとっては、これも仕事のうちなんだろうし……。

 

小鳥:

  「いえ、なんでもないです。おやすみなさい……」

右京:

  「はい、おやすみなさいませ。小鳥お嬢様」

 

飲み終わったマグカップをトレイに載せ、部屋の電気を消すと、一礼をして右京さんは部屋を出ていった。

 

小鳥:

  「…………こんな生活をしてたお母さんを、また違う意味で尊敬しちゃうよ……」

 

生まれた時から、当たり前としてあるなら疲れるなんてないのかも知れないけどさ。

それでも途中から庶民として生活出来たぐらいなんだし、やっぱり少しは息が詰まると思ってたんじゃない?

……なんて、生まれつき庶民の私は思ってしまう。

 

小鳥:

  「あと、おじい様ってどんな人かな……」

 

あんまり怖い人じゃないといいな。

とりあえず怒られないように、できる限りレディになるための勉強はしないと……。

 

小鳥:

  「レディ……」

 

私、本当になれるの?

考え出すと悪いほう悪いほうに流れて行きそうだって分かってても、考えずにはいられないよ。

やっと受験が終わって進学したばかりで、他にもやらなきゃならないこと、考えなきゃならないこといっぱいあるのに。

 

小鳥:

  「…………」

 

右京さんの言うとおり、今日は本当に疲れちゃった。

フカフカのお布団の中で寝返りをうつ。

このまま、寝ちゃおう。

……目が覚めたら、少しは不安が解消されてたらいいのに。

なんて、甘い考えなのかな―――

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