観測者が移動していると、大きな爆発と苦戦する二人の姿を見かけていた。
「苦戦してるな」
『相手が悪かったみたいね』
方向を転換して武器を取り出し、速度を上げる。
「……やるか」
『行くの?ま、頑張ってね』
そう呟くと同時に飛斬を放ち、娘の首を締め上げていた小悪魔少女はそれに驚き、娘を投げ飛ばし即座に距離を取った。
「だれよ!うちの邪魔をするのは!?」
「俺だ」
分断するかのように中心に立つ観測者に、少女は叫ぶ。それは怒りのこもったものだったが、観測者はどこ吹く風だ。
「はぁ?わけわかんない。せっかくいい気分だったのに」
「それは悪かったな。弱い者いじめの邪魔をして」
機嫌を損ねている少女に観測者は挑発をする。
「ふ~ん。言ってくれるじゃない、あんた。正義の味方か何かのつもり?」
「いや、そんな大層なもんじゃない。単なる通りすがりだ」
ご立腹の様子の少女は、煙のように白く濁った刀身の刀を向ける。それに対し刀を軽く構え、いつでも対応できるように観測を強めた。
そして……
「おい!邪魔をするな!」
「そうだぞ!」
「ん?」
「は?」
後ろにいた二人が、そう声を荒げていた。
「これは私たちの戦いだ!首を突っ込んでくるな!」
「いやめっちゃ苦戦してただろ。お前らじゃ勝てねぇよ。だから……ああ、興奮状態か」
自分もそうだったと思い出し、ため息ついでに息を整えておく。
「なにをブツブツと!お前か、ら……?」
「どうしたヒヨ、リ……?」
「あっ……」
二刀流による攻撃を放とうとしたヒヨリは、踏み出した瞬間に動かなくなり、その母親もピタリと動かなくなった。
「バカね。ま、仕切り直しと行きましょう。あんたならもっと楽しめそうだしね」
「……仕方がねえか。いいぞぶっ倒してやる」
いつの間にか武器を剣に変えて数度振りぬいていた少女がそう言うと、次の瞬間には空間ごと二人の体の至る所がズレ落ちて爆発四散する。それを背景に観測者と少女の姿が掠れ、真正面から獲物がぶつかり合った。
(爆発性の空間斬撃か)
『武器の能力ね。能力的に手札が凄く多そうだから頑張ってね』
目にも止まらぬ速さで打ち合う二人の間に発生し続ける爆発現象。それは武器の能力であり、赤い爆発模様がついた剣と打ち合う度に、爆発が発生していた。
「やるわね。さっきの二人とは大違いよ!」
「どうも!」
空間を斬り裂き、爆発を利用した急激な方向変化と加速により攻撃ペースを上げる少女。悪魔なだけあり精密な飛行能力も駆使してくるが、観測により完全に見切っている観測者には届かずに軽く流され続ける。
(能力は“蒐集家”だな。それで武具道具の大量のストックがあると)
『状況に合わせて最適解なものを取り出して使いこなす。多彩な子ね』
何千何万のも武具や道具を持ち合わせている少女は、相性勝負という面では非常に有利な能力者だ。しかし裏を返せば、相性がわかりずらい相手や単純に強い相手には分が悪くなる。
(空爆剣も解析の義眼が通じないじゃない!いったん距離を取って……っ!?」
「逃がすと?」
武器を変えるために距離を取ろうとするが、爆発も通じずそのまま斬り合い続ける。それに焦った少女は
「っ!?考えを改める必要がありそうね!」
瞬時に武器を切り替え、儀式用で使うかのような短剣で斬撃を受け止める。すると短剣が砕け、観測者の周りをその残骸が取り囲んだ。
「へ~封印か」
「どうせ長くは効かないでしょ。はぁ~、使い捨ても代償武具も使いたくなかったんだけどね。認めてあげる。あんたは今のうちよりも強いわ。だから全力で相手してあげる」
そう言った瞬間に、歪んだ何かが少女を取り巻き、世界を押しつぶすかのような存在感が一気に溢れ出る。
(悪魔の力と武具とか道具の重ね掛けか)
『認識阻害とか隠蔽でわかりずらくしてるみたいだけど、あなたには関係ないわね』
普段から見た目及び解析などでも正確な情報がわからないように細工していたようだが、最大限まで力を高めた今、その力は隠しきれずに空間の歪みとして表れていた。しかし観測者にはその力の総量や根源、構造などがはっきり見えているので、あまり意味をなしていない。
「一応名乗っといてあげる。うちの名は、リリス・ハーベスト。世界に名を轟かせる大悪魔にして、この世のすべてを手に入れる、蒐集家リリス・ハーベストよっ!!」
そう叫んだリリスは、先ほどとは比にならないほどの速度で光でできたような剣を振り落とす。
「うおっ!やべっ!」
『すごい莫大なエネルギーね。聖剣とか神剣の類かしら?』
観測者が結界を破壊しそれを避けた瞬間、眩い光が周囲を包み込み、光の柱が地を削りながら彼方へと続いて行く。
「避けるんじゃないわよ!」
「連発ッ!?」
神速の連撃が観測者を襲う。その一撃一撃は先ほどと同じ出力で放たれており、もはや周囲は光の本流しか見えないほどの物量だ。
(物量で押し切る気か!)
