バトラーズ〜召しませお嬢様〜Sweet School of Life*** 作:夏憐
右京:
「お疲れ様でございました、小鳥お嬢様」
小鳥:
「…………」
ここ、本当に学校……?
門をくぐってここまでたっぷり5分はあったんじゃないかな……と思う。
目にも鮮やかな森を抜け、開けた先に見えたのは……まさに『白亜の城』。
右京:
「転校手続きの件に関しては、ご安心下さい。紫堂が既に連絡しております」
小鳥:
「……はあ、そうですか。それは、どうもありがとうございます……」
車を降りて間近で見ると、尚一層迫力がある『城』を見ながら気のない返事を返す。
右京さん?は、後で説明してくれるって言ってたけど……こんな所に連れてこられて大丈夫かな。
ホント一体、何が起きてるんだろう……。
紫堂:
「お待たせしました、お嬢様」
車を降りた後、ふいとどこかへ行っていた紫堂さんが戻ってきた。
小鳥:
「あ、あのっ。学校は……先生はなんて……!」
紫堂:
「なんら問題なく、小鳥お嬢様の件に関しましては快く承諾してくれました。寮にある私物なども、後ほどこちらにお持ちしますのでそれもご安心ください」
小鳥:
「あ……よかった」
……て、よくないんだ!
小鳥:
「すいません、本当に何かの間違いだと思います。おふたりが……ええっと……ご主人様?とかに怒られる前に、本物のお嬢様を捜したほうがいいかと!」
さっきから何度も何度も言おうとしたんだけど、全然聞いてもらえなくて。
でもでも、本気でここは否定しないと!!
小鳥:
「あのですねっ、ホントに私はお嬢様なんかじゃ……」
右京:
「この世に、小鳥お嬢様はひとりしかおりません」
尚も言い募ろうとする私を、右京さんは少し強い口調で遮った。
小鳥:
「…………」
右京:
「お嬢様はひとりしかおりません……」
右京さんは繰り返す。じっと私を見て。
なぜだろう……今度は悲しそう?
紫堂:
「そうでございます。私達の目の前にいますね」
そう言って、紫堂さんはまたもやバッチリ決まったウィンクをした。
うわー、さっきはミラー越しだったけど、直接見たらなんかこう……迫力あるなぁ。女の人いっぱい泣かせてそう。
小鳥:
「そんなぁ……」
右京:
「とにかく、一度応接室へ参りましょう。そこで詳しくご説明いたします」
あ、右京さん戻ってる。
……さっきのは気のせいだったのかな。
と、そんなことより!
ここで動かなかったら、また両脇を固められちゃうんだろうな。
とりあえず、このおふたりの雇い主さん?に、人違いだって伝えて、分かってもらおう───
そう硬く決心をして、私は『城』へと入って行った。