戦場を虫食いのように乱雑に発生する先の見えない幻想的な闇が通り過ぎた場所には、何も残らない。そこには虚無だけが漂う空間となり果てるのだ。
そんな戦場を三人の怪物は動き回り、斬撃と衝撃波が響き渡る。
(強いな。これで弱体化してんのか)
『元は宇宙を喰らいつくす存在だからね。そして宇宙がなくなると、自分の体を別世界に切り分けて飛ばしてを繰り返す子だからね。その中の成長途中の子で、魔魅さんに一度叩き潰されて弱体化してるんだろうね』
恒星クラスのストックと言ったが、それは次元生命体にとってまだ幼虫のようなちっぽけな状態でしかない。そこに魔魅さんにボコられ更に弱体化していた。
(あいつの記憶を見たが、魔魅さんはマジもんのバケモンだな。俺が戦っても確実に負けるぞ)
次元生命体を一方的に殺し続けている魔美さんを見た観測者は肝が冷えていた。そして
『大会用の魔美さんなら勝てるんじゃない?』
「は――ッ!?」
「余所見とはいい度胸だな!」
羊さんの言葉に絶句し、単調になったところを瞬間移動してきた次元生命体に一発喰らう。それにより抉れるような痛みと共に高速で殴り飛ばされていた。
「余所見はお前の方だ!」
「邪魔だ!」
観測者に追撃をかけようとする次元生命体を掴み上げるように、地面から巨大な腕が生えて握りつぶされるが、次の瞬間にはドロドロに溶けて弾け飛んでいた。その上光線が四方八方へと飛び散り、先で大地が斬り裂かれ大爆発が巻き起こる。
(マジか!あいつ出てんの!?)
『主催者も出てるわよ。別に出ないとは言ってないし、ルール違反でもないし』
思考をフル回転して、戦闘を放り投げて羊さんに話しかける観測者。それもそうだろう。乱入者だけでもギリギリの障害なのに、魔魅さんに主催者となれば優勝の確率はさらに低くなるからだ。
(いや分かってるけど、まさかマジで!?)
『マジよ。でも点数で勝てばいいだけじゃない?回避するのは得意でしょ?そんな風に』
だが思考はすぐに戦闘へと引き戻され、飛来した瓦礫や刀剣などの武器の数々を回避し弾いていく。そして闇の先から見えた視線をの対処のために、次元生命体と戦っている樽井が出した巨大ゴーレムの上半身を粉微塵に斬り裂いた。
「うおっ!?死ぬとこだった!」
「即死系の魔眼か」
次元生命体が使ったのは、目が合った相手が目を離せなくなる技と、その相手にあらゆる死を体験させ続けてショック死させる魔眼だ。それを観測者は横やりを入れて樽井を助けたのだ。
「チッ!ちょこまかと!」
何度も邪魔され上手く攻撃が決まらない次元生命体は、物陰に隠れた観測者を空間から染み出した次元の闇で削り取ろうろするが、これも当たらない。それどころか、観測者が動き回りながら空斬で空間を斬り裂き、空間干渉の邪魔をされていた。
(近接戦を仕掛けて来ないのは、自分が劣っていると分かているからなのか)
『あの子にボコボコにされたのが効いてるんじゃない?』
一定の距離を保った状態での攻撃を重視しているようで、次元生命体は頑なに近接戦を仕掛けて来ない。それは魔魅さんに近接戦でボコボコにされた事が原因であり、情報が見えない相手は慎重に戦う癖が出来たからだ。
「じゃあこっちから仕掛けるだけだ」
物陰から出た瞬間に瞬動で一気に距離を詰め、軍刀が次元生命体の首を掠める。それを驚いた顔で回避した次元生命体は、次の瞬間には観測者を見失い正面をバッサリと斬り捨てられた。
「これだから!ウザい!」
地面に叩き付けられたところに樽井の地形操作が襲い掛かるが、植物のようなものが急速に生えて地形を飲み込み押さえつける。
「逆に吸い取ってくれよう!」
「嘘だろ!なんだこいつ!」
その瞬間に樽井の悲痛な叫びが聞こえ、地面の中で支配権の取り合いが発生して大地が歪み揺れ動くのみとなる。
「次はキサマだ!」
世界を動かすに足る程の念力が発生し、観測者のいる場所ごとねじ潰す。だが瞬動を使う観測者を捉えきれずに、念力は斬り裂かれてしまう。
「ガッ!?」
「逃げんなよ」
瞬間移動で距離を取ろうとするも、行き先が把握されているため先回りされ普通に斬り裂かれる。そして怯んでいる隙に数太刀入れられ、最後には顔面に拳を叩き込まれ、形を保っているだけと化す。
「キ、キサマ!闇の中へと消えろ!」
自分ごと次元の闇で覆い隠し、光の届かない世界が生まれる。そして溶けるようにすべてが消える。そのはずだったが……
「邪魔だ」
「ッ!?」
一太刀振った瞬間に闇は消滅し、斬られ、殴られ、蹴り飛ばされた。
「なんだもう終わりか?」
(勝てない勝てない勝てない!あいつと同じだ!そんな未来ない!!なんで気が付かなかった!!何をしても何もできないッ!!!)
次元生命体は体を治しながら高速で思考を巡らせる。未来を見ても、運を操作しても、現実を改変しても、毒をばら撒いても、大規模な攻撃をしても勝てない。ただ一番マシな未来を選択し続けてきた結果がこれなのだ。
「どうした?何もしないのか?」
「ヒッ!?」
次元生命体は一歩近づいた観測者から離れるように下がる。それと同時に見えていた多くの未来が消失し、望まない未来へと収束し始める。あの時もそうだった。全く同じだ。未来視なんて、本当のバケモノたち相手には大した役には立たない。
なんせ能力が完璧でも、使い手が……
「やっぱダメだな。じゃ終わらせるか」
「や、やめろ!余は!余はあいつにッ!!?」
そして次元生命体が最後に見たのは、消えゆく自分の体だった。
~おまけ~
・未来を潰されるのって怖いよね。
次元生命体は未来視とかを使いまくって戦っています。その他にも見えない所で運とか確率とか操っていますが、勿論観測者はそれを織り込み積みで動いているので、簡単ではありませんが上回れます。
したことは簡単!有利になる未来を残して誘い込み、逃げれなくなったところで一気に相手の見ている未来を潰して、都合の悪い未来を押し付ける。それだけ!ついでにトラウマもあったから利用したのだ。
やっぱ元の世界で圧倒的強者だと、同格や格上と対峙すると不利になるよね。だって足掻く手段なんてほとんど知らない訳だから。
少し聞きたいのですが、当作品に出てくるキャラの強さは……?
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バケモノ
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凄く強い
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まぁまぁ強い
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普通
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弱い
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凄く弱い
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ザコ