~異次元大会~   作:バトルマニア(作者)

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慣れ始めた二日目
森の中を移動中……


 周囲を警戒しながら森の中を移動する観測者は、話しかけてきた秋奈の事を適当にあしらっていた。

 

「ふむふむ、王と言うのはそういう事だったか。という事は、ワレも実質王と言う訳だな」

「多分な……」

 

 観測者の説明した王と言う概念に、神妙な顔をする秋奈。それを見た観測者は、大体合ってるしそれっぽい事言ってたくせにわかってないかったのか、と思っていた。

 

「そういやお前は、ちゃんと探知使ってんだろうな」

「何を言う!勿論だ!最大範囲では使っていないが、六キロ先までわかるぞ」

 

 標的を探す手伝いをさせている観測者は秋奈にそう言う。それに対し当たり前だと言う秋奈だが、いくら秋奈が探知が得意とは言え、流石に常に最大範囲で使うことはできない。集中しなければせいぜい半分程度が限界だ。

 

「能力もなしによくそんなに見えるな」

「見ると言うより感じると言ったところだ。それに所詮は単なる技術の一つだ。能力者にはかなわん」

 

 大体わかると言うだけで、専用の能力者のように細かく把握したりはできない。というか能力者相手に同分野の技術で優ることはできない。なので誤魔化す方法などいくらでもあるし、何なら能力や道具を使われれば比較的楽に突破される。

 

「それ意味あんのか?どうせ見えない相手には通じないぞ」

「あるに決まっているだろう!不意打ち防止とか周囲の把握は勿論、やっているだけで相手のリソースを割けるのだぞ。要はムダなことをさせて隙を作りやすくできる」

 

 通じる相手であれば見放題だし、通じない相手であっても、それ対策のために相手の手札が一つ潰れる。それに相手が少しでも隙を見せれば、そこから芋づる式に見つけ出すこともできるので、ムダにはならない。

 

「いやだからっていくら何でも範囲広すぎな気がするがな」

「感知系は、いくつかあるのだ。探知は範囲型で、遠距離からの攻撃用だ。上位の射撃者なぞ、射線が通れば、下手したら障害物を無視して超遠距離から攻撃してくる。これを張っておかないと対処できんわ」

 

 大会参加者クラスとなると、十数キロ先から攻撃ができ、それが0,1秒も経たずに飛んでくる。それの対処のためであり、例え相手が探知外から攻撃してきても、攻撃そのものが探知内に入れば対応可能だった。

 

「因みに他のは?」

「基本だと全部で、感知、探知、察知、把握だ。前から、普通のと範囲型、意識外の対応用、精度重視と色々ある」

 

 その他、各自の感覚を特化させたようなものから、第六感のようなものまである。能力者や種族によって使い方や組み合わせが異なるので、まさに千差万別と言える数の技が存在する。

 

「意外にちゃんとしてんだな」

「当たり前だ!これができないと相手の動きが把握できないだろう!不利にもほどがあるぞ!」

 

 秋奈からすればこれぐらいできて当然なのだろう。観測者からすれば、すでに弱めの能力者の域である。

 

 

『この子達、できることの基準がやけに高いからね。そのせいで戦闘は相当ハイレベルよ』

(だろうな。戦ってみてわかった。それにこんなけ話しているのに、探知どころか他の感知系も全部が常に張りっぱなしだ)

 

 目の前の着物を着た厨二病は、リアクションも大きく油断も隙もあります見たいな風貌なのに、実際のところはその逆で、いつでも対応できるように動いている。

 

「どうやって使ってんだ?」

「どうって……見ればわかるだろう?」

 

 不思議そうな顔をする秋奈に観測を使用する観測者だが、見えるだけで複雑すぎてすべてを理解できていなかった。正直表面を見ているだけで、まるで高度な文明のある星に張り巡らされたインターネットを見ている感じだ。

 

「まさかわからないのか?見えてるのだろう?」

「見えるだけだ。理解は別だ」

 

 観測は見る能力であり、理解力は自前である。見えることによって分析や解析を行っているだけで、自動で理解したりしているだけはない。

 

「あ~、なんて言えばいいんだろうか?こう全身で感じると言うか、思考で理解すると言うか……」

 

『この子達は基本見て経験して覚えてるから、誰かに教えるの苦手なの。説明求めても専門家とかじゃない限りちゃんとした答えは出せないわよ』

(これ見りゃなんとなくわかる)

 

 秋奈は上手い表現が出て来ず、頭を悩ませ唸る。それを見た観測者は説明は無理そうだなと諦め

 

「ダメだ!教えた事も教わったこともないことを伝えられるか!」

 

 同時に秋奈も無理だとさっさと投げ捨てていた。

 

「すまぬが見て覚えてくれとしか。どうせなら力を流し込んでやろうか?そっちの方が速そうだ」

「遠慮しとく」

 

 観測者と秋奈の使っている力の流れは違う。何ら質など違いを上げればきりがない。これは世界や個人で変わるので仕方がないのだが、ある程度なら調整できるよ、という意味で言っているのだ。

 

「まぁ不快だからな、アレは」

「不快で済めばいいんだがな」

 

 違う力を入れられるのだから不快極まりないだろう。それを利用して流れを自覚させるのだから当然だ。

 

「流れがわかれば相当楽になるのだがな。残念だ」

「俺だって独自の流れはある。お前ら乱入者に比べれば雑多かもしれないがな」

 

 他の参加者に比べれば上等だが、乱入者に比べると見劣りする程度の質だ。なぜなら覚えるにしたって知識も経験も足りないのだ。そして手っ取り早い方法も今断ったばかりと言う。

 

「まぁちょっとずつ学んでいくさ。だからお前にも多少戦ってもらうぞ。俺が観測できるまでな」

「よいぞ。そのためにこの大会に参加したのだからな」

 

 一番の観測対象は隣にいる。時間はかかるが紐解けるし、現在進行形でそれを行っている。多少点を取られても、乱入者の力と一般流を完全に使い熟す技量が手に入ればお釣りがくると踏んでいた。

 

「ってことでさっそく見つけたからそこへ行くか」

「む、ああ、10キロ先か。これは中々、いいだろう。しかと見てよく学ぶと言いワレの実力をな」

 

 ニヤリと笑った秋奈は、瞬動で標的の元へと移動し、観測者もそれに合わせて瞬動を使ったのだった。

 

 




 ~おまけ~
・能力と技術について
 同等の相手であれば、技術はどうやっても能力に敵わない。それをやるためだけに能力を高めた相手(特に特化型など)と、誰にでも使える技術では、その差は埋められない。
 ただし総合という面で敵わないだけなので、使い方によっては敵う場合があるが、それもまた同じことをされたら一からやり直しである。

・力の流し込み(循環)
 流れを教えるためだとか、仲間の回復用の技、または体調不良を強制的に治す民間療法としても使われる。他人の力が入ってきて大丈夫?となるが、全然大丈夫じゃないし、凄く不快になる。悪用すれば他者の体内から、ズタズタに体を破壊できる危険極まりない技。でも大丈夫、これを敵に使うぐらいなら殴った方が速いから誰も攻撃技として使わない。なお似た技はあるので対策自体は取られている模様。

少し聞きたいのですが、当作品に出てくるキャラの強さは……?

  • バケモノ
  • 凄く強い
  • まぁまぁ強い
  • 普通
  • 弱い
  • 凄く弱い
  • ザコ

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