バトラーズ〜召しませお嬢様〜Sweet School of Life***   作:夏憐

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【2日目】
朝1


(チュンチュン、ピチチチ……)

 

……ん……もう朝?

なんか気持ちのいい朝だなぁ……。

お布団はフカフカだし、それに紅茶のいい香りもする……。

これ、どこのお家からだろ……。

いいな……私も飲みた―――

 

右京:

  「お嬢様、おはようございます。本日は、たいへんよい天気ですよ」

小鳥:

  「―――えっ!?」

 

聞き慣れない男の人の声にビックリして飛び起きた。

 

右京:

  「昨夜は、ゆっくりおやすみになられましたか?」

 

えーっと……こ、ここは……あとこの人は……。

部屋の中の眩しさに目を細めつつ、ぐるりと回りを見渡す。

 

右京:

  「いかがされました、お嬢様。少しお顔の色が優れないような……。まさか、具合が悪いわけでは……!」

小鳥:

  「えっ!?い、いえいえ!私はすこぶる健康体です!」

 

……変な日本語が出ちゃった……なに、すこぶる健康体って……。

 

右京:

  「ならいいのですが……」

小鳥:

  「ご、ごめんなさい。あの……朝からお騒がせいたしました」

 

ああ、ビックリした……。

でも、今のですっかり思い出した。

そうだった。私、昨日お屋敷に連れてこられたんだった。

で、今日からお嬢様としての生活が始まるのよね。

この人は右京さんで、執事さんで、それから……。

 

(チュンチュン、ピチチチ……)

 

右京:

  「外が気になりますか?」

小鳥:

  「え?あ、はい……少し」

 

窓の外を見ると、大きな木が何本も立っていて、この普段よりたくさん聞こえる鳥のさえずりも納得だわ。

きっと、庭にたくさん集まってるんだろうなぁ。

天然の目覚まし?爽やかだなぁ。

 

右京:

  「後で屋敷を案内いたしますので、その時にゆっくりご覧ください。

   それよりも、先に朝のお飲み物をどうぞ」

小鳥:

  「朝の……ですか」

 

これも、おやすみ前の飲み物と同じってこと?

これじゃ、寝る時も起きる時も気が抜けないなぁ。

さっきも完全に寝てたし……はっ、右京さんに間抜けな寝顔見られた!?

せっかく天気もよくて気持ちのいい朝だと思ったのに、なんか憂鬱になってきた……。

こういうの、いつか当然として受け入れられるものなのかなあ……。

 

右京:

  「熱いので、お気をつけてお飲みください」

小鳥:

  「ありがとうございます。それじゃ、いただきます……」

 

……そっか。寝ぼけてる時に嗅いだのは、これなんだ。

ほのかに香るのは、バラ……かな?

 

小鳥:

  「……あ、おいしい……」

右京:

  「そちらは、スリランカ中央山脈の西側ディンブラ地方のティーです。

   ほのかに香る甘いバラの香りが特徴で、爽やかな飲み口は朝の紅茶に最適かと」

小鳥:

  「は、はあ……そうなんですか」

 

思いつく限り、紅茶といえばティーバッグかペットボトルでしか飲んだことのない私には、

丁寧に説明されてもディンブラ地方がどこにあるのかちっとも分からないけど、おいしいのは間違いないよね。

ほんと、こんな朝を迎える日が私に来るとはねー……。

 

───うん?

 

ちょっと冷めて飲みやすくなったカップに口をつけてふと思う。

けどいいの?ベッドの上で着替えもまだなのに、紅茶なんて飲んで。

行儀が悪いと思われない?

 

右京:

  「それではお嬢様。紅茶を飲んでいる間、少しばかり本日の予定をご説明させていただきます」

 

いたって普通に会話が始まってる……。

そっか。行儀が悪いと思わないから、こうしてお茶を出されてるんだ。

これが、上流階級の基本生活パターン?決まりごと?なんだか優雅な話よね……。

 

右京:

  「……とは申しましても、お嬢様の本日の予定はご登校されるのみ。他は特にございません」

 

あ、でもっ。

よくよく考えれば、私がまだまだ子供だからいいけど、女性が寝ている部屋にこうして入り込んでくる男の人がいるっていうのも、すごい話じゃない?

お金持ちの人の感覚って、私にはまだまだ理解不能かも。

 

右京:

  「なので朝の身支度が済み次第、紫堂の車でご登校。戻られましたら先ほども触れましたが屋敷内のご案内を―――

   ……お嬢様、聞いていらっしゃいますか?それとも、私の顔に何か」

 

いけない!ボーッと右京さんの顔見てた!

 

小鳥:

  「いえっ、聞いてます聞いてます!すみませんでしたっ。あと、紅茶ご馳走様です。すっごく美味しかったです」

右京:

  「……小鳥お嬢様」

小鳥:

  「はい?」

 

表情が変わらないと思ってた右京さんの眉間にシワが……。

 

右京:

  「私はこれが仕事であり、執事として当然のことをしているまで。私に対して謝ることも、礼なども言わなくていいのです」

小鳥:

  「え?でも……」

 

挨拶と感謝を忘れない事は、亡くなった両親からずっと言われてきたこと。

人と人とは助け合いながら、お互い感謝しながら行きていくものだと教わった。

 

右京:

  「執事とは、そういうものだと認識していただければそれで結構です」

 

してもらったことに対して、感謝の言葉を言わないのが普通?それ変なんじゃ……。

今までで一番の違和感のある「決まりごと」に呆然とした。

 

右京:

  「では、私はこれで失礼します。じきに新崎が参りますので、身支度は彼女にお任せください」

小鳥:

  「…………」

 

右京さんにとっては当然でも、私には当然なんかじゃないのにな……。

生まれながら庶民も庶民として暮らして来たわけで、この環境が当然ではなかったんだもの。

 

小鳥:

  「こういうの、本当にいつか慣れるのかなぁ……」

 

こればっかりは、分かんないや。

生まれて15年とちょっと、あまりにも違う考え方、他人との接し方。

 

小鳥:

  「……とりあえず、今は出来ることを進めておかなきゃ」

 

手のひらに乗ったカップはすっかり冷めていた。

まずは顔を洗って、それから着替え。

あとはまた、右京さんに指示をもらおうっと―――

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