バトラーズ〜召しませお嬢様〜Sweet School of Life*** 作:夏憐
右京:
「山田様、お待たせいたしました。お嬢様をお連れいたしました」
山田:
「……おお!お待ちしておりました、小鳥お嬢様!」
ええっ!この人も、いきなりお嬢様断定なの!?
私の顔を見て、人違いだって分かれば話も通ると思ったのに……。
こ、困ったなぁ……。どう説明しよう。
山田:
「お初にお目にかかります、小鳥お嬢様。
私は貴女様のおじい様にあたります、大隈正好様に長年お仕えしております執事の山田と申します」
小鳥:
「執事……さん?」
山田:
「今の小鳥お嬢様には耳慣れない言葉かも知れませんが、お屋敷の一切を取り仕切っている者とでもお考えください」
小鳥:
「そ、そうですか……。でも、あの山田さん?あのですね。私は、山田さんが捜している人とは───」
右京さんに比べれば幾分年上だろう山田さんなら、私がそのお嬢様じゃないってわかってもらえるかな。
んもう、早く人違いだって気付いてもらわなくちゃ!
山田:
「それにしても、写真以上にそっくりでございますなぁ……」
小鳥:
「え?」
山田さん、さっきの右京さんみたいに私のことじっと見てる。
でも、その目は右京さんと違ってとても優しい。
山田:
「写真を拝見した時も、面影はあるとは思いましたが。こうして目の前で見ますと、小鳥お嬢様はつぐみお嬢様のお若い頃にそっくりで……」
……つぐみ?それってまさか……。
小鳥:
「私の母をご存知なんですか……?」
山田:
「それはもう、よく存じ上げております。私は、つぐみお嬢様が小さい頃からずっとお世話をしておりましたから」
小鳥:
「母を……山田さんが?」
山田:
「はい。ですから間違えようがございません。小鳥お嬢様は、本当につぐみお嬢様にそっくりでございます」
……どういう事!?それに、山田さん、お母さんの事もお嬢様って呼んでる……。
山田:
「つぐみお嬢様がお亡くなりになったと風の噂でお聞きした時、私も……そしてお父様の大隈様もどんなに嘆いたことか。
旦那様は、やはりなんとしてでもつぐみお嬢様を連れ戻すべきだったとそれはそれは後悔されて……」
小鳥:
「連れ戻す……?それって……」
山田:
「はい。つぐみお嬢様と小鳥お嬢様のお父様が駆け落ちなさった日の事は、今でも忘れる事が出来ません」
駆け落ち……!
これは、私しか知らない事実だったはず……。
小さい頃。お母さんはお父さんとの馴れ初めを嬉しそうに私に説明してくれた。
父親に反対されたから駆け落ちしたのって……。
これは女同士の秘密よ?って、指切りしたのも覚えてる。
その話を知ってから、お家は貧乏だったけど、こんなに愛し合ってるふたりの子供に生まれてよかったなって、何度も思ったくらいだもの。だって、お父さんとお母さんは、本当にいつも仲が良くて幸せそうだった。
……と、言う事は、この人の話は、本当の事……?
山田:
「急には信じられないのも無理ないことと承知しております。
後ほど、右京よりお嬢様が納得されるまで十分にご説明させていただくとして、今は時間がございません。
本日は小鳥お嬢様が本学園にご入学される大事な日。ささ、講堂へお向かい下さい。入学式が始まります。
校長、後は宜しく頼みますよ」
校長:
「は、はい。山田様、かしこまりましてございます」
小鳥:
「あ、あのっ」
山田:
「ここは、つぐみ様も通われた伝統ある学び舎。きっと小鳥お嬢様も素晴らしい学園生活が送れることと思いますよ」
小鳥:
「母もここに……」
───そう思うと、ちょっと安心する……かも。
山田:
「さ、いってらっしゃいませ、お嬢様」
右京:
「いってらっしゃいませ」
紫堂:
「いってらっしゃいませ」
小鳥:
「あ、はい。いってきます……」
一介の女子高生ごときに恭しく腰を折る3人に見送られ、応接室を後にしたけど……ホントにもう、なにがなんだかわけがわかんないよ。