~異次元大会~   作:バトルマニア(作者)

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ゼンリョクの戦い

 秋晴から放たれた鎖による刺突をかわし、瞬動で一気に斬りかかる。

 

「中々動けるみたいだね。その状態は!」

「当たり前だ!」

 

 秋晴は後退しながら鎖をぶん回し、無差別のように見える攻撃を周囲へと撒き散らしていた。しかしその一撃一撃は、観測者を誘導し追い詰めるように仕掛けられている。

 

『“完全観測”って割には攻めきれないのね』

(見えてるだけだからな!)

 

 被弾や掠りどころか影響さえ受けずに距離を詰めようとする観測者。だが完全に攻めきれずに何ども取り逃がしていた。すべてを把握し最大化された能力と最適解を打ち続けても、素は拮抗しているので結局打てる手は限られるからだ。

 

(にしても恐ろしすぎる!一撃にどれだけの意味の攻撃を仕込んでやがるんだよ!)

『上位の方とは言え、このレベルの狭間の住人なら当然だけど?』

 

 秋晴は、当然のようにあらゆる可能性を内包させた攻撃と動きをしてくる。それを全て手に取るように把握する観測者は、気持ち悪さを感じていた。

 

『そもそも秋晴は、機人族だしね。演算能力は高いのよ。あなた程じゃないにしても、感知能力も高いし。まだいくつか武装隠してるしね』

(はぁ!?手ぇ抜かれているのか!?)

 

 機人族は機械系の武装を体の一部にすることができる。それによって能力を拡張したり、手札を増やせるのだ。

 

『いえ、ゼンリョクよ。だからどんな手でも使ってくるの。隠してるから手を抜いているなんて安直すぎるわよ?』

(だな!だいたいわかるっ!にしても色々教えてくれるなッ!!)

 

 思った以上にベラベラと話す羊さんに、観測者は自身が危うくなっているのにもかかわらずそう返していた。

 

『ええ、狭間関係に関しては教えてあげようと思っただけよ。何もわからずにすぐにやられても面白くないし』

(そうか――くぅっ!」

 

「完全じゃなかったの?」

 

 秋晴の鎖が観測者のスレスレを通り過ぎて、不規則に攻撃がうねりくる。それを観測者はギリギリで弾き続けて距離を取っていた。

 

「すまんが観測は完璧でも俺はそうじゃないんでな」

「そう?じゃあしぶとくなっただけ?」

 

 また一瞬で攻撃が飛ばされ、次は完全に回避し接近してきた秋晴に刀を振り切る。

 

「流石は機人族と言ったところか?」

「よくご存じで。それにそっちこそやるじゃない」

 

 乱動で素通りして背後を取ろうとしたようだが邪魔され、秋晴は仕方がなく素手で受け流していた。

 

「近接は得意よ」

「だろうな」

 

 そしてノンストップで始まる流れるような攻防。絶え間なく動き続ける二人は、疲れどころか息切れすらせずに残像と斬撃や衝撃をまき散らす。

 

 

(技量も一流。何度見ても馬鹿げてるとしか言いようがねぇ)

『狭間の住人は、特に戦闘狂は常に命のやり取りをしてるのよ。それにあなたたちと違って同格以上なんていくらでもいるからね』

 

 狭間世界に明確に頂点や最強と言われる存在はいない。どれだけ強くても、どれだけ凄くても、それに追いつく奴や相対する存在がどこかにいるのだ。それに例外はなく、例え全知全能のような存在でさえ絶対無敵にはなれない。

 

(強いわけだ。そこで何百年も生き残れるんだからなおさら)

『そうねっと、くるわよ?』

 

 羊さんがそう言った瞬間に、鎖が直角に曲がる。だが観測者はそれをわかっていたかのように避け、追撃の鎖を弾く。そして一気に接近してきた秋晴の拳を刀で受け流していた。

 

「対応してくるのね!」

「見えてるからな!」

 

 兆候は見えていたとはいえ、あの攻防の中では観測者レベルでなければ完全に見切れないだろう。まさに初見殺しと言ったところだが、実際はもっと厄介なことであった。

 

(あれもできるこれもできるとなると面倒だな)

『手札を増やすのは当然だけどね』

 

 せっかく見つけた隙を埋めるかのように湧き出てくる策の数々。それで常人では使いきれないほどの手札を完璧に把握し最適解で打ち出してくる。これでは隙などあってないようなものであり、逆に隙が罠へと変貌しているのだ。

 

(隙がねぇ、手の打ちようが……)

『ちょっと?隙なんて作りだしちゃえばいいのよ。それが狭間流の戦い方よ。じゃないと体力負けするわよ』

 

 隙があるならそれが一番だが、ないのであれば強引に突破するしかない。

 

 それを聞いた観測者は――

 

「これなら、どうだッ!!」

「ッ!?」

 

 流れに逆らうかのように斬撃を放った。それに一瞬対応が遅れた秋晴は、ここにきて初めて微かな傷を負うことになる。それを治すために一旦距離を取って攻撃をやめ、観測者も追撃をかけずに息を整える。

 

「トリッキーさは重要だな」

「そうね。同意見だわ」

 

 だが観測者も負傷自体は免れたが、反動によるダメージを受けていた。あの場で強引に勝負を仕掛けに行っていれば、勝利と引き換えに観測者も相当のダメージを受けていただろう。

 

 

「電撃武装。奥の手って程じゃないし、ベタな手だけどどうかしら?」

「使ってほしくはなかった――なッ!」

 

 秋晴がそう言うと、バチバチと電気を身に纏い始める。そしてより一層速度が増し、電気を纏った鎖が迫りくる。これで無暗に弾くことさえできなくなった観測者は、回避の一手を使い続ける。

 

『わかってると思うけど、これで終わりじゃないわよ』

(わかってるよ!)

