バトラーズ〜召しませお嬢様〜Sweet School of Life***   作:夏憐

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朝2

小鳥:

  「朝の準備は、これでひと通り終了かな」

 

といっても、制服に着替えて顔を洗っただけなんだけどね……。

 

最初、部屋の中にタンスを探したんだけどなくて、じゃあどこに制服があるのよって思って、廊下に出る扉じゃないところを開けたらそこはウォークインクローゼットだった。

ただし、絶対クローゼットサイズじゃない部屋。

その部屋の隅に見覚えのある制服一式が揃えられてて、無事に着替えを済ませることが出来たってわけ。

 

小鳥:

  「……で、どうすればいいんだろ」

 

朝ごはんとかどうするんだろう?

あ、確か新崎さんが来てくれるとか右京さん、言ってたような―――

 

(コンコン)

 

小鳥:

  「あ、はいどうぞ!」

さつき:

  「おはようございます、小鳥お嬢様。朝のお世話を―――……あら?」

小鳥:

  「え?」

 

新崎さんは不思議そうに私を見つめていた。

え?制服に着替えただけなんだけど、なにかヘン?

寝癖付いてるとか!?

 

さつき:

  「ご自分で着替えられたんですか?」

小鳥:

  「もちろんです」

 

だって、制服着るだけだし。

 

さつき:

  「お召し物のお世話も、私がさせていただくことになっているんですが……」

小鳥:

  「それ、着替えを手伝うってことですか!?」

さつき:

  「もちろんです」

 

そ、即答……それはもうキッパリと、当たり前だと。

え!?「ちょっと背中のファスナーが届かないから」とかじゃなくて、ただ服を着るって事を一から十まで!?

 

小鳥:

  「そ、それはさすがに……!私、自分の着替えぐらい自分でします!これ以上、仕事が増えないほうが新崎さんもいいですよねっ」

さつき:

  「…………」

 

あれ?黙っちゃった……。

 

小鳥:

  「……私、変なこと言いましたか?」

さつき:

  「いいえ、まったく」

 

またしても即答。……じゃあ、今の沈黙っていったいなんだったんだろ。

 

さつき:

  「お嬢様は、本当に普通のご家庭でお育ちになったんですね」

小鳥:

  「は、はい。だから、お嬢様の仕組みがちっとも分からなくて……」

さつき:

  「……っ……」

 

あれ?必死に笑いをこらえてる?怒らせてるわけじゃないのは一安心だけど。

 

小鳥:

  「あの……仕組みじゃなかったら、なんて言うんでしょう……しきたり?決まりごと?」

さつき:

 「いえ。……べ、別にそれでもよろしいんじゃないですか?ええ……ほんと……お、お嬢様の仕組み、で……」

小鳥:

  「新崎さん?」

 

様子がおかしい。声も震えてるし。

 

さつき:

  「あ……も、ダメ……」

小鳥:

  「え?」

さつき:

  「あは……あはははは!やだもう、おっかしー……!」

 

とうとう堪えきれなくなったのか、涙を流して爆笑する新崎さん。

大うけされちゃった……。

 

あ。でも、今の感じ、普通の友達同志の会話みたいだったよね!

出来れば、そのままでいて欲しいんだけど……。

お願いしてみようか。

 

小鳥:

  「あの、新崎さん」

さつき:

  「はい、なんでしょうか。お嬢様」

小鳥:

  「……あのー、良ければ、さっきみたいな口調でいて欲しいんですけど」

 

未だに肩を震わせながら涙を拭いつつ、なんとか平静を装う新崎さんにお願いしてみる。

 

さつき:

  「え……?」

小鳥:

  「その……皆さん仕事だって分かってます。でも、堅苦しい口調ばかりで息が詰まりそうで……」

さつき:

  「あー……」

小鳥:

  「せめて新崎さんだけでも……」

 

難しい顔しちゃった。

やっぱりこんなお願い、図々しい?無茶を言うなって逆に怒られちゃうのかな。

 

小鳥:

  「今みたいに、ふたりの時だけでいいんですけど……」

さつき:

  「……本当にいいんですか?後で後悔とかしません?」

小鳥:

  「するわけありませんっ」

さつき:

  「ホントにホント?」

小鳥:

  「うんっ!」

さつき:

  「…………」

小鳥

  「…………」

 

期待を込めつつ見つめ合ったまましばしの沈黙……。

 

さつき:

  「……了解!」

小鳥:

  「良いの!?」

 

ダメかと思ったぁー良かったよ……。

このお屋敷で唯一の味方を見つけたような気持ちになる。

 

さつき:

  「……と言うか、私も上流階級の世界って堅苦しくって苦手なの……!」

 

そう言って話してくれたのは新崎さんの家のこと。

曰く、白嶺グループ系列の偉い人の遠い親戚で、この仕事に就いてまだ3年目ぐらい。

大学で遊びすぎて就職出来なかった新崎さんは、コネを駆使してこのお屋敷に入ったらしい。

だからか、たまの休みに実家に帰るとお父さんは「大隅家の皆様にご迷惑はかけてないだろうな!」ってうるさいんだって。

 

小鳥:

  「そうだったんだ!えーと、新崎さん……」

さつき:

  「さつきでいいよ!」

 

頼りになるお姉ちゃんが出来たみたいで嬉しいなぁ。

 

小鳥:

  「じゃあさつきさんで。さつきさんも、苦労が絶えないんだね……」

さつき:

  「ううん、そうでもないよ。私、要領はすっごいいいし。仕事だって、いたって普通にクリア出来てるもん」

 

うん、そんな気がする。前向きな人っていうか気楽なタイプっていうか、羨ましい性格かも……。

 

さつき:

  「とりあえず、何かあったらいつでも私に相談してね。他の使用人のこととか、お屋敷のことに関しても、知ってる限り教えてあげます!」

小鳥:

  「ありがとう!」

 

(コンコン)

 

さつき:

  「あ、きっと右京様だよ。今の、内緒にね?」

小鳥:

  「う、うんっ」

 

頼もしい限りです!ありがとう、さつきさん!!

 

(コンコン)

 

小鳥:

  「は、はいっ、どうぞ!」

右京:

  「お嬢様、ご機嫌はいかがですか?」

 

流石に着替えてるところに入るのは躊躇したのか、私の返事を聞くまで右京さんは外で待っていたみたい。

 

小鳥:

  「……た、たいへん結構です……」

右京:

  「それは何よりでございます。……新崎、お嬢様のお着替えは問題なく終えられたのだな」

さつき:

  「はい、右京様」

 

うわぁ……さつきさん、もう仕事モードに切り替わってる。

すごいなぁ。逆の立場だったら、私の性格じゃこうはうまく出来ないよね。

 

さつき:

  「それでは小鳥お嬢様、私はこれで失礼いたします」

小鳥:

  「はい。また……」

 

……あ、ドアの前で軽く手を振ってくれてる。

笑顔で返事になったけど、伝わったよね。

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