酒呑み二本角の鬼が召喚されました 作:酒呑童子?
「……ん〜?ここはどこだ?」
床以外何も無い真っ黒な空間で目が覚めた私は目を擦りながら起き上がり、自らの体の異変に気がつく。
上はノースリーブ、下はロングスカートで履物は革靴。スカートには幾つものフリルによってふわりと広がっており、相当な値段が張りそうな代物で……加えて両手と腰には何故か、鎖と思わしき物体が三つほど繋っていた。
鎖……そう、鎖だ。物体と称したのは、鎖からは重さを全く感じない為。とりあえず引っ張ってみるが、全く外れる気配がない。先端にはそれぞれ球体、三角錐、四角い形の分銅に繋がっており、身動ぎする度にごろごろと地面を擦っていた。意識を向けると浮かす事が出来た。
それと、不思議な感覚があった。頭に角がある。二本角がある。とても立派で捻れた二本角があった。
鬼。多分、自分は日本の鬼になったのだ。
そう自覚すると、不思議と力が湧いてくる。今なら漫画の技もポンポン出せそうだ。
……が、眠いので寝ることにした。
空は蒼く、何処までも高く。
白い雲は風に乗って流れ。
一つの太陽は豊かな緑が生い茂る草原を温かく照らしていた。
その中心には黒いマントを着けた集団がいた。
1人を除いてその全てが10代の少年少女である。
その傍らには様々な生物がいた。
その中で1人の少女が杖を持って呪文を唱えていた。
ピンク色で緩やかなウェーブが掛かった長い髪を持った可愛らしい少女である。
だが、その顔は必死の形相だった。
余裕が無く、渾身の願いをもって呪文を唱え続ける。
今日は大切な日。生涯のパートナーとなる使い魔を召喚し、メイジとしての新たな第一歩を踏み出す日だ。
しかし、クラスの者達が使い魔を呼び出す中、彼女は使い魔の召喚に成功していない。
「早くしろよな~、ゼロのルイズ!」
「もう何回目だよ、いい加減成功させろよな」
「早くしないと日が暮れちまうぞ~~」
周りからそんな野次が飛んでくる。
(うるさい!黙れ!)
だが、少女…ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに構わず、
「ミス・ヴァリエール。心を落ち着かせてゆっくりルーンを唱えなさい。力が入りすぎですよ」
(うるさい!うるさい!うるさい!)
ルイズはその忠告をまったく聞かず、力強く杖を振り上げた。
(絶対に喚んでみせるんだから!誰よりも美しくて!誰よりも気高くて!誰よりも…!)
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール! 宇宙の果ての何所かに居る私のシモベよ!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!私は心より求め、訴える!我が導きに応えなさい!!」
ルイズは杖を勢い良く振り下ろした、その瞬間…
ドガゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!
今まで自分が出した中でも一際大きな爆発音が草原に響き渡った。
「なんだ~、また失敗か?」
「いい加減にしろよな~」
「さすがはゼロのルイズだ!」
その爆発音を聞いて、周りからそんな中傷が飛んでくるがルイズは無視した。
ただ、煙が晴れるのをじっと待った。
(ドラゴンとかグリフォンとかユニコーンみたいな贅沢は言いません。始祖ブリミルよ、私に立派な使い魔をお与え下さい!!)
「くか〜……くか〜……」
「え、え……えええぇぇぇぇぇ!!??」
現れたのは……とても立派な……二本角の生えた寝ている酔っ払いでした。