 

 これで終われば儲けものと言う攻撃は多くとも、これで終わらせるという攻撃は存在しない。この手を出した時点で、秋晴にとって次の手の目途が立ったと同義だからだ。

 

「爆発か!」

「こういうの好きでしょ?内側の奴は!」

 

 電気により分解された気体が化学反応を起こして局所的な爆発を引き起こす。それは観測者の妨害でもあり、秋晴の攻撃速度の上昇を意味している。

 

(もたもたしてると次の手が来るってのにますます受け流せなくなった!くそッ!)

『落ち着いて落ち着いて。もっとよく観察して“一般流”を見て』

 

 爆発、電撃、高温を超高速で振り回してくる秋晴の攻撃に焦る観測者。だが羊さんの言葉で秋晴をよく観測し、“一般流”を見極める。

 

 そして――

 

「来ると思ったッ!!」

 

 乱動で鎖を素通りした観測者は、一気に瞬動で秋晴に接近し斬撃を放つ。だが秋晴もそれを予測していたようで、拳を放っていた。

 

「っ!?」

 

 しかし秋晴の拳は外れ、即座に放った蹴りも空を切る。そしてまたも斬撃が秋晴の体を斬り裂き、秋晴は反撃のために鎖を振り回しながら殴打を負傷覚悟で繰り出し続ける。

 

「ハハハッ!!」

 

 秋晴の反撃は一発も当たることなく虚しく空を切り、体は軽傷とはいえ傷が増え続ける。だが秋晴は楽しそうに笑いどうしようかと考えていた。

 

 それに対し観測者はと言うと

 

(楽しそうに!こっちは体が壊れそうだってのによ!)

『無動ね。それで防いでるのよ。攻撃にも応用できるから、ほら真似て』

 

 強引に技を使った反動で、体がバラバラになりそうな感覚に苦しんでいた。これでは一発でも攻撃を受ければ即退場してしまうだろう。だがそんな観測者をよそに羊さんは次の要求をする。

 

「ッ!?ここまでッ!!」

「ぐっ!?」

 

 無動による攻撃が秋晴にぶつかり、秋晴は大きく斬り裂かれる。しかし少しずれたとは言え同じ精度の無動同士がぶつかったことにより、完全に斬り裂き切れずに刀が止まった。そこへ秋晴れが電撃を放ち、観測者が全身を焼かれるようなダメージを受ける。

 

『掴みが来るよ』

「わかってる!」

 

 掴みかかってきた秋晴から刀を引き抜き、再度攻撃に戻る観測者。だが秋晴も翻弄し続けられるほどバカではない。ダメージが大きいにも関わらず、先ほどよりも正確に対応して観測者が冷や汗を流すほどの攻撃を繰り出し続ける。

 

「やるねぇ。凄いよ。だから――」

 

 秋晴が拳を観測者に向けて

 

『来るよ』

「ッ!?」

 

 放った瞬間、空間が割れ景色がガラスのように破壊された。それを上空に空動で回避した観測者に鎖が迫るが、動きが急に雑多になり観測者の回避と共に秋晴も上空に飛んでくる。

 

「邪魔すんな!糸永!!」

 

 そして秋晴がそう叫ぶのだった。

 

 




・鎖について
 狭間の住人が使う武器の一つ。使用に高い技量や握力などの力が必要なことや能力や源力を使って作り出すものもあるが、ここでは武器と性能についての説明をする。
 普段は持ち主が決めた運びに適した長さに設定されているが、必要に応じて長さを変えることができる。これは、源力を使うことにより増殖する特殊な素材を使って作られているからである。また種類によっては、斬撃に特化したものや単純に重量を増して威力を上げたものなど様々な鎖武器がある。
 性能は、高速かつ高威力で射程も自在とか言うふざけた武器。しいて言うなら近距離が苦手だが、それは武器としてであり、狭間の住人自体は近接戦が強いのであまり意味がない。間合いでの軌道が読み辛く、破壊から拘束と移動手段まで幅広く使え、『一般流』を合わせることで更に凶悪度が増す。
 また糸やワイヤーと違い質量があったり可動域が自由なので、攻撃力や複雑さが凄まじいことになっている。

・狭間の住人の戦闘(攻撃)について
 可能な限りあらゆる可能性を重ねて攻撃してくる。このすべてが本命なので、どれだけ見えていようが対応が遅れた瞬間に無意味になる。それが観測だろうが未来視だろうが変わらず、必ず何かしらの対策を持っている。
 あと当たろうが外れようが関係なく、基本ノンストップで攻撃の手を緩めることはない。

 無動……一瞬動けなくなるが、あらゆる攻撃を完全に受けきることができる。存在を固定させるという性質上、攻撃に転用すると壊れないもので殴られたかのような威力になる。しかし失敗すると無防備になる。

 乱動……存在をブラすことにより、一瞬だけあらゆる干渉を受けなくする。存在を未確定状態にするという性質上、攻撃に転用すると防御の貫通などができる。しかし失敗すると無防備になる。

 空撃……空間に干渉する衝撃波を放つことができる。普通に衝撃波を飛ばしたり、空間を揺らしたり、空間を破壊して割ったりできる。

少し聞きたいのですが、当作品に出てくるキャラの強さは……?

  • バケモノ
  • 凄く強い
  • まぁまぁ強い
  • 普通
  • 弱い
  • 凄く弱い
  • ザコ
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