~異次元大会~   作:バトルマニア(作者)

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逃がしたし逃げた

 平原を秋奈と走り抜ける観測者。

 

「逃がしてよかったのか?」

「ああなっちまったら仕方がないだろ。手の付けようがない」

 

 自分の点数をチラリと見て、次元生命体の点数が加算されているのを確認する。それと同時に背後を確認していた。だが杞憂だったようで何も追いかけてきていない。

 

「まさかあいつが自我崩壊するなんてな」

「むう、どんな奴かはらからんが、さぞかし精神の弱い奴だったのだろうな。あの様子を見るに」

 

 秋奈が神薙を倒し出てきた時には、それはもう大変なことになっていた。訳も分からん怪物たちが闊歩し、無差別に攻撃をまき散らす惨状。そこで戦い続ける観測者にと、驚いて一瞬フリーズしかけた程だ。

 

「まぁ仕方がない。あいつのあの時の自我は、戦闘用じゃなかった」

「次元生命体と言ったか?そういうヤツはそうなるだろうな。少ないが何度か見たことがある」

 

 次元生命体の表面に出ていた自我は、何億と存在する自我の頂点であり、同時に戦闘用ではなく蹂躙用の自我だった。それが崩壊し制御がなくなったことで、次の自我を決める再編が起こり始めたのだ。

 

「根本は本能だが、登録されたのがあの自我だから点数入ったんだろうな」

「そうであろうな。無限にリトライできるのなら、ゲームとして面白みに欠ける」

 

 次元生命体の本能は、現在の自我では現状を打破できないと判断し、あの自我を捨てたのも大きな原因の一つだろう。だからあいつの見ていた未来では、自分が消えていた。それにより参加者以前にすべて終わったのだ。きっと次生まれてくるのは、すべてを引き継いだ別の誰かであり、フィールドモンスター扱いになるだろう。

 

「で、逃げたし逃げられたわけだ」

「それは随分と残念だったな」

 

 急に崩壊して襲い掛かってきた次元生命体は、まさしく怪物だった。更にそこで牽制用の樽井が逃げ出し、次元生命体が手をこまねく必要がなくなった。これにより攻撃手段が増えた次元生命体は、一番の脅威である観測者を排除にしにかかったのだ。

 

 

「で、どうするのだ?次の参加者を探すのか?それとも隠れるのか?」

「参加者を探すに決まってるだろ。優勝目指してんだ。手ごろな奴を先に倒しとかないと、厄介な奴しか残らないからな」

 

 決め手が欠ける観測者にとっては、後半になればなるほど倒しにくい奴しか残らなくなる。だから前半でどれだけ手ごろな参加者を倒して点数を稼ぐかが、勝負所になるのだ。

 

「一日は36時間。この大会は256時間だから、7日と4時間しかないからな。残り時間は、225時間で今は二日目の朝過ぎ。最終日は早めの昼過ぎと言ったところか。なんとも短い大会だな」

「説明どうも。戦闘と彷徨うので時間を消費しまくってる。特に吹っ飛ばされたのがデカい。あれのせいで計画が吹き飛んだ」

 

 吹き飛ばされた後に、ダメージを癒すのと、周囲の警戒を再度し直さなければいけなくなり、それなりの時間を用意していた。前者ははさて置き後者は致命的で、あそこ周辺は軒並み点数の高い者しか残っていなかったので、それを避けようとしたようだ。

 

「で、今は逃げる次いでに手ごろな相手を探している所だと?」

「そう言う事だ」

 

 秋奈としては面白みに欠ける事だが、事情があるであろう観測者にそれを言う程子供ではない。なんなら、自分は単なる付き添いでしかないのだから、口を出す気もない。

 

 ただ……

 

「不満か?」

「ワレからすればな。だが他者の意志を曲げる程ではない」

 

 観測者にはお見通しで、秋奈も聞かれたから答えた。しかし秋奈としては、狭間の住人としては、他人にもの申すと言うのは失礼な行為に値すると思っているので、あまり口に出すことはしない。

 

「お前らは人に意見とかは言わないのか?記憶を観測した感じそうは見えないが?」

「相変わらずデリカシーの欠片もないな。まぁそうだな。言わないことはない。だが深くは言及はしない。精々、疑問に答えてくれたらよいな程度だ」

 

 狭間世界には、様々な人種や環境で育った住人が居るため、誰と出会っても『そういうヤツもいるのか』程度の認識に留まる。なのでわざわざ他人の倫理観に踏み入った話をしないのだ。特に否定的な話はほぼしない。

 

「お前らには悪とか正義がなさそうだな」

「所詮は個人の感性だ。ぶつかり合いはあってもそれは善悪ではない。ましてや正義などどこにもありはしない」

 

 何はともあれ考え方が違うから争うのだ。そこに善悪や正義などはありはしない。

 

「合理や実益を重視する者もいれば、ワレのようにロマンを追い求める者もいる。妥協できないのなら決着をつけるだけ。間違いや正しさを言うなら、行動で示して証明すればいいだけだ」

 

 普通の狭間の住人はここまで考えない。良くて善悪程度だろう。だが秋奈は別世界の事を調べている側の人なので、観測者の質問の意図を汲んで答えた。

 

「罪とか罪悪感もなさそうだな」

「悪いと思う事はあるぞ」

 

 無法な世界の狭間世界には罪などないが、狭間の住人にだって悪いと思う事はある。だがそれが人間に近いだけで、同じものではない。ただ言える事は、それが隙になる事は決してない。

 

 

「まぁい。手ごろなのを見つけた。様子見して隙が出来次第攻撃を仕掛ける。お前は待機して何時でもフォローに回れるようにしといてくれ」

「わかった」

 

 戦闘を繰り広げている参加者を見つけた観測者は、そう言うと気配を極限まで隠して物陰に隠れるのだった。

 

 




~おまけ~
・狭間の住人の感性
 狭間の住人は、「そういう事もあるよね」「そういうヤツもいるよね」で認識が終わるので、関係が近い者ならまだしも、赤の他人について深くは言及しない。相対的なものに口を出しても碌な事にならないからだ。また言っても言われても軽く受け流すのがベター。特に意見が違うからと他人を否定することはほぼない。
 彼らがやっていることは、「疑問」「肯定」「証明」が主で、聞きたいことがあれば疑問、正しいと思う事に肯定、正しいと言うなら証明、の三つが主。
 あと普通に嫌味やブラックジョークとかもあるけど、それは言い合いやケンカなどに踏み出した時の話なので、普通の会話では許容内の軽いものしかでない。

少し聞きたいのですが、当作品に出てくるキャラの強さは……?

  • バケモノ
  • 凄く強い
  • まぁまぁ強い
  • 普通
  • 弱い
  • 凄く弱い
  • ザコ
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