『本来連発できないものを、道具の併用で強引に使ってるのね』
小細工など一切ない単純な火力で観測者を消し飛ばしにかかるリリス。しかしこれほどの攻撃を受けても観測者は健在で……
「中々強いな」
「ッ!?当たり前でしょ!あんたを倒すために特注で揃えた装備よ!!」
的確に放たれる反撃を光剣で受け止め受け流し、怒涛の超連撃を放つ。すると景色だけにとどまらず、空間までもが光に飲まれる。
(これでも届かない!だったらもっと上げるまでっッ!!)
自身の悪魔としての力をすべて身体能力に注ぎ込み、道具を使い聖剣の力を強引に引き出す。
だが……
「……振り回されてるんじゃ話にならねぇよ」
「ッ!?」
しかし攻撃の隙間をぬって観測者の斬撃が頬を掠め、莫大なエネルギーで押し返す暇なく無駄撃ちを繰り返しながら押され始める。
(素の身体能力はこっちの方が上のはずなのに!)
一発でも当たれば勝てるはずなのに、その一発がどこまでも遠い。一手一手と追い詰められていき、傷の量が回復力を上回り始める。これも攻撃特化にしすぎて、防御や回復を後回しにした結果だろう。
(どうすれば、どうすればっ!!)
焦るリリス。それもそのはずで、強引に引き出した能力には時間制限があり、早く決着を着けなければ自滅する恐れがあったからだ。
「一番破壊力のある武装なんだろうが、使い手がこんなんじゃな。元の使い手の方がまだマシだぞ」
「っ!?知ったような口利かないでっ!!」
「いや見たから言ってるんだが?」
記憶の観測まで済ましたようで、淡々とそう言う観測者。
「そもそも切り札として使う攻撃を連発できたら強いとでも思ってるのか?当てる状況に持っていくとか考えない?視界とか悪くなるってそこまで頭回らないのか?」
『まぁこの子。なんでも仕舞えたり、適性とか制限無視して装備とか道具使えるだけだしね。種族で能力が高くて、それなりの経験積んでるだろうけど、戦闘に関して言えば全部並みがいいところって感じかしら?』
リリスは道具の使い方やその組み合わせ、戦略に関しては高い能力を持っているが、戦闘者としてみれば並みがいいところである。
「要はお前自体が弱いんだよ」
「っッ!?だったらッ!!」
距離を取り、集中するように雰囲気が変わる。そして駄々洩れにしていたエネルギーを剣に集め始め、極光の塊に剣が早変わりし、聖なる光っぽいものがリリスを包み込んでいた。
(おお。ここで成長したな)
「これって……いける!」
リリスが一歩踏み出した瞬間に光と化した攻撃が咄嗟に回避した観測者を掠り、反撃をする。だが一瞬で背後を取られ、観測者は体勢を崩しながら強引に避け始める。
「はぁぁっ!!」
ムダな出力を最小限に抑え一本の刀身に力を集めたそれは、しかし余波だけで周囲を破壊し続ける極光をまき散らす凶器へと変わる。粗削りとは言え、最初の一歩として十分すぎるほどの成長具合だった。
だからこそ……
「ほいっと」
「え?」
観測者の一振りで、凝縮された極光剣は容易く砕け散った。
「え?な、なんで……こっから、これからもっと……」
折角掴んだ成長とその成果をあっさり壊され、動揺を隠せないリリスは、観測者から遠ざかるように後ろに下がる。
「出力は大したもんだし成長も見ものだったが、そこまで待ってやるとでも?それにそっちも限界だろ」
「う、うそ。なんで……壊れるにしてももう少しは……」
崩れていく装備たち。そしてリリスの体も限界のようで、膝から崩れ落ちる。
「薬の類も使ってたんだろ?それも結構強力なの。あと初めて使う力だから感覚ズレたんじゃねぇか」
「あ、ああ……」
体が崩れ、退場演出が始まる。それを受け入れられずに能力を使おうとするが、発動せずにただただ光が強くなるだけだ。
「じゃあな。次の奴が来るからよ」
観測者がそう言うと同時にリリスは消え去り、高速で鎖らしきものが地形を壊し二人の参加者を吹き飛ばしながら背後を通ったのだった。
投稿キャラ使わせていただきました。
少し聞きたいのですが、当作品に出てくるキャラの強さは……?
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バケモノ
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凄く強い
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まぁまぁ強い
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普通
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弱い
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凄く弱い
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ザコ